お休みのカミサマ   作:ああああ

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※白髪の症状→白髪の少女
に訂正。8-19 22:27


『 』

――エルキア王国・宿屋――

 

騒ぎの中心地は街の安宿だった。

何が起こっているのかは皆目検討が付かない。

……が、周りの人の話によるとギャンブルで次期国王を決めているらしい。

 

「国王がギャンブラー……大丈夫なのかな?」

 

レストの視界に入ったのは、紫色のヴェールのようなものを着けた紫髪の女性と、赤髪の女性がポーカーを始めた所だった。それぞれクラミー、ステファニーと言い、ステファニーの方は前国王の孫らしい。

 

 

「まぁ別にいいや。僕には関係ないし……あ、どうせだし、僕が全部食べてテトには不味い奴食べさせよ。帰りによく分かんない物買って帰ろう……」

 

だがレストには関係ない。

なぜなら自分には国を治める力がないと思っているからだ。加えて神霊種(オールドデウス)が次期王というのは、国を明け渡したのと同義だろう。そんなもの国民が認めない。まぁバレなければ別に関係ないが。

よしんば運良く国王になれたとして、反乱が起こって終わりだ。……まぁやっぱりバレなければ関係ないが。

 

というよりそもそも興味が無い。王位より目の前のクッキー。花より団子、ということだ。

 

「これちょっと高かったから……美味しいハズ……あ、残りのお金も確かめないと……」

 

「あー、ちょっといいか?」

 

「……?」

 

テトに対する嫌がらせを決行する為、クッキーを全て食べてしまおう、と空いていた席に座った所で、レストに対して声がかかった。

声のした方を向くと、そこにはには赤黒っぽい髪の青年と白髪の少女。兄妹の様だ。

 

「えっ……と、僕に用?」

 

「あぁ、あそこで何やってるのか聞きたくてさ」

 

青年が指差した方向には、件のギャンブル国王大会(仮称)。レストもよく分からない物だった。

ちなみにレストは完全に流したようだが、側にいた白髪の少女が『また……ボクっ娘……』と呟いていた。

 

 

「あれ……国王をギャンブルで決めてるんだって。そんなのでいいのかな?」

 

「はは、この世界らしいな」

 

「そうだね……あ、右はステファニー、前国王の孫だって。左はクラミー。なんか、強いらしいよ?」

 

「へーぇ……」

 

レストが一通りの説明を終えると、白髪の少女のお腹が

きゅるる、と可愛らしい鳴き声を上げた。

余程お腹がすいた様で、よろけてしまっていた。

 

「白、大丈夫か?」

 

「平気……」

 

 

空腹。

それは人の思考を鈍らせ、正常な判断を出来なくする。

だがしかし、その状態で食べるご飯という物は……何とも言えない幸福感を生む。

まぁ、神霊種(オールドデウス)に空腹もクソもないが。

それでも、嗜好品としては重要だ。ぶっちゃけ何にもやることがないレスト達にとって、美味しい物を食べる時間というのは至福の時だ。

一部の神は、邪魔をされると怒り狂って殺しに来るという……恐ろしい。

 

閑話休題、話を戻そう。

 

白髪の子がよろけた後、レストの方を青年がじっと見ている。

……正確には、()()()()()()()だが。

レストは自分が見られていると思っているようだ。

 

「なぁ、キミは出ないのか?」

 

「……え?」

 

「いや、少し気になってさ。で、どうなんだ?」

 

「あはは……僕はああいうのに興味が無いから……それに、仮に挑んだとしてもあのクラミーって子に負けちゃうよ、強いらしいからね」

 

「へぇ……つまり怖じ気付いた訳か」

 

 

わかりやすい青年の挑発。

だが、最近負けが込んでいた……と言うより、生まれてこの方ゲームで勝ったことが無いレストの心には、グサグサと刺さる言葉のナイフとなっていた。

青年がそんなこと知る由もなく……

 

「い、いや別に……」

 

「確かに、ここで負けたという事実が無ければ後でいくらでも言いようあるもんなぁ?実は勝てたけど見逃してやった……とか」

 

「……い、や…」

 

「興味が無いとか言って実際……え゛?」

 

「あんまりじゃ……ひぐっ…ないかなぁ……?」

 

「にぃ……女の子、泣かせた……」

 

 

青年が放った言葉のナイフが、最初から壊れかけていたレストの心のダムを決壊させる。その結果がガチ泣きだ。序に性別を間違えられたのが余計にダメージを与えている。哀れ。

 

「え、いや、え、え」

 

「いいんだ、いいんだよ……ぐす……キミは正論しか言って無い…キミは悪く…ううっ……」

 

「大丈夫……?よしよし、いい子いい子……」

 

白が泣き出したレストの頭を撫でる。

白の優しさが、レストの傷ついた心に染み渡った。

結果何が起こるか?

それは……涙腺崩壊だ。

 

「君は優しいなぁ……うぅぅ……ひっぐ……」

 

「にぃ、この子凄い……!アニメみたいな泣き顔……!」

 

「に、兄ちゃんはそれ所じゃ……わぁホントだぁ!アニメみたーい!」

 

泣き続けるレスト、思わぬ発見をした白、あたふたしていたが、白の発見でおかしくなった青年。

暫く兄妹の持っていた端末から、シャッター音が鳴り止まなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……見苦しい姿をお見せしたね。それで、僕を挑発して……望みは?」

 

「いいやむしろ美少女の泣き顔とか眼福だッ!

