~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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いつも更新が遅くてすいません(汗)


第四十話 貴公子爆誕

「部屋の都合がついたのでお引っ越しでーす。」

 

「「はい?」」

 

 

部屋に来た山田先生から突然の引っ越し発言。

何も聞かされていないため二人して疑問の声を上げた。

 

 

「ですから、部屋の調整ができたので篠ノ之さんは別の部屋に移動です。」

 

「ま、待ってください!それは今すぐにですか!?」

 

 

と、突然すぎる…

しかも折角一夏と同じ部屋だというのにあんまりだ。

 

 

「それはまぁ、そうですけど。いつまでも年頃の男女が同室で生活するというのもあれですし、篠ノ之さんも男の子と同じ部屋では十分にくつろげないでしょう?」

 

「いや・・・・私は・・・」

 

 

先生が善意の気持ちで言ってくれている分、強く言い返せない。

希望を込めて一夏の方を見るが

 

 

「俺のことは気にするなよ。箒がいなくてもちゃんとするからさ。」

 

 

駄目だ、役に立たん。しかも腹立たしい。

その言い方だと私がいなくても何も変わらないといっているようなものではないか。

 

 

「先生!今すぐ部屋を移動します!」

 

「は、はい。」

 

 

すぐさま荷物をまとめ、勢いよく部屋の扉を閉め部屋を後にした。

 

 

「ああぁぁ!何をやってるんだ私はぁぁ!」

 

 

現在、私は枕に顔を突っ伏して悶えている。

なにか部屋を移動しないで済む方法があったのではないだろうか。

いや、それよりも

 

(カッとなってそのまま出てきてしまった…)

 

あれでは次に会ったとき気まずくなるのではないだろうか…

もしかしたらその間に鈴と一夏が…

 

 

「ああぁぁ!私の馬鹿者ぉぉ!」

 

 

バタバタとベッドの上で悶えることしかできない。

 

 

「あの~、篠ノ之さん?」

 

「!?」

 

 

声のした方向を向くと部屋の入り口側に立っている者を確認できた。

恐らくは新しいルームメイトが帰って来たのだろう。

 

 

「見たのか・・・・?」

 

「な、なにをかな・・・・?」

 

 

そう言って私から目をそらす。

 

(見られた・・・・)

 

スッと立ち上がりベランダの方へ足を運ぶ。

 

 

「し、篠ノ之さん・・?」

 

「醜態を見られてしまった・・・・恥ずかしすぎる・・・死のう・・・・」

 

 

窓を開けてベランダに出る。

そして・・・・

 

 

「ちょちょちょっ!?篠ノ之さん、ストップ!?ストーップ‼」

 

 

飛び降りようかというところで体をがっしり捕まれ止められてしまう。

 

 

「離してくれ・・・もういいのだ・・・」

 

「よ、よくないからね!?」

 

「お前も嫌だろう?部屋で悶えている奴がルームメイトなどというのは・・・」

 

「いやいやいや、そんなことないって!」

 

「やっぱり見たのだな・・・・」

 

「あっ、いや、何もみてない!私何もみてないなー!」

 

 

やはりバッチリみられていたようだ。

もうおしまいだ…

 

 

「落ち着いて篠ノ之さん!確かに枕に顔を突っ伏しているの見ちゃったけど!」

 

「うっ!」

 

「悶えているところもバッチリ見ちゃったけど!」

 

「ぐふっ!」2COMB!

 

「馬鹿者ぉぉとか言って足をばたつかせていたのも全部見ちゃったけど!」

 

「ガハッ!」3COMB!

