~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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第二十六話 一方そのころ

報告書

 

〇月✕日、重要人物保護プログラム対象者が旅客機での移動中、旅客機の一部が爆破された。

爆破された箇所は客室部分であり、護衛対象の暮見雄二が巻きこまれた。

爆発の際に出来た穴から気圧変化による風圧で落ちたと思われる。

捜索は続けているが生存は絶望的と思われる。

三日間ほど捜索をして見つからない場合、捜索を打ち切り死亡扱いとする。

なお今回の爆破は反IS集団による犯行だと思われる。

護衛三名については降格処分とする。

 

(日本政府重要人物保護対象資料より)

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は・・・・なにもしらない・・・・です・・・」

 

「なんでもいいんだ。君のお姉さんが君に何か言ってたりとかしてないかい?」

 

 

これでこの質問は何回目になるのだろう…

言い方こそ違えど意味は同じだ。

 

 

「知りません・・・姉さんとはここ数年一度もあっていないので・・」

 

「それはわかっているんだよ。私が聞きたいのは何か篠ノ之束博士が意味のあることを日頃から言ってなかったかなんだよ。」

 

 

そんなことわかる訳がない…

いくら妹とだとしても姉さんのことがすべてわかるわけないし、数年前の会話なんてほとんど記憶にない。それに姉さんとISについて話したことはない。

これはこの数ヶ月何度も言ったことだ。

 

(いつまでこんな日々が続くのだろう・・・)

 

道場で精神も鍛えてはいたがこれはさすがにこたえた。

一夏との会話がなければとっくに私はまいっていただろう。

 

 

「で?なにか思い出せないのk「失礼します。」・・・なんだ?」

 

 

聴取が続くと思われた矢先、もう一人部屋にやってきた。

 

(こんなことは初めてだが・・・なにかあったのだろうか?)

 

聴取のときに誰かが部屋に入ってくるなんて初めてだったのとその人が何か急いでいる感じだったためそう思った。

 

 

「じつは…___が_____です。______」

 

 

入ってきた人物が私に質問をしていた者へ何かを耳打ちしている。

内容は良く聞こえないが焦っていることはわかった。

 

 

「それで_____________まだ____ないそうで___」

 

「何!?暮見雄二がか!?」

 

 

聴取をしていた人物が何かの報告を聞いて驚いていた。

思わず大きな声が出てしまったという感じだ。

しかしそれよりも気になるのは

 

(なぜ兄さんの名前が出てきたんだ?)

 

兄の名前が出てきたのが気がかりだった。

何かあったのではないだろうか。そう思うと心配になる。

 

 

「篠ノ之箒さん。今日はもう部屋に戻ってもらっていいですよ。」

 

「えっ?」

 

 

聴取がこんなにあっさり終わるのは初めてだった。

いつもはこれ以上ないというぐらいにしつこいのにだ。

 

 

「どうしました?戻られて構いませんよ。」

 

「あっ、はい。」

 

 

言われるがまま私は部屋に戻っていく。考えてしまうことは兄のこと。

気がかりなのは聴取が急に終わったこと、兄の名前が出てきたこと。

もしかしたら聴取なんてしてる場合ではないことが起こり、兄が巻き込まれたのでは?

 

(そんなはずはない。私はなにを考えているんだ…。兄さんはすごい人なんだ。)

 

大丈夫、大丈夫と自信に言い聞かせながら廊下を歩く。

 

 

「聞いたか?例の件について。」

 

「例の件?」

 

 

そんな会話が廊下の曲がり角の向こうから聞こえてきた。

私はなぜかその会話が気になり足を止めて聞き耳を立てた。

 

 

「なんだ聞いてないのか?重要保護対象の移動のときに起こったことだよ。」

 

「あぁ、それか。かるく耳にはしたが詳しくは知らないな。何があったんだ?」

 

 

重要保護対象・・・・兄さんのことか?