……ん゛んっ!その金、全部だ」

 

「完全同意……目の保養……」

 

「……。……ぜ、全部?な、成程……対価は?」

 

「そうだな……俺達二人を好きに出来る……で、どうだ?売ろうが捨てようが構わない」

 

「……正気?僕がもし勝ったら、どうなるか分かってる?」

 

「……正気」

 

青年のとんでもない発言、自分たちを好きにしていいと言う言葉。それは奴隷宣言にも等しいものだ。

しかも、少女もそれに同意した。

彼らは自分の言っている意味がわかっていないのか?

レストの中でそんな疑念が膨らんでいく。

 

「本気で言っているんだね?僕が死ねと言ったら死ぬと?」

 

「あぁ、本気だ」

 

この返答で、疑念が確信に変わる。

意味を分かって言っている。

自分の、自分達の命を差し出すと。

だが、レストはそんな物認めない。

 

「……訂正を求めるよ」

 

「おいおい、まだ何か増やせって?俺達は無一文なんだ、これ以上のものは……」

 

「僕はそんな生死を天秤にかける物騒なゲームをしたくない。君達を好きにする、という条件を変更。……そうだね、僕と友達になるって所でどう?僕が負けたら、お金もクッキーも好きにするといいよ。」

 

「は?」

 

「ふぇ?」

 

 

レストは安息、休養を司る。戦の神や武の神とは違い、命を投げ出すような物騒なことは基本的に好まない。

だから、命を投げ出すような賭けは絶対に認めない。

これは流石に読めなかった様で、二人共に目を丸くした。

 

 

「勝負はポーカー1回勝負。どう?やる?」

 

「……いいのか?」

 

「盟約その3。ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる……僕は対等だと判断した。君達はどうする?どうしても自分達を賭けると言うなら、僕はこのゲームを辞退するけど?」

 

「……いや、その話に乗っておくよ。」

 

「よし、じゃあやろう!あ、カードがない……ちょっと待ってて?」

 

 

その後、後ろの席に座っていた女性からカードを借りてポーカーを開始。

結果はボロ負け、相手側がロイヤルストレートフラッシュなのに対し、レストはワンペア。完膚無きまでのぼろ負けだった。

 

 

「あはは……負けちゃったなぁ、しかもぼろぼろ!参ったね、僕も無一文だよ……」

 

「はは、盟約その6、賭けは絶対遵守される、だ。悪ぃな」

 

「クッキー……おいし……1枚、いる?」

 

「え?いいの?ありがとう……天使の様な子だね、妹さん」

 

「分かるか……分かるのか……!」

 

「あはは、うん……じゃあ僕は行こうかな。また会えたら、今度こそ友達になってもらうよ?」

 

「友…達……ッ!あァ、なんて甘美な響きなんだ……」

 

「にぃ、友達いない……から」

 

「おおっと妹よ、大きなブーメランが刺さっているぞ?」

 

「白、子供だからわかんな……あれ、いない……?」

 

「え?……本当だ、何処に行ったんだ?」

 

 

兄妹が和気藹々としたやり取りを繰り広げている内に、レストは彼らの視界から消え、どこかへ行ってしまった。

 

……余談だが、彼らが都市伝説となる程の最強のゲーマー、『 』(くうはく)である事を、レストは気付かなかった。

 

レストがいなくなったその後……

 

 

「……にぃ、イカサマ…それに、あの子……わざと負けてた」

 

「盟約その8、バレなきゃいいんだ…けど、流石に心が痛いな……あぁ、確かにわざとフルハウスの手札を削ってワンペアにするなんて……」

 

「……ただの良い人……?」

 

「……兄ちゃん、わかんない☆」

 

 

こんなやり取りがあったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――キングの駒・天辺――

 

 

 

「レスト……いや、食べ物を買ってきてとは言ったけどさ?」

 

「だからクッキー1枚。ちゃんと持ってきたじゃん…」

 

 

さて、『 』(くうはく)に有り金とクッキーを全て取られたレスト。だが、彼の顔は晴れやかだ。

とても少し前まで負のオーラが具現化するほど沈んでいたとは思えない。

 

「んも~、クッキーまで賭けることないんじゃないかなぁ~?」

 

「……あれ?見てた?」

 

「ばっちり!フルハウスの手札をワンペアにして負けてあげようとしたけど、相手がロイヤルストレートフラッシュで普通に負けてたし、そもそも相手がイカサマしているのに気づいていなかったレストをバッチリ見てたよ!」

 

「え、イカサマ……本当に?」

 

「本当さ!いやそれにしても、『僕は生死を天秤に賭ける物騒なゲームをしたくない』……いやぁ、かっこいいね!」

 

「う、うるさいな……それより、ポーカーしない?カード、持ってきたから……チップはこのクッキー1枚……どう?」

 

「いいねいいね、そういうと思って……場所を用意しておいたよ!」

 

テトがそう言って指を鳴らすと、唐突にポーカーテーブルが出現した。さながら手品だ。最も、テトのすることに手品もクソもないのだが。

 

「おぉ……ゆいいつしんの ちからって すげー……」

 

「うぉっほっほ!みんなもクッキー、ゲットじゃぞ!……さぁ、やろうか!」

 

 

こうして一日は過ぎていく。

結局ポーカーもレストの負けで終わり、

クッキーはテトの口に入った。

彼が勝つ日は来るのだろうか?それは誰にも分からない。

 

 

 

 




(*д*)←アニメみたいな泣き顔


かがくの ちからって すげー!
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