ソルジャーとの出会いから2日。ロビンの使い魔生活は順風満帆だった。朝、ルイズの身の回りの世話をし、昼には図書室でタバサと勉強、夜にはソルジャーと鍛錬。ギーシュとの決闘で会う生徒全員から怯えの眼差しを向けられる事もあったが、どうやらキュルケやルイズが裏で色々としてくれたようで、人間関係は良好だ。今では朝、訓練がてらに厨房の薪割りの手伝いをしている時に会った少女 シエスタと仲良くなり一緒にルイズの話題で盛り上がっている。
しかし、不安が無いのではない。ソルジャーと会った時、自分が忘れていたここに来た理由。そして、最近では湖で連続して人殺しが起こっているらしい。それも、被害者達は全身の血を抜かれていたり、体がまるで何かにねじられたかのようにバラバラになっている者もいた。頭に、あの悪魔超人達が思い浮かぶが考え過ぎだと自分で結論を付け、考えないようにする。
「ルイズ様はお優しい方ですよね」
「フフ、高圧的な態度を取ったりもするが根はいい子だよ」
薪を斧で割りながらメイドのシエスタと談笑する。すでに薪は山になっており、厨房3日分の薪が既に用意された。ロビンは、シエスタからタオルを受け取り体の汗を拭きとる。
「ロビン様はどうして、御顔を見せないのですか。私ならともかく主人であるルイズ様にも」
「私はロビン王朝に名を連ねる者だ。そして、ロビン王朝の者は決して素顔を見られてはいけないと言う掟があってな。未だかつて私の素顔を見たのは一人しかいない」
「へえ~。それでロビン様の顔を見たのは誰なんです」
「・・・悪魔だよ。私は悪魔と戦い敗れ、このマスクを奪われた」
「ロビン様が負けるなんて。かなりの強敵なんですね」
「そうだな。いつかこの貸しを返したいと常にリベンジの機会を待っていたが結局返す前に私は衰えてしまった」
タオルをシエスタに返し、ロビンはその場を後にする。その後ろ姿はどこか物悲しい雰囲気を醸し出していた。
思い出す。7人の悪魔超人との死闘。不忍池でアトランティスと闘い、優勢に進めるもアトランティスのなりふり構わない闘いにスキを突かれ、ロビンマスクの長い選手生活の中でも数少ない黒星を上げられてしまった記憶。あれほどの敗北はロビンの中でもそうそうない。あの敗北から、常に己を鍛え続けかつては再起不能といわれたロビンは見事超人レスリング界に返り咲いた。思えば、あの勝負が自分を変えたのかもしれない。
ルイズの部屋に入り、まだ寝ているであろうルイズを起こそうとベットに近づくが、ルイズはいなかった。不思議に思うと、扉から死角になっている窓にルイズは立って外をのぞきこんでいた。
「どうしたんだ。ルイズが朝早くからおきるなんて」
「それよりも!大変な事が起きてるのよ!今すぐ着替えて、中庭にでるからついてきなさい」
そう叫ぶとルイズは光の速さで着替えロビンを連れて中庭に急ぐ。その途中でキュルケとソルジャーに会い、初めてソルジャーに会うルイズはその威圧感に少し圧倒されながらもキュルケに話しかける。
「アンタも中庭に行くんでしょ」
「当然よ。戦力は多いに越したことは無いわ。だって相手は悪魔よ」
「そうよね」
「「?」」
事情を知らないロビンとソルジャーは何が何だか分からないが、どうやら大変な事になっていると察し歩幅を少し大きくするのだった。
廊下を走り抜け中庭が見える。そこには杖を構えた教師陣と同じく杖を構えた実力者ばかりの生徒と使い魔が群がっていた。4人は人ごみをかき分け前列になんとかでるとそこには、二人の大男が二人の人を吊るし上げていた。
「タバサ!!」
いつもは飄々としているキュルケが叫ぶ。らせん状の体をした男(?)の右手がタバサの胸倉を掴み上げていた。その足元にはへし折られた杖と、主を守ろうと戦った使い魔が転がっていた。
「ギーシュ」
隣には緑色の肌をした怪物がギーシュの喉元を掴み、長く伸びた爪がギーシュの喉の皮膚を貫き血が流れていた。
「ケケケ、どうやらお友達の登場みたいだぜ。金髪雑魚」
緑の怪物はギーシュから手を離し、近くに放り捨てる。ギーシュはすぐに荒く呼吸を繰り返すと、失血からかその場で失神する。
「やっぱり女じゃあ、相手にならねな」
らせん状の男がタバサをその場に下ろす。そして、高らかと宣言する。
「今ここで俺達二人と戦う奴はいるか!居ねえなら、さっき言った通りこの学校を我々、悪魔超人の新たな領地となる」
あまりに理不尽な要求だが誰も戦おうとしない。無理も無い、目の前でギーシュのワルキューレが紙を破るように破壊され、タバサのエアハンマーを喰らってもなんの障害としない化け物を前にすれば戦う意思は起きない。それは彼らが人知を超えた超人だからである、しかしこの場には超人を相手に出来る奴らがいる。
「随分と久しぶりに会ったな。アトランティス」
「お前は確かスプリングマンだったな。俺達が貴様らの野望を打ち砕いてやる」
「ケカ!てめえはロビンマスク」
「そういうお前は確かキン肉アタル。一度、死んだお前がどうしてここに」
「我々は超人だ。それならば決着をつけるには一つしかないだろう」
そういってロビンは中庭の隅に移動されたリングを指さす。
「いいじゃねえか。あん時みてえに、また俺が狩ってやるよ」
「キン肉マンとはまともに戦った事がねえからな。お前をキン肉マンの代わりに粉々にしてやるよ」
「ロビン。俺はスプリングマンと戦う。不忍池の借りを返してやれ!」
「あたりまえだ。私はこの時を待っていたのだからな!」