~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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お待たせしました


第五十八話 宿敵

「私達は亡国機業(ファントム・タスク)。ガイアメモリを知る組織」

 

(・・・・ハッ?こいつ今なんつった?)

 

スコールと呼ばれた女の言葉によって俺の頭は一瞬で真っ白になる。

メモリと言ったのか…?()()()メモリと…

それはつまり・・・

 

「流石ね。この程度では動揺もしないってわけね」

 

いやいやいや、驚き過ぎて声もでないだけだわ!

きっと仮面(マスク)の下はアホ面になっているに違いない。

 

「・・・・ある程度は予測がつくからな」

 

「これぐらいお見通しだったわけね」

 

やばい、なんかすごい恥ずかしいぞこれ。

でもこれもアドバンテージだ。

ありがたく貰っておこう。

 

「情報通りの大物で良かったわ」

 

「御託はいい、目的はなんだ?戦うことじゃあるまい」

 

「やっぱり貴方せっかちね。もう少し会話を楽しんだら?」

 

俺はせっかちじゃなく、忙しいんだ。

むしろ本来はもっとマイペースで・・ってそんなことどうでもいい!

くそ、こういう相手は調子が狂うから苦手だ…

 

「そんな奴と喋ったって面白いわけないに決まってる」

 

「それはわからないわよ?案外気が合うかも知れないじゃない」

 

「チッ…」

 

オータム、だったか?

逆にこいつは可愛いもんだ。

敵意MAXって感じだが、敵意が明らかだからやりやすい。

それにこいつの敵意は悔しさ半分、嫉妬半分ってところだろう。

 

(今の時代そういった奴も珍しくないからな)

 

こういう状況じゃなきゃ、美人同士で目の保養にもなったかもしれないな。

 

・・・・・・

 

(さて、もう充分に冷静になるための時間はとれた。もういいだろ?)

 

探してもみつからなかった物があちらから来てくれた。

考えもしなかったチャンスだ。

だが興奮するな、感情を抑えろ。

失敗は許されない。

 

「まぁ、こんな所で話すのもなんだし、続きは食事しながらでもどう?良い店を用意してるのだけれど」

 

この誘いは罠だ。

こいつ、隠す気ってもんがなさすぎる。

こんな誘いに乗る奴はまずいない。

 

「・・・いいだろう。案内しろ」

 

「ふふっ、ついてきて」

 

普通ならな?

生憎と今回限りはバックギアは外している。

それに相手の目的は恐らくは俺をためすことだ。

実力、警戒心、度胸、そしてメモリへの執着心…

なら、なるべく近くで観察したいことだろう。

 

(乗ってやる。それが俺の目的にも最も近い)

 

喰うか喰われるかは未知数。

分かっていることはひとつ。

俺が探すその者は宿()()となるであろうことだけだ。

 

 

「あそこよ」

 

高層ビルが建ち並ぶ一角をスコールが指差し、降下していく。

それに続き俺も屋上に降り立つ。

 

(・・・4...いや、5か)

 

「解除しないの?」

 

「まさかそのまま食おうってわけじゃねーよな?」

 

二人はISを解除し、コートを羽織る。

 

「もちろん解除するさ。ただその前に一つ言っておく」

 

「なにかしら?」

 

「スナイパー程度で俺は殺せない」

 

「まるでスナイパーでもいるかのような言い草ね」

 

伏兵の存在を気づかれたというのにスコールの表情に陰りはない。

これも俺が気づけるかの小手調べなのだろう。

 

「とぼけなくていい。数は5人、距離は500前後。その中で腕がいい奴一人だけ700はあるな」

 

「ヒュー…とんだバケモンだ」

 

オータムは茶化すように言うが表情は驚愕の色が隠せないって感じだ。

スコールの方はこれでもまだ崩れないか。

 

「なるほど、気づかれているなら意味がないわね。今、引かせるわ」

 

「その必要はない」

 

「「!?」」

 

(やっとその顔が見れた)

 

ようやっとスコールの顔が驚きを示した。

俺がしたことはいたって簡単なことだ。

ただ先ほどの言葉通り()()()()()()だけ。

まぁ、相手からしたら正気の沙汰とは思えないだろうが。

 

