BanG Dream! 彼女と過ごす日常   作:トマトジュース

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アニメ九話前のお話です。
今回は沙綾視点のお話です。


第十二話

快晴な空が広がっている。どこか出掛けるには最良の日で、太陽の日差しに照らされながら、私はベンチに座って友人を待っていた。

 

「やっぱり、人が多いなぁ……」

 

休日の駅前ということもあり、多くの人達が行きかいしている。

その中で、カップルの女性に目が留まる。

 

可愛く、綺麗に。

恋人に喜んでもらいたいと願いを込めたであろう、自分の魅力を最大限に引き立たせる服装。

その服を着た彼女は、花が咲いたような笑顔で恋人と語り合っていた。

 

あの二人、すごく幸せそうだな……。香澄や高森さんもあんな感じなのかな?

 

嬉しそうに話しているカップルを見て、ふと高校生活で出来た友達二人の様子を想像する。

 

思い浮かぶのは、仲睦まじく一緒に歩く二人の友人の姿。

一人は持ち前の快活な笑顔で話す彼女と、柔和な笑顔で話しを聞く彼。

 

彼女達の姿はすぐにイメージでき、さっき見ていたカップルと同じ温かな雰囲気を持っていた。

想像しているだけなのに微笑ましく感じ、気持ちが明るくなってくる。

 

自分の口が、静かに笑みを浮かべていることに気が付く。

 

 

「ふふっ、二人が喜べれるように私も頑張らないと。……って、ちょっと意気込みすぎかな」

 

自分の心境に軽く笑っていると、友人が私の所へ駆け寄ってくるのが見えてくる。

快活な笑顔で走る彼女に、私はベンチからゆっくりと立ち上がった。

 

「おはよう、さーや! 嬉しそうにしているけど、何か良いことがあったの?」

 

「おはよう、香澄。うん、ちょっとね。それじゃあ行こうか」

 

「うん! 今日はお願いします。さーや先生!」

 

「あはは。先生は恥ずかしいけど、期待に応えられるように頑張るよ」

 

突然な先生呼びに気恥ずかしさを感じながらも、私は彼女に意気込みを語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポピパの練習が休みである休日。

私達はかねてから計画していたことを実行していた。

 

『高森さんが見惚れて、喜ぶような服を一緒に探す』

 

文化祭準備の時、私の家で香澄と話していた約束。

お互いに予定が無かった私たちは、その約束を果たそうとしていた。

 

 

「分かっていると思うけど。今回は服をメインに買うんだから、他の物とかあまり買わないようにね」

 

目的地へと歩いてからしばらくして、香澄に軽く注意する。

キラキラと目移りする彼女のことだ。たぶん、色々欲しくて買うだろう。

 

「わ、分かっているよ。でも、どれも見てると欲しくなるんだよ~」

 

図星だっただろうか、香澄は戸惑うように答えながらも、困った表情で理由を説明する。

たしかに彼女の言う通り、目移りしてしまうことがあるが、それが原因でお金が足りなくなってしまうのは本末転倒過ぎる。

 

「気持ちは分かるけど、それは服を買った後にね。まずは、高森さんを最優先しないと」

 

「う~。優にすごく喜んでもらいたいし、我慢しないと。がまんがまん……」

 

頬をほんのりと紅く染めながら、香澄は自分に言い聞かせるように呟く。

そんな彼女の様子に苦笑いしていると、目的地であるショッピングモールが視界に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ~、すごく広いね!」

 

中に入ると、香澄は目を輝かせながら周囲を見渡していく。

このショッピングモールは広い分、可愛い系や綺麗系など多彩なジャンルがあり、香澄の服を探すには最適な場所である。

 

「ここなら、色々な服を見ることが出来るからね。さて、これから回っていくけど、その前に少し聞いていい?」

 

「いいよ。どうしたの?」

 

「高森さんの好みってどういうものか分かる? それを参考に、服を見繕うと思って」

 

敵を知り、己を知れば百戦危うからず。

状況は違うけど、高森さんの好みを知ることが出来れば、それに合った彼女の魅力を引き立たせる服が探しやすくなる。

 

「優の好みかぁ……。う~ん……」

 

手を顎に乗せて、香澄は思い出そうと考える。

彼女が考えている間、私は彼の好みを予想してみる。

 

高森さんの性格からして、お淑やかな服装が好みなのかな? それとも、清楚系な服装かな?

