まず一言言わせてほしい。
「きつすぎるだろ…」
何がきついって?
まぁ、すぐにわかる。
「どうしたの隼人、疲れた顔して。」
「いや、ちょっと寝不足なだけ…」
現在朝の7時で場所は自室だ。
そしてここには俺とシャルルがいる。
そう、俺とシャルルはルームメイト、つまり同室だ。
本来は一夏がシャルルと同室のはずなのにだ。
(なんで俺が同室なんだ?)
この疑問は何度目だろうか。
30回超えたところから数えるのはやめた。
同室になって早1週間、すでに結構限界に近い。
(舐めてた…)
同室だと聞いた最初の方は気をつかっていれば余裕だと思っていたが・・・
「隼人、食堂に行こ。」
「お、おう。」
なんというか、距離が近いのだ。
今だって顔と顔の距離が鼻先がつくんじゃないかというほど近かった。
顔をグイっと近づけ、笑顔でこんなことを言われたら動じない奴なんていないんじゃないだろうか。
「そういえば最近隼人って僕から妙に距離取ってない?」
「そ、そうか?」
距離が近いことを意識し始めると次から次へと情報が入ってきてしまうのだ。
そして一番の問題は匂いだ。シャルルからはすごくいい香りがするため、ドキドキして落ち着かない。それに俺は鼻がいい方なので余計に気になってしまうのだ。
「そうだよ・・・・もしかして僕のこと嫌いになった・・・?」
凄く心配そうな瞳でこちらを見上げてくるシャルル。
(それは反則だろ…)
シャルルは目的の為、俺に嫌われると近づけなくなることを心配しているのは分かっている。別に深い友情とかじゃないのはわかっているのだ。
しかし、そんな顔して言われてしまってはこちらが折れるしかない。
「そんなわけあるか。シャルルは俺にとって大事な友人なんだから。」
「ほんとに?」
「嘘なんかついてどうするんだよ。」
会話をしながらシャルルとの距離を少しづつ縮める。
近づくごとに甘い匂いが鼻をくすぐる。
鼓動が速くなっていくのが手に取るようにわかる。
そして自分の単純さに少し呆れてくる…
「隼人は何にする?」
「えっ?ごめん、少しボーっとしていた。」
「最近多いね。あんまり無理しちゃ駄目だよ。」
「あぁ、気を付ける。それでなんの話だっけ?」
「朝食は何にするかって話。」
朝食の話か…
食堂に来てるんだから考えてみれば当たり前だな。
「そうだな~、今日は魚の気分だな。」
「僕も魚にしようかな。箸の練習もしたいしね。」
最近シャルルは箸の練習をしている。
新しいことに触れるのが楽しいんだそうだ。
「今日も放課後に練習するよね?」
「そうだな、大会も近いしな。また教えてもらってもいいか?」
「うん、全然いいよ。皆と練習するのすごく楽しいから。」
「はいよ、おまちどうさん。」
おっ、そうこうしているうちに定食が出てきた。
さてと開いている席はっと・・・・
「あっ…」
「どうしたのはやt・・・・あっ…」
シャルルも気が付いたようだ。
開いている席を探していたらある奴と目があった。
その目線は『こちらに来い』と言っていた。
席も開けていてくれているのでそちらに向かう。
「一緒に食っていいか?」
「僕もいいかな?」
「ふむ、同席を許可する。」
朝から天馬は絶好調のようだ。
今日も今日とて偉そうだ。
「いつも思うけど天馬は朝早いよね。」
そうなのだ、シャルルの言う通り天馬は意外と朝が早い。
「習慣というやつだ。ローゼが健康健康とうるさくてな。」
「なるほど、納得だな。」
「そういう貴様らもなかなかに早いがな。」
「ハハハ…僕も習慣って感じかな…」
「俺もそんなところだな…」
実際俺は眠りが最近浅いだけなのだが…
