クリスと由紀江が風間ファミリーに入って4日が経過した。この4日間は、二人共川神に来て間もないので川神を案内したり、普段ファミリーでやっている遊びなどを紹介したりと慌ただしいが、楽しい4日間となったようだ。そして4日後と言うことは今日は金曜日。金曜集会のある日だ。そこで基地の場所をしらない二人を案内しなければならないということで、由紀江を泰斗、クリスを大和が案内するということになった。その他のメンバーは一足早く基地へ向かい基地内の掃除、食べ物の準備をすることになった。
一年のクラスまで由紀江を迎えに行き校舎を出る。クラスの子に由紀江を呼ぶように頼むと え? っていう顔されたけど、どうせまた由紀江は浮いてるんだろう。刀を持ち歩くのはまだ許せるとしてストラップと話すのはさすがにちょっとまずいんじゃないか?
「お~う、泰斗~? ちょ~っと失礼なこと考えてるんじゃないか?」
「そんなことないぞ松風。松風は偉大だからな。」
「お、おう....そんな手には乗らないぞ...」
これはチョロい。
「そうだ由紀江、一人だけ年下でやりづらいと思うが気にすることないからな。言いたいことははっきり言うんだぞ。」
「で、ですが....」
「欲しいのは友達なんだろ? じゃあなんでも言い合えるようにならなきゃな。」
「あ....はい!」
頭を撫でてやると途端に由紀江の表情が明るくなる。この笑顔を常に出せたら友達なんてあっという間に出来るんだろうけどな。頑張れ由紀江。
基地にバイトで遅れる翔一以外が集合し金曜集会が始まる。それぞれ基地の設備や構造、どこに何がおいてあるかなどを説明していく。その後、これまでの風間ファミリーの活動、武勇伝などを二人に知ってもらうべく話していた。
「う~ん、さっき基地まで案内してもらっている時も思ったんだが大和はなんというか....考え方が汚いな。どうして正々堂々と勝負しようとしないのだ? 侍はまっすぐ正面から戦うべきではないのか?」
これはまずい。予感的中だ。日本人皆侍のような精神を持っていると勘違いしている上に本人の性格も騎士を名乗るだけあってまっすぐすぎる。悪く言えば融通がきかない。そんな性格だ、大和とは正反対。いつかはぶつかるだろうと思ってはいたがまさかこのタイミングとはな。
「俺は仲間がなるべく傷つかないように作戦を考えてるんだ。俺にとって汚いというのはある意味褒め言葉だ。それと日本人誰もが侍の精神を持っているという前提で話を進めるのはやめてくれ」
「なぜだ! テレビで日本人は侍と言っていたぞ! お前は大和丸夢日記の主人公と同じ名前とは思えない! それに作戦は認めるが大和の作戦は敵を陥れるものばかりじゃないか! 」
「名前は関係ないだろう! だいたい....」
「弟もクリスも一旦ストップだ」
終わりのない論争に呆れたのか百代が二人を止める。普段こういった口論を止めるのは大和だが、今回は止められる側だ。いつでも冷静に物事を考える大和が声を荒げるほど二人の性格は相性が悪いのだろう。
「クリの言ってることはわかるんだけどね....。でも大和の作戦に助けられたこともあるし....。うー、わかんないわ!」
考えるのをやめないでくれワン子。もう少し頑張ってくれ。俺は情けないぞ幼馴染よ。あー、ビーフジャーキー食べ始めちゃった。それにしてもこのままじゃ終わらないよな....こういう時のための決闘か。モモ先輩も同じ事考えてるな。
「お前ら決闘で決めたらどうだ?」
「決闘って言っても姉さん。俺とクリスじゃあ実力も違いすぎるし....何で勝負するんだ?」
「....考えてなかった。」
この姉妹は本当に....しょうがないな。
「俺から提案があるんだが。」
「泰斗、なるべく公平なのにしてくれよ。一対一とか無理ゲーだからな?」
「一対一は無理だろうから五対五ならどうだ?」
「なるほど。でもモモ先輩はいったらそっちのチームが勝ちじゃない?」
京に指摘を受けるがその辺もちゃんと考えてある。
「チーム分けは大和とクリスが指定された二人のメンバーをじゃんけんで勝ったほうが先に選ぶ。最初にモモ先輩か由紀江を選んでもらう。モモ先輩はチートだが、由紀江ならなんとか時間稼ぎくらいはできそうだからな。それでもモモ先輩のほうが強いから由紀江を選んだ方にハンデ。次の二人の中から先に選べる気がする。これでどうだ? ....ワン子あたりが全く理解していない気がするから例をあげよう。」
「例えば大和がモモ先輩を選び、クリスが由紀江を選んだとする。次に予め決めておいた二人、ワン子と京という選択肢の中からクリスが先に選ぶ。余ったほうを大和が....という風に進めていく。で決闘自体は大和かクリスのどちらからダウンしたら決着だ。ワン子、理解したか?」
「なんとなくわかったわ!」
これでなんとなくかよ。俺にはこれ以上説明できないぞ? ワン子以外は理解しているようだからいいが。
「このルールについて何かあるか?」
「た、泰斗さん。最初に百代先輩か私を選ぶのところ、私じゃなくて泰....」
「由紀江、ストップ」
