ゼロの使い魔~仮面の貴公子~   作:人外牧場

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ソルジャーの苦戦

 悪魔超人との決闘。一つしかないリングにはスプリングマンとソルジャーが上がり、反対のコーナーにセコンドとしてアトランティスとロビンがつく。超人は静かに闘志を高めながら整理体操をしているが、観客としてリングの周りに集まった群衆は気が気ではない。負ければ、ハルキゲニアは悪魔の巣窟となる。群衆はただただソルジャーとロビンの勝利を願うのみだった。

 

「ロビン。私の提唱した真・友情パワーは憶えているな」

 

「もちろんだ」

 

 屈伸運動をしながらソルジャーがロビンに尋ねる。

 

「私は例え何があろうとこの友情に殉じたい。手助け、声援、一切無用!」

 

「ケケケ、ならこっちは悪魔の結束ってやつを見せてやるぜぇ~」

 

 ぽきぽきと指を鳴らし準備万端だと言わんばかりに余裕の笑みを浮かべスプリングマンはソルジャーを挑発する。

 

「では、試合開始」

 

 ロビンが生徒に持ってこさせた鐘を鳴らし、試合の始まりを告げる。

 

「先手必勝!このまま完封する」

 

 一気呵成にソルジャーが突っ込む、それに負けじとスプリングマンも突っ込む。しかし、両者が衝突する寸前でソルジャーは態勢を低くして突っ込むスプリングマンを下から抱え空へと打ち上げる。打ち上げたスプリングマンを追い、ソルジャーは跳躍し頭から落下するスプリングマンの足と自分の膝を打ち合わせ一気に体重をかけ相手を頭からキャンバスに落とす。

 

「あれは超人稲綱落とし!」

 

 驚くロビンにルイズがそれは何かと尋ねる。

 

「あれは魔界のプリンス、アシュラマンの得意技阿修羅稲綱落としの改良版。超人稲綱落とし。相手を脳天からキャンバスに撃ちつける必殺技だ」

 

「それじゃあ、ソルジャーの勝ちね」

 

「いや、ソルジャーは忘れている。スプリングマンは決して一流とはいえない超人だ、それがなぜ悪魔超人いや4000年もの間第一線で戦い続ける事が出来ているかを」

 

「ソルジャー!その技はスプリングマンには危険だ。すぐに技を解け!」

 

 ロビンの叫びはむなしく響きスプリングマンは脳天をキャンバスに打ち付けた。

 

「ケケケ、超人血盟軍のキャプテンとのあろうお方が相手の分析を怠るとわな。せりゃあ!スプリングキック」

 

 バネの体を持つスプリングマンはキャンバスに打ち付けられた衝撃を利用しソルジャーを反対にキックで宙に上げる。

 

「アトランティス、悪魔の友情。見せてやろうぜ」

 

「クケケケ!まかせろ」

 

 今まで沈黙を守っていたアトランティスがリングに上り、ソルジャー目掛けスプリングマンを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたスプリングマンはソルジャーに当たり撥ね帰り、撥ね帰ったスプリングマンをアトランティスが蹴り飛ばす。ソルジャーは絶え間なく続くスプリングマンの体当たりに落下することが出来ずにいた。

 

「これが悪魔のコンビネーション!超人ドッヂボールだ!」

 

 悪魔の無慈悲な攻撃にソルジャーから血が流れリングを赤く染める。

 

「アトランティス!これで終わりにする!構えろ」

 

 超人ドッヂボールを中断しスプリングマンはソルジャーの両足を掴み、その上から膝で体重をかける。

 

「クケケケ!スプリングマン!粋な計らいしてくれるじゃねえか。俺様のフィバリットで決めてくれるなんて」

 

「これで終わりだ。アトランティスドライバー!」

 

 アトランティスのフェイバリっト、アトランティスドライバーを繰り出すスプリングマン。ソルジャーは超人ドッヂボールで気を失い抵抗できない。ドライバーの落下ポイントにアトランティスが両膝を構えて待ち構える。

 

「ケケケケケケケケ」

 

 ソルジャーは頭からアトランティスの膝に落ちる。顔面を強打し、マスクから夥しい量の血を拭きだす。観客から恐怖の声が上がり、その中からソルジャーの主であるキュルケが飛び出てくる。リングで必死にソルジャーを呼ぶキュルケをあざ笑うように悪魔の笑い声が響き渡る。

 

「ロビン!どうして助けに行かなかったの!あいつら2対1で戦ってたじゃない!!」

 

 ルイズが目じりに涙を浮かべて抗議する。しかし、ロビンは腕を組みリングを見つめるだけだった。

 

「気高いあなたはどこに行ったの?あなたは目の前で人が死ぬ所なんて興味が無いなんて言うの?薄情だわ!」

 

「・・・・・ルイズ。少し黙ってくれ」

 

「ッ!?」

 

 珍しく露わにしたロビンの怒り。今までうるさくロビンを罵ったルイズは委縮する。仮面から覗く目に見つめられると体が動かなくなる。

 

「主よ。仲間が、命を賭して戦っているのだ。そこに私が割って入ってアイツらを倒したとしよう。それは仲間を侮辱することに他ならない!時として仲間を信じ突き放つ。それも又、友情だ。今はソルジャーを信じろ」

 

「でも、アイツらは2対1じゃない」

 

「2人も絶対に譲れない信条がある。悪魔の美学だ。何をしても勝利し、たとえ負けても命尽きるまで戦い続け決してただでは死なず、倒れる時すらも前のめりで力尽きる。その姿は、どこか美しさすらも私は感じる。ルイズ、君が彼らを侮辱するなら、同じく戦う者として私は君を許さない」

 

「・・・・」

 

「クケケケ!」

 

「カカカカカ!」

 

 リングでは気絶したソルジャーをスプリングマンとアトランティスが袋叩きにしていた。ソルジャーは既にノックアウト寸前であり、ロビンもソルジャーの勝利は絶望的だと感じていた。

 しかし、ロビンは見逃さなかった。ソルジャーの右手が僅かに動いたことを。

 

「ソルジャー!受け取れ!」

 

 ロビンはリングにある物を投げ込む。真っ赤なハンカチ。モンモランシーからロビンが拝借し投げ入れた真っ赤なハンカチを見て、ソルジャーの目に生気が戻る。撃たれ続けながら立ちあがりアトランティスをリング外に殴り飛ばす。そして、ハンカチを腕に巻き付け、叫ぶ。

 

「俺は負けん!俺を信じてくれた仲間の為に!」

 

 

「業火のクソ力だ!!」

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