~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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後半です。
遅くなってすいません。


第三十四話 代表決定戦(後半)

『もうすぐ時間です。二人とも準備をしてください。』

 

 

山田先生からアナウンスが入り、俺は専用機である【アイアス】を展開する。

全体的に赤を基調とした外套服のような装甲が身を包む。ISとしては小さめのサイズだがこのぐらいの方が動きやすい。そして俺の周りに七枚花弁の形をした二枚の盾が浮いている。

この盾は機体と同じくアイアスの名を冠している。

 

 

「それが隼人のISか。」

 

「あぁ、名前はアイアスだ。」

 

「展開と言うよりも本当に装着しているみたいだな。機動力重視か。」

 

 

篠ノ之の言う通り装甲は最低限のため着ているという方が近いかもしれない。

そのため篠ノ之は機動力を重視した機体と見たようだ。

 

 

「いや、恐らくこの機体は防御型の機体だと思う。」

 

「えっ!装甲こんなに少ないのに?」

 

「一夏の言う通り防御型にしては装甲が少なすぎないか?あるのはあの不思議な形の盾二枚ぐらいだ。」

 

 

驚いた…

鳴海はこの機体の本質を見抜いているようだ。

 

 

「その盾こそが防御型であると思う理由だよ。」

 

「どういうことだ?」

 

「機体名はアイアス。その由来は恐らくギリシャ神話に登場するアイアスだろう。そして周りにある盾は花弁が七枚というところからアイアスの盾ってところかな。アイアスの盾はヘクトールという英雄の放った槍を革七枚目で防いだという。」

 

 

そう、鳴海の言う通りこの機体はアイアスの盾をモチーフにして作られている。

 

 

「その通りだ。驚いたな、初見でそこまでわかるなんて。」

 

「当たっていてよかったよ。ここまで言っといて違うといわれたら恥ずかしいからね。」

 

 

鳴海はそんな風に言うが確信があったのだろう、予想通りって感じがひしひしと伝わってくる。

 

 

「ということは、この機体は本当は機動力ではなく防御重視ということか。」

 

「篠ノ之言っていた機動力というのもあっているが本質は防御にあるって感じだな。」

 

「へぇー、この盾ってそんなにすごいのか?」

 

 

一夏がアイアスをつんつんとする。

 

 

「全部説明しちゃつまらないだろう?試合でのお楽しみってとこだ。」

 

 

そういってカタパルトに向かう。

俺の背なかに向けられる三人からのエールに俺は腕を突き上げることで答える。

 

 

「衛宮、アイアス、出ます!」

 

 

カタパルトから射出され俺はアリーナに飛び出した。

 

 

 

 

★

 

 

 

 

「逃げずに来たか。」

 

 

ピットから赤いISを纏った男が出てくる。

 

 

「まず、逃げずに来たことは褒めてやる。」

 

「そいつはどうも。」

 

 

一試合前で俺の実力をみたはずだがこいつは平然としており、その瞳には気力が溢れている。

 

(悪くないが・・・・気に食わんな。)

 

俺に対して勝つ気でいる。

それがどこまでも癪に障る。

 

 

「貴様がどれだけの力を持っているか知らんが俺様には勝てん。」

 

「俺の限界を決めるのはお前じゃないんだ。だから、やってみなくちゃわからないだろ?」

 

 

臆することなく真っ直ぐにこちらを見据えた視線。

敗北ではなく、勝利を見続ける愚かさ。

 

 

「ククッ、ハッハハハハハ!」

 

 

こいつは面白い。どこまでも真っ直ぐであきらめの悪い愚か者。

簡単なようで普通の者にはほとんどできないことをこいつは当たり前のようにしている。

それでいてこいつは俺に勝てないとわかっている。

その歪さに久しぶりに大声で笑った。

 

 

「気に入った!俺様は貴様が気に入ったぞ。そのどこまでも愚かな真っ直ぐさは面白い。貴様、名は何という?」

 

 

「衛宮…隼人。」

 

 

衛宮隼人。この俺が名を覚えてやる。

感謝するがいい。

 

 

「では衛宮。」

 

 

右手を上げて空中に武器を展開する。

 

 

「俺を楽しませろ!」

 

 

腕を振り下ろすとともに武器が襲い掛かっていく。

 

 

「グッ!?」

 

「どうした、こんなものか?」

 

 

衛宮は回避を試みるが一本の剣が奴を捉える。

 

 

「俺を落胆させるなよ。」

 

 

再び武器を展開し射出する。

衛宮は先ほどの衝撃によって怯んでいる。

さぁ、どうする?

