心優しい少女に祝福の焔を   作:フェイトちゃんprpr

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第二話「原作前スタートとか考慮してないんですけど」

 俺様は心底苛立っていた。

 それももう数時間はキレ掛けては創に止められを繰り返している。

 その諸悪の根源は爽やかイケメン野郎――将也にある。

 

「もう三時間だぞ……なにしてやがるあんの自称爽やかウザ男がよォ……!!」

 

「まあまあ、もうちょっと待ってみても良いと思うんだけど……」

 

「ええいこれ以上待てるかドアホ! アイツを殺して俺様も死ぬ! ついでにお前も道連れだ!」

 

「なんで僕も道連れ!?」

 

 近くの建物に設置してある時計はもう夜の十九時半を差している、あのバカは長い間バカだバカだと俺様は思い続けて来たが、ここまでのバカだとは思わなかった。

 格なる上は三人一緒にもう一回死んでやろうかと本気で苛立っている。

 

 ――と思っていると俺様と創のデバイスに着信が漸く入った。

 

 俺は開口一番ぶちギレた。

 

「オイゴラァ! テメエどこほっつき歩いてやがる!?」

 

『だー、悪かった悪かった! ちょっとなのはちゃんの話聞いてたら連絡するの遅れちゃってさ』

 

 ……おい今コイツ何て言った、なのはちゃんって言ってたよな?

 つまりあれか、高町なのはちゃんを見付けたのか!

 

「それならそうと言え! まあでかした! 取り敢えず合流してから経緯は聞くから切るぞ」

 

「了解、あと五分もあれば着くから待っててくれ」

 

「応!」

 

「……や、やったじゃないか! これで思ったより早く今の時系列が把握出来る!」

 

 ふう、と一息付く。

 創の言葉通り俺様達の計画としては三日以内に見付けられれば上々だったのが初日に終わったんだ、ホッとしない訳がねえ。

 少し肌寒いとまで感じる夜風も、今は丁度良く思える。

 

 

 暫く夜風に吹かれていると、将也が合流してきた。

 

 

 

 

 

 

 明らかに五歳くらいのなのはちゃんを連れて。

 

 

「悪い、遅れた」

 

「お、おう……いやそれより状況説明をしろ! こっち来い! 創ェ! お前はなのはちゃんに付き添ってろ」

 

「あ、うん! 分かった!」

 

 これは俺様達が想定してた時系列よりかなり前になりそうだな……チッ、上手く時系列が合えばはやてちゃんの家に居候させてもらってのホームレス脱却も狙えたんだが、これは大誤算か……

 

 

「……んで、こりゃどういう状況で、あの子は誰かはっきり言え」

 

「あの子は正真正銘リリカルなのはの主人公こと高町なのはちゃん、お父さんが事故で意識不明である事、兄の名前がかのとらいあんぐるハート3の恭也さん、姉の名前も同じくとらハ3の美由希さんで間違いない、んでなのはちゃんの口から神速、御神流の言葉も出てきた事から信憑性はほぼ確実と見て良い。そしてなのはちゃんの年齢は五歳、つまりは現在の時系列は原作開始四年前になる」

 

「分かった、つまり俺様達詰み掛けてるな」

 

「……と、取り敢えず悩むのはなのはちゃんを送り届けてからにしないかい?」

 

「まあそうだな、もうすぐ夜の八時になるんだし相当心配されてるだろうな」

 

 良く考えなくてもなのはちゃんの年齢考えれば当たり前だな、特に恭也さん辺りは既にこの辺を探し回ってるに違いない。

 取り敢えずはそんな殺気立ってる恭也さんにだけは見付かりたくねえんだが……

 

「おい貴様等、ここでなのはと何をしている」

 

「あっ……これは」

 

「昌臣くんフラグ回収お疲れ」

 

「俺様に丸投げすんなや! 保護したのテメエだろうが!」

 

 そう上手く行く筈もなく、これから向かおうとした矢先に恭也さんと鉢合わせた。

 ったくどうすんだよこれ……俺様は説明出来ねえんだけど。

 

「うぐっ……まあ、そうか。分かった、僕が説明するよ」

 

「話は終わったか」

 

「はい。で、ですね、少しばかりお話を聞いてくれると助かるんですけれども」

 

「……まあ良い、俺もそこまで鬼ではない。後でしっかりなのはにも聞くが、まずは聞いてやらん事も無い」

 

 ……っし、取り敢えずは話は聞いてくれるか。

 なのはの二次創作じゃあ妹LOVE過ぎて問答無用で斬り掛かってくる、なんてのが有りがちだったからまだ大丈夫な方だな。

 後は話の分かる人なら事が円滑に進むんだが。

 

「…………てな訳でして、僕は一人寂しそうにブランコに乗ってたこの子が心配で付き添ってあげていたんです」

 

「……今までの話、全部本当か? 嘘を付いていたなら容赦なく言えよ、なのは」

 

「だいじょーぶなの、いまいってたことはほんとーだし、このおにーさんはやさしいひとだよ。あとのふたりのおにーさんも、いっしょにいてくれたおにーさんのおともだちみたいだからだいじょーぶ」

 

「……そうか。なのはが言うなら信じよう……君達も、わざわざなのはに付き添ってもらって済まなかったな」

 

「あ、いえいえ僕達が怪しいのなんて今に始まった話じゃないですし」

 

 おい創、お前はどうしてそう余計な事を言うんだ。

 漸く恭也さんの警戒心を解いたのにそんな事言い出したらまた警戒心持たれるだろうが!

