艦これ〜君と歩む道〜 作:双竜
「あー!今日も無理だったかー」
「司令官、なにしてんの?」
仕事中にパソコンのオンラインゲームをしている司令官にジト目を向けつつ、画面を覗き見する。
「フレンド申請を送ってるんだけど、かれこれ一ヶ月は拒否されてるんだよ」
「へー。大変だねー」
関係無いことだと思っていたけど、画像を見ると嫌な汗が出てきた。まさか、ね。そんなはずはない、と思いたい。のだけど…。
「相手のユーザーネームは?」
「『 SKNaMi 』って人だよ」
あ、これ敷波だ。まさか、『Tさん』が司令官だったなんて。世界は狭いなぁ…じゃなくて!
「司令官、なんでその人にフレンド申請送ってるの?諦めたらいいじゃん」
「この人さ、俺がこのゲームを始めた時に何から何までお世話になったんだ。しかもこの人1人しかフレンドいなくてさ」
「へー」
確かにクエストとかは付き合ったし要らない装備(限定品)を上げたりしたけどさぁ。そこまで好かれるキャラじゃなかったと思うんだけどな。無言プレーばっかりだったし。
「ちなみに、『姫神』って呼ばれてるんだよ」
「なんで姫?」
「女の子だって噂が立ってるんだよ。しかも公式戦ベスト4の常連だしね」
「へ、へー」
まさか共有チャットでそんな話までされてるとは…。今日からチャットに顔出ししとこう。うん。
「ま、頑張ったらいいじゃん」
「おう」
ーーーーーーーーーーーー
「はぁー。どうしようかな」
「どうしたの、敷波?」
「あーいや、例のフレンド申請さ、誰かわかっちゃって」
「え?誰なの?」
「司令官」
「…世界は狭いね」
「やっぱりそうなる?」
「うん」
秘書艦としての仕事も終わり、自室に帰る。自室と言っても、姉の綾波と同じ部屋なんだけどね。
「それで、自白はしたの?」
「してないよ」
「そっか」
そう言いながら、パソコンの電源を入れる綾波。あたしがこのゲームを始めたのは綾波が原因だと言ったら、何人の人かが信じてくれるかな?
「今日はどうする?」
「うーん。対戦、しよ。公開で」
「わかった」
気持ちを切り替えたかったからか、綾波と対戦をすることに抵抗は無かった。しかも、公開対戦だから、プレイヤー全員が観戦できる。ちなみにこれは、ベスト8以上の人に与えられた特権。
「申請送ったよー」
「うん」
パソコンにメールが2通届いた。1通目は内容は読まずに、『了承 』のボタンを押す。すると、パソコンのイベント欄に一文が追加された。
『ゲリライベント!公式戦ランキングベスト2位の『AY』さんと4位の『SKNaMi』さんのフレンドマッチ!みんなで応援しよう!』
という文章が。
普段、このようなゲリライベントの観戦者はそうそういない。よほどの暇人か、大会の上位常連の人達だ。だけど、今回は違う。公式大会ベスト2位であり、このゲーム内でユーザー達から天使扱いされている綾波、もとい『AY』が戦うのだ。当然、応援する人も多い。『天使』じゃなくて、『鬼神』なんだけどなぁ。綾波は。
2通目のメールを開ける。そこにあったのは、『カード寄付します』の1文。差出人は『Tさん』。前から欲しいと思っていたカードだった。このカードを手放すなんて、ありえないはずだった。だけど、今、カード一覧にそのカードはある。タイミング的に。フレンドバトルがあると知ってから送ってきてくれている。敷波に出来るのは、このカードをデッキに入れて、『AY』に勝つこと。
『やっぱりいつものデッキなの?』
『言うわけないじゃん』
ゲーム内だからこそ、本来、顔が見えないものだからこそ、姉妹では無いように振る舞える。いつもの日常会話とはまた違う、接し方。だけど、きっと、相手が司令官だと知っている今では絶対に今まで道理に接することは出来ない。
「考え事?」
「ん、なんでもないよ」
「わかった。だけど、手加減はしないよ」
「もちろん」
これは、向かいから聞こえてくる綾波の声。だけど、いつもの声とは違う。この声は、何かを考えている声だ。顔を見なくてもわかる。ホント、隠し事が苦手なんだから。思わず、笑がこぼれる。
ゲーム画面では、対戦開始までの時間が刻刻と近いて来ている。当然、『AY』を応援している人は多い。だけど、その大半はレベルの低い人達。きっと、ふだんの綾波のプレイスタイルによるもの。対して『SKNaMi』を応援している人は少数派。その中に、『Tさん』はいた。
「そろそろだね」
「うん」
3、2、1、0
ゲームがスタートした。
序盤はお互いに何も仕掛けない、静かな滑り出し。中盤も、『AY』は何も仕掛けて来ない。序盤から中盤が得意な『AY』にしては、動きがおかしい。
「(仕掛けて来ないなら、こっちからいくよ…!)」
手札にある、大型ユニットを並べる。火力は足りないけど、攻める時に攻める。攻めきってみせる。
ガッ!ガッ!ガッ!