 

クライブの時に、彼女の妹である明日香ちゃんの言葉を思い返す。

 

彼女の話だと、高森さんは静かな性格だと聞いている。

実際、彼と何回か話したことがあるけど、その印象は同じだった。だけど、高森さんの話す言葉は優しくて、温かみがあった。

 

言葉もそうだけど、雰囲気でも『優しい人』という感じがあったな……。高森さん。

例えるなら、ほのぼのとした柔らかい空気が彼から出ているような感覚。

 

気構えもせず、自然体で話せる安心感。

 

その感じた印象は私だけでなく、おたえやりみりん、有咲も同じだった。

有咲は照れていたけど、三人は高森さんの優しい雰囲気に惹かれたと言っていた。

 

そんな彼のことを考えると、先ほど挙げた二つの衣装の可能性が高くなる。

 

 

「……」

 

「どうしたの、香澄? 何か分かった?」

 

私が予想している中、香澄は顔を少し俯かせていたことに気が付く。

彼女の表情はどこかにこやかで、心なしか頬が紅く染まっているように見える。

 

何か答えが見つかったのだろうか。

私の質問に、香澄はしばらくして答える。

 

「……えっとね。明るくて、元気さが伝わるような服装が一番好きだって」

 

「明るくて、元気さが伝わる服か……」

 

どうやら、自分の予想は外れていたみたいだ。

だけど、高森さんの好みが分かっただけでも十分だろう。

 

 

 

……好み?

 

一つの単語が頭の中に引っかかり、連想していく。

 

明るくて、元気さが伝わるような服装。

どこか照れている彼女の表情。

 

高森さんの好み。

香澄の性格。

 

 

もしかして……。

 

「それって、もしかして香澄のイメージに合った服?」

 

こくんと、香澄は顔を赤くしながら頷く。

照れをこらえるように少し溜めながら、彼女は言葉を口にした。

 

「……その、天真爛漫っていうのかな? 私らしい服装が好きだって言ってくれて……」

 

頬を指で小さく掻きながら、香澄は私から視線を外す。

少し恥ずかしそうにしているが、その表情はどこか嬉しそうである。

 

 

想われているなぁ……。

 

静かに嬉しさを表現している彼女を見て、微笑ましく感じてしまう。

 

高森さんの好みの背景に、香澄が大きく存在している。

その事実に、なんだか私まで嬉しくなってしまう。

 

 

「嬉しかった?」

既に分かっている質問を、彼女に聞いてみる。

 

 

「……うん。すごく嬉しかった」

 

目を細めながら、香澄は大きく頷く。

嬉しさを全面に出した笑顔に、彼女がとても喜んでいたことが伝わってくる。

 

「ふふふ、想われているね。それじゃあ、香澄らしい服を探そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、私たちは色々な服屋を回った。

多くの服を見て考えることがあったが、高森さんの好みと香澄の意見を参考にしたおかげで、彼女のイメージに合った服装を買うことができた。

 

 

「ふぅ……。色々と買うことが出来たね。ありがとう、香澄。私の分まで見繕ってくれて」

 

「えへへ、気にしないで! 私も楽しかったから」

 

私の言葉に、彼女は問題ないと元気に答える。

 

彼女の素直な言葉に喜んだ私は、腕時計を確認する。

時刻は昼過ぎを回っており、昼ご飯にはちょうどいい時間帯だった。

 

「もう昼過ぎだし、どこか食べに行こうか」

 

「うん! 私もうお腹ペコペコだよ~」

 

お腹が空いて待ちきれないのか、香澄は先に歩いていく。

 

私はどうしようかな? 洋風か和風……、中華もありかな?

昼ご飯は何を食べるか考えていると、前を歩いていた香澄が服屋の前で立ち止まっていた。

 

「香澄、どうしたの?」

 

「……」

 

私の呼ぶ声に香澄は反応もせず、ただ一心に服を見続けている。

感動するかのように、彼女の瞳には輝きが宿らせていた。

 

気になった私も、その服をよく見てみる。

 

「この服は……」

 

展示されている服を見て、感嘆の声をあげる。

 

その服は、明るさを基調としていた。

だけどそれだけでなく、女性の美しさも表現するように刺繍や装飾が施されていた。

 

先ほど買っていた服とは違う、綺麗な魅力に私は目を奪われていた。

 

 

……この服。香澄に似合うんじゃないかな?

 

 

香澄のイメージに合うものとは少し違うかもしれない。

だけど、不思議とその服は似合うと確信に似たものを持っていた。

 

なんでだろうと疑問をもつが、すぐに気が付く。

 

高森さんのことを話す香澄の姿を。

普段の彼女から見せない、綺麗で、可愛くて。どこか特別な魅力を持った彼女の姿を。

 

 

 

 

 

「値段は……、うん! 何とか足りる! すみません、この服を試着したいんですけど」

 

彼女の嬉しい声に、我に返る。

すぐに店員さんを呼んで、試着室に向かおうとする。

 

「さーや、ごめん。ちょっと待っててもらっていい?」

 

申し訳ない表情で香澄は頼んでくる。

そんな彼女に、私は元気に答えた。

 

「もちろん! 私も香澄と同じことを言おうと思っていたから」

 

「……! ありがとう!」

 

言葉の意味が分かった香澄は、明るい表情へと変えながら試着室へ入る。

 

絶対に似合うだろうなぁ、あの服を着た香澄……。

心の中で、確信へと変わった結果を呟く。

 

