ゼロの使い魔~仮面の貴公子~   作:人外牧場

2 / 6
ロイヤルロビン

 自分が間違っていた。貴族のボンボン、ギーシュがそう感じた時既に手遅れだった。最後のワルキューレが真っ二つになりそこから冷酷な赤い目がギーシュを見つめていた。

 

 事の発端は、ギーシュの二股が発覚した事だ。彼が意中の人モンモランシーの香水を落とし、それをルイズの親友でありメイドのシエスタが拾い、ギーシュに届けた事で彼が口説いていた下級生との二股が発覚。貴族のプライドと、男のプライドをボロボロにされたギーシュが激昂。シエスタに平手打ちをしようとした所をロビンが止め、貴族でありながら平民に肩入れするロビンをギーシュは罵り、決闘へと発展した。

 主のルイズは気が気でなかった。たまたまロビンが朝起こしてくれず、完全に朝食を食べ損ねた上、ロビンはいつの間にかギーシュと決闘の誓いまで立ててしまったのだ。スキっ腹にストレスで危うく胃に穴が空く所だった。それよりも大事なのはロビンの決闘だ。貴族だが、魔法は当然使えず、よく鍛えられた引き締まった体だが、それはメイジの前では意味をなさない。おまけにグラモン家は代々優秀な軍人を輩出し、ギーシュもそれに漏れず戦闘に関しては中々のセンスを持っていた。

 最悪死んでしまうかもしれない。真面目が取り柄のルイズは珍しく授業をさぼり、朝から顔を見せないロビンを探していた。もしかしたら、怖くなって震えているかもしれない。そうなったら私はしっかりと主としての態度をとれるだろうか?そんなことを考えていると、厨房の方から大きな声が聞こえる。この野太い声は間違いなく料理長のマルトーだ。しかし、心臓に毛が生えたような彼があんな声を出すのは珍しい。どうしたのかと厨房の裏手、薪を溜めておく倉庫には人だかりが出来ている。思わず人ごみの中に入っていく。その中心には、球の様な汗を流しながら薪になる前の原木をタワーブリッジで次々と真っ二つにしていくロビンの姿があった。当然、タワーブリッジなど知らない彼らからしてみればただの力自慢だ。ルイズの心配はロビンからギーシュの心配へと変わっていった。

 

 

 そして、決闘当日。昼休みに広場で行われると既に知れ渡り、ロビンとギーシュの周りは人の海となった。その最前列、ロビンのすぐ後ろにルイズは不安な顔で立っていた。いくらメイジと言えど木を粉々にしたあの技が決まれば、ギーシュは間違いなくハーフカットサイズになるだろう。そうなる前にロビンが気を効かせてくれないかと祈るルイズをしり目に、役者の様な大仰な動きで観客を楽しませるギーシュとは正反対に黙々と準備運動をするロビン。ギーシュが胸ポケットの薔薇を手にとり、一枚の花弁から一体のワルキューレを作りだす。

 

「どうだ!この美しい僕のワルキューレは!降参するなら今のうちだぞ」

 

「ロビン王朝に降伏も敗北も無い」

 

「強がりを。さあ、やれワルキューレ!」

 

 剣を手に持ったワルキューレがロビンに突進する。ロビンの前で剣を振り上げ、そして振り下ろす。

 ロビンはそれを紙一重に避け素早くワルキューレのバックにつく。そして、両足を掴みジャイアントスイングでワルキューレを上空に飛ばし、ロビンもそれを追うようにジャンプし空中でワルキューレの首に足四の字をかける。そして、そのまま落下し地面と激突する直前、足四の字からパイルドライバーに変更する。ワルキューレは上半身を地面にめり込ませ動かなくなる。この技がロビンマスクの代名詞タワーブリッジと肩を並べるロビンマスクの必殺技ロビンスペシャル。しかし、いまかけたのはロビンスペシャルの完成系ではなく不完全のロビンスペシャル1STだ。

 しかし、その威力は高く青銅のワルキューレは上半身をバラバラにされた。予想外の事態に今まであった余裕をいっぺんに消える。余裕をなくしたギーシュは5体のワルキューレを出すが、もう遅い。

 

「ロビン流ベルリンの赤い雨!」

 

 ブロッケンJrの得意技、それをロビンが改良したベル赤を繰り出し次々とワルキューレを切り裂いていく。そして、最後のワルキューレを縦に真っ二つにして目の前の怯えるギーシュを睨む。ギーシュは腰を抜かすが、ロビンは情けをかけない。ギーシュを背負い、タワーブリッジをかける。苦悶の声を上げるギーシュなどお構いなしに力を強めるロビン。ざわざわと観衆がざわめく、観衆の頭にバラバラになったギーシュの姿が浮かぶ。言いようのない恐怖に貴族のボンボンは恐れ慄き我先とその場を逃げるように去っていく。そして、その場にはギーシュとロビン、ルイズだけが残された。ルイズはカタカタと肩を恐怖で震わせる。邪魔をすれば、次は自分になってしまうかもしれない。しかし、使い魔を止めるのは主の使命。この二つがルイズの中で責めあっていた。そして、タイムリミットは過ぎてしまった。ゴキリ、とルイズの耳にもギーシュの背中から何かが折れる音がする。それを聞いたロビンは手を離しギーシュを地面に寝かせる。

 

「ロビン。ま、まさか、あんた」

 

「心配するな、ルイズ。今のはただ単に背骨の矯正をしただけだ、元から私に誰かを殺そうなんて考えは無い」

 

 ロビンの答えにルイズは胸を撫で下ろす。ロビンの隣に立ちギーシュを見てみると、あまりの痛さに気絶したようだが、無事なようだ。

 

「まったく余計な心配をかけさせないでよね」

 

「出来る限り彼には本物の恐怖を知ってもらいたかったんでね」

 

「ロビン。あなた、彼を更生させようとしてたの?」

 

「私も貴族の生まれだ。彼には貴族に名を連ねる者として、節度ある生活をしてもらいたかったのだ」

 

「それでロビンはわざとキツイ罰を与えたのね。私はロビンがギーシュを真っ二つにするんじゃないかって心配だったの」

 

「それに関しては謝ろう」

 

 閑散とした広場に二人の笑い声が響く。ロビンが契約を結んで早4日。関係は良好なようだ。

 

 

 

 

 

「ケケケカカカァ!!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。