ガイアメモリの存在を知る組織『亡国機業』の構成員スコールの話に乗った雄二。
案内された先で待っていたのは園崎と名乗る異常な雰囲気を放つ男であった。
謎の力を使う園崎を最大の敵として認識した雄二であったが・・・
「
園崎の口から思いもよらぬ言葉が放たれたのだった…
どうなる、五十九話!?
「断る」
即答であった。
園崎が言い終わってから数秒も経たぬうちの返答である。
そのあまりの速さに園崎も目を丸くしている。
対する雄二はポーカーフェイスを捨て、明らかな嫌悪の表情を示す。
「理由を伺っても?」
「単純にお前達のような奴らが嫌いなんでな」
ISを兵器としか思わない人殺し連中。
それが雄二が最も嫌うもの達だ。
「反吐が出るって顔してやがるけどよぉ、てめぇはこっち側だろ」
「・・・俺とお前たちが同じだとでも?」
「あぁそうさ。自分でも心当たりがあるんじゃないのか?お優しい
「・・・・死にたいようだな」
雄二から放たれる気が一瞬にして場を包み込む。
しかしオータムは全く動じない。
むしろ笑っている。
「ハハッ!やっぱりお優しいねぇ。殺気に全然力がはいってねぇ。そんなんじゃ脅しになんねぇーよ。出すんだったら腹の底のどす黒いものを出せよつまんねぇな。そいつで何人も
「黙れ…」
「お前の戦闘・・・いや、蹂躙はいくつか映像で見たがあれは良かったぜ?なんせ容赦なく敵を壊すことだけを考えた攻撃でよぉ、肉を裂き、骨を砕く。コアより相手を壊すことの方が重要って感じだった」
「黙れッ!」
雄二がオータムの胸倉を掴み、壁に叩きつける。
苦痛に一瞬顔が歪むがそれでもオータムは笑っている。
「それだ!その目だよ!アタシ達と
胸倉を掴んでいる腕に力がこもる。
当然襟は締まり、呼吸がしづらくなっていく。
「カッ…!コホッ!ふふっ…殺れよ…」
(こいつ殺されるのが怖くないのか…!?)
襟に手を置かれているこの状態からなら細首を折るなんて容易い。
抵抗なんてする暇もないだろう。
そんなことやられているオータムが一番分かっていることだ。
それだというのに笑っていられることに雄二は戦慄した。
(こいつは狂ってる……ここで消しとくべきだ…)
呼吸も途切れ途切れであと少し力を入れればその命は消える。
その最後の後押しを雄二が行おうとした矢先、
「そこまでにしてもらえませんか?」
その声で踏みとどまった。
「自業自得な部分もあるとはいえ可愛い部下が殺されるのはいい気分ではないのですよ。あぁ、もしそれでも続けるというのなら、ここで
園崎は平然と言い切る。
殺そうと思えば殺せるのだと。
殺気も何も感じさせない言葉はハッタリなのか本心なのかわからない。
だが、雄二は腕から徐々に力を抜き、オータムを解放する。
「ゴホッゴホッゴホッ!?・・・チッ、余計なことしやがって」
「命の恩人に酷いいいようですねぇ。給料減らしますよ?」
得体のしれない園崎を警戒してというのもあったが、解放の理由はそこではなかった。
雄二は恐怖を感じていたのだ。
しかし、それは園崎でもオータムでもましてやスコールにではない。
(俺は……今、確実に殺そうとしていた…それも躊躇なく…ッ!?)