 

 

「アイアス!」

 

 

何か叫んだ直後に奴のもとに武器が到達し土煙が上がった。

 

(期待外れだったか…)

 

あそこまでの直撃を受けては終わりだろう。

あっけない結果に落胆する。

 

 

「おい、試合は終わりだ。はやくコールしr____!?」

 

 

その時俺の頬を掠めるように二本の剣が通り過ぎて行った。

絶対防御が発動するため斬れてはいないがエネルギーが少量減った。

剣が来た方向は土煙の中からだった。

 

 

「悪いがまだくたばっちゃいない。」

 

 

土煙が晴れるとそこには傷のない衛宮が立っていた。

そしてその前には二枚の盾が浮いている。

 

 

「耐えたか。いいぞ、そうでなくてはつまらんからな。」

 

 

あの二枚の盾で攻撃を防いでいたようだ。

その事実に再び興が乗る。

 

 

「その盾、ただの盾ではないな。この攻撃に使っているものは全てが超一級品。それを防げる盾とは驚いたぞ。」

 

 

どれほどの盾なのか試すように射出を続ける。

そして盾はその全てから主を守るかのように武器を弾いていく。

しかし攻撃を防ぐごとにその盾にヒビが入っていくのが確認できる。

 

 

「クハハハハハ!いいぞ、どこまで耐えられる?」

 

 

そして次の武器を射出しようとしたところで衛宮が動き始める。

アリーナ内を飛び回り始めた。

確かに速いが捉えきれない速度ではない。

 

 

「羽虫になった程度で避けきれると思うな。」

 

 

飛び回る衛宮に武器が襲い掛かっていく。

 

 

「ハァ!」

 

 

盾で8、剣で2本、合計10本全て防ぎきられた。

しかし、その瞬間に既にこちらは次の武器の射出を開始する。

今の弾き方では間に合わない。

武器が敵を蹂躙する直前、

 

衛宮の姿が視界から消えた。

 

 

「なに!?」

 

 

いや、消えた訳ではない。加速しただけだ。

センサーが後方に回り込まれていることを告げる。

 

 

「そこか!」

 

 

後ろに射出するが奴はもういない。

そして俺の体に衝撃が走る。

 

(攻撃されたのか?!)

 

攻撃されたと理解した瞬間、後方から攻撃された。

今度は微かに見えたがこれでは射出では当たらない。

 

 

 

「ちっ!俺様に移動させたこと光栄に思え!」

 

 

スラスターに出力を回す。

 

(射出だけの機体ではないことを思い知らせてやろう。)

 

こちらも高速機動を開始する。

そして二秒程で衛宮の速度に追いつく。

 

 

「なっ!?」

 

 

追いついたことにより衛宮の驚く顔が良く見える。

そこへ右手に展開済みの剣で切りつける。

 

 

「くっ!」

 

「ほう、斬られてもこの速度を維持するか。」

 

 

体勢を崩しかけながらも速度を維持しょうとする衛宮。

こいつのポンコツ機体ではこの速度に至るまでに時間がかかるようだ。

 

 

「ほらほら、防がんと速度が落ちるぞ?」

 

 

続けざまに剣で攻撃していく。

衛宮も防げてはいるが速度は落ちてきている。

そこへ追撃を仕掛けるが

 

 

「ハァ!」

 

 

衛宮の反撃がこちらを捉えた。

鋭い一撃に速度が落ち、引き離されてしまう。

しかし、こちらはすぐに追いつける。

 

 

「どうやら近接では貴様に分があるようだな。」

 

「そうみたいだな。だから、ここは俺の距離だ!」

 

 

