艦これ〜君と歩む道〜   作:双竜

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今回は神通編です!
神通…豆まき…?なんのこと?


神通編

キスカ島攻略戦・撤退戦から半月過ぎた。未だに深海棲艦による反撃はない。と、疲弊した大湊警備府の代わりにキスカ島を防衛、運営している舞鶴鎮守府からの報告を聞く。そして、舞鶴鎮守府がキスカ島に滞在できるのはあと半月。燃料や弾薬が不足している状態であり、元々こんなことをするのが珍しい世の中である。1ヶ月とはいえ、負担が少ないのは喜ばしいことだと思う。

 

コンコンコン

 

報告書をまとめていると、ドアを叩く音が聞こえた。時計を見る。時刻は13時。演習が30分前に終わっている。おそらく神通が報告書でも持ってきたのだろう。

 

「入れ」

「失礼します。演習の報告書、持ってきました」

「流石だな。仕事が増える」

「そんなことを言ってるから仕事が終わらないんです」

 

そう言いながら、神通は山と化した書類に手を伸ばす。が、俺はそれを言葉で制した。

 

「神通、今日から3日休暇を与える。キスカ島での戦いの分だ。しっかり休め」

「……了解しました。他のメンバーに休暇は?」

「気にするな。勝利の女神にも休暇は必要だ。それくらいならみんな許してくれるさ」

「そう、でしょうか?」

「ああ」

 

その言葉を聞くが早いが、神通は山に伸ばしていた手をさらに伸ばし、山を削り出した。

 

「神通?」

「それなら、私は提督の仕事を減らしますね。それがわたしのしたいことですから」

 

よくわからなかったが、神通がそれでいいならいいのだろう。休日中の部下の生活内容に口を出すほどお節介ではない。

 

「はえぇ…」

 

恐らく、いや、早く終わったとしても4日はかかるであったであろう山が、1日にして消えていった。もしかしたら大淀に並ぶ処理能力なのかもしれない。

 

最後の書類を神通が持ってきた。が、何か言いたそうに見えた。

 

「神通?どうした?」

「ッ!!…い、いえ。なんでもありません」

「…?そうか?ならいいんだが…」

 

顔を上気させて、神通は足早に執務室から去っていった。何かやってしまったのだろうか…。不安にも思ったが、幸か不幸か神通と入れ替わりで入ってきた阿武隈の相手をすることになった。彼女もまた、キスカ島撤退戦の英雄だ。神通のことを頼もうかと思ったが、阿武隈には阿武隈の都合があるようだ。どうやら、自分のことは自分で解決しなければならないようだ。

 

結局、なんの進展もないまま、夜になった。時計を見る。時刻は23時。今日は夜の遠征も演習も出撃もない。駆逐艦や生活リズムの良い艦娘たちはもう布団の中だ。ちなみに、神通は生活リズムが良い艦娘の1人だ。今日は無理か。そう思った矢先、窓が開いて忍者が入ってきた。

 

「お邪魔するよ。提督」

「窓から入るな邪魔するな」

 

窓から入ってきたのは『夜戦バカ』で有名な川内だった。

 

「お、そんなこと言っていいの?耳寄りの情報を持ってきたんだけどなぁ」

「…なんだ?」

 

その一言を待っていたかのように、川内はニコニコしだした。青葉の様に何かを要求されるかと思ったが、『夜戦バカ』の名は伊達ではないらしい。

 

「しょうがないなぁ。そんなに知りたいなら、今度の夜戦マップの旗艦は私にしてよね!」

「ああ、約束しよう」

「流石。話がわかるね!それじゃあ、これ」

 

川内が懐から取り出したのは1通の手紙。

 

「これは?」

「私宛の手紙だったんだけど、明日は私、演習じゃん?だからさ、代わりに提督に行って欲しいんだよね」

「なんで俺なんだ?」

「提督もスミには置けないね。それじゃ!」

 

質問にも答えず、川内はドアから出て行った。当然、まどは空いたままだ。後で閉めようと思い、手紙に目を通す。手紙の内容は、いたってシンプルだった。一言で言えば、買い物に付き合って欲しい。という内容だ。

約束の時間は8時。正直行きたくはなかった。間違いなく間が持たない。ただでさえ今日が今日だ。行く気が湧かないのは当然だと思いたい。

それからしばらく考えていても、結局考えは変わらなかった。時刻は1時。そろそろ寝ようと思い、窓を閉めに行くと、窓の下にあるベンチに神通が座っていた。声をかけようとしたが、できなかった。雰囲気がさせてくれなかった。俺は、決心した。

 

後で聞いた話だが、川内は執務室から出た後、こう呟いたらしい。

 

「鈍感な提督と奥手な妹…世話がやけるよ」

 

と。

 

ーー次の日ーー

 

「というわけでさ、私の代わりにゲストを呼んだから、その人と行ってね」

「わかりました。ゲストは誰ですか?」

「教えなーい」

 

