――――時刻は放課後、場所は第二アリーナ。
その日の第二アリーナは他に比べて一際賑やかだった。アリーナの中では復習、予習とばかりにIS操縦の練習に励む者が多く居残っていた。だが、それ以上に多かったのが見学者の数だった。観客席の三分の一を占める割合だ。本来なら何も行われていないアリーナでここまで人は集まらない。だがしかし、今年は例年とは違って異例であるのだ。
「そこで右に避けろ一夏!」
「――――ッ!?」
被弾。一筋の光を避け切れず、一夏は左脚に着弾する。
「セシリア!君も何を悠長に佇んでいるんだ!」
「――――っ、わ、わかってますわ!!」
攻撃を当てたからか、一瞬気を逸らすセシリアだが、シロウに喝を入れられて再び攻撃姿勢に移る。
まだ、体勢を整えられていない一夏はその攻撃を避けることが出来ず撃沈し、今日のIS訓練は終了する。
『白式』が届いてから二日が経った。クラス代表戦が終わってからクラスの代表に決まった織斑一夏は昨日からの日課となった猛訓練に精を出している。
なぜ、一夏が代表に決定してしまったのか?それは単純に曲がりなりにも勝利したセシリアが代表を辞退したからだ。なんでもあの戦いは結果はどうあれ敗北したのは間違いなく自分なので、そのまま代表に成り上がるつもりはないとのことだ。
因みに、クラスでも一夏を筆頭に代表はシロウの方がいいのでは?という抗議があったが先に決めたことだろうと千冬に一蹴りされ、それでも納得出来なかった者にはシロウが直々に頭を下げた。
『一夏の将来性には期待している。だから、みんなには悪いけど俺のわがままに付き合ってほしい』
一夏たちもそこまで言われては引き下がらないわけにはいかない。よって、一夏は渋々ではあったが、一組の代表となって毎日ISの基礎知識から操縦までシロウに叩き込まれている。
そして、当初はISのバトルの相手はシロウ自らやるつもりだったのだが、突然セシリアが協力を申し出てきたのだ。もちろん、断る理由がないシロウたちはその申し出を快諾した。
「セシリア。君はセンスはあるのだが、どうしても相手が弱いと慢心する癖がある。それをどうにか直すべきだ」
ISを解除し、シロウと箒のもとに歩いて来る一夏とセシリア。そして、シロウの意見は間違っていないのだが、いいとこを見せたかったセシリアにとって正し過ぎる指摘にむすっとしてしまう。もちろん、そんな乙女心に気づくシロウではないし、隣で心を痛めている一夏にも気づいていない。
「セシリアは近接用の武装を持ってるか?」
「一応ありますが、なぜですか?」
「接近戦を学べば接近戦しかできない相手、例えば一夏や私のような相手の思考や行動を予測しやすくなる。だから、明日から君にはレーザーライフルの他に近接用武装も併用して訓練してもらう」
「......わ、わかりましたわ!」
狼狽えながら答えるセシリア。終いには「練習しないと......」などと心の中で呟いている。その様子からして、おそらく接近戦は苦手なのだろう、と一夏と箒は予想した。
「一度ISを部分展開して近接用武装を見せてくれないか?」
「え?」
「セシリアの近接用武装を一度見ておきたいんだがだめか?」
「うぅ......」
冷や汗をかき、目が泳いでいる。気が動転したのかあたふたし始めた。
「無理にとは言わんぞ?さっき戦闘したばかりで疲れているだろうし」
「いえ、そういう訳では......」
そもそもの話。セシリアが一夏への指導の本当の目的がシロウと仲良くなる、さらに言えばいいとこを見せることだったのだ。それが、注意され、なおかつ恥も見られてしまえば彼女のプライドに傷がつくどころではない。
「じゃあ、見せてくれ」
「うぅ......、イ、『インターセプター』」
