恋姫散話   作:名無しAS

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個別恋姫 にこ競食の計 うえ

 

真桜のギミックによる重い愛の檻の外史も終わった

 

色々とあったし、監視の目がキツかったのは事実であるが、まぁそれも良しとしよ

 

 

「無邪気な娘・・・・・・そうだ恋にしよう」

 

 

本能で生きていると言っても過言ではない恋

 

彼女と一緒にのんべんだらりと生きていくのも悪く無い

 

そう考え、一刀は次なる外史の扉を開く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「折角出し、彼女の武を習おう」

 

 

一刀は練兵場でそう呟いた

 

最初の頃は良かった

 

彼女の元に転がり込み、セキトを介して仲良くなり

 

饅頭その他食べ物で彼女を釣り、どんどんと深い仲になったいった。

 

 

朝ご飯を食べてイチャイチャして、

 

昼ご飯を食べてイチャイチャして、

 

夜ご飯を食べてイチャイチャして、一日が終わる

 

 

最初の頃はそれで良かったが、ずっととなると飽きるもの

 

そこで一刀が目をつけたのが彼女の武

 

恋の武は三国一なのは事実である

 

そんな彼女に手ほどきを受けてみたい

 

始まりはそんな軽い気持ちであった

 

 

 

 

「がはっ!!!!!!」

 

 

練兵所の端から端へと吹き飛ばされる一刀

 

方天戟を振り抜いた恋はオロオロと取り乱している

 

 

「ごっご主人様、だっ大丈夫」

 

「だっ大丈夫、大丈夫。さぁもう一本やろうか」

 

 

ちょっとプルプルしながら戟を構える一刀

 

魏では春蘭、蜀では愛紗、呉では祭に

 

訓練と称するかわいがりで空を舞い続けた一刀

 

こと打たれ強さに限って言えば、三国でも高水準になっていた。

 

 

「ご主人様、もう止めよう。弱い者イジメしたくない」

 

「恋、でも恋になにかあったとき恋を守りたいんだ」

 

「・・・・・・なにかって?」

 

「えっと、風邪とか? 体調が悪い時に恋が襲われたら大変だろ」

 

「風邪を引いてもご主人様より強いよ」

 

 

身も蓋もない返答に一刀も詰まる。が、それでも食い下がる

 

 

「ぐっ、良いの。俺は恋の恋人でご主人様。

好きな女を守るために強くなるのを求めるのはおかしいかな

ほら、恋の飼ってる動物だった雄が雌や家族を守るために牙を剥く時があるよね」

 

「・・・・・・・・っ」

 

 

動物好きの恋の為に、たとえで動物を出してみたところ

 

それが恋の心を激しく揺り動かした

 

 

「分かった。ならいくね。ご主人さ・・・・・・あっあなた」

 

 

顔を赤らめ、あなた、という恋

 

それは恋人から夫への昇格

 

一刀は思わずポカンとし、

 

豪風を伴って横殴りに来た方天戟の直撃を食らって、空の彼方へと飛ばされていった

 

 

 

かくして恋と正式に夫婦となり

 

イチャイチャしたり、ご飯を食べたり、空の彼方へと飛ばされる日々が過ぎていく

 

だが、時は流れ、国は動乱を迎える

 

一刀と恋も時代の流れには逆らえず、気づけば董卓の配下になっていた。

 

 

二人の生活サイクルに少しの変化が訪れた

 

恋は武官、一刀は文官の仕事が入った。

 

本来ならば武官もこなせる一刀であるが、

 

そこは恋の強固な反対のせいで文官とし働く事になった。

 

 

飢饉と黄巾の乱から始まる国の動乱により、

 

働かなければ、恋の大家族を養う事が出来なくなったのだ

 

そう、これは仕方のないこと

 

 

「・・・・・・・一緒にいる時間が減った」

 

「仕方がないよセキト達を食べさせなきゃいけないしね」

 

「うん・・・・・・わかってる」

 

「明日は二人とも休みだし、一緒にゴロゴロして、昼は鍛錬しようか」

 

「うん! 楽しみ」

 

 

二人は一緒に休暇を取ることを覚えた

 

仕事で離れ離れの時間は出来たが、それでも二人の世界が崩れることはなかった

 

 

 

 

 

「うーーーん、勝ちたい」

 

 

誰もいない夜の練兵場で一人ゴチる一刀

 

董卓陣営での生活には不満は無かったが、

 

恋との生活に少しの不満があった

 

 

「でも、相手は恋だ。呂奉先だ。三国最強の武だもんなぁ」

 

 

積み重なる連敗記録

 

分かっている。分かってはいるが、男児たるもの最強を目指したいものである

 

なにより自分の嫁だ。夫として、せめて一太刀は入れたいものだ

 

夜の練兵場に方天戟の風切り音が寂しく響く

 

いつの頃からか、一刀は夜に恋が寝たのを確認したら一人で練兵場に出るようになった

 

強くなりたい、恋から一本取りたいと、考えて

 

そして一時間ほど方天戟を振るい、恋のいる寝所に戻る

 

そんな日々が続いていた。

 

だが、その夜は違った

 

 

「北郷さん、ご精が出ますね」

 

