~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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今回短めですが久しぶりに物語が進んだかな?って感じです。


第五十七話 蜘蛛と死神の戦場

―某国―

 

研究所最奥。

厳重にロックされているはずのその扉が開く。

 

「ちゃちなシステムだ」

 

「!?だれ―――」

 

主任であろう女が叫ぼうとするが、言葉は最後まで続かない。

その前に力なく床に倒れてしまう。

彼女の首筋には小さな針が刺さっている。

 

「主任!?」

 

「お前たちも少し眠っていてもらう」

 

侵入者が手を振るうと研究者に次々と同じ針が放たれる。

数秒の内に部屋にいた研究者たち全てが眠りについた。

 

「さて、いただくとするか」

 

侵入者がゆっくりと歩を進める。

その先にはガラスケースに覆われた台座。

中には研究対象であるISコア。

 

パチンっ

 

侵入者が指を鳴らすとガラスが収納され、コアがさらされる。

侵入者はゆっくりと近づき、両手で大事そうに抱え上げた。

 

「これで100個目…」

 

Eternal(エターナル)! マキシマムドライブ!/

 

抱えられているコアからは徐々に光が失われていき、やがて完全に光が失われる。

 

「・・・すまない」

 

侵入者はコアを粒子化させ、その部屋を後にする。

通路には重装備で固めた警備の者が所狭しと倒れている。

その通路を抜け、研究所の出口を出た瞬間―――

 

鉄の雨が侵入者に降り注いだ。

容赦ないその攻撃により侵入者の姿は舞い上がった煙に消えた。

 

「あっ?まさか終わったのか?んだよ!拍子抜けだぜ」

 

上空には二機のISが静止している。

一機は全体的に赤黒いカラーリングをしたまるで蜘蛛のような脚を備えた機体。

もう一機は全身金色のカラーリングの巨大なテールを備えた機体。

共通点はどちらの操縦者も仮面で顔を隠しているということ。

 

「いいえ、どうやらそうではないみたいよ?」

 

金色の操縦者が見つめる先では徐々に煙が晴れていく。

その中から黒いローブに包まれた侵入者が姿を現す。

 

「へっ、そうこなくっちゃ面白くない」

 

「目的忘れてないわよね?」

 

「わかってるって」

 

侵入者は腕を振るいローブをたなびかせる。

その身体には傷一つ付いていない。

 

「何者だ?」

 

侵入者は襲撃者に顔を向ける。

その手には既に武器が握られておりいつでも攻撃できる体勢。

 

「答えると思う?」

 

「思っちゃいない。ただ―――」

 

ゆっくりと浮上し、その目線が同じになる。

 

「ただ、何?」

 

「倒す奴の名前ぐらい憶えてやろうと思っただけだ」

 

「・・・・ぷっ、ふふふ」

 

「何がおかしい?」

 

金色の操縦者は口元に手を当てクスクスと笑い、蜘蛛の操縦者は頭に片手を置き呆れている。

 

「おいおいまじか…てめぇ本気で言ってんのか?」

 

「なんだ?俺が勝てると言ったのがそんなにおかしいか?」

 

「そうじゃないわ。ただお優しいと思って」

 

「優しい?」

 

「だってそうでしょう?()()()()殺す相手の名前を憶えとくなんてお優しいことこの上ないもの。しかも貴方からそんなこと聞けるとは思っていなかったわけだしねぇ?NEVER(ネバー)

 

「・・・」

 

侵入者―――NEVER(ネバー)はその言葉に沈黙する。

その理由は二つ。

一つ、相手がどんなことをしてる連中か予測がついたこと。

 

「何者だ?」

 

一つ、エターナルではなくNEVER(ネバー)と呼んだこと。

その名前にたどり着けるものは少ない。

 

「私たちに少しは興味持った?」

 

「答えさせる気が出るぐらいにはな」

 

「それは光栄ね。教えてあげてもいいわよ。ふふっ、ただし──」

 

クスリッ、と笑うと黄金の操縦者は指を鳴らす。

それと同時に蜘蛛の操縦者が急接近し、斬り掛かる。

読めていたのかNEVER(ネバー)はエターナルエッジで難なく受け止める。

 

「───彼女に勝てたらね?」

 

「やっと許可が下りたんだ。楽しませてくれよぉ!」

 

「一人で楽しんどけ」

 

エッジで押し返し離れさせたところにすかさず左手に展開したトリガーマグナムによる射撃が蜘蛛を襲う。

それを蜘蛛は八つの装甲脚を用いて全てかき消しながら最接近する。

だが、NEVER(ネバー)は先ほどと同じようにエッジで受け止める。

 

「五秒前に押し負けたのをもう忘れたのか?」

 

「さっきと同じなのはてめぇの方さ」

 

装甲脚の脚先が開き、中から砲身が顔を出す。

ほぼゼロ距離からの砲撃、喰らえばひとたまりもないだろう。

 

「死にな!」

 

砲身が火を噴く。

そして直後に爆裂音と爆風が辺りを包む。

 

「やっぱ、大した奴じゃなかったな」

 

爆煙の中から出てきたのは蜘蛛のISのみ。

しかしゼロ距離で砲撃したため、砲撃に使った装甲脚はひしゃげ、仮面も割れてしまっている。

容姿は茶髪に整った顔立ちをしており、二十代といったところ。

 

Metal(メタル)! マキシマムドライブ!/

 

「ッ!?」

 

突如、爆煙から腕が飛び出しひしゃげていた装甲脚を掴んだ。

握られた装甲脚がギチギチと鈍い音をたて、徐々に蜘蛛を引きずり込もうとする。

 

「クソッ、放せ!」

 

自由な装甲脚による砲撃。もちろん直撃。

しかし・・・・

 

(どうなってやがる!?)

