七耀歴1204年3月31日
エレボニア帝国の帝都ヘイムダルからクロイツェン州の州都バリアハートへ向かうクロイツェン支線。
その車内には、この時期ならではの光景が広がっていた。
深い緑色の制服を着た、期待や不安をに滲ませた表情を浮かべる若き男女。
彼ら彼女らはみな、帝都から列車で30分ほどの場所にある街、トリスタにあるトールズ士官学院へ入学する新入生たちだ。
そんな新入生の中に、緋色の制服を着た深い青色の髪の“彼”の姿もあった。
(トールズ士官学院……エレボニア帝国中興の祖、ドライケルス大帝が作った学校か)
250年ほど前、帝国の大地を焼いた内戦を終結させたドライケルス・ライゼ・アルノール。後に獅子心皇帝と呼ばれる彼が皇帝に即位し、約30年後に設立した由緒ある学院だ。
他の新入生と同じく彼もまたトールズ士官学院に入学することになったのだが、その胸中には期待や不安ではなく‘疑念’があるようで………
(しかし、特科クラスⅦ組か。あの人から聞いた話では身分で区別されない特別なクラスらしいが、なんか胡散臭いんだよなぁ………)
流れる車窓をぼんやりと眺めながらそんなことを考える‘彼’の脳裏に、数日前の出来事が映し出される。
ーーー・ーーー・ーーー・ーーー
3月28日
帝国北東部、オルクスから東に10キロほどの地点。帝国正規軍の拠点の一つ、 ベルタール基地の司令部応接室に彼はいた。
テーブルを挟んで反対側の席には黒色の士官服を着た金髪の女性がいる。
目の前の女性に司令部まで呼び出された彼は話の流れで女性が発したとある単語が気になり、無意識に聞き返した。
「……はっ?特科クラスⅦ組?」
「そう。来年度からトールズ士官学院に新設されるクラスで、貴族・平民問わず優れた人材を育成するための場所。それが特科クラスⅦ組よ」
時折、湯のみに入ったお茶をズズッと飲みつつ、女性は説明した。
「貴族・平民問わずねぇ……それ、完全に貴族たちが言う伝統ってやつを無視してるけど大丈夫なの?」
エレボニア帝国には身分制度が存在する。貴族と平民に分かれ、さらに貴族の中でも爵位によって上と下に分かれる。
この身分制度は何百年も前から続いているシステムであり、今の帝国の形を作ったシステムとも言える。
トールズ士官学院では所属するクラス・制服の色・生活する寮までも貴族と平民で分けられている。
帝国で古くから続く身分制度を分かりやすい形で表しているのだが、女性が言う特科クラスⅦ組はそんな古くから続くシステムに真っ向から喧嘩を売るような形になっているのだが、どうやら問題はないようでーーー
「大丈夫よ。理事会でもすでに承認されてるし理事長の許しも得てるから。もっとも、反対する人もいたけどね」
「そりゃそうだ。で、さっきから疑問に思ってるんだけどさ。‘なんで俺にその話をしたの?’」
疑問をストレートにぶつける彼に対し、女性はどこか楽しげな声色で答えた。
「それはもちろん、貴方に入学してほしいからよ。Ⅶ組の生徒としてね♪」
「………はっ?」
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『本日はケルディック経由、バリアハート行き旅客列車をご利用いただきありがとうございます。次はトリスタ。トリスタ。1分ほどの停車となりますので、お降りになる方はお忘れ物のないようご注意ください』
ふと気がつくと、車内の女性の声でもうすぐ次の駅に着くという内容のアナウンスが流れていた。
(っといけねぇ。このまま乗り過ごしたらケルディックまで行っちゃうから降りないと)
少しだけ慌ただしくなる車内で彼もまたまた大きめなカバンと 数十センチほどの長さの包みを持って列車の出入り口へ。
降りる客の小さな行列に並びながら周りを見渡してふと思う。
(しかし、見事に緑色の制服しかいないな。……まさか俺だけじゃないよな?)