衛宮は剣を振ってくるが俺は盾を手元で展開し防ぐ。

空中展開でなければこの距離でも盾を出すぐらい容易だ。

 

 

「空中展開じゃない!?」

 

 

しかし、衛宮の奴は空中展開を気にしすぎた。

 

 

「何を驚いている。展開とは本来こういうものだろう?」

 

 

一瞬動きを止まった衛宮の腹部に蹴りを入れ、下がらせる。

そして衛宮が下がったポイントの上空には既に武器が展開されている。

 

 

「しまっ____」

 

 

衛宮は武器の嵐に呑まれ、落下していく。

地面に叩きつけられた衛宮は羽を失った鳥といったところか。

 

(あとは終わりを待つことしかできない。)

 

あの盾も後、耐えられて数回だろう。

 

 

「これで終わりか。なかなか楽しめたぞ。」

 

 

腕を振り下ろし、武器の雨を降らせた。

 

 

 

 

★

 

 

 

 

「これで終わりか。なかなか楽しめたぞ。」

 

 

天馬はそういって手を振り下ろす。

それと同時に武器の雨が降ってくる。

 

 

「アイアス!」

 

 

アイアスで防ぐが既に限界が近い。

恐らくあと耐えられて射出二回分。

 

(仕掛けるチャンスは次で最後か…)

 

そのチャンスをものにするため次の射出で布石を打つ。

 

(来た、第二射!頼むから持ってくれよ。)

 

盾がここで砕ければ布石も何もなくなる。

 

 

「よし、準備完了。」

 

 

幸い盾は持ってくれ、布石を打つことには成功した。

そして来たる第三射目が来た。

 

 

「うおぉぉ‼」

 

 

アイアスを前にまわし、一直線に突っ込んでいく。

近づくほどにアイアスは砕けていく。

一枚目が砕け、二枚目も続いて砕ける。残った体に剣が容赦なく突き刺さってくる。

衝撃に意識が飛びかけるが決して止まらない。

 

(負けられねぇ!)

 

先に戦うことで情報をくれた鳴海、一週間特訓してくれた篠ノ之、応援してくれている一夏。

俺は小さいけど負けられない理由を背負っている。それに報いるためにも負けられない。

そしてエネルギーがギリギリのところで武器の嵐を抜ける。剣の届く距離に天馬がいる。

 

 

「ハァッ!」

 

「届くかそんな攻撃!」

 

 

盾が空中展開され、俺の攻撃は防がれた。

しかし、これも予(・)測(・)通(・)り(・)。

 

(追い詰められたなら必ず確実なこの方法を取ると思っていた。)

 

そして天馬が腕を上げようとしたところで

 

 

「ガッ!?」

 

 

天馬の死角から二本の剣が飛んで来た。

直撃により天馬は怯む。これが打った布石。

先ほど煙に紛れ込ませて二本の剣を大きな弧を描くように投擲していたのだ。

そしてこの剣はそれぞれが惹かれあうようになっているため、中心にいる天馬に直撃した。

 

 

「もらったぁ‼」

 

 

動きの止まった天馬を斬りつける。

二撃、三撃と続けて斬りつけていくことで反撃の隙を与えない。

 

 

「これで・・・終わりだ!」

 

 

そして最後の一撃というところで

 

 

「残念だったな…」

 

 

俺の動きが止まってしまう。否、止められた。

俺の手足には鎖が巻き付けられており動かすことができない。

そしてその鎖は空中から出てきていた。

 

 

「鎖の・・・空中展開…」

 

 

俺は戦慄した。

鎖・・・・そんなものまで展開できるのか…

 

 

「俺様にこの鎖まで使わせるとはな、誇るがいい。だがこの鎖を出させた以上これで終わりだ。」

 

 

体を動かそうとするがピクリとも動けない。

 

 

「なかなかに楽しめたぞ。じゃあな。」

 

 

天馬が腕を振り下ろした瞬間、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

★

 

 

 

 

「試合終了。勝者は天馬零士。」

 

 

試合終了のアナウンスをいれ、コーヒーで一服する。

目の前のモニターには気絶した衛宮が救護班に運ばれて行く姿が映っている。

 

 

「大丈夫ですかね、衛宮くん…」

 