出来るだけシロウには聞こえないことを祈って近接用武装の名を呟いてショートブレードを展開する。
「あぁ、セシリアは近接用武装の展開が苦手なのか......」
だが、ばっちりシロウには聞こえてしまったようでセシリアはあまりの羞恥に顔を真っ赤にしてしまう。武装の名前を言って展開するのは初心者が行う方法なのだ。
「まぁ、気にするな。君は才能があるのだからすぐに出来るようになるさ」
思わぬ褒め言葉に加え、頭を撫でるので、セシリアは先ほどとは違う意味で段違いに顔を真っ赤にしてしまった。今、初めて『インターセプター』の展開が苦手でよかったと喜んでいたりする。もちろん、観客席からなぜかブーイングが飛んでいるがセシリアにその声が聞こえることはない。
「一夏はまぁ......、ISに早く慣れるしかないな」
「......なんか俺へのアドバイスは雑じゃないか?」
「だって、本来なら『白式』のスペックはISの中でも最高と言ってもいい。だが、一夏がその持ち味を活かしきれていない。だから、一夏は何よりもまず 『白式』を使いこなすために毎日ISを起動し、『白式』を理解することから始めないといけない。ああ、それと――」
言いながらシロウは鞄に手を突っ込み、あるモノを取り出した。
「――これを毎日観ることだ」
取り出したのは一枚のDVDだった。一体何なのか聞いてみると、千冬のモンド・グロッソでの映像をダビングしたものであるという。
「一夏の理想とする戦い方は織斑先生の戦い方とほぼ同じ。もちろん、そこから自分独自の戦闘スタイルを取り入れるのもいいが、織斑先生の戦い方を参考にするのも勉強になるからな」
「でも俺千冬姉に止めらてるぞ?」
一夏は以前自宅でISのビデオを観ていたのだが、千冬に止められてそれ以降観ることをしなかったのだ。
「その点では大丈夫。すでに織斑先生から許可は得ているからな――――っともうこんな時間か......。そろそろ俺は帰るな」
時刻はもう五時。シロウは寮には住んでいないのでここから帰るといつも三十分くらいかかり、なおかつ買い物もして帰るというIS学園の生徒とはまた違った生活をしているのでいつもこの時間帯に帰るのだ。
「ああ。悪いな。いろいろと......」
「気にするな。あと、篠ノ之。この後、剣道場で一夏を鍛えるのもいいがほどほどにな」
昨日もISの訓練が終わったあとも剣術指南をしているのだが、何ともまあ、散々な結果だったらしい。シロウがいなくなったので止める者もおらず、今日シロウが学園に来たら一夏の体は痣だらけだった。
「わ、わかっている!」
その返事を聞いても、やはり心配だったが、きっと今回は手加減するだろうと当ての無い期待をしてシロウは帰ることにした。
「......さて、俺たちも行くか。セシリアはどうする?帰るのか?」
シロウが帰った後、未だ頬を赤くして俯いているセシリアに一夏が声をかけてみた。
「――――はっ!シロウさんは?」
今さらになってシロウがいないことに気がついたセシリアは質問に質問で返した。
「......あのなぁ、シロウはとっくに帰ったぞ」
「――――え?」
呆れたように答えた一夏の返事に、セシリアは素っ頓狂な声を出して呆然としている。その肩に同情を込めた手を置く箒の姿に一夏は首を傾げていた。
+ + +
翌日、シロウが登校すると一夏に出来た痣が少しマシになっていたことに安堵した。ちなみにマシになっただけでなくなったわけではない。
「フルーレくん、織斑くん、おはよー」
「おはよう」と二人が挨拶を返すと女生徒は今朝仕入れたばかりのニュースを口にする。
「ねえ、転校生の噂聞いた?」
そのニュースをまだ知らない二人は関心を示したように反応する。
「転校生?今の時期に珍しいな?」