一言一句も聞き逃さないようにさらに聞き耳を立てる。

 

 

「それがな、移動に使った旅客機が一部爆破されたんだってよ。」

 

「爆発って・・・その時の護衛は何をしていたんだか・・・・」

 

 

爆破。危険なワードが聞こえてくる。

 

 

「それで護衛対象は無事だったのか?爆破は一部だったんだろ。巻き込まれたのか?」

 

 

その質問に思わずゴクリと唾をのむ。

 

(無事と言ってくれ・・・・頼む‼)

 

「それがな、一部だったんだが運が悪く、ちょうどその護衛対象が座っていた近くだったんだってよ。」

 

 

そんな・・・・・

 

 

「そいつは運がないな。それで護衛対象は助かったのか?」

 

「わからん。爆破でできた穴から気圧で放り出されてしまったらしくて安否確認はできていないらしい。しかし、生きてはいないだろうな。」

 

 

生きてはいない・・・・つまり死んだということだ。

護衛対象といわれ名前こそ出てないが・・・・・

 

(違う!兄さんな訳がない…。絶対に違う…)

 

きっと他の重要保護対象の話だ。そうに違いない。

 

 

「そうか、それはかわいそうだなそいつ。えーっと・・・なんていったけか、そいつ。」

 

(大丈夫、大丈夫。兄さんな訳がない)

 

 

心臓の鼓動が破裂しそうなほどはやくなる。

 

 

「名前か?確か・・・・暮見雄二だったな。」

 

 

今・・・何と言ったのだろう?暮見雄二と私には聞こえた・・・・

 

 

(いや・・・・・聞き間違えだ・・・)

 

「あぁ、そうだった暮見雄二だ。あの養子のガキだろ?」

 

「そうそう、そいつ。」

 

 

まただ・・・・また兄さんの名前が聞こえた・・・・・・

 

(そんなわけない・・・・・違う違う違う違う違うっ‼私は兄さんの名前なんか聞いてない‼)

 

私は耳を手で塞いで部屋に走った。

 

 

それからしばらくして部屋に政府の人が来て、兄さんが亡くなったことを伝えられた・・・

 

 

ブー、ブー、ブー、ブー

 

ベッドに座り込んでうつむいていた私は手元のブレスレットが震えたことで顔を上げる。

 

(そうか・・・・もうそんな時間か・・・・)

 

部屋に戻ったのは17時頃だったのに時刻はすでに21時近くだった。

この時間帯はいつも一夏と通信する時間だ。私がかけないから心配してかけてきてしまったのだろう。

 

(あまりそちらからかけるなと言っていただろうに・・・)

 

そうは思うが、今は正直ありがたかった。心配してくれる人がいることを実感できるのと今はとにかく誰かと話したかった。こんな時に一人は寂しかったから…

 

私はブレスレットの通話機能をオンにする。

 

 

『おっ!やっとつながった!箒、どうしたんだ?出るまでずいぶんかかったけど。』

 

「一夏・・・・」

 

『あっ!これはだな、心配になってかけてしまったというかなんというか・・・・すまん。』

 

 

一夏は私がダメと言っていたのにかけてきたことを怒っていると思ったのだろう、謝ってきた。

 

 

「気にするな・・・心配してくれてありがと、一夏・・・・」

 

『・・・なにかあったのか?声に少し元気がないけど。』

 

 

自分ではいつも通り喋っているつもりだったがうまくできてなかったようだ。

 

 

「・・・・・」

 

『なにかあったんだな。一体何があったんだ箒?怪我とかしてないか?』

 

 

一夏は私になにかあったと思い心配してくれる。

心配させるのも悪いので怪我はないことを伝えなければ。

 

 

「怪我とかそういうのはしていないから大丈夫だ。」

 

『そっか、箒に怪我がなくてよかった。』

 

 

安堵の息が聞こえてくる。心配性なやつだな。会話できるのだから怪我をしていても大した怪我ではないことぐらいわかっているだろうに。

 

 

「なぁ、一夏・・・・」

 

『ん?なんだ?』

 

「聞いてもらいたいことがあるのだが・・・」

 

『俺でいいならいくらでも聞くぜ。』

 

 

兄さんのことは一夏にも知る権利があるだろう。一夏も兄さんと仲が良かったから。

それに・・・・

 

(千冬さんにも・・・知らせないといけないと思うしな・・・)

 

辛いだろうが知らずにすごす方が本当に辛いことだと思うから…

 

 

「実はな・・・・・」

 

 

それから私は兄さんのことについて話した。

 

 

「_____ということがあったんだ。」

 

『そんな・・・・雄二兄ちゃんが・・・・』

 

 

一夏は信じられないといった反応だ。

私だっていまだに信じられない・・・あの強くて優しい兄さんが・・・

 

 

「兄さん・・・・」

 

『雄二兄ちゃん・・・・』

 

 

それからはふたりして完璧に黙ってしまった。

それだけ兄さんは私たちの中で大きな存在だった。

兄であり、剣の師匠でもあった兄さんからはいろいろなことを教わった。

 

そのなかでも何より口にしていたことは

 

゙辛い時こそ笑え。後ろだけ見ていてもなにも変わらない。だから笑って前を見ろ゛

 