シャルルに至っては俺が起きた時にはいつも着替え終わってるので着替えの為ではないだろうか…
「フッ、滑稽だな。」
「滑稽ってなにがだよ。」
「いや、ただの独り言だ、気にするな。それよりも貴様だ、デュノア!」
「な、なに!?・・・・あっ…」
急に天馬に呼ばれたことに箸に集中していたシャルルは驚き、頑張って掴んでいた魚の切り身がポロっと皿に落ちてしまった。
ドンマイ。
「なんだその持ち方は?箸はこう持つのだ。」
「こ、こう?」
「違う!こうするんだ。」
さっきからシャルルの方を見てるとは思っていたが箸の持ち方が気になっていたのか。
そういえば天馬って食事に関して結構こだわっていたな。
シャルルに言うだけあって天馬の箸の持ち方はとても綺麗なものだ。
(コイツってやっぱり甘いとこあるよな。)
天馬はツンツンしているがなんか時々甘いところがある。
所謂ツンデレって奴かもしれない。
いや、デレではないか。
「今日も飯は美味いな。」
今日も一日頑張るとしますか。
・
・
・
・
「これでどうだ!」
威勢よく引き金を引くが発射される弾はどれも的の中心には当たらない。
「駄目か…」
「今のはちょっと姿勢が崩れていたのが原因だね。姿勢をしっかり保てれば・・・」
ダンッ!ダンッ!ダダンッ!
シャルルの放った弾丸は見事に的の中心に風穴を開けていた。
「やっぱシャルルはすごいな。」
「隼人も練習すればこれぐらいできるようになるよ。その証拠にほら、あっち。」
シャルルの指さす方向を見ると少し離れたところで一夏が射撃訓練をしていた。
「くっ、やっぱむずいな。」
そう言いつつも何発かは中心に当たっていた。
因みに俺は一発も当たっていない…
俺と一夏は同じタイミングで射撃訓練を開始したにも関わらずだ。
「俺は全然うまいと思うぞ。俺なんて一発も中心に当てられなかったし。」
「う~ん、まぐれ当たりだからなぁ。」
「運も実力のうちって言うだろ?素直に喜んどけよ。」
「それもそうか。そうだ隼人、勝負しないか?どっちが多く的に当てられるか。」
一夏から勝負を持ちかけられたが正直射撃勝負で勝てる気がしない。
「いいぞ。負けた方がジュース一本おごりでどうだ?」
しかし、何事もチャレンジが大切だ。
負けっぱなしってのも悔しいしな。
「いいぜ。」
「じゃあ、僕はここで見てるね。」
「それじゃあ、悪いけど終わったら気になったところ教えてくれ。」
シャルルにそう言い、俺と一夏は位置に着く。
3
・
2
・
1
ブーーー!
ブザー音とともに激しい銃声が響き渡った。
・
・
・
「0対10…」
「よっしゃ、俺の勝ちだな。」
結果は完敗だった…
勝てないとは分かっていたがここまで酷いと流石に堪える。
「シャルル!今のは何が駄目だったんだ?」
何か、何かあるはずだ。
俺が下手くそな理由が。
「うーん…思ったことはあるんだけど…これを言うのは…」
「構わず言ってくれ。何とかしてみせる。」
「えぇーっとね…」
聞いてみるがシャルルは口を開いては閉じるのみだ。
俺はそんなにどうしようもない状態なのだろうか。
(でも、さっきまでの練習ではそういうことはいわれてないし、シャルルも世辞を言っている感じではなかった。)
つまり、どうしようもない状態とか姿勢がどうこうではないってことだ。
じゃあ、何が駄目で言いにくいことなのか。
(・・・・・・・わからん。)
少し考えてみるが全くもってわからない。
ここはやはりシャルルから聞くしかないだろう。
依然シャルルは迷っているようで困った様に頬をかいている。
一夏?何奢らせるのか迷っているが、なにか?
