~E・S~転生者は永遠を望む   作:ハーゼ

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気が向いたので投稿
楽しみにしてた人がいたら大変お待たせです


第六十六話 師弟

某所にある地下施設。

情報が表には出ないであろうその場所は亡国機業の施設のひとつだ。

そこに俺は来ているのだが・・・

 

「とんだ出迎えだなM」

 

「黙って殴られろ。あと気安く呼ぶな」グググ…

 

弟子(予定)の拳を受け止めている。

施設に入った直後でどうしてこうなった。

 

「まぁいい、それだけ元気があるなら傷も癒えてるな。早速始めるとするか」

 

さてと、初日だし何から始めていくか。

この前闘ったとはいえ正確に把握してるとは言えない。

とりあえず基礎体力とか知っておきたいな。

あっ、でも───

 

「おい」

 

「なんだ?」

 

「私はお前の弟子になることを認めてない!」

 

「上に話は通している。つまりお前の意思は尊重されない」

 

「OK、なら勝ち取らせて貰う」カチャッ

 

ふむ、なかなかいい構えをするじゃないか。

銃の扱いについてはそこまで言うことは無さそうだ。

 

「やめておけ、この距離じゃ引き金を引くより俺の蹴りの方が速い」

 

「ふっ、確かにお前には1度負けたがそこまでの実力差があるとでも?」

 

実力差…

なるほど、まずやるべき事がわかった。

 

「試してみるといい」

 

「──!」

 

奴が引き金を引く刹那、俺は既に行動を終えている。

蹴りあげた銃は手元を離れてカラカラと地面を滑り、その細い首にはMの懐から抜き取ったナイフを突きつけた。

 

「ッ!?」

 

「ほら、俺の方が速い」

 

ははっ、信じられないって顔してるな。

まぁ、そりゃそうか。ダミーメモリを使っていた前回と違って、今は本来の力を出せるのだから。

 

「さて、挨拶はここまでにして最初のレッスンを始めていくか」

 

ナイフを適当に放り投げ、Mから離れていく。

距離は・・・このぐらいでいいか。

ざっと5メートル、ちょうどいい距離だ。

 

「・・・何を始める気だ?」

 

先程の攻防が効いたのだろう、Mは不服そうだが俺の教えを受ける気になったようだ。

 

「少し特別な組手だ」

 

「特別?」

 

俺がまず最初にするべきこと、それは───

 

「お前に織斑千冬を見せてやる」

 

目標の高さを教えてやる事だ。

 

 

 

★

 

 

 

 

「お前に織斑千冬を見せてやる」

 

織斑千冬を見せる?

今からするのは組手じゃなかったのか?

 

「何を言って・・・ッ!?」

 

これは一体どうゆう事だ…

 

ゴクンッ

 

目の前に織斑千冬(姉さん)が立っている。

 

「さぁ、構えろ」

 

「えっ?あぁ…」

 

だが聞こえてきたのは男の声。

 

(落ち着けマドカ、目の前にいるのは姉さんじゃない)

 

深呼吸をし、目を軽くこする。

そうしてもう一度よく見る。

そこには姉さんがダブっているように見えるNever(ネバー)がいた。

 

「その反応、見えているようだな。どうやら目標にしてるだけのことはあるようだ」

 

なるほど、奴の言動と構えでようやく理解した。

奴は気配や気当たりに加えて挙動一つに至るまで姉さんを模倣している。

その結果、私は奴を姉さんだと認識してあの幻影を見たというわけだ。

ようは試されたのだ。私に姉さんの動きが理解できるかを。

だが、試されたことへの不満なぞ持つ暇はない。

 

「化け物め…!」

 

あるのは圧倒的敗北感と驚きだ。

先程の動きといい、さすがの私もプライドが傷ついた。

 

「化け物とは失礼な奴だ。そら、中々上手いものだろう?」

 

・・・上手いとかそんな次元の話じゃない。

確かにこの手の技で模倣元の姿が重なるのは相当なものだが、不思議なことではない。

しかし、こいつが行ったものは最高、いや、究極の模倣といっても差し支えないものだ。

 

「ハンデでお前はISじゃなければどんな武器を使ったって構わない。因みにこっちは素手のままだから安心していいぞ?」

 

そう、こいつは剣ではなく拳を構えている。

私は姉さんの徒手格闘は知らない。

だというのに、動き一つ一つからこの構えは間違いなく姉さんの構えだと伝わってくる。

 

(そんなことが出来るやつが化け物じゃなくてなんだと言うんだ…)

 

「どうした、来ないのか?」

 

「うるさい、言われなくてもお望み通りやってやる」

 

・・・もう、破れかぶれだ。

やるだけやってやる!