「・・・どういうつもりかしら…?」

 

「どういう意味も何も配置させたままでいいと言っただけだが?」

 

「撃たないと高を括っているのなら残念なお知らせよ。こちらとしては今すぐにでもあなたに五つの穴をあけても構わないのよ?消せるに越したことはないもの」

 

スコールの腕がゆっくりと動き始める。

それは徐々に上がっていき―――

 

「その選択はあまりオススメはしない」

 

俺は手のひらに握っている物を二人に見せてやる。

そして空いている手で自身の胸元を指で指す。

相手に自分のそこをみろと言うようにだ。

 

「「・・・!?」」

 

「そういう顔が見たかった」

 

二人の顔からは余裕など消え、わかりやすいほど警戒している。

それはそうだろう。

俺の手のひらにあるものは二人の衣服のボタンなのだから。

 

「もう一度言うがあまりオススメはしない。このボタンの意味が分かるならな?」

 

気づかないうちにボタンが取れるなら命も取れると言う事。

さすがに難易度は上がるがただボタンより少し上の細い首を狙うだけだ。

決してできないことじゃない。

 

「・・・・」

 

スコールは上げかけていた腕をゆっくりと下ろす。

それと同時に向けられていた視線も感じなくなる。

撤退命令がでたようだ。

 

「賢い選択だ。おっと、これは返そう」

 

指でボタンを弾く。

 

「それはどうも…」

 

「チッ…」

 

「随分怖い顔をするじゃないか。お気に入りのコートだったか?」

 

「てめっ―――!」

 

「―――やめときなさい。さっ、早く中に入りましょ」

 

オータムを鎮め、スコールはスタスタと入り口に向かって行く。

それに続き俺、舌打ちをしながらもオータムも後に続いていく。

 

「大体なんで仮面の下に仮面被ってんだよお前。変態かよ、気持ちわりぃ」

 

階段を下りる途中オータムからそんな暴言を浴びせられる。

ほんとこいつ俺のこと嫌いなんだな。

 

「隠すために決まっているだろう。お前は何のために仮面をつけていたんだマヌケ」

 

「顔を隠すためなんてわかってんだよバカ!二重にするほどのことなのかって聞いてんだ!」

 

「俺からすればお前たちの方が用心が足りてない馬鹿な連中だがな」

 

「あぁ?」

 

「それと―――死神に顔はない。隠しているのは骸だ」

 

「・・・頭沸いてんじゃねぇか?」

 

「言ってろ」

 

誰もこの言葉は理解出来ない。

いや、理解できてたまるものか。

 

「でもそれでどうやって食べるのかしら?」

 

店に入り、席につくとスコールからもっともな意見が出る。

実際このヘルメット、口の部分だけ外せる機能は付けていない。

 

「言ったはずだ。これは顔を隠すものではないと」

 

Dummy(ダミー)!/

 

ダミーメモリを取り込むことで身体の骨格が変わっていく。

痛みはないがとてつもない嫌悪感が伴う。

やはりあらかじめ設定してある姿以外は不便だ。

 

「なんだ…?こいつ体格が変わったぞ…!?」

 

「なるほど、それがメモリの力ってわけね…」

 

ヘルメットを取り、軽く首を鳴らす。

うん、悪くない。

今の姿の方がよっぽどエターナルが似合うに違いない。

 

「素晴らしい!」

 

後方から声が上がった。

そして―――

 

「ッ…!」

 

突然、得体のしれない黒い何かが俺を包み込むような感覚に襲われる。

それはべったりと、陰湿に纏わりついてくる。

原因はまず間違いなく背後から迫ってくるなにかだ。

 

(来たのか…!?)

 

焦りを悟らせないために自然を装いゆっくり振り向く。

振り向いた先にいたのは二十代後半の男。

髪色は紫でどこぞの天才を彷彿とさせる。

そして何よりも放っている存在感が異質だった…

 

(こいつだ…!間違いない)

 

直感がそう告げていた。

こいつこそ俺が探し回っていた転生者。

 

「とても完成度の高いガイアメモリだ。それに加えダミーメモリの擬態能力も使いこなしているときた!」

 

歩き方は素人のそれであり、武術やスポーツをしている者の動きではない。

そう見せているだけという可能性も捨てきれないがその可能性は限りなく0だ。

今まで数多の武芸者を見て養った観察力は並ではない。

 

(()れる…!)