「こっこれは、董卓様」

 

 

慌てて頭を垂れる一刀

 

一刀は混乱していた

 

なぜこのような時間に総大将が一人練兵場に来るのか

 

そんな一刀の悩みを察しているのか、董卓はクスクスと笑いながら

 

 

「ふふ、いつも頑張っている配下を労いにきました」

 

「いつも頑張っている?」

 

「ええ、あの飛将軍の恋さんに、叩き飛ばされては立ち向かい、そして叩き飛ばされる文官さん。私達の間でも有名ですよ」

 

「あっ、そういうことですか」

 

「それに、ふふ、勝ちたいとは、北郷さんは凄い文官さんですね。ますます有名になりますよ」

 

「いや、それは・・・・・・なんとも恥ずかしいですね」

 

 

恥ずかしさから、董卓から視線をそらしてポリポリと頬を掻く一刀。

 

そんな一刀を見て、ますます笑みを深める董卓。

 

 

「ですが、一人稽古では自ずと限界が見えてきます。良ければ私が付き合ってあげましょう」

 

「えっ!? しかし董卓様、それはさすがに」

 

「へぅ・・・・・・こうみえても、私もそこそこ出来るんですよ」

 

 

言うや練兵場の隅においてある木剣を取り、構える董卓。

 

構えから発する威圧に一刀は思わず距離を取る。

 

様々な豪傑と戦い続けて練り上げた一刀の勘が、危険だと騒ぐ。

 

その勘は当った。

 

先程まで一刀のいた場所に木剣を振り下ろしている董卓。

 

引かなければ、良いのをもらっていた。

 

 

「へぅぅ・・・・・・これをかわすなんて、流石ですね」

 

 

にこりと微笑む董卓。

 

だがその笑みは獣が牙を向いたように恐ろしい。

 

正史においては暴政と悪逆で歴史に名を残した董卓。

 

だが、権力を握る前の一群雄だったころの董卓は、武勇に優れ、義侠心にあふれる好漢であったとされる。

 

 

この外史においては可憐で心優しき少女である董卓。

 

だが、隠れた武闘派でもあったのだ。

 

なぜそれが表に出ないかというと、彼女の親友である賈クによる所が大きい。

 

曰く、月は大将なんだから、前線で剣を振るうなど論外である、と。

 

 

正論である。

 

では、と、武官の訓練に混じって剣を振ろうとして――また怒られた。

 

 

恋に華雄といった本能で生きてる連中に手加減なんて真似が出来るわけがない。

 

霞は多少マシだが、酒の臭いがぷんぷんする時がある。

 

まかり間違う時がある。

 

 

正論である。

 

董卓も自分の武に自身があるからこそ、格上の強さがよく分かる

 

方天戟に金剛爆斧、飛竜偃月刀。木剣では小枝のように折られ、下手な得物では太刀打ち出来ない。

 

愛用の刀(銘は獄刀。ノコギリ状の刃を持つ凶悪な刀。昔はこれで野牛を一撃で倒して、お客に振る舞ったとかなんとか)を使えば打ち合えるが・・・・・・試合が死合になりかねない

 

 

仕方がないとはいえストレスは溜まる。

 

そんな中知った、北郷一刀なる文官の存在。

 

桁外れの頑丈さと、なんとも評価のし辛い武。

 

 

彼ならば、詠ちゃんも納得する。

 

ただ、万が一ということもあるので黙っておこう。

 

 

董卓は北郷に声を掛けるタイミングを見計らっていた。

 

個人的に細作を使い、彼が夜一人で方天戟を振るっていると知り小躍りをした。

 

 

 

月明かりの下、董卓の木剣が旋風を巻いて一刀を幾度も襲う。

 

一刀も仕方がないと腹を括り、董卓の攻撃をいなし、そして舌を巻く。

 

反撃が出来ないのだ。間合いを詰められ振るわれる連撃に防御で精一杯、

 

いや、その防御すら間に合わず、小さな攻撃は受けてしまっている

 

それでも直撃だけは避けて、抵抗を続ける

 

 

 

対する董卓は笑みを深める

 

彼女の心を占めるの圧倒的な歓喜である

 

なんて健気なのだろう

 

なんて健気な武なのだろう

 

なんて健気に私に付き合ってくれるのだろう

 

なんて健気に私を受け止めてくれるのだろう

 

こんなに気持ちの良い、自分の全てを受け止めてくれる相手はいなかった。

 

全力で振るう剣のなんと心地の良いことか。

 

全力で振るった剣が止められた時の衝撃がなんと甘美なことか。

 

浅く入った。浅くとも痛いはずなのに、彼は止まらずに私を受け止めてくれる。

 

その優しさと力強さに心が踊る。

 

董卓の剣舞は続く。

 

乾き飢えていた彼女の心を癒やすように

 

 

 

 

 

 

 

 

だが――その乾きは【それだけで】癒えるものなのだろうか――

 

 

月明かりの下、北郷を見る董卓の瞳は、どこまでも綺麗で純粋であった。

 

 




呂布、董卓が女性になるのなら

貂蝉=一刀と見るのが自然な流れ

筋肉モリモリの方は見なかったことにしよう

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