fate/stay night 夢よ永遠に   作:fate信者

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前書きの言うことがなくなった。
では、どうぞ!


セイバーとの話

「シロウ」

 

目があった途端、緊張する自分がわかる。

が、黙り込む為に捜していた訳じゃない。

 

「セイバー、だったよな。こうやって落ち着いて話すのは初めてだけど」

 

意を決して話しかける

 

「シロウ。話の前に、昨夜の件について言っておきたい事があります」

 

さっきまでの穏やかさが嘘みたいな不機嫌さで、俺の言葉を遮った。

 

「? いいけど、なんだよ話って」

 

「ですから昨夜の件です。

シロウは私のマスターでしょう。その貴方があのような行動をしては困る。戦闘は私の領分なのですから、シロウは自分の役割に徹してください。自分から無駄死にをされては、私でも守りようがない」

 

きっぱりと言うセイバー。

それで、さっきまでの緊張はキレイさっぱりなくなった。

 

「な、なんだよそれ! あの時はああでもしなけりゃお前が斬られてたじゃないか!」

 

「その時は私が死ぬだけでしょう。シロウが傷つく事ではなかった。繰り返しますが、今後あのような行動はしないように。マスターである貴方が私を庇う必要はありませんし、そんな理由もないでしょう」

 

淡々と語る少女。

俺は腹がたった。

命を軽く見ている少女にも、その少女に守られている自分にも。

 

「バカ言うな、傷ついてる女の子を助けるのに理由なんているもんか……!」

 

怒鳴られて驚いたのか、セイバーは意表を突かれたように固まったあとまじまじと、なんともいえない威厳でこっちを見つめてくる。

 

「と、ともかくうちまで運んでくれたのは助かった。それに関しては礼を言う」

 

「それはどうも。サーヴァントがマスターを守護するのは当たり前ですが、感謝をされるのは嬉しい。シロウは礼儀正しいのですね」

 

「いや。別に礼儀正しくなんかないぞ、俺」

 

そんな事より、今ははっきりさせなくちゃいけない事がある。

本当なら昨日、帰ってから訊くべきだった事。

彼女は本当に俺なんかのサーヴァントで、

本当に、この戦いに参加するのかということを。

 

「話を戻すぞセイバー。 あ、改めて訊くけど、お前の事はセイバーって呼んでいいのか?」

 

「はい。サーヴァントとして契約を交わした以上、私はシロウの剣です。その命に従い、敵を討ち、貴方を守る」

 

セイバーは躊躇いもなく口にする。

彼女の意思には疑問を挟む余地などない。

 

「俺の剣になる、か。それは聖杯戦争とやらに勝つ為にか」

 

「? シロウはその為に私を呼びだしたのではないのですか」

 

俺は、ただの偶然なんだ、とは言えなかった。

いや、そもそも自分は呼び出してさえいない。

セイバーは俺とアルトねぇのピンチに現れ、そして救ってくれただけだ。

その結果が今の状況。

ーーこれで終わりにしよう。

自分は戦うと決めたんだ。

家族を守る為に。

なら、弱音を口にするのも思うのもこれで最後だ。

どのような形であれ、俺は戦うと決めたんだから。

 

「シロウ?」

 

「いや、なんでもない。

けどセイバー、俺についても勝ち目は薄いぞ。俺は遠坂みたいに知識も力もないから、明日にでも昨日みたいな事になりかねない。それでもいいのか?」

 

「それは戦う意志がない、という事ですか」

 

「戦う意思はある。ただ勝算がないから、そんな俺に付いていいのかって言いたいんだ」

 

「私のマスターは貴方です、シロウ。これはどうあっても変わらない。サーヴァントにマスターを選ぶ自由はないのですから」

 

それはそうだ。

だからこそ、セイバーは俺のサーヴァントになっている。

なら俺は、自分に出来る範囲でセイバーに負担をかけないようにするしかない。

 

「……分かった。それじゃ俺はお前のマスターだ、セイバー」

 

「ええ。ですがシロウ、私のマスターに敗北は許されない。

貴方に勝算がなければ私が作る。

可能である全ての手段を用いて、貴方には聖杯を手に入れて貰います」

 

聖杯を手に入れる為、か。

遠坂はサーヴァントにも叶えたい願いがあると言った。

それはこのセイバーだって例外ではないんだろう。

だからこそここまで迷いがない。

 

「じゃあセイバー。

可能である全ての手段、といったな。それは勝つ為には手段を選ばないって事か。たとえば、力を得る為に人を襲うとかーー」

 

最後まで、口にできない。

セイバーは俺の事を敵を見るかのように俺を見つめている。

 

「シロウ。それは可能である手段ではありません。

私は剣を持たぬ人を傷つける事など出来ない。

それは、騎士の誓いに反します。

ですが、マスターが命じるのであれば従うしかありません。

その場合、私に踏みいる代償として、その刻印を一つ頂く事になります」

 

怒りが籠った声に圧倒される。

それでも、嬉しかった。

もしかしたら心の何処かでセイバーは聖杯の為には手段を選ばない冷酷な殺人者ではないかと思っていたのかも知れない。

俺はセイバーを知らないうちに侮辱していた。

だから、セイバーの言葉は嬉しかった。

 

「ああ、そんな事は絶対にさせない。

セイバーの言うとおり、俺たちは出来る範囲でなんとかするしかないからな。 本当にすまなかった」

 

俺は頭を下げる。

 

「あ……いえ、私もマスターの意図が掴めずに早合点してしまいました。シロウは悪くないのですから、頭をあげてくれませんか?」

 

「ああ、わかった」

 

俺は頭をあげる。

 

「ふふ」

 

と、セイバーの隣に居たアルトねぇが笑っていた。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「いえ、セイバーはここに来て初めて笑いましたね」

 

俺はセイバーの方を向くとわずかに口元を緩めていた。

 

「私が笑っている?

冗談は止めてください。

私は聖杯戦争に勝つ為に感情を封じました。

だから、私が笑う筈がない」

 

セイバーは緩めていた口元を引き締め、真剣な表情になった。

 

「士郎、これは中々に難儀ですね」

 

アルトねぇは楽しそうに笑いながら言ってくる。

ーー確かに

これは小さい子を相手にしているような気分になる。

 

「…っと、いい忘れていた。

出来る範囲でなんとかするって言っただろ。その一環として、しばらく遠坂と協力する事になったんだ。

ほら、昨日一緒にいた、アーチャーのマスター」

 

「リンですか? そうですね、確かにそれは賢明な判断です。シロウがマスターとして成熟するまで、彼女には教わるものがあるでしょう」

 

「アルトねぇにも言いたい事がある」

 

俺はアルトねぇの方を向いていう。

 

「私もですか?」

 

「ああ、遠坂が俺たちの魔術を観てくれるらしいから

アルトねぇもどうかと思ったんだけど……どうかな?」

 

アルトねぇは腕を組んで考えている。

ーー急に言われて悩むのも判る。

 

「そうですね、私も士郎達の為にも魔術を鍛えるのも良いかも知れませんね」

 

……良かった。

二人が同意してくれれば、大手を振って遠坂と協力できる。

あと、どうしても今ここで訊かなきゃ気が済まないっていう事は

 




もう言うことが無くて泣きそう
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では、次回

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