 

・

・

・

 

ドサッ!

 

「10分か。まぁ、及第点だな」

 

たったの10分しか立てていなかったのか…?

長いこと組手をしてたかのような疲労感だというのに。

 

「ハァ…ハァ…」

 

しかし、こっちは倒れて動けないっていうのにNEVERは息のひとつもきらさない。

 

(・・・理由はわかっている)

 

色々と理由はあるが一番の理由は、奴の動きには無駄がないこと。

悔しいが、私には攻守の切り替えのタイミングが全く読めなかった

 

(攻守一体とはこういうことをいうのだろうな)

 

人間というのはあまりの差を感じるとこうも素直に認められるものらしい。

不思議とNEVERに対しての怒りなどどうでもよくなっている。

 

(私はもっと強くなれる)

 

それどころか今はただ、胸の鼓動が昂るばかりだ。

 

「すぐに…超えてやる…!」

 

「ほぅ、随分と余裕そうだな。2分後に再開だ」

 

 

・・・嫌な奴

 

 

 

★

 

 

 

日が傾いてきたな。

今日の所はここまでにしておくか。

 

「今日は終わりに『ドサッ』・・・もう聞こえてないか」

 

ちーちゃんを目指した地獄の特訓初日。

Mは終了と分かった途端に崩れ落ちた。

しかし、逆に言えば終了とわかるまで立っていたってことだ。

 

「世話の焼ける弟子だ」

 

Mを抱きかかえトレーニングルームを後にする。

倒れることは想定済みだったためMの部屋はあらかじめ園崎に聞いといたが…

 

(最後まで立っていたのは想定外だった)

 

想定ではもう少し早く音を上げると思っていたからこんなにボロボロになるとは思わなかった。

さすがにこの状態のMを部屋に放置するのは如何なものか。

 

「うわっ、それ生きてんの?」

 

突如通路の角から声が聞こえてきた。スコールだ…

はぁ…こいつに出会うとは今日はついてないな。

 

「生きてはいる」

 

「へぇー、それで生きてるのね。その子のそんな姿見たことないから死んでるかと」

 

「用件はなんだ?ただ喋りに来たわけじゃないだろ」

 

「ただ喋りに来たって言ったら?」

 

「気味の悪い冗談だ」

 

ここはトレーニングルームに続く通路だ。

この女が鍛えに来てるとは思わないし、何か用件があるのだろう。

 

「つれないわね。まぁ、そんな気はしてたけど。はいこれプロフェッサーから」

 

スコールが差し出してきたのはカードキー。

 

「あなた専用の部屋よ。使っても使わなくてもご自由に」

 

「・・・」

 

「じゃっ、確かに渡したから」

 

そういってスコールは来た道を戻っていく。

 

(なんだこのドンピシャなタイミング…)

 

しかも部屋番号からみて、トレーニングルームから一番近い部屋。

 

「気味の悪い奴だ…」

 

まぁ、ありがたく使わせてもらうか。

俺専用の部屋なら多少汚れてもいいしな。

 

「ここか」

 

ほんとにトレーニングルームからすぐだな。

これから頻繁に使うかもしれないな。

 

「カメラやセンサーの類いはなしか」

 

無駄なことはしない主義?

それとも俺に余計な不信感を与えないためか?

いや、どちらもか。

 

「そんなこと考えても無駄だな」

 

園崎を量るより今はこの弟子を何とかしてやるのが先だ。

まずはベットに寝かせて、軽く身体を拭いて、傷の手当をして・・・

 

・

・

・

 

「こんなものか」

 

傷自体は擦り傷や軽い打撲だけで大したことはない。

しっかりと受け身は取れているようだからしばらくすればこういった傷は減っていくだろう。

それほどMの成長には目を見張るものがあった。

 

「細い手足だ…」

 

しかしその細い手足、いや、身体の至る所に今日できたものではない傷がちらほらと見える。

本来、この年頃の女の子にはあるはずのない傷。

ましてや、強さだけが支えとなるなんてありえない。

他の子がファッションや恋など楽しい事を経験してきたのに対してMはどれだけ血なまぐさい経験をしてきたのだろうか?

 

(優しさに触れたことは、安心できるときはあるのだろうか?)

