艦これ〜君と歩む道〜 作:双竜
青葉関連で似ている話はない、と思うので、よろしくお願いします。
バァン!
ノックもなしに執務室のドアが蹴破られた。蹴破られるのなら、ノックがあっても入れはしないが。
「しっ、司令官!嘘ですよね?嘘だって言ってください!」
入って来たのは青葉だった。ツカツカと机まで来ると、突如肩を掴んできた。そのまま流れ作業のように揺さぶられ、首がガクガクと揺れる。
「はぁ、はぁ、だから、これが証拠だってば…!」
後から追いかけて来たのだろう。息を切らしながら入って来たのは工作艦『明石』。彼女が手に持っているのは先日行われた身体検査の結果が書かれている紙だ。身体検査は、制服のサイズ合わせの為に行われるのであって、決して覗いたりはしていない。多分。
「そ、そんな身長、捏造ですぅ!」
「そ、そんなに悪いのか?」
明石から紙を受け取り、結果をみる。身長156cm。低すぎることはないはずだ。
「なかなか高いじゃないか」
素直な感想だ。
「提督、そこじゃないんですよ…」
「え、じゃあなんだ?」
紙をもう一度見る。先ほどの表記以外には身長なんて見当たらない。他になんかあっただろうか。
「青葉、重巡で1番身長が小さかったんですよぉ!」
「そ、そうなのか」
としか言いようがない。実際問題、他の重巡の身長がわからないのだ。
「明石、他の重巡の身長はわかるか?」
「えーっとですね…。古鷹さんが160cm、加古さんが159cm、衣笠さんが163cm。鈴谷さんが164cm、利根さんが162cm、筑摩さんが168cmって感じですね」
「なるほどなぁ」
聞いてみた感じ確かに小さい。妹である衣笠にさえに抜かれているのだ。それは確かに響く。
「伝えたくはないんですが…防空駆逐艦の秋月さんは162cmです」
「それの所為だな!ん?それだと加古はどんな感じだ?」
「加古さんは……なんとも思っていないみたいですが」
「そうか…」
仮に加古が青葉と同じようになっていれば、青葉も多少は救われただろう。それでも、秋月に抜かれたのは相当に痛いのかもしれない。彼女はただの駆逐艦ではないのだから、仕方がないといえば仕方がないのだ。
「司令官、身長くださいぃ!」
やっと口を開いた青葉は、部屋の隅で丸まっている。あれ?関係ないけど金剛と筑摩の身長同じなのか。
「あ、青葉。そんなに身長が欲しいのか?」
「は、はい。そりゃもちろん」
青葉の意思は確認した。それなら行動するまでだ。
「なら行くぞ」
「どこに?」
「取材にだよ」
「……はい!」
意図を察したのだろう。涙を拭き、頷いた。
「というわけで、明石。ちょっと代理頼む」
「はぁ。しょうがないですね。今回だけですよ」
文句を言われるのを覚悟したが、意外にも二つ返事で、了承してくれた。彼女もまた、思うことがあるのだろう。例えば、恩を売っておこうとか、な。
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「大和、お前の身長200cmなんだって?」
「199cmです!増やさないでください!」
青葉と共に聞き込み調査を開始したのだが、最初に出会ったのは大和と武蔵。だった。彼女たちは
「武蔵は?」
「私か?私は205cmだが」
「むぅさぁしぃー!」
「え?ちょっ!待ってくれ姉さん!」
バキバキバキ
今目の前で尊い犠牲者が出た。 といっても、入渠すれば治るのだが。資材が溶けるだけだ。また駆逐艦や軽巡洋艦の皆様に頑張ってもらわないといけないな。
「青葉、こいつらはダメだ。他の奴に聞きに行こう」
「ですね」
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「加古ぉー起きてぇ!出撃だよー!」
「わかっ…てる…Zzz…」
「起きてぇー!」
「Zzz…むにゃ…」
「起きろぉー!」
バキメキバキ
「…………青葉、どうする?」
「他をあたりましょう」
「そうだな」
また尊い犠牲者が出た。また入渠か。はぁ。
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「あ、司令と青葉さん。珍しい組み合わせですね」
「ああ。ちょっと聞きたいことがあってな。な?青葉」
「はい。そうです」
「私にインタビューすることってなんですか?」