「シャルル、頼む!」
「えっ?!は、隼人!?」
「教えてくれるまでどかないからな。」
目を逸らせないように両肩を掴み、シャルルを真っ直ぐに見つめる。
問い詰めているようで申し訳ないが教えて貰えなければ俺は前に進めないため、今回は引けない。
「わ、わかったから~。その…少し離れて…?」
「わ、悪い!?」
顔を赤くしながら答えるシャルルを見て、自分が何をしているのか気が付いた。
デリカシーのかけらもない行動だった…
「二人とも何赤くなってんだ?」
「べ、別になんでもないよ。」
「あ、赤い?気のせいだろ。」
うん、こいつよりはマシだからまだ気をつければ大丈夫だ。
「そうか?赤い気がするけどな。まぁ、そんなことより隼人の何がダメなんだシャルル?」
「あ、えぇ~っと、それはね…」
俺のダメなところ・・・・いったい何なんだ…?
「隼人には銃が向いてないんじゃないかってことを思ったんだけど…」
「銃が向いていない?」
そりゃあ人には向き不向きがあるだろうし、不向きだとしてもそれは努力で補えばいい話だ。
じゃあ何故シャルルはこんなに言いにくそうにしているのだろう?
「あっ、俺もそれ思ったかも!」
一夏でもわかるほど俺は銃に向いてないらしい。
「俺が銃に向いてないってのは分かったけど訓練すれば解決するんじゃないか?別にそんな言いにくいことでもないだろ。」
「いや、正確には違くて…その…」
「その?」
「隼人には銃が絶対に馴染まないって感じたんだ。」
馴染まない?それも絶対に?
どういうことかわからない。
「僕自身うまく説明できないんだけど、そうだな・・・・真夏なのに真冬の格好をしているって感じかな。」
「あ~、なんとなくわかるわそれ。なんつうか、とろっとろのカレーを箸で食っているみたいな?」
「一夏の例えはよくわからないが異質だってことはわかった。」
つまり根本的に俺と銃の相性が良くないってことだろう。
そう言われてみれば銃を持った感触はあまりよくなかった。
それも相性の悪さだろうか?
「別に動きに間違いとかがあるわけじゃないんだけど、決定的な何かが欠けてるように見えるんだよね。だからこそ隼人には銃は向いてないんじゃないかなって・・・・思ったんだけど…」
凄い申し訳なさそうな顔でこちらを見てくるシャルル。
その瞳は若干うるんでいるように見える。
「その…やっぱり怒ってるよね…?何が原因かもわかってなくて、言えることが銃が向いてないとか頑張ってる隼人に失礼なことしか言えないし…」
「別に怒ってなんかないぞ。ちょっとどうしたもんかなって対策を考えていただけだから。それにシャルルには感謝することはあっても怒るなんてことなんて何もない。」
「えっ?どうして…?」
「だってシャルルがいなければそんなことに気がつけなかったと思うし、それをちゃんと伝えてくれただろう?ほら、怒る要素なんてどこにもない。あっ!まだ礼を言っていなかったな、ありがとなシャルル。」
礼を言うとシャルルはポカーンとし、しばらくしたら何がおかしいのか笑い始めた。
なにか面白いことでも言っただろうか?
一夏も俺と同じように首をかしげている。
「フフッ、隼人って本当にお人好しだよね。」
「??」
急にどうしたんだシャルルは。
しかも俺がお人好しってどういうことだ。
「別にそんなことないだろ。自分では割と厳しいと思うけどな。」
「「いや、それはない。」」
「即答!?」
いやいや俺だって厳しいところあるからな。
例えば料理とか訓練で妥協はしたくなかったりするし。
「それはそうだよ。隼人は超のつくほどのお人好しなんだから。厳しいってのも自分にだけでしょ?」
「そ、そんなことは…」
「あるよ。だって隼人は誰か困っていたら絶対に見捨てないでしょ?今だって僕の事怒ってないし、本当にお人好しだよ。絶対、人生損するタイプの人だと思うなー。」
損するか…
今までも色々な人に言われてきた言葉だ。
言われ慣れてるけどやっぱり自分を否定されてるようで少し虚しい。
「けど・・・そんな隼人が僕は素敵だとも思うよ。」
「ッ!?////」
カーッと顔が熱くなっていくのがわかる。
今の俺の顔はリンゴのように赤いことだろう。
でもこれはしょうがないだろう?