この車両に緋色の制服を着ているのは彼一人だけ。
一抹の不安を感じていると、列車がトリスタ駅に滑り込んだ。
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郊外都市トリスタ。
都会というほどではなく、田舎というほどでもない。
駅前の商店街には帝都に本店を持つブティックの支店や参考書の種類が豊富な本屋、学生に優しいお値段の雑貨屋に街の人や学生が集まる宿酒場などがある。
落ち着きのある感じてでなんとなく居心地の良さそうな感じの街並みだ。
(なんかいい感じの街だな。帝都ほど雑多な感じもないし、過ごしやすそうだわ)
改札を抜けて北口から街へと出た途端、街並みが目に映る。どうやらパッと見ただけで気に入ったらしい。
白いライノの花が駅前を中心に街の各所で咲き誇る中、学院へ向かって歩きながらちらりと駅前の小さな広場に目をやると、緋色の制服を着た三つ編みの女子生徒の姿があった。
彼一人ではなかったようでちょっとだけ安堵する。しかし、その女子の動きを目で追った彼は先ほどとは違う種類の不安に襲われた。
(おいおい、あのまま行くと街灯にーーー)
直後、ゴーンという痛々しい音が広場に響いた。
彼は額を抑えてうずくまる女子に慌てて駆け寄る。
「おい、大丈夫か?」
「うぅ〜……はい……なんとか」
「うわぁ。額が赤くなってるじゃん。血は出てないようだけど」
そう言いながらチラリと足元を見ると、一冊の本が落ちているのに気づいた。どうやらこれを読みながら歩いていたらしい。
「ったく、歩く時はちゃんと前見て歩けよ。ほら、立てるか?」
「あ、ありがとうございます」
差し出された手を握り、少し涙目な女子は額を抑えつつ立ち上がる。
「あとほれ」
ぶつけた拍子に落ちた本を拾い、女子に差し出した。
「あの、本当にありがとうございます」
二度目のお礼を口にする三つ編みの女子生徒。彼女は本を受け取ろうとするが、彼の方を見た瞬間動きが止まった。
「ん?どうした?」
「あっ、いえ。同じ色の制服だと思って」
「ああこれか。カッコいい色合いでいい感じだよな」
「そうですね。でも、ほとんどの人は緑色の制服なのに、なんで私達だけ赤いんでしょう?」
制服の色に関する疑問を口にする女子。それを聞いた彼はとあることに気づいた。
(これってもしかして、他の生徒に知らされてない感じか)
制服の色からして目の前の女子生徒がⅦ組の生徒なのは間違いないが、どうやら彼以外は新設されたクラスについては知らされていないらしい。
「さてな。とりあえず何かしらの理由はあるだろうが……まぁ追々分かるだろ」
「そうですね」
新設されたクラスについて、現時点では伏せられてることを察した彼はとりあえず黙っておくことにした。
「さてと。とりあえず立ち話は程々にして、学院へ行かないとな」
「ですね」
その後、二人はなりゆきで一緒に学院へ向かうことにした。
「あっ、自己紹介してませんでしたね。私、エマ・ミルスティンっていいます」
「リデル・バートレットだ。よろしくな」
道すがら、互いに自己紹介したあとに二人は先ほどの本について喋り合うのだった。
この間始めた閃の軌跡にハマりすぎてた結果がこれだよ!
というわけで閃の軌跡のSSを書き始めました
主人公のリデル君はⅦ組の中心になっていく予定です
そして、いろんな過去や事情を背負っているⅦ組のメンバーらしくリデル君もいろいろ背負ってます
ていうか、あの面子で一番何もないのってエリオットだけな気がする
ガイウスは故郷絡みでいろいろあるから。うん
しかし、もうすぐ閃の軌跡Ⅲが発売ですな
自分は諸事情で始めるのが少し遅れそうですが、残された謎が粗方明かされそうで今から楽しみです
ていうか、早くⅡを終わらせないと……