横から、深い息を吐く音が聞こえてくる。
「秋月ちゃんに質問です」
「はい」
「ズバリ、身長が高い理由は?」
「そうですね…」
返答に困っているように見える。彼女の性格からすると『言いたくない』や、『隠している』のではないだろう。それが出来る秋月ではない。
「…やっぱり、私はなにもしてないです」
「いつもの生活内容は?!」
青葉も必死そうだ。あの秋月が引きつった笑みを浮かべている。割とレアな表情だ。カメラを持ってこれば良かった。
「普段の生活、ですか?それなら、ちゃんと食べてちゃんと運動してちゃんと寝ているだけです」
「ふむふむ。他には?」
「なにもないと思います」
秋月の台詞をまんまメモする青葉。字を書くの早いな。
「秋月ちゃん、ありがとうございました」
「いえ。参考になれば幸いです」
感謝の意を伝え、秋月と分かれる。
「どうだ?」
「正直なところ、秋月ちゃんの回答じゃ足りません。青葉だってそれくらいはしてます!」
「だよなぁ」
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「あのスレンダー美女は叢雲?」
「なんだかんだ言っても叢雲ちゃんも身長高いですよねぇ」
「確かになぁ。あいつの身長が羨ましいぜ」
青葉の横で激しく同意をしたのは俺ではない。駆逐艦巨乳BIG7に入ると噂される『長波』だ。お前は胸部装甲あるから別に身長いらないだろ、と思ったのは内緒だ。
「青葉、突撃取材してきます!」
「おう」
「期待してるぜー」
走って取材に向かう青葉。先程までの涙が嘘のようだ。
「提督。叢雲が素直に教えてくれると思うか?」
「思わないな」
「じゃあ賭けしようぜ」
唐突な申し出だった。賭けか。軍では禁止されているがバレなきゃいい。バレなきゃ犯罪じゃないのだから。
「その話、乗った」
「そうこなくちゃな!何賭ける?」
「100円」
「じゃあ私は『不味い棒』だ」
「え、ちょ、ま」
『不味い棒』それはかの有名なジャイ◯ンシチューと同じ味がするといわれる食べもの。勝っても負けても損しかない。
「……しても……で……か?」
途切れ途切れに聞こえる青葉の声。何故かこちらをチラチラ見ながらの取材だ。集中して欲しい。
「……から……だって……たって」
叢雲が何を言ったのかはわからないが、青葉が肩を落としながら帰ってきた。しかし、その表情はどこか嬉しそうで。
「どうだった?」
「ダメでした。『何もしてないし人に何を教えるほど私は立派じゃない』といわれました。叢雲ちゃんは見た目だけじゃなくて中身も大人ですね」
「そうだな」
「確かにな」
叢雲は俺たちの方を向くと、敬礼して立ち去った。わざわざやらなくてもいいが、彼女がやる必要があると思ってやったことに言葉を挟むつもりはないが。
「それでどうする?」
「あと1人ぐらいは聞きたいです」
「よし、じゃあ聞きに行くか」
長波を置いて、青葉と歩き出す。後ろから、「あとで『あれ』持って行くからなー!』と言われたが、誰も食べません。
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「それで、この衣笠さんが目に止まったってわけね」
「まあ、そうだな」
「ふ〜ん」
何故かジト目を向けてくる衣笠。その目は、何かを伝えようとしているようにも見える。何秒か見つめ合っていたが、意図が伝わっていないと判断したのか、目を逸らされた。相変わらず目はジト目のままで。
「え、えっと、衣笠…?どうしたの…?」
「どうしたの…?じゃないでしょ?青葉」
何故かジト目で微笑を浮かべ、青葉に近寄る衣笠。その衣笠に恐怖を感じたのか、青葉は走り去って言った。
「提督。ワザと付き合ってた?それとも、わかってない?」
「……ワザとにしろわかってないにしろ、青葉の為になったなら、それでいい」
「そう言うと思った」
ジト目をやめると、衣笠は背伸びをして、俺の耳元で囁いた。
「青葉は、提督と居れればよかったんだよ」
そこまで言うと、衣笠は踵をつける。
「早く追いかけなきゃ」
「悪いな」
青葉が走り去った方に足を向ける。捕まえるのに苦労しなかったことは、言うまでもない。
どうだったでしょうか。似ている話、あるのかな…?
※この文章内に出てくる艦娘の身長は、筆者の脳内鎮守府を反映したものです。