 

「悶えている篠ノ之さんもいいと思う‼」

 

「グホオッ」KO‼

 

 

彼女のコンボ攻撃によって私は膝から崩れ落ちてしまった。

 

死因:恥ずか死

 

 

「その、さっきは済まなかった…。気が動転して…」

 

「ほんとにびっくりしたよ。急に飛び降りようとするんだもん、心臓に悪い。」

 

「本当に申し訳ない…」

 

 

時間がたったことで落ち着きを取り戻し絶賛謝罪中である。

 

 

「まぁ、反省してるならもうしないでね。・・・・とりあえず自己紹介しましょ。私の名前は鷹月 静寐(たかつき しずね)。同じクラスだから知ってるかもだけど。」

 

「篠ノ之 箒だ。よろしく頼む、鷹月。」

 

「静寐でいいよ。その代わり私も箒って呼ぶから。いいでしょ?」

 

「構わない。では改めてよろしく静寐。」

 

 

自己紹介も終わり、それからしばらく静寐と話した。

 

 

「そういえば箒はなんで悶えてたの?」

 

「うっ!そ、それはだな・・・・」

 

 

どうせ見られてしまったのだからこの際全て話すことにした。

 

 

「_____ということがあってだな。」

 

「なるほどね~。でもそれってちょっとまずいんじゃない?」

 

「やはりそう思うか・・?」

 

「時間が経つとより気まずくなるやつだよ、それって。」

 

 

それだけは避けたいがどうすれば…

 

 

「だから、今会いに行って来よう!」

 

「えっ!?」

 

 

静寐の突然の意見に驚く。

早めなのはいいが・・・

 

 

「今からか?」

 

「そう、今から。善は急げ、レッツゴー!」

 

 

そうして押されるがままに一夏の部屋の近くまで来てしまった。

 

 

「じゃあ、私たちは見守っているから。」

 

「ごめん、嗅ぎつけられちゃった。」

 

 

気が付くと静寐のほかに三人ほど増えている…

確か名前は布仏と相川、谷本だったか…

人数も増え、後に引けなくなってきた。

 

 

「い、行ってくる。」

 

 

腹を括り、扉をノックする。

 

(あぁ、こんな時間に部屋を訪ねるなんてはしたない女と思われないだろうか…)

 

緊張からマイナスの考えがうかんでしまう。

 

 

「ん?箒か。どうした、忘れ物か?」

 

「えっ・・・ちょ、ちょっと待て。」(話すこと何も考えてなかった…)

 

 

どうするどうするどうする…

何か話題はないものか・・・

 

 

「どうしたんだ?」

 

「つ、ついてこい!話がある。」

 

 

とりあえず、移動で時間を稼ぐことにした。

 

 

場所を移し、屋上まで来た。

来るまでに何を話すかも決めたので抜かりはない。

 

 

「で、話ってなんだ?」

 

 

一夏は平然としている。

女子に呼ばれて屋上というベタな展開なのだからもう少しないのだろうか…

 

 

「来月の学年別トーナメントなんだが・・・」

 

「それがどうしたんだ?」

 

 

このままでは一夏とこれ以上発展は望めない。

ここで勝負を仕掛ける!

 

 

「私が優勝したら、大事な話を聞いてもらうからな!」

 

「お、おう。でも話ぐらいならいつでも聞くぞ?」

 

「大事な話だ。いいか?だ・い・じ・な・話。」

 

「わ、わかったよ…」

 

 

こうでもしないと一夏の意識は変えられないだろう。

ここまで大事なというところを強調したのだから緊張感を持ってくれるだろう。

その時に告白をすれば唐変木の一夏でもきっと・・・・・大丈夫だと信じたい…

それに一夏は強さに惹かれているところがある。

 

(この作戦は完璧なのではないか?)

 

即興で考えたにしてはいい出来だと思った。

 

 

「話は以上だ。」

 

 

一夏とも普通に話せ、約束も取り付けられたので気分よく部屋に戻った。

 

 

翌日、なぜかトーナメント優勝者には好きな男子と付き合えるという噂が流れていた。

 

 

「どうしてこうなった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はなんと、転校生の紹介をします。」

 

 

山田先生の言葉に教室がざわつく。

 

(この時期での転校生ってことは俺の記憶が正しければあの子だよな。)

 

教室の扉が開き、一人の生徒が入ってくる。

その人物は俺の予想通りの人物だった。

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします。」

 

「お、男・・?」

 

 

その姿を見た女子生徒の一人が質問する。

そう、そいつは男子の制服を着ていたのだ。

 

(さて、耳を塞いでおくか…)