 

近づいてきたところに心臓を一突きで貫く。

それで即死だ。痛みも感じず意識は闇に落ちる。

苦しい想いはさせない…

 

「いやはや、モニターで見るのとは断・然!大違いですねぇ!」

 

10m・・・

 

「私、興奮してしまいましたよ!」

 

7m・・・

 

「おや?シーンとしてどうしました?」

 

5m・・・

 

「そういえば自己紹介がまだでした!?あっちゃ~私としたことがうっかりです」

 

3m・・・今ッ!

 

「…!?」

 

「私、園崎(そのざき) 龍蔵(りゅうぞう)と言います。以後お見知りおきを」

 

(身体が…動かない…!)

 

園崎はニコリと無防備に笑っている。

その距離僅か1m。

だというのに俺の身体は僅かに指を動かす程度しか動かない。

いや、動かないのではなく動かせないのだ・・・纏わりつく何かによって…!

 

「それにしてもほんとに驚きましたねぇ。立っていられるだけでなく、指先だけとはいえ動かせるのですから」

 

「くっ、俺に・・何をした!黒く・・・纏わりついてくるものは・・・なんだ!」

 

「しかもよくそこまで喋れるものです。しかし黒く纏わりつくもの、ですか?なるほどなるほど貴方にはそう感じるのですか」

 

貴方には?

つまり個人で感じるものは違うのか?

・・・そういえばこの感覚どこかで…

 

「・・・プロ・・ッサー・・・!」

 

隣から掠れた声が聞こえてくる。

眼球を動かし、様子を見る。

そこには苦しそうに膝をつくスコールと胸元を押さえ倒れているオータムの姿。

 

「おっと、抑えないと他が死んでしまいますねこれは」

 

園崎が指を鳴らした瞬間、纏わりついていた感覚が弱まる。

これなら動けるが今動くのは得策じゃない。

 

「・・・カハッ!ゲホッゲホッ…!」

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

(隣の二人はなんとか無事って感じか…)

 

この能力には大分個人差がある。

俺とスコールは差はあるものの身体の自由が利かない位だったがオータムに関しては呼吸すらままならないほどだった。

 

「危ないところでしたねぇ。もう少しで貴方冷たくなってましたよ?」

 

「ゴホッゴホッ…プロフェッサー、てめぇ…!」

 

「お~怖い怖い」

 

プロフェッサー、か。

こいつらの上司かそれに近い立場という事か。

 

「・・・プロフェッサー、今のはほんとに危なかったわ。どういうつもり…?」

 

「こちらも生命の危機でしたので仕方がなくですよ。えぇ、ほんとに仕方がないことでした。なにせ心臓を一突きされそうになったのですから!」

 

「・・・」

 

読まれていた…?

いや、あの距離じゃ見えた時にはもう遅いはず。

 

「納得したところで・・・えっ?納得していない?まぁ、納得していなくとも食事にしましょう」

 

ひとまずは様子見をするしかないか…

 

 

「さぁ、遠慮なくどうぞ」

 

料理が運び終えると同時に園崎はニコニコしながら食べ始める。

それに続いて俺達も食べ始める。

まずは一通りの料理を一口ずつ食べてみる。

 

(む、うまいな…)

 

どうやらかなりの腕前のシェフが作っているようでかなりうまい。

隠し味は何を使っているんだろうか?

 

「お口に合うかしら?」

 

「あぁ、とても腕のいいシェフだ。このスープ()()は大満足だ」

 

とてもいい料理なのに勿体ないことをする。

いくら無味無臭の毒物だからっていれても何も変わらないなんてことはない。

 

「ほらね?私は無駄だからやめておいた方がいいと言ったじゃないですか~」

 

「・・・一応それ一口分でも十分な致死量なのだけれど?」

 

「悪いが毒物の類は効かない身体なもんでな」

 

ただでさえ高い毒物耐性をジーンメモリで引き上げているためこの身体には並大抵の毒物は効かない。

 

「こいつほんとに人間かよ…骨格まで変えられるしよ・・・ん?姿を変えられるんだから仮面いらねえだろ?」

 