期待感が強くなっているのを感じながら待っていると、しばらくしてカーテンが開かれた。

 

 

 

 

 

 

「……うん。やっぱり似合ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この抹茶パフェ美味しい~! あとで優と一緒に行こう!」

 

香澄の嬉しそうな声があがる。

 

昼食を食べ終えた私たちは、デザートとしてパフェを食べていた。

美味しそうに頬張っている彼女に倣うように、私も注文していたチョコパフェを食べる。

 

チョコ独特の甘みとクリームが相まって、バランスが良い美味しさだった。

パフェの美味しさに舌鼓を打っていると、香澄は私にお礼を言う。

 

「今日はありがとうね、さーや。おかげで、この服を買うことが出来たよ」

 

「いい服が見つかって良かったよ。次のデート、楽しみだね」

 

「うん! この服で、優と出かけるのがすごく楽しみだよ! 優、喜んでくれるといいな……」

 

期待に胸を膨らませるように、香澄は目を細めながら呟く。

高森さんの喜ぶ顔を想像しているのか、彼女は頬を紅く染めながら微笑んでいる。

 

そんな香澄の笑顔を見て、私は自信を持って答える。

 

「きっと喜ぶよ。さっきの香澄、すごく綺麗だったから。私が保証する」

 

「えへへ、ありがとう。さーやにそう言われると、自信が持てるよ」

 

「そうなの? 香澄のことだから、高森さんに関しては自信があると思っていたよ」

 

有言実行。自信満々に行動している彼女が自信を持てていないのは、意外だと感じてしまう。

軽く驚いている私に、香澄は照れ笑いしながら否定する。

 

「もちろん自信はあるけど、少し心配しちゃうんだよね。服似合っているかな、喜んでくれるかなって不安に思っちゃうし。優と二人きりだと、たまにドキドキするから、余計に緊張しちゃうし……」

 

最後の方は、香澄はぼそぼそと尻込みするように話す。

紅潮した顔で惚気を話している彼女に、思わず頬が緩んでしまう。

 

 

「でも……」

 

言葉を漏らした後、香澄は何かを思い返すように静かな笑みをする。

 

普段とは違うどこか魅力的な、その笑顔に見覚えがあった。

恋人のことを想って、嬉しそうに話している彼女の笑顔に。

 

「優の笑顔とか喜ぶ顔を見るとね。不思議なくらい自信が出て、不安なんかすぐに消えちゃうの。似合っているって言ってくれて、胸の中がすごく嬉しくなるんだ」

 

笑みを深めながら、香澄は穏やかに語り始める。

聴いている人に伝わるぐらい、彼女は想いを乗せた言葉を紡ぐ。

 

「そう思う度に、これから優とどこかに出かけるのがもっと楽しみになるの。今日選んだ服と一緒に、どんな思い出ができるのかな。どんな嬉しい気持ちになるのかな。ワクワクして、ドキドキする……」

 

温かな熱が込めてある言葉を聴き、彼女の気持ちが伝わる。

 

言葉だけじゃない。

想い人に向けた潤んだ瞳と、嬉しさを表している紅潮した頬。とても優しい目で語る彼女の姿に、香澄が高森さんと過ごす日々を大切にしていることが伝わってくる。

 

「不安に思っちゃうこともあるけど、頑張るよ。優の笑顔が見たいし、言葉が聴きたいから!」

 

穏やかな笑みから元気さが伝わる笑顔で、彼女は気合の入った言葉を話す。

不安に負けない、まっすぐな想いで好きな人のために努力する気持ち。

 

その気持ちに、自分の心が突き動かされる。

 

頑張っている彼女のことを、応援したい。

 

 

「……って、なんだか話が違う方に進んじゃったね。変じゃなかった?」

 

「そんなことはないよ。伝わっているよ。香澄が今も、高森さんのことが大好きだってこと」

 

心配する香澄に、私は思ったことを伝える。

私の言葉に、彼女ははにかむように笑う。

 

「えへへ……」

 

「……大丈夫だよ、香澄」

 

嬉しく笑っている彼女に、私は優しい口調で話しを続ける。

 

「こんなにも、好きな人のことを想って頑張っているんだから、自信なんてすぐにつくよ」

 

「さーや……」

 

「次のデートも、二人とも良い笑顔で過ごせるよ。楽しんできてね、香澄」

 

「うん! ありがとう、さーや!」

 

「どういたしまして。パフェも溶けちゃうし、早く食べようか」

 

「あ、そうだね!」

 

そう言って、香澄は抹茶パフェを再び食べ始める。

満面の笑みで美味しそうに食べている彼女を見て、心から願う。

 

頑張ってね、香澄……。

 

駅前で、幸せそうに過ごしていたカップルのように。

香澄と高森さんも、幸せな笑顔で過ごせるように。

 

 

溶けかけているチョコパフェを食べる。

さっき食べた時より甘く、美味しく感じた。

 

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