 

これから起こるであろうことを予測して耳を塞ぐ。

ちらりと周りを見ると一夏と篠ノ之、セシリアも同様に耳を塞いでいる。

鳴海は寝ていて、天馬はローゼさんが耳を塞いでいる。いつの間に教室に・・・

 

 

「はい、こちらに僕と同じ境遇の人たちがいると聞いて本国より転入を____」

 

『キャーーーーー!!』

 

「えぇッ!?」

 

 

耳を塞いでいても聞こえてくる歓声にデュノアは驚いている。

 

 

「男子!5人目の男子よ!」

 

「しかも美形!」

 

「守ってあげたくなる系の!」

 

 

教室内はすごい賑わいだ。

毎度よくここまで興奮するものだと感心する。

 

 

「騒ぐな、静かにしろ!」

 

 

そして織斑先生の一言でピタッと誰もしゃべらなくなり、静寂が生まれる。

ここまでテンプレだ。

 

 

「えっ?ええぇ…」

 

 

その高低差にデュノアは困惑している。

初めてだからしょうがない。

俺としてはローゼさんはすでに消えてて、鳴海も寝たままって方が驚きだ。

 

 

「今日は二組との合同でIS実習を行う。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。それから衛宮。」

 

「はい?」

 

「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士でお前が一番まともだ。以上、解散。」

 

 

まさか俺にその配役がまわってくるとは思わなかった。

しかも理由が一番まともだからって…

他の奴らだってそこまでひどいわけじゃ・・・・・うん、俺が頑張らないと。

 

 

「えーっと、君が衛宮君?初めまして、僕は___」

 

「あーっと、すまないが自己紹介は後だ。女子たちが着替え始めるから移動が先だ。」

 

 

そう言って移動しようとしたが、俺の言葉にデュノアは少し不思議そうにしている。

 

(おいおい、そんなんで大丈夫か?)

 

前世の知識でデュノアの事情を知っているので心配になってくる。

しょうがない、多少強引だが・・・

 

 

「ほら、はやく行くぞ。」

 

「えっ!」

 

 

デュノアの手を取り、教室を出る。

 

(うわっ、手がすっげぇ柔らかい・・・・じゃなくて!急がないとやばい・・・)

 

急がなければ・・・・

 

 

「衛宮君?なんでこんなに急いでいるの?それに・・・その・・・」

 

 

つながれている手をちらちら見ながらデュノアに質問される。

状況の分かってないデュノアは手を離せば歩き始めてしまいそうなので手は握ったままだ。

べ、別に下心があるわけじゃない。

 

 

「俺達男子はアリーナの更衣室で着替えなくちゃいけないから急がないといけないってのと今回は____」

 

「あっ、噂の転校生発見!」

 

「衛宮君と一緒よ!」

 

「者ども出会え出会え~!」

 

「しまった!まさかこんなに早いとは…」

 

 

学園のハンター(女生徒)に見つかってしまった。

今回の目的は十中八九デュノアだろう。すでに前後が人でふさがれている。

全く、仕事がほんとにはやい。

 

 

「二人とも手をつないでる~。」

 

「グヘへ、はかどるはかどる。」

 

「えっ?えっ?なにこれ・・?」

 

「行くぞ!」

 

 

突然のことにデュノアは混乱しているがそれは相手の思うつぼなので手を引いて横の通路に走り出す。

 

 

「あっ、逃げた!」

 

「待って!せめて写真を一枚___」

 

 

何か言っているが全て無視して全力疾走する。

しばらくすると追手も撒けたので手を離し、別々に走る。

 

 

「なんで皆あんなに騒いでいるの?」

 

 

走りながらデュノアが質問してくる。

 

 

「ISを動かせる男性は俺ら5人しかいないからな、当然といえば当然だろ。」

 

「えっ?・・・あぁ!そうだね。アハハ…」

 

 

本当に大丈夫なのだろうか…

もう少ししっかりしてもらいたいものである。

 

 

「お疲れ隼人。」

 

「お疲れ様。」

 

「ご苦労なことだな、放っておけば面白いものを。」

 