確かに雄二はISを悪用する奴が許せないし、憎んですらいる。
しかし、その命が軽いと思ったことなんて一度もなかった。
命を失う悲しさも辛さもよく知っている。
はずだった…
手に残る感触に震え、いままで立っていた価値観が音を立てて崩れていく。
深い闇に落ちていくなか必死に手を伸ばす雄二は自身の真っ赤に染まった手に気づく。
手だけではない、腕も足も赤い何かで染まっていた。
赤くない個所の方が少ないほどに。
(そうか・・・俺はもう・・・)
―――壊れてしまってるんだ…
★
「
動かない俺に対し園崎は声をかけてくる。
「別に…」
そう、大したことじゃない。
ただ気づいてしまっただけのことに過ぎない。
いや、目を背けきれなくなったという方が正しいか。
(結局オータムの奴の言う通りだったってわけだ)
俺は人間として壊れた人殺しだ。
前から分かってたはずなのに気づかないふりなんかして・・・とんだ道化だな…
「様子が変ですがもしかして気が変わったりしました?」
「ありえない。天地がひっくり返るほどのことでもない限りな」
だが、目的が壊れたわけじゃない。
そこが壊れなければ、俺自身がいくら壊れようと進み続けられる。
その歩みにとってこいつは障害そのもの、近づき過ぎればこちらが呑み込まれる。
「これは手厳しいですねぇ。流石に天地をひっくり返すのは無理ですから」
「だろうな」
「ですから!貴方自身をひっくり返しましょう!ほら、そうすれば貴方からは天地がひっくり返って見えるでしょう?」
俺をひっくり返す、か。
そんなことできるはずがない。
そう思いつつもこいつならやりかねない、そう思わされてならない。
なにしろ得体が知れないくせに異常性だけはひしひしと伝わってくる奴だ。
ここは退くべきだな…
「やってみろ。付き合ってやる義理はないがな」
そう言って出口に向かい歩く。
急げば焦りを感じ取られ付け込まれる。
だから余裕も見せつけられるこの速度がベスト。
「ではお言葉に甘えて」
後方から指を鳴らす音が聞こえる。
しかし特に変わった様子は―――
―――!
その場から瞬時に横っ飛びする。
瞬間、銃声が響いた。
俺のいた場所に数発撃ち込まれたのだ。
(なかなかの手練れがいるな。力づくというわけか)
物陰に身を潜めながら考える。
敵は直前まで気配を感じさせない潜伏力に正確な射撃の腕。
確かに脅威になりえる存在なのだろう。
・・・だが、それだけだ。
物陰から飛び出し、最短で敵のもとに走る。
頬を、肩を、わき腹を、脚を、銃弾が掠る。
しかし、直撃はない。
(ギアを何段階か上げた俺に掠らせることができるだけ驚きだ)
驚きながらこちらもトリガーマグナムを抜き、反撃を開始する。
牽制しながらも距離を詰める速度は落とさない。
距離が詰まり、残り数メートル。
相手はバイザーをしており顔は確認できないが女。
一手速く女はこちらの顔面に銃を向けた。
回避は不可能。
「・・・」ニヤッ
「ッ…!」
・・・が、問題ない。
避けれないなら当てさせなければいい。
一歩踏み込み、銃身を手で弾くことで弾は顔の横を通り過ぎていく。
そのまま回し蹴りを喰らわせる。
・・・が浅い。
直前で自ら跳んで威力を殺された。
この女、常人離れした反応速度をしている。
「お次はナイフか」
「シッ!」
女は銃からナイフに持ち替え、仕掛けてくる。
素早く突き出されるナイフを身体を逸らすことでかわしていく。
攻撃は急所ばかり狙っていると見せかけて他のガードが甘くなる瞬間を狙う抜け目なさ。
(この速さで瞬時に選択して攻撃できるとは大した戦闘センスだよ)
ハッキリ言ってかなり強い。
この状態で女のナイフを弾くことはおそらく不可能だろう。
それほどまでに鋭い攻撃だ。
ガキンッ!
かたい金属同士がぶつかる音が鳴り、ナイフが止まる。
「俺にエッジを出させるとはな」
正直驚いた。
生身でここまでやれる奴がいたなんてな。
だが、同じ土俵になった以上もう終わりだ。
力を込め女を数歩押し返す。
「来い、遊んでやる」
空いている左手でクイクイ、と手招きする。
目もとは見えないが頭に来ているってのは丸わかりだ。
「死ねっ!」
先ほどよりもキレが増しているな。
怒りによるものか、はたまた実力を隠していたか。
まぁ、どちらでもいいか。
「どうした、この程度か?」
「ッ…!?」
エッジを使い攻撃を弾いていなしていく。
その間、一歩も動く必要はない。
それほどまでに地力の差があると言う事だ。
しかし・・・
(なんだ…?この感覚は…?)