15あったライフを3まで減らした。次のターンで終わりにする。あのカードが来なければ、勝てる。
『甘かったね。SKNaMさんi』
コメントが来た。まさか、持ってるって言うの?あのカードを。
『Rewrite』
協力過ぎるが故に、ゲーム内で3枚しかないカード。自身のライフを2つ削り、手札以外のカードを全て山札に戻す、コスト2のカード。つまり、さっきのターンで手札を消耗した『SKNaMi』は次のターンまで生き残り、1ダメを与えなければ勝てない。
『いくよ!』
5、6、3。ライフはお互いライフ1。
『諦めても、良いんだよ?』
『そーかもね』
内心、諦めはついていた。手札は1枚。ドロー系。引かなきゃ負け。引いても負けみたいな勝負。リタイアしてもいい。ただ、そのボタンは押せない。少なくとも、敷波を応援してくれる人がいる以上、逃げるわけにはいかない。
『だけど、そうやすやすと負けるわけにはいかないから』
『わかった。あなたにとっての最終ターン。有意義に使って』
『もちろん』
ターンの始め。カードを引く。ドロー系カード。2枚のカードで2枚引く。はぁ。ホント、心臓に悪いんだから。
『星龍の記憶』
今、場にある全てのカードはこのターン行動不能になる。
『え、ちょっと、待っ!』
『さっきのターンが、あなたの最終ターンみたいだったね』
『駆逐艦敷波』
自分のライフが1で場にこのユニットしかない時、相手プレイヤーになみ攻撃可能になる。
『これで、終わりッ!』
『甘い!!』
『AY』の手札からの呪文で、敷波は行動不能になる。だけどね、綾波。甘いのは、お姉ちゃんの方だよ?
『敷波の能力、自身のライフ分のダメージを相手に与える、だよ』
『なるほどね…あーあ、負けちゃった』
一瞬、何が起こったのかを理解した人は少ないと思う。つまり、このカードはそれだけレアで扱いにくいということ。
『ありがとうございました』
『ありがとうございました』
こうして、対戦は終わった。観戦者の人達の方が、試合を楽しんでいたみたい。チャットが大変なことになってるから。サーバーに負荷がかからないといいけど。
「敷波〜。あのカードは酷いよ〜」
「Rewrite持ちがなんか言ってる!?」
「でさ、そのカードどうやって入手したの?」
「貰ったよ」
「誰に?」
「あの人に」
「…じゃあ勝てないね」
意味深な笑いを綾波はした。その笑みの意味が分からない訳じゃない。だけど、本当にそうなのかな?
「あれ、敷波まだ寝ないの?」
気が付けばもうベットに潜り込んでいる綾波が聞いてくる。
「ちょっとやることがあって」
「……1人目ね」
「………うん」
カチッ、とクリックする音が響く。
「おやすみ、敷波」
「おやすみ、綾波」
ーーー翌日ーーー
「司令官、またやってんだ」
「ん、ああ。敷波か」
「敷波だよ」
「そういえば、あれ、出来たよ」
「あっ、そ。よかったじゃん」
司令官の反応から察するに、司令官はまだ『SKNaMi』が敷波だとは気づいていない。気づいて欲しい訳じゃないから、別にいいんだけどね。
「SKNaMiさんに、会ってみたいなぁ」
「(目の前にいるよ)」
ありがとうございました。
敷波さんって結構可愛いですよね。姉にはない可愛さってやつです。
提案、次回主人公等の要望がありましたらコメント下さい(駄作作家に来るわけない)。