 

更衣室に着くと三人ともすでに着替えが終わっている。

 

 

「お前らなぁ、助けてくれてもよかったんじゃないのか?」

 

「じゃ、俺先行くな。」

 

「自己紹介は後でね。」

 

「なぜ俺様がそんなことをしなければいけない。」

 

 

恨めしそうに三人に言うが一夏と鳴海には逃げられ、天馬は相変わらずだ。

 

 

「まったくあいつらめ・・・。あっ、まだ名前教えてなかったな。俺は衛宮隼人。よろしくな。隼人でいい。」

 

「うん、よろしく隼人。僕のこともシャルルでいいよ。それで・・・・」

 

 

シャルルが天馬の方をちらちら見る。

天馬は偉そうに座っているだけで何も言わない。

 

 

「こっち偉そうなのは天馬零士。不愛想だけど許してやってくれ。」

 

「衛宮、偉そうではなく事実俺様は偉いのだ。そこは間違えるな。」

 

「こういうやつだ。」

 

「あ、うん・・・よろしく零士。」

 

 

さわやかな笑顔で挨拶をするシャルル。

今の態度を見て、よくそこまでさわやかにできるもんだと感心する。

天馬の方も立ち上がり自己紹介すると思いきや・・・・

 

 

「貴様・・・誰の許しを得て俺様の名前を呼んでいる。」

 

 

そういってISを部分展開し、空中に武器を展開する天馬。

シャルルも突然のことに固まってしまう。

相変わらずこいつの沸点はよくわからないな!

 

 

「落ち着けって!シャルルはお前と初めましてなんだからしょうがないだろ?」

 

「・・・・・」

 

「天馬、頼む!」

 

「・・・チッ!今回は不問とする。衛宮、しっかり躾けておけ。いずれは俺のものになるものだからな。」

 

 

そう言って天馬はグラウンドに向かって行った。

何とか武器を収めてくれたが天馬の行動には本当に肝が冷える。

もう少しフレンドリーになれないのだろうか。

 

 

「ご、ごめんよ。僕何か悪いことしちゃったみたいで…。日本では駄目なことしちゃったかな・・・?」

 

「そういうのじゃないから気にするな。天馬は名前で呼ばれるのが気に食わなかっただけだから。それよりもそろそろ着替えないとまずいな。」

 

 

時刻は授業が始まる3分前だ。

遅刻したら織斑先生にしばかれてしまう。

 

 

「あっ!そうだこの辺のロッカーたてつけが悪くて開けるのにコツがいるんだよな~。だからシャルルはそっちの方で着替えたらどうだ?」

 

 

適当なこと言ってシャルルを遠ざけるようにする。

 

 

「そ、そうだね。そうするよ。アハハ…」

 

「そうしてくれ。ハハハ…」

 

 

なんとも不自然な会話だがこれがおれにできる限界だった。

 

 

「今日の実習はここまでとする。解散!」

 

 

午前の実習が終わり、昼休みになった。

 

 

「シャルル、自己紹介も兼ねて皆で一緒に昼食でもどうだ?」

 

「もちろんいかせてもらうよ。」

 

 

そうと決まれば二人で屋上に移動していく。

屋上に着くとすでに皆集まっていた。

少し離れたところにダメもとで誘った天馬もいるではないか!

 

 

「ほんとに来てくれたんだな、天馬。ローゼさんもきてくれたんですね。」

 

「今回だけだ。それにローゼがどうしても弁当を作ってみたいというのでな。」

 

「お邪魔いたします。一度ぐらいあいさいベントー?なるものを作ってみたかったので。」

 

 

多分ローゼさん愛妻弁当の意味わかっていないんだろうな…

でも、関係的には案外的を得ているのか?