現在はまだ四月の半ば。だというのにこの時期に転校するなど少々性急な気もするがそれは各国家の事情があるのだろうとシロウは判断する。
「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」
「中国か......」
知り合いに中国人のいないシロウはこの話題への関心を薄めるが、逆に一夏は何かを思い出したかのように声を漏らした。
「何だ、一夏。気になるのか?」
「いや、気になるってわけじゃないけどさ......。ただ、幼馴染の女の子にも中国人がいてさ――――」
そこまで言ってドンッと一夏の机を誰かが叩く。もう紹介するまでもないだろうが一夏のファースト幼馴染である箒である。
「............詳しく話してもらおうか?」
なんて言うか鬼の様な形相である。せっかく最近箒がクラスに溶け込めてきたというのに、と思うが時すでに遅し。シロウが後ろを向くとクラスのほとんどが後ずさりしていた。
「いや......、えっとだな............」
肝心の一夏はまるで浮気現場が見つかった亭主の様に狼狽えている。ちなみに言っておくが一夏は何も悪いことは言っていない。だから、箒が何に怒っているのか一夏は全くわからない。
「......フ、フルーレくん」
シロウの後ろに隠れた女生徒の一人が助けを請うようにシロウの名を呼ぶ。箒が一夏に対して癇癪を起こすことがあり、その度にシロウがストッパー役として止めに入る。そうしなければ一夏が理不尽な死を迎えるのだから仕方がないのだが、シロウはいつも思う。損な役回りだと......。
「はぁ.....」
深いため息は最近毎日続いているなと心の中で愚痴を言いながら、箒に声をかける。
「まぁ、待て。幼馴染がいたというだけの話だろう?そんなにプレッシャーをかけては話せるもんも話せん」
「.....わかった。では話せ」
近頃箒はシロウの言うことは割とよく聞く。それは単純に正当性があるからなのだが、少し一夏は納得していない。しかし、助けられているのも事実なので、若干ジェラシー。大部分が感謝という配分だったりする。
「えーと、そいつは凰・鈴音(ファン・リンイン)って言って小五の頭に転入してきた幼馴染だ」
......それのどこが幼馴染なのだろうか?確かに幼馴染に厳密な定義はないが、大体が二歳から六歳の友人を指しており、小五と言えば十歳くらい。正直、それを幼馴染と呼んでいいのか定かではないが、話させるように促したシロウは心の中で突っ込むだけで口には出さなかった。
「性格も唯我独尊みたいな性格でさ......」
「それは......残念だな」
シロウの頭に現れるのはどこぞ高笑いしている金ピカ。かなりうるさいので、脳内バージョンでの『約束された勝利の剣“エクスカリバー”』で消し去った。
「髪型もずっと一貫してツインテールだったから、もし今も一緒だったら多分わかるぞ」
「ほぉ......ツインテールってあんな感じか?」
シロウの視線が一夏を通り越し、さらに向こう側のクラスのドアに向けらる。それにつられてみんなの視線がそちらに集中する。
「――――久しぶりね、一夏」
そこには腕を組んで悠然たる態度で佇む少女がいた。
「お前......、鈴か?」
目を見開く一夏になぜか満足顔で鼻を鳴らす少女。そして、その態度とトレードマークであるのだろうツインテールでみんなはこの少女が一夏の言っていた二人目の幼馴染だということを悟った。
「感心感心。一夏のくせに私のことをちゃんと憶えてるなんて偉いじゃない」
「いや、お前が中国に帰ったのは一年前だろ?忘れるわけないじゃないか」
その一夏の言葉に少女は益々気をよくする。だが、逆に箒の機嫌の悪さが最高になっているが、そこをなぜかセシリアが宥めていた。箒が怒っている理由も、それをなぜセシリアが宥めているのかもシロウには到底わからないことだった。