この言葉だった。私たちが失敗して落ち込むたびに言っていた。

この言葉に何度も救われてきた。

しかし・・・・

 

 

(今回ばかりは笑うことができません…どうしたらいいのですか?兄さん・・・)

 

 

どうやって乗り越えればいいのかが今の私たちにはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ボスンッ

 

帰ってきて飯も食べずに私はベッドに倒れこむ。

 

 

「雄二・・・・・・」

 

 

その理由は雄二だった。帰ってきて一夏の様子がおかしいので話を聞くと、その内容は雄二が死んだというものだった。箒から聞いたらしい。

 

 

「本当に死んでしまったのか・・・・?」

 

 

信じられない。あの雄二が死ぬなんて。

 

 

「お前は丈夫で殺しても死なないような奴だろ・・・・?」

 

 

本当はピンピンしていてひょっこり顔を出したりするんじゃ・・・・・

そうは思うが一夏から聞いた限りでも状況は絶望的だった。

 

 

「私は・・・・私は結局お前に・・・・・」

 

 

本当の気持ちすら伝えられていない・・・・

 

 

「雄二・・・・・・会いたいよ・・・・・」

 

 

もう一度だけでいい・・・・あの笑顔が見たかった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

バチンッ‼

 

「次ッ‼」

 

「も、もうみんな疲れ切っているから無理だって!」

 

 

今は剣道の練習中。私は男子に混ざって練習していたがもう試合をできる者がいなくなったらしい。

これでは練習にならない。

 

 

「そうか、ならば私は帰る。」

 

 

そういって荷物をまとめて帰る。

帰り際、窓に映った顔はとてもひどい顔だった。

 

 

兄さんが死んでから数ヶ月が経ったが今も私は立ち直れてはいない。

少しでも気を紛らわすために剣道により力を入れているが先ほどのように練習にならない。

 

(楽しくない・・・・)

 

あんなに好きだった剣道が今は全く楽しいと感じない。

同格の奴がいないからだろうか?

 

(あの頃が一番楽しかった・・・・)

 

思い出すのはまだ小学生低学年だったころ。家に帰ってはほぼ毎日道場の方に顔を出した。

道場には父さんや千冬さん、時々姉さんもおり、あの頃私より強かった一夏もいた。

そして何より・・・

 

(兄さんが笑っておかえりと言ってくれていたな…)

 

兄さんもそこにいた。いつも笑って迎えてくれて、私に剣の指導をしてくれた。

厳しい練習もあったけど辛いと思う練習はなかった。そして練習が終わるといつも

 

 

゛お疲れ箒。今日もよく頑張っていたな。゛

 

 

そういって優しく頭をなでてくれた。

私はそれがうれしくてより頑張れた。

 

(本当に楽しかったな・・・・)

 

楽しかった。それはつまり過去にしか過ぎない。

今が変わるわけでもない。どちらかというと兄さんのことを思うと辛い…

それでも縋りたくなる。後ろばかり見てしまう。

 

 

「酷い・・・・顔だな・・・」

 

 

ふと、店の窓に映る自分の顔をみてしまう。

その顔はひどいものだった。

肌は死んでるんじゃないかと思うほど白く、やつれて少しやせていて、生気を感じない瞳。

 

(はっ、死んでいるのは私の方なんじゃないか?)

 

窓に映った私が自嘲気味に笑う。

それは笑みはどこまでも空っぽだった…

 

(・・・はやく帰ろう…)

 

そんな顔を見ているのが嫌になり再び歩き始める。

 

 

人通りのない河原を歩いている時だった。

 

 

「箒。」

 

 

自分の名前を呼ばれた。その声はよく知っている。今一番聞きたかった声だ。

後ろからその声で名前を呼ばれた。

 

(この声は・・・・・本当に私は死んでしまったのか?)

 

私は急いで後ろに振り向く。

そこに立つのは私がよく知る一人の男性。

 

(これは・・・・夢か・・・?)

 

その男性を見て私は思わず自分の頬をつまむ。

 

痛い・・・・

 

(夢じゃない・・・)

 

頬をなにかがつたる感覚がする。

 

 

「久しぶりだな、箒」

 

 

固まっていた私に声がかけられる。

 

 

「兄さん・・・・・」

 

 

そこにいたのは()()()()、つまり兄さんだった。




廃れていく箒の心。
そしてその前に現れた暮見雄二。
彼の目的は一体なんなのか。

今回は箒がメインでした。
ちなみに狙われる可能性があり危険ということで葬式すら開かれてません。
日本政府まじ鬼畜ですね。
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