 

 

「人数多いし円陣でも組むか。」

 

 

一夏の一声で皆で円をつくる。

 

順番は俺、シャルル、セシリア、箒、一夏、鈴、鳴海、ローゼさん、天馬、そして最初に戻って俺。

 

とりあえず円陣の順番決めの時に皆自己紹介は終えたようなので食べ始めることにする。

 

 

《いただきます。》

 

 

それぞれの弁当が展開されているこの空間はとても華やかだ。

そしてその中でも一際輝いているのはやはりローゼさんの弁当だ。

 

 

「天馬の弁当はすごい豪華だね。そちらのメイドさんの手作り?」

 

「うわっ!これ弁当ってクオリティーじゃないでしょ。」

 

 

近くの鳴海と鈴の反応で皆の視線がローゼさんの弁当に集まる。

 

 

「初めてのベントーということで少々張り切ってしまいました。多く作ってしまったのでよければ皆さんもお食べになってください。」

 

「まじで!いただきまーす!」

 

 

一夏が一番に貰いにいき、一口食べる。

 

 

「うっまぁー!こんな美味いもん食べたことないかもしれねぇ。」

 

「確かに美味しそうだけど、あんた大袈裟すぎよ。」

 

「そんなことねぇって!食えばわかる。」

 

「あんたが大袈裟なだけよ。いただきます。」

 

 

そう言い鈴も一口食べる。

 

 

「うまぁ!うそ!?何これ、美味しすぎでしょ!」

 

「だろ?」

 

 

鈴の反応に他の皆もローゼさんの弁当を口に運ぶ。

そして皆あまりの美味しさに驚いている。

 

 

「お口にあって良かったです。」

 

「ほんと、めっちゃ美味かったです。美味すぎて逆に腹が減りましたもん俺。」

 

 

一夏の感想は変だが、本当に美味しいというのは伝わってきた。

 

 

「それならば一夏、私の唐揚げをやる。」

 

「いやいや、私の酢豚をあげる。一夏は酢豚の方がいいでしょ?」

 

「唐揚げに決まっているだろう!」

 

「酢豚よ!」

 

 

そしてあっという間に一夏の胃袋を掴む対決が勃発。

 

 

「「一夏はどっちがいいの(よ)(だ)!」」

 

「えぇーっと…どっちもじゃ駄目なのか?」

 

「「駄目!」」

 

「えぇ…」

 

 

このままだと血で血を洗う戦いになりそうだ。

しょうがない、助け舟を・・・

 

 

「まぁまぁ、折角こんな大人数で食べてるんだから皆でひとつずつ交換しない?そうすれば問題ないよね?」

 

 

出そうと思ったらシャルルが先に助け舟を出した。

いいアイデアだと思うので賛同することにする。

 

 

「そうだな、これだけの人数が居れば色々食べられるしな。」

 

「いいアイデアですわね。キルヒナーさんから貰ったままというのも失礼ですし。」

 

 

セシリアの言葉で完全に交換する流れができた。

ナイスセシリア!

 

 

「ではどうぞ皆さん。勘違いされがちですがイギリス料理にも美味しい物は多くありますのよ。」

 

 

そう言い、セシリアはバスケットからサンドイッチを取り出す。見た目は美しく美味しそうだ。

そしてそれは近くのシャルルと俺にまず渡される。

 

(さて、どうするか…)

 

正直、俺はこのサンドイッチを食べたくないのだ。

俺の知識によるとセシリアの料理は・・・・

 

「ありがとうオルコットさん。いただきます。」

 

「い、いただきます…」

 

 

しかし、男にはやらねばいけない時がある。それが今かもしれない。

覚悟を決め、一口でサンドイッチを食べる。

そしてサンドイッチを口に入れた瞬間、いろいろな味がぐちゃぐちゃになって俺の舌を襲う。

 

(おえぇ・・・・・マズ過ぎる・・・)

 

辛いかと思いきや甘くなり、急にしょっぱくもなる。

味覚を破壊する爆弾と言っても過言ではないだろう。

しかし、口には絶対出してはいけない。なぜなら・・・・

 

(セシリアの期待してる感が半端ない…)

 

これでまずいなんて言ってしまえば落ち込むことだろう。

シャルルもそれが分かっているのか必死に堪えている。

 

 

「お味の方はどうですか?」

 

「ど、独特な味がしていいんじゃないかな…」

 

「あぁ、なかなかいけるよ・・・俺はこういう味付け好きだな~・・・」

 

「そうですかそうですか。さすが私といったところですわね。初めて作ったのに会心の出来とは。」

 

 

良かったばれてない。

嘘をつくのはあまりしたくないが嘘も方便というやつで許して欲しい。

 

 

「いや、まずいよこれ。味もめちゃくちゃで無理したら身体壊すよ。」

 

(な、鳴海ぃー!?)