「あー、凰・鈴音とか言ったか?」
今の現状がよく理解出来ないシロウではあるが、わかっていることが一つだけある。
「なによ、あんた?」
少女にとってシロウの乱入は感動の再会の邪魔者でしかない。なので、少女は棘のある言葉でシロウに返事を返す。
「......早く教室に帰ったほうがいいと思うぞ」
この先に少女が待ち受ける未来が碌でもないことであるのは十分予測出来た。だからこれは警告だ。
「はぁ!?なに言ってんのよ?」
少女の反応は当然のものだ。ようやく幼馴染である一夏と出会えたばかり。積もる話もたくさんあるのだ。こんな所でおめおめと帰れるわけがない。だが――――
「おい」
「なによ!?」
バシーンッ!!と小気味のいい音が響く。少女も二人目の乱入者にはしつこく感じたのかシロウよりも強気な態度で返してしまったのでその分、一夏たちが授業で叩かれる時より数倍デカい音だった。
「ち、千冬さん......」
少女が後ろに振り向けばそこには鬼教官よろしく織斑千冬の姿があった。それを見た少女の姿はいつぞやの食堂での三年生を彷彿とさせる。
「織斑先生と呼べ。さっさと教室に戻れ」
「は、はい......」
結局、少女は帰らざるを得なくなってしまい、千冬にビビりながらおめおめと自分の教室に帰ることになった。
+ + +
「待ってたわよ、一夏」
昼休み、食堂に昼食を取りに来た俺たちの前に再びあの凰・鈴音という少女がどーん、と立ち塞ぐように立っていた。ちなみに 、実際に立ち塞がれたのは一夏たち数名の食券を必要とする者たちであって、俺たちのような弁当組は邪魔にはなっていない。ただ、「またか......」とつぶやいてしまっただけに、この後厄介事に巻き込まれるような、自ら足を突っ込んでいるような、とにかく何か起きる気がして仕方がない。
「まぁ、とりあえずそこどいてくれ。食券出せないし、普通に通行の邪魔だぞ?」
「うるさいわね、わかってるわよ」
そう言いながらも道をあける凰は素直なのか、素直じゃないのか。一夏たちが食券を買うために並んでいると、凰は一夏にではなく何故か俺に喰ってかかってきた。
「ちょっと......」
「ん?俺か?」
「あんた、さっき「またか」って言って呆れてたでしょ?」
面倒くさいことになる予感。どう答えようか?おそらくどの選択肢を選んでも厄介になることは間違いないと直感で判断する。
「気に障ったか?なら悪かった」
だから、素直に謝ることにした。面倒事が起きるなら最低限の被害で済ましたい。そう思って、答えたのだが、どうやら凰はその態度が気に入らなかったのか、さらにシロウに突っかかる。
「なにそれ?あんた誠意ってもん知らないの?」
なぜあれだけでここまで責められるのだろうか?一夏の言っていた唯我独尊という性格はあながち間違ってないな。
「はぁ......」
というかばっちり厄介事に入っちゃっている。どこの選択肢で間違えたのか?おそらく「またか......」と言ってしまったところからだろう。
「......あ、織斑先生」
俺が千冬さんの名を言ってみると凰はバッ!!と驚異のスピードで振り返る。......もちろん、これは俺が吐いた嘘なわけで――――
「......わ、笑ってはいけませんわ、箒さん。......ふふ」
「お、お前こそ笑ってるじゃないか......くく」
――――クスクスと周りから笑われている。終いには自分の注文した料理を取ってきた箒たちも笑っている。だが、一夏は最後だったのかまだ戻って来ていない。
「............あ、あんたねぇ」
顔を真っ赤にした凰が胸ぐらを掴んできた。どうやらからかい過ぎたようだ。......ん?