 

自然とMの頭をなでていた。

師匠として強くしてやれる以外に俺がしてやれることはこれぐらいだ。

せめて寝ている時ぐらいはいい夢でも見てほしい。

 

「今までよく頑張ったな。だから、今はもう少し休め」

 

どうかこの少女に安心できる時が訪れますように。

女神にそっと祈った。

 

 

 

★

 

 

 

その者は心地の良い感触で意識を取り戻した。

 

(なんだ…?撫でられている…?)

 

普段の彼女ならばすぐにでも振り払うであろう手。

だが、その手が振り払われることはなかった。

 

(暖かくて気持ちいい…)

 

極度の疲労、意識も朦朧、加えてその手の心地良さがそうさせていた。

どうやって撫でれば心地良いのかを知り尽くしている手さばき。

それは疲れきった彼女の心に染み入っていく暖かさだった。

 

(・・・・)

 

何も考えず、その身を預けられる安心感に彼女は自然と意識を手放そうとしたときだった。

 

「今までよく頑張ったな。だから、今はもう少し休め」

 

(⁉⁉)

 

耳元で囁かれた言葉で意識が一気に浮上する。

そして一瞬で状況を理解してしまう。

 

(な…な…なんだこれはー⁉/////)

 

彼女を一斉に襲う驚きと羞恥心。

しかし、瞼は閉じたままだった。

彼女の防衛本能がかろうじて働いたのだ。

 

(この状況で起きていたと知られたら死ねる…!)

 

今まさに彼女は生まれて初めて恥ずか死と直面していた。

しかし、慣れていない状況では狸寝入りなど時間の問題である。

 

(ど、どうする私?今起きたフリでもするか?・・・いや、さっきまでの醜態を思うと今は奴を直視出来そうにない///)

 

いい案も思い浮かばない彼女をしりめに男はメモ書きを残し席を立つ。

そしてそのまま部屋を出ていった。

どうやら狸寝入りには気づかなかったようである。

 

「ふぅー…行ったか」

 

これにはほっと一息。

目を開け起き上がる。

 

「む、予想以上に動ける…」

 

彼女の予想外なことに身体を動かしても痛みがなかった。

それもそのはず。身体中には綺麗に巻かれた包帯や湿布。

見ただけで丁寧な治療を施されたことがわかるのだから。

 

(汚れもないし、不快感が少しもない。拭き取りもしっかりされているしょう・・こ・・・!?/////)ボフッ

 

彼女は突如顔を真っ赤にして衣服の一部をめくる。

ちらりと見えた胸部にも包帯は丁寧に巻かれていた。

それを確認した彼女は更に蒸気でも出るのではないかと言うほど赤くなる。

そして、自分を抱くように小さく丸まった。

 

「な、なんでこんなに恥ずかしい…!こんなの、た、ただ治療に過ぎんというのに…///」

 

彼女は困惑していた。何故こんなにも自分は羞恥しているのかを。

彼女にはいままでにこういった治療行為がなかった訳ではないし、その時も治療行為として何も感じてなかったのだ。

 

「うぅ…おかしい…。こんなことで動揺するはずがないんだ・・・はっ、もしやアイツになにか薬でも盛られた…?」

 

初めてのことに動揺し、彼女はなにかされたのではないかと疑い始めた。

 

『今までよく頑張ったな。だから、今はもう少し休め』

 

「っ!?/////」

 

そして、されたことを思い出して自爆した。

 

「ああもう!なんで私がこんな目に遭わないといけないんだ!全部あいつのせいだ!クソっ!クソっ!」

 

ついには枕でベットを叩きは始めた。

頭が感情に追いつかない八つ当たりだった。

しかし、それも数回で終わる。

 

「っ!」

 

強く叩こうと一番大きく振りかぶったところで痛みが走る。

枕は手から抜け、ボスンと音を立てて床に落ちた。

流石に激しく動きすぎだった。

 

「・・・はぁ…何をやってるんだ私は」

 

しかし、その痛みが彼女を冷静にさせた。

 

「大体考えてみれば頭を撫でたり、耳元で囁いたり、恥ずかしいことをしてるのはアイツの方だ。私が恥ずかしがることなどないんだ、うん」

 

そう言うと再び横になる。

そして自然と気がついたことを口にする。

 

「アイツ、あんな声も出すんだな…」

 

彼女に囁いた声はとても優しい声色をしていた。

その声色を思い出しながら彼女は自然と頭に手を置いていた。

まるで名残惜しさを感じるように。

 

「・・・!////」

 

それに気づいてしまい、結局彼女はしばらく悶々としていたのだった。




ちなみに書き置きは栄養バランスを考えられた食事メニューです。
特に伏線とかではない。

気が向いたら続きを書くので期待せずに待っててもらえれば幸いです
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