 

 

いつの間にか鳴海がサンドイッチを食べており、平気で爆弾発言をした。

ていうか顔色一つ変えてない…

 

 

「そ、そんなはずありませんわ!それに衛宮さん達は美味しいと言ってくれましたわ。」

 

「それね、100%お世辞だよ。」

 

「・・・ご冗談・・・・ですよね・・?」

 

 

セシリア、そんな悲しそうな目でこちらを見ないでくれ…

 

 

「すまない・・・・嘘をついた…」

 

「ぼ、僕も…」

 

 

既に隠し切れないため素直に謝ることにする。

これ以上は罪悪感に耐えれなそうだし…

 

 

「どうして・・・・・」

 

 

セシリアはうつむいている。

恐らく騙したことを怒っているのだろう。

 

 

「セシリア・・・・すま____」

 

「どうして無理して食べてしまったんです!」

 

「・・・へっ?」

 

「まずいと言われるのは悲しいですが、無理して食べた皆さんの具合が悪くなってしまうよりはマシですわ!」

 

 

予想と違う言葉に困惑した。

どうやらセシリアは俺達が無理したことを怒っているらしい。

 

 

「ですから、お二人とも次からは絶対に無理はしないように!いいですわね!」

 

「お、おう。」

 

「う、うん。」

 

 

今日のセシリアはなんかグイグイ来るな。

ちょっと怖いぐらいだ…

一夏達は巻き込まれないようにこちらを見守ってるだけだ。

 

 

「わかってもらえたのならよろしくてよ。それじゃあ、これは捨てて・・・・・あら?」

 

 

セシリアの視線はバスケットへ向いている。

そちらを見るとセシリアが困惑した理由が分かった。

サンドイッチが一つもないのだ。

 

 

「あっ!隼人、オルコットさん、そっち!」

 

 

シャルルが驚きながらある方向を指さす。

その方向には鳴海がおり、セシリアのサンドイッチを食べていた…

 

 

「な、鳴海さん!?」

 

「ん、なに?」

 

 

最後の一口を放り込み、こちらを向く鳴海。

その様子はいつも通りだった。

それを見たシャルルは信じられないという顔をしている。

恐らく俺もあんな顔をしているのだろう。

 

 

「なに?ではありません!?なぜ食べているのですか。」

 

「何故って、出されたものは残さないってのがポリシーだからかな。」

 

「は、吐き出してください!?身体を壊すと仰ってたじゃないですか。無理をしないでください!」

 

「あぁ、大丈夫だから気にしなくていいよ。俺は絶対に身体壊さないから。」

 

 

その言葉は強がりにしか思えないが、何故か否定ができない。

周りの皆も同じなのか困惑している。

 

 

「まぁ、もう食べちゃったからガミガミ言わないでさ、楽しい昼食を再開しようよ。」

 

「ですが…」

 

「そんなに気にするなら今度は美味しく作って、それを食べさせてよ。ということで参考にね。」

 

「はむっ!?」

 

 

そう言いながら鳴海は自分のハンバーグをセシリアの口に放り込んだ。

 

 

「・・・・・美味しい。キルヒナーさんのものに劣らないかもしれませんわ!?」

 

「なら良かった。こんなことしてまずいと言われたらかっこ悪いからね。」

 

「えっ!まじでそんなにうまいのか!?俺ももらっていいか?」

 

 

セシリアの反応で皆が鳴海に集まって行く。

その光景は先ほどのローゼさんの場合と重なって見える。

つまり、鳴海は行動一つで先ほどの空気を取り戻したのだ。

 

(やっぱ、すごい奴だよお前。)

 

いつも気が付くと鳴海がいい方向に話を持っていっているような気がする。

意識してるのか、無意識なのかはわからないがすごい奴だと思う。

隣のシャルルも鳴海の行動に関心しているのか、コクコクと頷いている。

 

 

「ねえ、隼人。」

 

「なんだ?鳴海のことか?」

 

「えっ!どうしてわかったの!?」

 

 

やはりシャルルも鳴海の行動について考えていたようだ。

 

 

「まぁ、なんとなくだ。それでなんだ?」

 

「え~っとね・・・・」

 

 

シャルルは鳴海をどんな風に感じたのだろうか?