「ちょっと落ち着け、凰」
「これが落ち着いておけると思ってんの!?」
「おい」
「なによ!?」
......まさにデジャヴ。怒り心頭の凰も第三者の声掛けに荒く反応する。ただ、振り向いた瞬間赤かった顔をどんどん青ざめる。
「お、織斑先生......」
さっきは千冬さんと呼んでいたが、今回はきちんと織斑先生と呼べたところは一夏との出来の違いが思い知らされるな。あいつ学習しないし......。
「食堂で暴れるな」
「は、はい。すみません!」
そして、凰はこちらを振り返る事なく逃げるように走って行く。何と言うか、脱兎の如く走り去るその後ろ姿は二度目となると憐憫の情が漂っていた。
「お待たせ。いやー、時間掛かったな。ってあれ?鈴は?」
......うん、お前はタイミングが悪過ぎるよ、一夏。
+ + +
「じゃあ、俺はここで帰るぞ」
いつものように放課後の訓練を終えて、シロウはいつも通り五時になって帰り支度する。ちなみに、シロウと箒は学生服なので着替える必要がない。
「あぁ、じゃあな」
シロウは鞄を持ってアリーナを後にする。その後をキャッキャッとついて行く女生徒もいつも通りだ。
「一夏!」
シロウとすれ違うように違う出入り口からアリーナに入って来るのは鈴の姿だったが、その表情は何か悪い事でも企んでいるようだ。
「......あいつ帰ったわね?」
「あいつってシロウの事か?」
「それ以外誰がいるって言うのよ!」
何故鈴が御冠なのか一夏は全く見当もつかないが、後ろの二人は容易に察しがついている。
「付けるわよ」
「「「――――は?」」」
あまりに突拍子もなく、主語もないその一言に三人の思考は追いつかないでいる。
「だから、あいつを尾行するわよ」
「なんでまた?」
尤もな疑問だ。
「この私を敵に回せばどうなるか思い知らせてやるんだから」
どうやら昼の事を未だに根に持つ鈴はどうしてもシロウの弱味を握りたいらしい。
「じゃあ行くわよ」
「ちょ、俺まだシャワーが......」
一夏は異見を唱えるが虚しくスルーされ手を引っ張られる。乙女の心の計算はかなりしたたかであるようで、運がよければシロウの弱味を握り、かつ、一夏とのデートにもなる。まさに一石二鳥。少々強引ではあるがやらない手はない。......だが残念ながら、乙女の計算を打ち砕くのはやはり乙女であるのか――――
「「待て(待ちなさい)!!」」
――――二人の乙女が待ったをかける。
「......なに?」
さすがにそれは無視出来なかったのか、反応して首だけを後ろに振り向ける。
「何を勝手に決めている!一夏は今から私と剣の訓練をするのだから邪魔するな。と言うかその手を離せ!!(なんだこいつはいきなり!ようやく私と一夏が二人きりになれるというのに)」
「そうですわ!尾行などと非人道的な行為が許されると思っているのですか!?(なんですの、この方は!?わたくしですらシロウさんの生活を知らないのにどこの馬の骨かもしれない人に見せることはできませんわ!......というかわたくしが見たいですし)」
二人の意見は正論ではあるが、主張の中に二人の願望が見え隠れする。箒に至っては口にも若干出てしまっているが、誰も気づかない。
「...... ん~」
鈴は一夏の手を握る手とは反対の手で顎に指先を添えて考える。一夏と二人きりで行くのが理想的だが、シロウを見失っては元も子もない。
「じゃあ二人も来る?」
なのであまりしたくないがこれが妥協点。シロウの弱味を握って、一夏と出かけれる。そこに二人お邪魔虫が入っても今回は諦めよう。まだまだチャンスはあるのだから。そう考えての提案だ。
「「は?」」
二人にとってのこの提案は意外なものだった。一夏たちを止めることしか考えていなかっただけに、自分たちもそのメンバーに加わろうと言われるとは露ほども思っていなかった。
「(普段どういった訓練をしてるのは気になるが......)」
一度圧倒的に負けた身として、箒はシロウが家でどんな訓練をしているのかは気になる。だが、それを言えばセシリアはその十倍、いや、百倍は気になってしまう。
「(......気になりますわ。シロウさんは一体どのような生活をしているのか......。だけど......、やっぱり気になりますわ)」
腕を組んで悩む二人を見て、鈴はほくそ笑む。そして、最後に一言二人に告げた。
「じゃあ、あいつ見失いたくないから行くね。バイバイ」
「ま、待て!!」
「わたくしも行きますわ!!」
結局、鈴の目論見通り二人はついて来ることにした。もはや、二人きりの訓練がどうとか、非人道的な行為がどうとかは二人の頭にはない。乙女の頭はいつも都合のいい様に改竄されているのだ。
――――そうして、シロウ・エペ・フルーレをターゲットとした尾行調査が行われることとなった。
「......あれ?俺の意見は尊重とかされないの?」
みんなが忘れているだろうが、ここは女尊男卑の世界。一夏の意見が通るわけない。そんなわけで今日も一夏は引きずられながら現代の社会に愚痴を言うのであった。
オマケ
ーーーーブルブル。
「あれ?厄介事は通り過ぎたはずなのに嫌な予感がする」