艦これ〜君と歩む道〜   作:双竜

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三日月ってどんなイメージですか?
え?ガンダム?それは違う人ですね。


三日月編

蝉の鳴き声が響き渡る中、遠征の報告書を持ってきた秘書艦である三日月の声で覚醒した。

 

「司令官、お疲れですか?」

「あ、ああ。そう言われれば、そんな気もするな」

 

伸びをしながら、三日月の問いに答える。当然ながら、嘘だ。出撃に次ぐ出撃、遠征に次ぐ遠征、開発に次ぐ開発。本部に伝えなければならない報告書をまとめ、提出しなければならなかった。

 

「ちゃんとご飯、食べてくださいよ?」

 

ギクリとした。もちろん食べていないわけではない。朝昼晩1日3食パンを食べている。

 

「ちゃんと食べてるさ」

「嘘はよくないですよ〜。鳳翔さんに聞いたんだから!」

 

すぐにバレた。そりゃあそうだ。あの鳳翔さんから聞いたというのだから。バレても仕方がないと思いたい。

 

「だから司令官。今日もパンはダメですよ!」

「でも食欲ないからなぁ」

 

これは本心だ。疲れたのと夏バテだろう。まったく何もやる気が起きない。食欲もない。ないないづくしだ。

 

「そうなんですか?!それなら三日月にお任せください!」

「任せたぁ…」

 

机に突っ伏しながら、答えた。もう少し冷静だったら、頭の回転が早ければ、その言葉の意味に気づけたであろうが、今の俺には無理だった。

 

「それじゃあ、司令官。おやすみなさい」

「ああ。おやすみ」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

あぁぁぁぁぁ。

 

なんてことを言ってしまったのかと、足早に執務室を出てから公開した。夏であるはずなのに、頰を撫でる風が冷たく感じる。本来なら走ってはダメな廊下を走りたくなってしまう。が、どんなにオーバーヒートしていても、それくらいの理性はまだ頭の片隅には残しているつもり。なんとか走ることだけは我慢した。

 

いつの間にか、自分の部屋に着いていたみたいだった。ドアノブを捻り、中に入る。

 

「ん。あ〜お帰りぃ〜」

「もっち!ど〜しよ〜!!」

 

漫画を寝っ転がり、◯ーラやポテ◯を貪っている望月、通称もっちの姿を捉えた。その姿はまるでとあるアニメの干妹であるが、三日月がそのアニメを知る由もなく。

 

「な〜にぃ〜?」

「司令官にね…!」

「えぇ〜。それって聞かなきゃダメ〜?」

「聞いてよ〜!」

 

ブツブツ言いながらも、視線は漫画から逸れているもっちをみると、やっぱり素直な妹だと思う。そして、その姿が安心感をもたらしてくれる。

 

「実はかくかくしかじかで…」

「会話で『かくかくしかじか』を使う人初めてみたよ」

「そこに触れちゃダメだよ〜!」

 

作者の都合を指摘してくるところは流石ムードブレイカー兼ムードメイカーのもっちだと思う。だけど、今は感心している場合じゃない。

 

「まぁ、事情はわかったよ」

「で、どうしたらいいかな?!」

「鳳翔さんに聞いてみたらいいんじゃないかなぁ?」

「…そうだね!そうする!」

 

案の定もっちは良い案を出してくれた。思い立ったが吉日というように、鳳翔さんに聞きに行こうと思ったが、今は夜だということを思い出し、明日にしようと思った。

 

ーー翌日ーー

 

「三日月ちゃんは、提督さんに作りたいのよね?」

「はい」

 

鳳翔さんは少し悩んだみたいだった。珍しく腕を組んで、明後日の方を眺めている。

 

「人間と私達の味覚は多少違いがあるの。それは覚えてる?」

 

覚えている。過去に料理を教わった時に教えてもらった。頷くと、鳳翔さんは笑顔になった。

 

「それなら、水餃子にしましょうか」

「水餃子、ですか?」

 

『水餃子』、と聞くと、夏バテに効くようには思えなかった。だけど、鳳翔さんが提案するくらいだ。きっと何か策があるのだろう。

 

「それじゃあ、始めましょうか」

 

こうして、水餃子を作るための調理が始まった。

 

「用意するものは、大葉、ネギ、豚ひき肉、餃子の皮、後は調味料ね」

「わかりました!」

 

「しばらく私は演習に行ってくるから、頑張ってね」

「はい!」

 

鳳翔さんが去ってからもひたすらに練習した。人にだすなら、ちゃんと作れるようになりたい。相手が司令官なら尚更。

 

「う〜ん?なんかアクセントがない気がするなぁ…」

 

ある程度上手には作れるようになったが、味にアクセントがない。この味では『普通』の水餃子だ。

 

「お困りですか?!」

「ふぇっ!?」

 

突如現れたのは金剛さんの妹。名前は確か…そう。比叡さん。料理のダークマターの創造主だと言う噂の持ち主。

 

「だ、大丈夫です!大丈夫です!」

「そうですか?ならいいんですが」

 

もっと付きまとわれるかと思っていたが、以外にもすぐに立ち去ってくれだ。料理の腕前は別として、司令官を支える1人の実力者としては、尊敬すべきところはある。

 