 

状況は悪化する。

直撃を喰らったというのに掴む手は微動だにせず、あまつさえ二本目の装甲脚も掴まれた。

爆煙の中では黄色い複眼が揺らめいている。

 

「ッ…!」

 

それを見た瞬間、蜘蛛は全身の毛が逆立つ感覚を覚えた。

蜘蛛は引きずり込まれる前に掴まれている装甲脚を分離(パージ)し、後方へと距離をとる。

 

(なんだ・・今のは感覚は・・?)

 

蜘蛛は今までいくつもの戦場を駆け抜け、殺し合いをしてきた。

当然その中には危ない場面もいくつかあったがそれすらも楽しんできていた。

そのため戸惑う、感じたことのない何かに。

 

「恐怖したな?」

 

爆煙が晴れると多少の傷を負ったNEVER(ネバー)が姿を現す。

しかし、ダメージを受けているとはいえとても二発の砲撃をほぼゼロ距離で受けたとは思えないほど傷は浅い。

 

「恐怖…?私がお前に…?」

 

だが蜘蛛にとってはNEVER(ネバー)の言葉の方が重要だった。

蜘蛛にとって恐怖とは与えるものであり、与えられるものではないからだ。

 

「そうだ。その機体は装甲脚による格闘戦に特化した機体。だと言うのに自ら距離を取ったのがその証」

 

「黙れ…」

 

「お前は唯一の勝機を逃した。今まで散々与えてきた恐怖でな」

 

「黙れ黙れ黙れ!」

 

認めることが出来ない。

自分が感じたものの正体が恐怖だということが。

残る装甲脚全てによる一斉砲撃が行われる。

 

「無駄だ。もうお前の攻撃は俺に届かない」

 

発言通りNEVER(ネバー)はその全てを僅かに身体を逸らすことで避ける。

すれすれを通っているのにそこには危なげなど微塵もない。

 

「クソがっ!」

 

それでも蜘蛛は構わず撃ち続ける。

しかし撃つごとに焦りが増していく弾が当たるほど甘い戦いなどない。

 

「こうしてる今も近づこうとしてこない。いや、近づけないのか」

 

「ッ…!」

 

(これは勝負あったわね)

 

金色からみても蜘蛛に勝機がないことは明らかだった。

しかし大した驚きはない。

蜘蛛では敵わないことを予測していたのだ。

 

(それにしても…ちょっと厄介ね…)

 

そんな金色にも予想外のことはNEVER(ネバー)の強さだった。

蜘蛛と戦うNEVER(ネバー)からは底知れぬ強さを感じ取れる。

 

「オータム、もういいわ」

 

「!?待てよ!俺はまだ―――ッ…!?」

 

蜘蛛の操縦者―――オータムはまだ戦おうとするが遂には弾が切れてしまう。

 

「認めなさい。あなたの負けよ」

 

「まだだ!弾がなけりゃ接近すれば―――」

 

「オータム。私はもういいといったのよ?」

 

優しく諭すように語り掛けているがその声には言葉にしがたい凄みを帯びている。

 

「・・・・わかった…スコールがそう言うのなら」

 

「そう、なら下がっていてくれる?」

 

金色の操縦者———スコールの言葉に従いオータムは後方へ下がるがその視線はNEVER(ネバー)を睨みつけている。

それに対しNEVER(ネバー)は余裕な態度を貫く。

それがさらにオータムの火に油を注ぐ。

 

「オータム?」

 

「・・・わかってる…」

 

しかしその怒りもスコールの一言でなりを潜める。

これにはさしものNEVER(ネバー)も少し驚く。

 

「それで?お前たちは何者だ?」

 

「大体予想はついてるんじゃない?」

 

「いいから答えろ」

 

スコールの言う通りNEVER(ネバー)にはスコール達が何者なのか予測はついていた。

そのため答え合わせの感覚に近いかもしれない。

 

「そう慌てないで。約束は守るわ。貴方を怒らせたくはないもの」

 

「なら、俺の機嫌を損ねないうちに言った方がいい」

 

「ふふっ、せっかちなんだから。いいわ、教えましょう」

 

そう言ってスコールは自らの仮面をとる。

美しい金髪に赤い瞳、纏う雰囲気はセレブ然としている。

そんな彼女からとんでもない事実が告げられた。

 

「私たちは亡国機業(ファントム・タスク)()()()()()()を知る組織」

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