「アヒッ!いい質問ですねぇオータム君。それについては私がお答えしましょう。いいですか、NEVER(ネバー)?」

 

「わかるのならな」

 

どこまでメモリの力を把握しているかお手並み拝見だ。

 

「では初めに前にも説明した記憶がありますがメモリへの適合性は個人差があるのですよ」

 

「確かその適合性が高ければ高いほど、より力が引き出せるのよね?」

 

「はい、正解です」

 

「じゃあ、NEVER(ネバー)の奴は姿を変えるメモリとの適合率が低いってことか」

 

「ぶっぶ―!それは不正解です。NEVER(ネバー)は常人に比べて大変高い適合率を有しています。しかしこれはその分メモリの力を引き出してしまっていることを意味します」

 

「まるで駄目みたいな言い方ね。貴方、適合率は高ければ高いほど良いと言っていたけれど?」

 

「はいそれは勿論高いに越したことはありません。メモリが()()()()ですけどね?」

 

なるほど、どうやら俺は相手を甘く見すぎてたようだ…

完全に見抜かれている…

 

「適合性の高さは例えるなら台風の大きさです。謂わば彼はその身体に巨大な台風を宿しているのと同じなのですよ。そこにエターナルメモリというさらに巨大な台風が来ればどうなると思います?」

 

「それは―――」

 

「はいそうです!身体には多大なる負荷がかかるでしょう。え?答えさせろって?嫌です。おおっと、落ち着いてください。まだ話は半分です」

 

「まだ何かあるの?」

 

「はい、というよりはこちらの理由の方が重要ですから。これも説明したかもですがメモリ同士にも相性が存在するんですねぇ」

 

「初耳なのだけれど…」

 

「おりょ?そうでしたっけ?まぁ、火に風を送ればより強くなったり、水をかければ消えてしまうのと一緒ですよ。お分かり?・・・どうやら分かってもらえたので続けますよ~。結論から言ってしまえばダミーメモリとエターナルメモリは相性が悪いのですよ」

 

永遠―――つまりは不変といってもいいエターナルメモリ。

それに対し、

擬態―――つまりはころころと変わるダミーメモリでは相性が良くないのだ。

 

「相性が良ければより巨大な台風になり強い風を吹かすでしょう。しかし!逆に悪ければお互いを阻害するだけの邪魔な存在!つまりメモリの力が弱まるのですよ。まぁ、エターナルメモリの方が適正が高いのであながちダミーがエターナルの足を引っ張るってとこですかね。合ってますか?」

 

チッ、聞くまでもないって顔してる癖に・・・ムカつく。

それにしても厄介なのが出てきたもんだ。

こちらも少し試してみるか。

 

「さぁな?なんならここで試すか?」

 

「いえいえ、やめときましょう。貴方とはあまり争いたくない。どちらもただでは済まないでしょうから」

 

「・・・・」

 

「・・・・」ニコッ

 

乗ってこないか。

やはりこいつはかなり厄介だ。

ここで乗ってくるようなやつならばどうとでもできると期待したんだがな…

 

「食事を再開しましょう。冷めてしまいますからねぇ。あっ、もちろんスープは換えさせますので」

 

「つまらないものは入れるなよ?」

 

「えぇ、勿論」

 

こうして食事が再開される。

まぁ、とてもじゃないが味わって食べれるほど余裕はないが。

 

「あっ、そうでした!」

 

食事再開から五分ほど経った時、園崎が何かを思い出したのだろう。

勢い良く席を立った。

 

「プロフェッサー・・・まさかとは思っていたけどほんとに忘れていたのね…」

 

「自分が言うからって私らに口止めさせてたのに呆れるぜ」

 

「いやはや申し訳ない。あまりに興奮してしまってすっかり頭から抜け落ちてました」

 

「はぁ、ようやっと本題か?」

 

連れてきたわりに何も話さないと思っていたら、とんだ間抜けな理由だった。

こいつが一番の壁なのかと疑いたくなる。

 

「はい、お待たせしましたね。貴方が待ち望んでいた本題です」

 

園崎は両手を広げ俺を見下ろし、続ける。

 

NEVER(ネバー)、私たちと手を組みましょう」

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