夢は呪いだ。
その夢にとらわれ続ける者。
その夢を見続ける者。
夢は希望だ。
生きる目標にする者。
そして、その夢をかなえる者。
18歳の夏。甲子園。
僕らは夏三連覇を成し遂げた。成し遂げてしまった。
誰よりも練習して、誰よりも絆を深めた。
その先の栄光のためなら、どんな練習もつらくなかった。
けど、周りは違った。
勝て、圧倒しろ。周りの戦意を落としきれ。・・・いつしか、野球は楽しむためのものじゃなく、力を見せ付けるためのものになっていった。
僕らと戦う地元のチームからは、最初から戦意なんてなかった。
やれて強豪との試合。僕らは負けることを許さなかった。許したら、回りからまた言われてしまうから。
野球はチームプレー。誰か一人でやる試合ではない。
・・・そんな言葉も無意味なほど、個人プレーで勝ち進んで言った。
プロのスカウトやメジャーのスカウトも何人も接触してこう口をそろえて言う。
『君たちは天才だ。』皮肉だった。
いつしか、僕らの絆は代わって行った。
全ては勝つために。でも、それ以外の時はいつもどおりに。
まるで、自分がもう一人いるようだった。
それでも自分が自分でいられたのは、幼馴染がいてくれたからだと思う。
年上の幼馴染は、いろんな面倒を見てくれた。頭がよくて美人で。料理は下手だったけどそれでもいつでも迎え入れてくれた。
年下の幼馴染はとにかく料理だったり自分を慕ってくれていた。
それでも、僕らを取り巻く環境は悪くなっていった。
そしてあの夏。地区大会は圧倒的な試合で勝ち進んでしまった。
甲子園も、あんなに目標にしていたあの場所での野球も、もはや楽しさなんて見当たらなかった。
全ては、勝つこと。
もう、迷いなんてなかった。プロのスカウトも見つめる試合、それはただの作業に終わる。
だって、周りは皆負けを確信してたから。試合ではなく、それはただの調整だったから。
そんなの関係なしに、周りは僕たちを祭り上げた。
『天才たちの競演、高校野球至上最強にして、最高』
マスコミはそんな言葉で僕らを祭り上げた。
そのころの僕らは、もはや野球を楽しいと思えなくなった。ただの、退屈しのぎになってしまっていた。
全国制覇も、まるでゲームをクリアしたときのような快感しかなかった。
そして、僕らはみんなが別々の道に進んだ。プロへ行くもの。大学で続けるもの。社会人でプレーするもの。みんなが彼らをほしがった。
僕は・・・野球をやめて、普通に大学に進み、普通に就職した。
・・・同じ間違いを、後の世代に残さないために。