「え、でも」
「ストップ」
「....はい」
危ない危ない。モモ先輩に実力を知られるわけにはいかない。由紀江にもちゃんと伝えておかなきゃな。
「大和とクリスはこのルールでいいか?」
「ああ、これなら公平だな。」
「自分もこれでいいぞ。」
「早速明日学校のグラウンドで決闘だ。モモ先輩、学長に話を通しておいてください。キャップには俺が伝えておきます。」
こうして大和とクリスの口論はファミリー全員を巻き込んだ5対5の決闘となった。
決闘当日。ファミリーは全員グラウンドに集まっていた。ルールの説明はモモ先輩が学長にすべてしてくれたためチーム分けも学長の元公平にこの場で行う。風間ファミリーは川神学園では比較的有名であるためその決闘をひと目見ようという生徒が風間ファミリーを囲っている。その中には
「泰斗ー! 頑張ってねー!」
「泰斗くん、この決闘が終わったら私とデートしてくれませんか?」
「また若は....。とにかく応援してるぞ泰斗!」
葵、準、小雪やそれ以外の普段Fクラスとは中が悪いSクラスの生徒も見学に来ている。すこし嫌な声援があったが。
「ふむ、そろそろ始めるかの。まず、わしが予めきめておいた二人の中から一人選ぶ。これを四回繰り返す。ちなみにこういう組み合わせにしたぞ。」
川神百代 ーーー 黛由紀江
川神一子 ーーー 椎名京
風間翔一 ーーー 連城泰斗
島津岳人 ーーー 師岡卓也
「うわ、僕の所ひどい!」
やや抗議の声が上がったが大和もクリスも予想通りだったようだな。先ほどから大和はひたすら作戦を考えているようだ。それに反してクリスは手を組みその隙間を覗くというじゃんけん前によく見る行動に出ている。それにしてもこの組み合わせを見る限り学長には実力はバレていないようだ。
「ふむ、異議はないようじゃの。ではこれより直江大和とクリスティアーネ・フリードリヒ両名による決闘を行う。先行を決めるじゃんけんを行うのじゃ。」
「いえ、その必要はありません。先行をクリスに譲ります。」
「な! お前は馬鹿にしてるのか! 先行のほうが有利に決まってるだろ!」
「いいから決めろよクリス」
「くっ、なら自分はモモ先輩を選ぶ!」
「おお、私を選んでくれるなんて嬉しいぞクリス~」
これは大和の予想通りだろうな。正直モモ先輩と由紀江はお互いに数分間、もしかしたら十数分動けないからどちらを選んでも大した問題ではないだろう。だからこそ大和はハンデのある由紀江を選んだんだろうな。クリスはそれに気づかなかったのか、由紀江の実力を過小評価しているかだな。大和が由紀江を強いと思ってくれてるのはモモ先輩のおかげかな。
「じゃあまゆっちを選んだから次は俺からだな。京を選ぶよ。」
「私を選んでくれるなんて! これは愛情だね!」
「友情です」
「では自分は必然的に犬だな。」
「やるからには勝つわよ、クリ!」
ここまではほぼ必然と言っていい組み合わせだ。残り2つの組み合わせで大きく戦況が変わることが予想される。この決闘の鍵となるのが由紀江と未知数の泰斗である。由紀江が百代相手にどれだけ闘えるか、また泰斗がどれほどの実力を秘めているのかによって戦力に大きく差が出るだろう。
「次じゃの、先行を決めるのじゃ」
大和とクリスは向かい合って右手を出す。結果はクリスの勝ち。
「よし自分が先行だ。キャップはすごい運を持ってるときいたから自分はキャップを選ぶぞ!」
「じゃあ俺は泰斗だな。」
あれ、クリスは俺を選んでくれると思ったんだが....。くず餅パフェ2つの力は大したことなかったな。どちらのチームになっても最善を尽くすことに変わりはないのだが、財布から飛んでいった野口さんが何の影響も与えなかったことに驚いたよ。とにかく次で最後か、これは絶対に落とせないな。岳人とモロじゃあ戦力が違いすぎる。モロがクリス側になれば非戦闘員が調度良くバラけるんだが。
「これで最後じゃの。先行を決めるのじゃ」
「あ、クリス。俺チョキ出すわ。」
「なんだと!? 騎士を愚弄する気か!」
「さあ、じゃんけんだ」
「むむむ」(大和は人を騙してばっかりだから...いや、でもその裏をかいて...)
結果は大和の勝ち。大和が宣言通りチョキを出し、裏の裏を疑ったクリスがパーを出し大和が勝った。当然大和は岳人を選んだ。
「あれ、騎士様俺チョキ出すって言ったよね? 騎士様ともあろう方が人のこと信じなかったの?」
「むうう....」
完璧に大和のS心に火がついてるな。まあ、クリスがあまりにも騙されやすいのも問題なのだが。大和に駆け引きで勝つのはクリスじゃあまず無理だろうけどな。
最終的に両チームの構成はこうだ。大和のチームに由紀江、京、泰斗、岳人。クリスのチームに百代、一子、キャップ、卓也。戦力に大きな偏りは見られない。
「では五分作戦会議を行った後、再び開始じゃ。それでは作戦会議を行うがよい。」
両チーム、勝敗を分ける五分間の作戦会議へと移った。
箱根編書くのがちょっとめんどくさかったのでこういう形にしました。箱根編が好きな方には申し訳ないです。