 これで斬りかかられたら後で創の奴を全裸で公園に野晒しにしても構わねえよなぁ?

 

「創くん、後でちょっと」

 

「あっ…………はい」

 

「……そう言えば君達も早く家に帰った方が良くないか? いくら集団でいるとしても見たところまだ九、十歳くらいだろう? ……いや、ここはなのはを助けてくれたお礼としてなのはを家に送ったら君達の家まで送ってやる」

 

 チッ、面倒な事になったか……さあてこっからどうやって誤魔化すか……いや待てよ、これはもしかするとビックチャンスじゃねえのか?

 ここで実は親が居ない事を話したら悪い展開にはならねえはずだ、これは賭けに出るしかねえってか!

 

「ちょ、ちょい! 昌臣、どうするつもりだい?」

 

「話すに決まってるだろぅ、誤魔化したところで通じる相手じゃねえし」

 

「まあそうか……それなら頼んだ」

 

「頼まれなくともやるってーの」

 

 息をふっと付き恭也さんを見る。

 明らかに歴戦の戦士を思わせる目だ、とらハ3を知りながら誤魔化そうと一瞬でも思った俺様自身を恥じたい、それくらいには全部見透してる様な顔付きだ。

 

「……? どうした」

 

「……実は俺達、家無いんすわ」

 

「なっ……それじゃあ今までどうやって過ごしてきた!? 君達はまだ幼いだろう!? 親はどうした!?」

 

 すげえ剣幕で恭也さんが聞いてくるな……ま、あの人はなのはちゃんが誰よりも信頼する兄貴だし、こうして心配してくんのも当然ってやつだな。

 取り敢えずは何とか事実に近い事を言わねえと……いや、ここは前世での境遇を話すか。

 嘘は付いてねえし、実際そう言うしかねえよな。

 

「親には全員、まだ物心も付く前に捨てられたらしい。その後孤児院に預けられてたんだが、どうにも俺達海外に売り飛ばされるって話を聞いてな……逃げてたらこの街に着いたって訳ですわ」

 

 そうだ、前世で俺様達がどうして孤児院から脱走したか……それは、俺様達三人が近々海外に売り飛ばされるって言う話を夜中、孤児院の大人共が話していたのを聞いたからだ。

 確かに経営難だったが、まさか非人道的な事をしてまで、なんて思いもしねえっての。

 

 で、他のガキ共見捨ててまで逃げたって話だ。

 

 最悪、卑劣、卑怯、裏切り者、悪人、悪魔、人殺し何でも言えば良い。

 

 俺様達は俺様達自身が生き残るだけで精一杯だったんだ、他のガキ共助けてたら全滅してたってーの。

 だから共に生きていく事を誓ったブラザーの将也と創にだけ話して、ブラザー三人だけで脱走した。

 そこに俺様は一点の迷いも無かった、それは他の二人だってそうだ。

 迷ってたら死ぬ、だから生きる為に犠牲は必要だった、そしてそれを後悔する事はこれまでも、今も、この先も微塵もねえ。

 

 綺麗事だけで生きられなかった環境が何もかも悪りいんだよ、もし俺様達が脱走したせいで犠牲になった奴がいるなら耳かっぽじって良く聞け。

 

 

 

 

 真に恨むべきは俺様達じゃねえ、精々そこに至るまでの運命を恨むんだな。

 

 

 

 

 

 っと、少し考え過ぎたが糞みたいな前世だったからこそ、この綺麗事がまかり通る優しい世界で生きられるのは好運としか言えない。

 

「………………そ、そうか。すまない、嫌な事を思い出させてしまったな」

 

「いやぁ、良いんすよ。悪いのはこんな環境に生まれた俺達なんで」

 

「つか、ほらちゃんとピンピンしてますし僕達」

 

 俺様達の言葉は本心だ、悪かったのは糞みたいな大人の元にいる運命になっちまった俺様達自身で、身体は将也の言う通り健康だ。

 ま、これで何処か近くの孤児院にでも入る流れになれればそこを拠点として活動出来るんだが……

 

「なら家に来い、勿論全員だ」

 

 …………なんと言うか、メチャクチャ予想外な展開になったんだが。

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