どこかそわそわした雰囲気の神通を置いて、部屋から出る。

 

「後は…任せたよ。提督」

 

「というわけなんだけど…俺でいいのか?」

 

提督代理は阿武隈に任せた、と付け加えると神通はコクンと頷いた。目を合わせてくれないのは昨日のことを引きずっているのか、昨日川内が言っていた内容のせいか。答えは彼女にしかわからないだろう。読心術なんか使えるやつはいないのだから。

 

目的地は最近できた噂のデパートだった。当然、行くまでは間が持たず、小さい子に『なにあれー』と言われる雰囲気だったが、デパートに着くと神通は目をキラキラさせた。当然だろう。仕事をしない提督を支え、夜戦バカな姉をもち、アイドル志望の妹を持つ。それだけでなく文武両道。これだけの部下、いや、仲間とはいえ、仲間は年頃の女の子なわけだ。当たり前の様に、息抜きは必要で。

 

それからはいつも通りではない神通とショッピングをした。

 

「提督、この服、似合いますか?」

「…ああ。似合ってるよ」

 

毎日同じ服を着ているのに慣れているせいか、どんな服を着ても違和感を感じた。それでも、違和感を超える何かがあった。それが何なのか、俺にはわからない。本人がわからないのだからきっと誰にもわからないだろう。1つ言えることは、この服は買っても着るチャンスは殆どなく終わっていくこと。それだけだ。結局、服は買わずに別の店にむかった。

 

「これ、提督に似てますね」

 

雑貨屋で神通が持ってきたのは、いかにもやる気のないペンギンのぬいぐるみだった。それを持ってきた神通の考えは、流石に鈍感な俺でもわかった。

 

「提督、これ、買ってきますね」

「ちょっと待て。お金は俺が出す。プレゼントだ」

「え?いいんですか?」

「俺が嘘をついたことがあるか?」

「確かに提督はやる気もないし仕事も貯めますが、約束は守りますね」

 

神通はどこか感慨深げだったが、俺にお金を支払わせてくれた。嬉しそうな神通をみると嬉しくなるのはしょうがないことだろう。

 

最後に寄ったのはアイスで有名なカフェだった。何でも、神通が艦娘になる前から行きたいと思っていたお店の支店らしい。時間に余裕はなかったが、断る訳にもいかない。最悪権力を使ってタクシーを使えばいいのだ。

 

「まさかラス1だったとはな…よかったな。神通」

「提督、本当にいいんですか?私だけ食べちゃって」

「気にするなよ。神通が前から食べたかったやつなんだろ?」

「そうですか…。ありがとうございます」

 

神通が前々から行きたがっていたという店は相当な人気店だった。待つのに時間がかかった上に、神通でちょうど売り切れた。店員さんは非常に申し訳なさそうだった。

 

「提督?一口、食べますか?」

 

どうやら考え事をしているのが神通の目には物欲しそうな目に映ったのだろう。

 

「いや、大丈夫だ」

「いえ。今日のお礼です。食べてください」

 

神通はいつになく強情だった。このままでは埒が明かないと思い、神通の提案を受けいれた。

 

「わかった。一口だけ頂こう」

「最初からそう言えばよかったんですよ」

 

そう言いながら神通はアイスをスプーンですくい、口元に運んできた。

 

「…はい。どうぞ」

「あ、ああ」

 

神通の意外な行動に驚きながらも素直に食べる。アイスが何の味かすらわからなくなるほどに驚き、緊張したのだろう。感想が言えなかった。見てみれば、神通も目をそらしている。

 

帰りはバスがギリギリあったため、滑り込みで乗車する。行きとは違い、『なにあれー』状態にはならなかったが、話が弾んだ訳でもなく、行きと同じ状態だった。

 

鎮守府に着いたのは、日が山を燃やしている時間だった。

 

「今日は、ありがとうございました」

「こちらこそ。楽しめたか?」

「はい。それで…お願いなんっすが…」

「なんだ?」

 

そう聞くと、神通は口を開き、閉じる。体感時間は1時間にも、2時間にも匹敵した。が、実際の時間は10秒にも満たなかっただろう。それだけ、長く、みじかい時間だった。

 

「平和になったら、また私と、出かけてくれますか?」

「もちろん」

 

悩まずに、迷わずに返答した。そもそも悩む必要も迷う必要もない。その言葉を聞くと、神通は今までにないような笑顔で、顔を上気させて、言った。

 

「ありがとう、ございます」

「顔、赤いぞ」

「そ、それは夕日のせいです!」

 

ペンギンのぬいぐるみを抱きしめ、慌てて弁明する様子は、可愛かった。普段の神通からは想像できないほどに。

 

「提督。これからも、一緒に、頑張りましょうね」

「ああ。これからも、よろしくな」

 




はい。豆まきじゃありません。
誰だ?神通は鬼とか言った奴!

それでは神通編終わりです。次は誰かな〜
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