「三日月か。何をしている?」

「あ、磯風ちゃん。料理だよー?」

 

比叡さんと入れ替わりで入ってきたのは磯風ちゃんだった。彼女もまた、ダークマターの製作が可能という、ある意味貴重な能力の持ち主だ。

 

「料理だよ?磯風ちゃんは?」

「私か?私も料理だ」

 

え?と思ったが、可能が作り出したのは『お茶漬け』だった。記憶を探る。『お茶漬け』を『料理』というのは磯風ちゃんだけだ。

 

「なるほどな。それなら、強壮剤なんかどうだ?」

「ええ?!」

 

お茶漬けを食べながら事情聴取された末に、提案されたのは強壮剤。明らかに料理に入れるものではないが、磯風ちゃんの説明を聞いているうちにそうなのかもしれないと思った。

 

……少女料理中……

 

「うむ。これはないな」

 

磯風ちゃんが呟いた。やっぱり?と思ったが、言わなかった。完成したものは、『虹色』の水餃子。なんといっても色がひどい。匂いもひどかった。

 

「それでは私はお暇しよう」

「食べてってよぉー!」

 

叫び声を背に、磯風ちゃんは去っていった。これどうしよう、と悩んだのもつかの間。すぐにゴミ箱にシュートした。尊い犠牲だが、しょうがないことだと割り切る。

 

「三日月ちゃん、出来た?」

「あ、鳳翔さん。なんか物足りないかなぁって感じです」

「そう…」

 

冷蔵庫を覗き、鳳翔さんが取り出したのは『らっきょう』。水餃子の中に入れるのは抵抗があるが、アクセントには確かになる。

 

「らっきょうで、試してみる?」

「はい!」

 

急遽、材料の中にらっきょうを入れての練習が始まった。らっきょうが入るだけで加減が変わってくるだけあって、感覚がわかりにくい。

 

……数時間後……

 

「出来た!」

 

目の前にあるのは見た目も味も(鳳翔さん曰く)完璧の水餃子。時間がかかっただけあって、感動すら覚えた。

 

「それじゃあそれを、提督さんに食べてもらわないとね」

「…そう、ですね」

「恥ずかしい?」

「恥ずかしいです」

「私がもって行きましょうか?」

「私が…もって行きます」

「なら、頑張って。三日月ちゃんなら大丈夫よ」

 

鳳翔さんにエールを貰い、勇気が出た。厨房を出るといつも以上に疲労困憊なもっちに出会った。

 

「三日月ぃ…仕事サボるなよぉ…」

「え?!あ、ゴメンもっち!」

「別にいいんだけどさ、失敗しないでよ、それ」

 

もっちからも応援され、さらに勇気が漲る。それに加え、緊張感も増幅している中、執務室に向かって歩く。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

仕事を珍しく望月が手伝ってくれたお陰で、どうにか夕食はたべれそうだった。食堂に行くために、席を立つと、ノックがなった。この時間に誰かがくるのは珍しい。誰だろうか。

 

「入れ」

「失礼します」

 

入って来たのは本来の秘書艦である『三日月』だった。望月から話は聞いている。大事な人の為にするべきことがあるから今日は休む、と。本来なら許される行為ではないが、許した。あの望月が自分から執務を手伝うぐらいだ。よほど大切なことなのだろう、と思ったからだ。

 

「司令官、これ、食べてください」

「ありがとう」

 

三日月が差し出した水餃子が乗ったお盆を受け取る。

 

「三日月が作ったのか?」

 

三日月が持って来た時点で、気になっていた質問をぶつける。ビクリと三日月の方が震えたのを確認した。流石にストレート過ぎるかと気づき、聞き直そうとしたが、三日月が早かった。

 

「司令官に、ちゃんとご飯を食べて欲しくって…」

 

三日月は目を逸らしながら答えた。それ以上追求するのは流石にマズイ。取り敢えず食べることにする。

 

「…美味しいよ」

 

以外にも、と、言っては失礼だが、美味しかった。水餃子にしてはシャキシャキする食感。これは…。

 

「らっきょう、か?」

「はい。鳳翔さんに教えてもらって」

「そっか」

 

久々のまともな食事であり美味しいだけあって、箸が止まらなかった。

 

「三日月、もし、迷惑じゃ無ければ、週1でいいから、料理を作ってくれないか?」

「…え?」

 

聞き取れなかったのだろうか、もう一度言う。

 

「迷惑じゃ無ければいい。週1でいいから俺の為に料理を作ってくれないか?」

 

間があった。

 

「……はい!わかりました!」

「ありがとう」

 

間があったが、どうやら作ってくれるようだ。逸らした目を戻し、どこかキラキラした表情をした三日月を見つめる。こんな仲間を持てて、良かったと。

 

「これから、よろしく」

「違いますよ。司令官。これからも、です」

 

そう言うと、三日月は走り去っていった。

 

「確かに、これからも…だな」

 

呟いた声は、誰にも聞こえることはなかった。




ありがとうございましたm(_ _)m
三日月ちゃんってなれない。三日月さんがやっぱり楽ですね。はい。
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