異世界料理店越後屋外伝   作:越後屋大輔

11 / 13
紗路は今後も異世界にきますが『越後屋』本編で語られる事はありません


助っ人と重なる偶然 後編

 大輔はルカ達に少し店を留守にしますと告げると越後屋本店の秘密を知った紗路を連れて商業ギルドを訪れた、臨時とはいえ本店勤務する以上は話を通しておかなければならない。ギルド長のヴァルガスに事情を話して紗路を引き合わせる、身長3メートルを越すサイクロプス相手に最初はビビったが話してみると気さくで優しいオジ様で安心した。

 商業ギルドを後にすると肉屋のヨセフが声をかけてきた。

 「ダイスケ、今度いい鹿肉と鴨肉が入るっすよ、仕入れないっすか…ってこの人誰っすか?」紗路をヨセフに紹介してから話し合う2人、結果賄いと試食用に半オイスずつ仕入れる事で商談は成立した。

 翌日、私用でこられないマティスに変わり1日ここのキッチンで働く紗路。ホールは同年代の眼鏡美女と中学生くらいのこれまた美少女、大柄で強面だが実は気の弱い男が担当しているそうだ。

 

 互いに自己紹介をすると大輔と紗路は厨房に入り日替わりランチの準備を始める。異世界でありながら電気、ガス、水道がそのまま使えるのは不思議だった、一体どうなっているのか大輔に問うてみたが彼にも理由が分からないらしい。その間ロティスは釣り銭を用意してラティファとパックスは朝の掃除と開店準備に余念がない。

 店が開店すると同時にお客が入ってくる、人間だけでなくエルフやドワーフなんかもやってきた。まだ彼らと接するのに戸惑いのある紗路は欠員がキッチン担当でよかったと胸を撫で下ろす、その代わり厨房は戦場並みの忙しさだったが。

 

 午後3時を回ったところで大輔は紗路とラティファとパックスに休憩をとらせた。

 「冷蔵庫に切り落としのシベリアがあるから食べていいよ、1個はロティスの分だからとっていて」羊羮を挟んだカステラをお茶うけにしばし3人でおしゃべりを楽しむ、ランチと夕食時のピークを過ぎてからは出勤シフトの遅いロティスと2人でお店を回すらしい。話の流れでラティファとパックスの身の上を聞いた紗路は目頭が熱くなった。

 「みんな、マスターの、おかげ」

 「私達運がよかったんです」笑いながら話す2人に対し彼らに比べたら自分のこれまでの人生なんて苦労と呼ぶのもおこがましいとやさぐれてた頃を恥じた。

 

 その日の夜、デートから帰ってきたマティスがレイヨンと一緒に休暇のお礼とお土産を持って店に訪れた、帰り支度を済ませた紗路を改めて2人に引き合わせる。

 「姉さん?イヤ、そんな訳ないか」レイヨンの奇妙な事を言い放った、聞くと彼には幼い頃病死した姉がいたらしくその人が紗路にソックリだったそうだ。

 「生きていたところで私がいい年齢したおっさんですからな、こんなお若いハズがない。お嬢さん大変失礼しました」頭を下げるレイヨンに恐縮する紗路、そこにルカ達が入ってきた。先日児童教育ギルドに紙芝居の読み聞かせを頼まれた大輔が地球のお伽話の翻訳とこの世界用にアレンジする手伝いを彼らに依頼してあったからだ。紗路は一行の中にいたエルフ少女のペンダントトップに見覚えがあった。

 「それ、私が昔携帯につけててなくしたストラップ!自分で手作りしたから間違いない!」なんで異世界に?と言いかけて慌てて言葉を飲み込む。

 「紗路さんのだったの?僕が拾って警察に届けて、落とし主がいないからって引き取ったよ。いつの間にか消えてたけど」

 「俺は先代マスターから貰ったぜ。まあ如意棒につけてもしょうがねえし、オッサンにペンダントに細工してもらってトロワちゃんにあげた」

 「何?その巡り合わせ…」誰かが呟いた一瞬のち、店にいる全員が大笑いした。

 

 店の明かりも落とす頃、裏口の前まで紗路を見送りにきたロティスは

 「ねぇあなたまでマスターの事、狙ってないよね?」緊張した面持ちで紗路に訪ねる。紗路はロティスの気持ちを察したのかいきなり彼女の両手を掴み

 「頑張って、私応援するから!」こうして文字通り世界をまたにかけた女同士の友情が生まれた。

 

 




とりあえずロティスは一安心ですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。