白球追いかけ、夢を追いかけ。   作:夢の防人

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第2節 日常の中の幸せ

株式会社765プロダクション。まだ小さな芸能事務所だが、13名の人気アイドルが所属する話題沸騰中のプロダクション。

 

そんな事務所が新しく作った765プロシアターで行われる、39名の新人アイドルたちのステージプロジェクト。『39プロジェクト』の担当Pとなって早くも数ヶ月。季節はいつの間にか夏から秋に移り変わろうとしていた。

 

さて。プロデューサーとはどんなものなのか。端的に言うならばアイドルたちの活動のサポートや営業、レッスンの手配など。何でもやというのが正しいかもしれない。

 

むしろその仕事をほぼ一人でやっているのだから・・・

 

「うー・・・また帰れなかった・・・」

 

このようにシアターに泊まることもしばしば。

 

シャワーを浴び、個室から出たころにはしっかりと社会人らしく・・・うん、社会人らしい格好で事務所へ向かう。

 

新卒でプロデューサーになった僕は、いわば見習い・・・ということは関係ない。必要なのは進歩。

 

「おはy」

 

開口一番顔面に何かが飛んできた。なんだこれ。あ、ドリンクゼリーだ。

 

「あっ、ご、ごめんなさいプロデューサーさん!」

 

「お、おはよう未来・・・足元には気をつけような。」

 

朝からせっかちなアイドルたちだ。とりあえずまた顔を洗い直しだな。・・・朝どうしよ。

 

そんなことを考えながら先ほどの仮眠室に向かうと先客が。

 

「あら、そんな顔でお仕事に行くつもりだったの?」

 

「か、歌織姉さん・・・なんでこんなところに。」

 

ベットに腰掛け優雅・・・に見えて子供っぽい笑みを浮かべるこの人は桜守歌織。僕のひとつ上の幼馴染でアイドルだ。音大を出た後は音楽教室を開く傍らで自衛隊の音楽祭などに出演するなど、一部の音楽関係者から注目を集める新人アイドルだ。

 

・・・といっても僕がスカウトしたわけでなく、先輩がスカウトしてきたのだけれど。

 

「なんでって、今日は朝からリハーサルだもの。ほら、ネクタイ曲がってる。」

 

襟元をきゅっと締めてこれでよしとばかりに笑みを浮かべる義理の姉。

 

「・・・ありがと。姉さんがやってくれるのが一番決まるのが悔しいけど。」

 

「ほめ言葉として受け取っておくから。社長が呼んでたから早く行かないと。」

 

社長が?・・・また何かされるのかなぁ・・・

 

とりあえず事務所へ向かってみる。事務所までは徒歩10分圏内と中々好立地だ。・・・貧乏事務所なのにどこにそんな金があったのかは今は考えないようにして。そのまま雑居ビルに入っている765プロに足を踏み入れると・・・

 

「ウォッホン!待っていたよ彼方クン!」

 

今日も相変わらず顔が黒い。

 

「おはようございます社長。それでお話とは?」

 

社長はどこか楽しそうに、けれど複雑な表情でこう告げた。

 

「・・・事務所対抗野球大会がこのたび開幕することになってな。彼方クン。君にも出場してもらいたい。」

 

野球。・・・その言葉が僕の心を揺さぶり、ひどいめまいを起こすようになるまですぐだった。

 

 

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