(不意打ちはずるいだろ…)
遅いかもしれないが片手を顔にあて俯く。
隠しきれるとは思えないがやらないよりはマシだ。
「どうしたの隼人?具合悪いの?」
俯く俺にシャルルは心配してこちらの顔を覗き込んでこようとする。
俺は慌てて体の向きを変え、背中をむける。
「大丈夫だ、問題ない。」
「ほんとに大丈夫?最近ぼーっとしてる事多いからやっぱり無理してるんじゃ…」
「隼人、お前照れてるんだろ?」
「!?」
なんでこういう時だけこいつは鋭いんだよ!
いつもボケーっとしてる癖に。
「照れてる?どうして?」
「それはシャルルが______」
「あー!あー!腹減ったー!」
「おい、隼人うる____」
「ということで、今日の訓練はここまで!ほら、一夏飲み物奢ってやるから行こうぜ!何がいいんだ?」
「えっ、そうだな・・・・・・コーラかな。」
「よし!コーラだな。すぐ行こう今行こう!ほらほらほらほら。」
「えっ!?ちょっ!?」
一夏の背中を押し、無理矢理連れていく。
シャルルは状況についてこれず、目をパチくりしている。
今の内に一気に離脱するべく、一夏を一気にアリーナの出口近くまで押し、最後に振り返る。
「シャルル…その…サンキューな。」
「えっ、うん?」
言う事を言ったら急いでその場を去った。
・
・
・
・
「一夏の奴、腹壊さないといいけど。」
俺は先ほど別れた友人のことが心配だった。
結構無理やり連れ出したのでお詫びとして更に数本奢ったのだが
「全部炭酸で、しかも一気飲みだもんな…」
特技とか何とか言っていたがこちらからしたら心配になる特技である。
まぁ、それは自己責任なのだが。
それよりもシャルルのことである。
あれから少しランニングして気を落ち着けたがまともに顔を見て話せるだろうか?
「ダメだな…弱気になってちゃ。覚悟決めろ俺。」
言い聞かせながら部屋の前まで来た。
ドアノブに手を置く。
「ふー、ふー、行くぞ。」
いつも通りドアを開ける。
「シャルルは・・・・・いないみたいだな。ふぅー。」
シャルルは飯にでも行っているのか、部屋にいない。
思わずほっと一息ついてしまう。
覚悟とは何だったのだろうか…
「情けないな、俺。はぁ~…」
いかんいかん。頭を振ってダメな思考は捨てる。
こんな時は何かして気を紛らわせた方がいい。
「そういえば、シャンプー切れてたな。」
そのままシャワーを浴びるのもいいかもしれない。
そうと決まれば新しいシャンプーボトルを持ち、洗面所に向かう。
そして洗面所のドアを開けると・・・
「えっ?」
「あっ?」
浴室からちょうど出てきた金髪の女の子と鉢合わせてしまった。
首からかけられたタオルによって胸は見えないが膨らみはしっかりと確認できた。
そしてその顔は良く見知った顔である。
「シャルル…」
「み、見ないで…」
顔を真っ赤に染めしゃがみこんで体を隠すシャルル。
その体は微かに震えており、頬には一筋の涙が見えた。
「す、すまん!?」
急いで洗面所から出て扉を閉めた。
そして扉を背にして腰を下ろす。
「何やってんだ俺は…」
気が抜けていたのもあるが最悪のミスをしてしまった…
全然話し進まねぇな…