~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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詐欺じゃないんです、信じてください。


第五話 涙の意味

とおくから黒い、黒い何かが迫ってくる。逃げなきゃ。

走っても、走っても、走ってもちっとも逃げられない。

どんどん近づいてくる。来るな来るな来るなぁー!!

 

『事故にあったんだ。』

 

耳元で何かが囁やかれたと思ったら黒は目の前だった。

 

「あああぁぁぁ!!」

 

『バサリッ』と何かが落ちる音がした。

目の前には黒なんてなく、白い壁が見えた。下には落ちている布団。そして上半身だけ起き上がっている自分。

 

「はぁ、はぁ、夢…か。」

 

額の汗を拭いながら安堵の息をもらす。

気持ちを落ち着けるとまだ深夜であることに気づいた。

しかし、今は再び寝たいとは思えなかった。

 

「といっても、まだ動けないんだった。」

 

今は上半身だけ起こしているがそれも辛いため体を倒して横になる。

思い出すは医者の言った言葉。

 

『君達は事故にあったんだ。』

 

「そっか、俺は事故にあったからここにいたんだ…」

 

実感はないがそれならば体のキズも納得である。

しかし、疑問が解決すると新たに気づいた。

 

いや、気(・)が(・)つ(・)か(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)していたことに目が向いてしまった。

 

「きみ…た(・)ち(・)…?」

 

あの医者は確かにそう言った。じゃあ、他のやつって誰だよ…

 

「まさか…」

 

『お前は誰と一緒にいた?』

 

「そんなはずはない…」

 

『何故一人部屋なんだ?』

 

「やめてくれ…」

 

『医者はなんで何も言わない?』

 

「違う…」

 

『じゃあ、何故誰(・)も(・)来(・)な(・)い(・)?』

 

「やめろッ!!」

 

耳を塞いで目をつぶる。俺は今何を考えてた?

最悪の事態が頭をよぎる。

 

「違う…そんなはずない…」

 

そうだ、そんなことはありえない。

きっと俺の聞き間違えに決まってる。

 

『神様にもらったその体が?あの状況で?』

 

黙れッ!!

俺は重症だから簡単に会えないだけなんだ。

そうだよ、そうに決まってる!

 

起きていると変なことばかり考えてしまう。

悪夢を見るのは怖いけど早く寝よう。

俺はもう目が覚めたんだ。朝になれば皆とも会えるさ。

だから…寝よう。

 

 

結局、俺は朝まで眠ることができなかった。

悪夢が怖かったからなのか…それとも……

 

 

 

★

 

 

 

ガラガラッ

 

朝になり、病室の扉が開かれる。

入ってきたのは医者の先生と看護師だ。俺は上半身を起こす。

 

「・・・おはよう雄二くん」

 

先生は少し驚いたがすぐに表情を戻し挨拶してきた。

 

「おはようございます。」

 

俺は挨拶を返し、

 

「先生、聞きたいことがあるんです。」

 

「なんだい?」

 

先生は優しい声で返してくれるが、顔が少し強ばったような気がした。

 

「事故にあったのって俺だけ…ですよね?」

 

「・・・・・・違う。事故にあったのは君を含めた4人。他の3人は君のご家族だ…」

 

は?ナンテイッタ?4にん?かぞ…く?

 

車の運転をする父さん。笑顔で鼻歌を歌う母さん。

ペンダントを嬉しそうに持つ妹。そして、俺。

そんな幸せをぶち壊す揺れ。

そしてそのあとにきた『    』

 

「あぁ、思い出した…俺は…俺達は…」

 

体が勝手に震え始める。今にも倒れてしまいたい。

だが、聞かないと…聞かないといけない…

 

「せ、先生…」

 

ダメだ!!言うな!!聞くんじゃない!!口を開くな!!

頭の中でうるさいほど声が響く。

 

「助かったん…ですよ…ね?」

 

声が震える。何を怯えてるんだ?

俺は助かったんだ。だから…

 

「・・・・・3人とも亡くなられた。即死だったそうだ。」

 

パキンッ

 

なにか俺の中で音がなった気がする。

 

「あぁ、あぁ、ああぁ…」

 

ナンデ?ドウシテ?シンダ?

 

「ああぁぁぁぁぁぁ… 」

 

ミンナ、シンジャッタ。

 

 

 

★

 

 

 

俺の目の前には泣き崩れた少年がいる。

俺は彼にとって死刑宣告にも等しいことを言ってしまった。たとえ仕事といえど俺は最低なやつだ。

 

しかしそんな俺でも一緒にいてあげるぐらい許して欲しい。それが今この子に唯一してやれる事だから。

 

そうして俺と看護師は少年が泣き止むまでそばについた。

 

 

 

★

 

 

 

泣いた。

そして、気が付いたら夕方だった。

先生と看護師のお姉さんはずっとついててくれた。

正直ありがたかった。ひとりは寂しいから。

 

「すいません。ご迷惑をお掛けして。」

 

「気にしないで欲しい。私が一緒にいたかっただけさ。」

 

「えぇ、気にしなくていいわ。」

 

少ししか話してないがこの人達は本当に優しいのだとわかる。

 

「雄二くん。君に聞いてもらいたいことがある。聞いて貰えるかい?」

 

先生は隠すこと無く真実を教えてくれた。

その場しのぎの嘘ではなく真実をだ。

そんな先生が聞いて欲しいというのだから俺は聴くべきだと思った。それが辛いことでも。

俺はうなづいて、続きを待つ。

 

「実は君が助かったのは奇跡に近かった。」

 

奇跡か…助かったけど後遺症でも残っているのかもなと予測をつけていく。

 

「しかし、その奇跡を起こしたのは私ではない。それを起こしたのは君のご両親だ。」

 

「えっ?」

 

予想外の言葉に思わず間抜けな声がでる。

 

「本来、生存者なんていないほどの惨状だったらしい。しかし、奇跡的に1人だけ生存者がいた。何故か分かるかい?」

 

「・・・運が良かったから?」

 

これは恐らく違う。運がいいだけなら言う必要がないし、両親という言葉は使わない。

 

「違う。君が助かったのはご両親が子どもを庇うようにしていたからだ。妹さんは助からなかったがご両親のその行動が君の命を繋ぎとめ、救ったのは間違いない。」

 

あの一瞬でとっさに俺達を…。

 

「これだけは伝えときたかった。」

 

先生の言葉が終わると俺の瞳からは自然と涙が溢れた。

 

「父さんッ…母さんッ…」

 

ありがとう。

 

涙はとっくに枯れたとおもっていたのに俺は再び泣きわめいた。先生たちはまた俺が泣き終わるまでついててくれた。




救いはあった。

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