 

山田君が心配そうにしているが心配は必要ない。

 

 

「なに、ただ気を失っただけで大したことではないよ。」

 

 

そういってコーヒーを口に含む。

それを聞き、山田君も安心してコーヒーを淹れ始める。

 

 

「それにしてもみんなすごかったですね。」

 

 

山田君がコーヒーをチビチビと飲みながら感想を言う。

 

 

「まぁ、なかなか筋はいいとは思う。」

 

 

これは本音だ。

 

 

「しかし、それ以上に問題があるような奴らばかりだ。」

 

「確かに衛宮君と天馬君は注意しないとですね。天馬君は提供元不明のISに周りに亀裂をいれかねない態度。衛宮君はいくら絶対防御があるからといって今回のは無茶しすぎです。」

 

 

山田君の言う通りその二人は注意が必要だろう。

 

 

「山田君は他の者はどう思った?」

 

「他の子ですか?そうですね、織斑君はあの中でもセンスというか才能を感じましたね。オルコットさんは代表候補生として問題なく実力をつけていけると思いました。鳴海君は運とガッツがありましたかね。」

 

 

概ね私の考えと同じことを山田君は言う。冷静な分析だ。

あがり症がなければ完璧な教師なのだがとも思うが同時にそういうところが魅力でもあるのだと思った。

 

 

「私も概ね同じ意見だ。時に山田君。」

 

「はい、なんですか織斑先生。」

 

「例えばなんだが君は全身に被弾するとわかっていて絶対防御が発動しにくい装甲で受けようと思うか?」

 

 

他の者の意見が欲しいため少し聞いてみる。

 

 

「えっ…そうですね、答えとしてはNOですね。そんな発想は思い浮かびませんし、そもそもそんな芸当できないですね私には。そして何より怖くてできません。」

 

「そうか。悪いなこんな例え話に答えてもらって。」

 

 

山田君の回答はいたって普通の正しい回答だった。

 

 

「もしかして衛宮君がするかもしれないと考えているんですか織斑先生は。今回無茶したからってそんなことしないと思いますよ。」

 

「まぁ、そうだな。最近は悪いことばっかり考えてしまっていけないな。」

 

「いえいえ、最悪を想定する織斑先生は立派だと思います。ですが考えすぎですよ、みんな死ぬのは怖いでしょうから。あっ!もうこんな時間。織斑先生、私はお先に戻らしてもらいますね。」

 

 

そういってコーヒーを飲み干すと残っている仕事を片付けに山田君は部屋を後にする。

部屋に残っているのは私のみ。

そして私はある一人の生徒の資料を手に持っている。

 

 

「鳴海・・・優。」

 

 

山田君は衛宮と天馬を気にしていたが私が一番注意が必要だと思ったのはこいつだ。

鳴海は先ほど私が言っていたことを今日の試合で実行した。

狙って行い、すべてを成功させていた。

 

 

「死を恐れていないかのような戦い方だな。」

 

 

私もやろうと思えばできるが実行できるかと言われたら躊躇する。

普通そうならないようにどう立ち回るかを考えるものだ。

しかし鳴海は最短の道であるあの選択を平然と取った。

 

(気にかけておくべきか…)

 

垣間見せた技術力といい、異常な行動。技術力に気づいたものならば数人はいるだろうが異常性に気づいたのは恐らくこの場で見ていた私だけだろう。

 

(自分だけ気が付いたことを周りに話しても無駄に困らせるだけか…)

 

まだ誰かに言うようなものではない。それに道を正してやるのも教師の役目だ。

 

 

「はぁ~、やることが山積みだな。」

 

 

それぞれの問題を考えると頭が痛くなってくる。

まぁ、とりあえずは

 

(運ばれた馬鹿と傷を隠そうとする愚か者の様子を見に行くか。)

 

コーヒーを一気に飲み干し、上着を取り保健室に足を運ぶのだった。




結果は零士の勝利で終わった代表決定戦。
皆それぞれ抱える問題点が浮き上がった戦いでもありましたね。
そしてちーちゃんはなんだかんだ言って心配で様子を見に行くのであった。
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