「蒼はあっちを探して! 私はこっちを探す!!!」
馬休の怒鳴り声が早朝の市街地に響き渡る。
結果から言えば、犯人を取り逃がした。
槍が天井や壁にぶつかり、ひどい時には仲間にさえぶつかる。
馬では追えない細い路地に逃げられる。
馬休は、頭に血を上らせていた。
しかし窃盗犯も、寝込みを襲われたので、混乱をしている。
それでも逃げられるのは、相手が馬から降りない、降りても走りではこちらに敵わない。
槍に鎧と、実に重い装備だ。
対して窃盗犯は、剣と服のみ。身軽なものである。
「はぁはぁ、畜生、なんでバレたんだ。でも、なんとか撒けた」
ゆっくりと日が昇り始める早朝の商店街。
ちらほらと商人達が店の準備を始め、
酒家等の夜の住人を相手にしていた店は、店じまいを始める。
これで逃げられる――窃盗犯は街にあふれ始めた人に安堵し、
「随分と汗をかいてますね。体の具合でも悪いのですか? 大丈夫ですか?」
ポン、と肩を叩かれる。
振り向くとそこには一人の男がいた。
白い不思議な衣装を着ている、顔立ちの整った男。
見た目や衣服からは役者でもやれそうな優男である。
だが、窃盗犯は知っている。
この男の目。官憲の目。狗の目。
こちらを気遣っている言葉を吐いているが、その実になにも心配はしていない。
窃盗犯は頭の切れる男でもあった。
そのおかげで今まで馬家を出し抜き、人を傷つけずに逃げおおせた。
しかしアジトが見つかっては、しばらくは涼州で商売は出来ない。
いっその事、好景気に沸く魏に行くのも手かとも考えていた。
そこで考える。
この男を誤魔化すか、それとも逃げるか。
白い男は、剣すら身に着けていない、服の袖から鎖帷子も見えない。
装備はこの衣服のみだ。
こちらより身軽い。純粋な脚力で逃げられるかも知れないが――
この男が大声で叫び騎兵の連中を呼ばれたら厄介だ。
誤魔化す――無理だ、この目をしている人間を騙すのは骨である、そんな時間はない。
つまりは――窃盗犯は腰の剣を見る。
殺せば問題になる。手や足などを軽く傷つけて一目散に逃げる。
手負いならばそんなに走れまい。
窃盗犯は本当に頭が良く、度胸もあった。
ここまでの事を数瞬で考え、有無を言わさずに白い男に斬りかかった。
不意打ちからの一撃。
しかし、白い男はスルリと躱す。
「悪くないが、同じような事を何度もされてね」
白い男こと一刀は、三国一、大きい国である魏において警備隊の隊長として現場にも数えきれないほど出動した。
追い詰めた悪人の行動も、ある程度はパターンとして体に叩きこんである。
一刀は、近くにあった薪屋の荷車から薪を掴みとる。
掴みとり、右上に振り上げた。
それは、子供が棒を振り回して遊ぶような、素朴な構え。
今から振り下ろすよ、そんな声さえ聞こえそうな牧歌的な構え。
この修羅場にあって、あまりにもフザケた構えであり、
窃盗犯は、舐められた、と激怒した
「なめるな!!!」と叫び
窃盗犯は剣を振りかぶり、振り下ろし、すさまじい衝撃が腕に走る。
手の感覚がなかった。
手の震えが止まらない。
持っていた剣が地に落ちて、真っ二つに折れている。
訳がわからない。
混乱する窃盗犯。その眼前に突きつけられる薪ざっぽう。
「下手な真似をするな。次は頭蓋に落とすぞ」
その一言に窃盗犯の腰は抜け、心は折れた
朝日が登る、商人達は目の前で起きた戦いに、手を止めて見入ってしまっていた
一人の男が剣で斬りかかり、もう一人の男が華麗に躱す
そして、薪を掴むや、風の様に視認できない速度で振り下ろし、相手の剣を真っ二つに叩き斬る
その講談じみた戦いに町行く人々の目は釘付けだ
日が昇る。
白いと思っていた男の服が、朝日を浴びて白銀色に輝く
木で鉄を斬り、白銀の衣装をまとった二枚目の男
その出来過ぎた英雄譚に、町行く人々――涼州の民は大いに沸いた。
そして、その光景を見てしまった馬休と馬鉄。
馬休は一刀の武勇と武者振りにドキンドキンと胸を高鳴らせ――
「本当、ご主人様は凄いなぁ。知りたいことが増えちゃったな~」
馬鉄は静かに微笑んだ。その微笑みは、どこまでも昏かった――
初代恋姫……通称 無印恋姫の設定で
北郷は島津家の分家であり、スパルタな祖父から剣術を習っていた。
つまりは示現流。
薩南示現流と衛府の七忍を見て、勉強しなきゃ(使命感)
個人的には薬丸自顕流の方が好きですが、下級武士で流行っていたようであり
薩南示現流ではそこそこディスられていたり……うーん、この
こうなったら、【ぼくのかんがえた、じげんりゅう】で行こうかな