先ほどから妙な胸騒ぎがする。
しかし、嫌な感じなどではなくむしろ・・・
(懐かしい…?)
そんな気がしてくるのだ。
もしかすると俺はこいつに会ったことが―――
「チッ!」(ゆっくり考える暇もないな!)
「どうだ?足を使わせてやったぞ!」
(こいつ、またスピードが上がった…)
この女は戦いの中で成長している。
それも異常なほどだ。
さきほどから恐ろしい速度でこちらとの力量を埋めてきている。
「フハハッ!わかる…わかるぞ!私はもっと強くなれる!これなら!これなら!」
底知れない強さへの渇望をこいつの攻撃からは感じ取れる。
まるでそれこそが存在意義だと言っているかのようだ…
「お前は何故そこまで強さを求める?」
攻撃を捌きながら女に問う。
返答によってはここで打ち取らなければならない。
それがこいつの蓋を開けてしまった俺の責任。
「ククッ、教える義理はない・・・が、今は機嫌がいい。冥途の土産に教えてやろう。織斑千冬を殺すためだ。私はそのために生きてきた」
織斑千冬を殺す…?
「誰が、誰を殺すって?」
「私が織斑千冬を殺———!?」
一閃。
女の頬から鮮血が飛び散る。
突然のことに大きく距離をとり、頬を触って驚く女。
「まだ上があったのか…!?」
「斬られたことが信じられないって顔だな。言っておくが織斑千冬はこんなものではないぞ?」
「ッ…!」
「織斑千冬を殺すと言ったんだから持っているんだろう?出してみろ、お前の専用機を」
「・・・いいだろう、貴様の余裕もここまでだ」
一瞬の発光後、女はISを纏う。
蝶の羽のような巨大スラスターユニットがついたIS。
そのISには見覚えがあった。
実際見たことはないが資料で見たことがある。
「やはり【サイレント・ゼフィルス】は
イギリスが開発した第三世代ISサイレント・ゼフィルス。
セシリア嬢の使うブルーティアーズの試作二号機で同じくBTシステム型の機体。
強奪されたと聞いてまさかとは思っていたが予想は当たっていた。
「さすがはハイエナ、機密情報であるというのにISの情報を把握している。まぁ、その情報がどこまで役に立つか見物だな」
「それはこっちのセリフなんだがな」
\
メモリを取り出し、ロストドライバーを装着する。
変装状態でのエターナルメモリの使用は不本意だが仕方あるまい。
「変身」
\
赤き炎が吹きあがり、アーマーが身を包んでいく。
腕と脚のアンクルガードには燃える赤い炎の意匠。
(やはりレッドが限界か)
腕を薙ぐと炎は吹き飛び、視界が鮮明になる。
この姿に園崎は満足気のご様子だ。
癪に障る…
「青ではなく赤か。
「勘違いするな。無駄な力は使わないだけだ。わかりやすく言うとお前にはこれで充分と言うことだ」
「減らず口を!」
ライフルのエネルギー弾が飛んでくる。
性能が下がってるとはいえこれぐらいの回避はどうってことない。
「かかった」ニヤッ
気が付くと俺の周りを既にビットが囲んでいた。
展開時から死角に潜り込ませていたのか。
抜け目ないが・・・
「想定内だ」
\
俺の周りにバリアーが展開され攻撃を全て防ぐ。
ビットが最大の特徴であるサイレント・ゼフィルス。
そのビットを使う素振りがなかったのが不自然だったため防御策は用意しておいた。
(くっ…!予想以上の負荷だ…)
しかし、この状態でのメモリ使用は通常時の数倍の負荷がある。
出来れば使いたくはなかった。
「フフッ、情報に助けられたか」
女は攻撃を防がれたというのに随分と上機嫌だ。
何かしらあるのだろう。
「だがお前はその情報によって死ぬことになる」
どこでも聞くようなハッタリやでまかせと何ら変わりない。
そうわかりきっているのに俺はその言葉に少し嫌な感じがした。
更新が遅れて大変申し訳ございません。
重ねて申し訳ありませんがしばらくは忙しく8月が終わるまで更新できないと思います。
もしかしたらこの戦闘が一区切りのところまではできたら更新するかもしれません。