やはりすごいと思ったのだろうか?

 

 

「彼の今の行動ってさ・・・」

 

 

シャルルが少し興奮しているのがわかる。

 

 

「はい、あーんってやつだよね!日本で仲のいい人がするっていう。」

 

「・・・・・・・そうだな…」

 

 

どうやら俺の勘違いだったようだ。

自信満々にシャルルの考えを予測していた分恥ずかしい…

 

(そうだよな、外国から来たんだから日本文化が気になるよな…)

 

はい、あーんが日本文化というのか怪しいし、今回のは違うんじゃないかとかいろいろ思うが気にしない。

なぜなら・・・・

 

 

「どうしたの、隼人?顔に手を当ててうつむいて。」

 

「何でもない。ちょっと目にゴミが入っただけだ…」

 

 

恥ずかしさをごまかすので手一杯だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははは、大人気だね。」

 

 

目の前では俺の弁当のおかずから何をもらうか選んでいる一夏達がいる。

どうやら今日もキメラ化してしまうようだ。

 

 

「やっぱ、ハンバーグもらうことにした。うん、王道だな。」

 

「私もハンバーグにするとしよう。」

 

「あっ、じゃあ私も~。」

 

 

一夏、箒、鈴ちゃんはハンバーグにしたようで三等分する。

他の皆も決めたようで俺の弁当がどんどんキメラってく。

 

 

《いただだきまーす》

 

 

そして一斉に食べ始めた。

俺も原型のない弁当を食べ始める。

うん、おいしい。

 

 

「うっめぇー!ローゼさんのとはまた違ったうまさだな!」

 

「うむ、そうだな。実においしい。」

 

「うそっ・・・まじで美味しいじゃん!?」

 

 

好評をいただけたので満足である。

 

(さて、他の人たちは・・・)

 

周りを見ると他の人たちも美味しいと言ってくれている。

その中にはローゼさんもいるので結構鼻が高い。

 

 

「ちょ、ちょっとあんたたち!?」

 

 

鈴ちゃんの驚いた声に反応し、振り返ると予想外の光景が見えた。

 

 

「美味しいからって、なにも泣くことないでしょう…」

 

「「えっ?」」

 

 

一夏と箒が涙を流していたのだ。

二人は自分の顔に触れて初めて泣いてることに気が付いている。

二人とも無意識なようだ。

 

 

「だ、だいじょぶか!?」(なにか調理で間違えたかっ!?)

 

 

そうだとしたら二人の身体が心配である。

そうでなくても急に涙が出てくるなど異常なため心配である…

 

 

「あぁ、大丈夫、大丈夫。こんなの大したことないないって。」

 

「一夏の言う通りだ。多分ちょっと感動しただけ・・・・・あれ?・・・おかしいな…」

 

 

心配ないと言い張る二人だが一向に涙が止まる気配がない。

逆にどんどんと溢れてきている。

その光景に周りも心配しだすが一夏達は心配ないと言う。

 

 

「なんかわかんねぇけど大丈夫。なんかすっげぇ暖かいっていうか、心地いいっていうか、なんていうか落ち着くんだ。」

 

 

完璧にやばい発言だ…

周りもそう思ったのだろう、急いで一夏達を保健室に連れていくことにした。

 

その後、弁当を隅々まで調べたが特にウイルスのようなものはなかったし、一夏達の検査も正常そのものだった。




皆で弁当タイム。
久しぶりに高校生らしいことしましたね。
主人公の弁当がキメラ化するのは運命です。
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