恋姫散話   作:名無しAS

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華雄日記 その2

 

 

某月某日

 

 

「北海道はでっかいどー、涼州はでっかいどー」

 

 

となりで、大草原を前に大声を出してはしゃぐ北郷

 

騒ぎたくなる気持ちは私も一緒だが、北海道とはなんぞや?

 

 

 

さて、西方との交易の要衝だる涼州

 

待ち行く人の来ている服も、肌の色の様々だ

 

露天には見たことある食べ物から、見たこともない珍妙な食べ物まで様々においてある。

 

天の国言葉では、エキゾチックと言うらしい

 

うむ、なんだか賢くなった感じがするな

 

 

悲鳴が響き渡る

 

露天の串焼きを片手に北郷と市を冷やかしている最中

 

街の外から民の悲鳴と馬のいななく音がする

 

武人としての本能から、華雄は串を捨てて悲鳴のする方へ駈け出した。

 

北郷も華雄に遅れること一調子、すぐに華雄の後を追いかける

 

 

「五湖が・・・五湖が・・・」

 

 

震えながら閉まっている城門を指差す女性。

 

 

「なんとか間に合った・・・・・・まったく大将達が留守の時に攻めてくるなんざ悪い冗談だ」

 

 

やれやれと肩を落とす門番

 

理由を聞いて見ると、五湖、と呼ばれる異民族が涼州にちょっかいを掛けているという

 

 

「異民族の戦士か」

 

 

もののふとしての本能を刺激したのか、華雄は、その五湖の連中を一目見たいと門番に詰め寄った

 

しかし、はいどうぞと門を開けるわけには行かないので、刺激しないことを条件に城壁に上がる事を許される

 

 

「気をつけろよ、旅の武芸者さん。あいつらに言葉は通用しない。いつも気味の悪い呪文を唱えて、こっちを呪ってくるんだ。ああ、くわばらくわばら」

 

 

「ふん、呪いなぞ私には効かん!!」

 

「気味の悪い呪文か・・・・・・何語だ?」

 

 

金剛爆斧を担いで、意気揚々と城門にあがる華雄

 

外国語は、昔、色々とあって、色々と知っている北郷は顎に手をあて、華雄の後に続く。

 

 

 

「コクサ・イテンジ・ジョウ」

 

「ウスイ・ホン、ウスイ・ホン」

 

「サイコウビ・ハ・ドコデスカ」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、たしかに意味は不明だし、この言葉には、おぞましい気迫を感じる。これが五湖の呪いというやつか」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

根源から来る震えを気持ちでねじ伏せながら、城門下で騒ぐ五湖を見つめる、華雄

 

そして、生暖かい瞳で、五湖を見下ろす一刀

 

 

「これは、しかしいい経験になった。これを知らずに奴らと斬り合ったら負けていたかも・・・・・・北郷、どうした?」

 

 

華雄の問いかけに北郷は答えず、城門下に向けて大声で叫ぶ

 

 

 

「ベースソン・カンバイ! ダキマクラ・ウリキレ!!」

 

 

謎の言葉をあらん限りの声で叫ぶ一刀

 

効果は劇的であった

 

 

「ウソダ・ウソダ・テツヤ・デ・ナランダ」

 

「コウド・ナ・ジョウホウ・セン」

 

「カンバイ、ソンナコトバハキキタクナイ」

 

 

五湖達が目に見えて狼狽える

 

そして、彼らは悲鳴を上げて立ち去っていた

 

 

「なんと、北郷、貴様は五湖の呪いを使えるのか!? 」

 

「まぁ・・・・・・呪いと言えば呪いですが、呪いと書いて、おまじないとも呼びます」

 

 

そう寂しそうに呟く北郷の横顔は、歴戦の戦士のようもであった。

 

人間誰しも触れてはいけない闇があるものだと思いつつ、本日はここで筆を置くものとする。

 

 

某月某日

 

 

北郷と一緒に朝食を取る

 

 

「美味いな」

 

「香辛料や調味料が安価で入るからかな。さすが涼州だね」

 

「なるほど、だから美味いのか」

 

「すいません、お替わり」

 

「私もだ、大盛りで頼む」

 

 

空になった皿をずいと、突き出す二人

 

 

「おっ・・・おまっ・・・お前等ぁ」

 

 

皿を突き出されたポニーテルの女の子は、額に青筋を浮かべて、頬は引きつっている

 

誰がどう見ても、怒りを爆発させる直前の様子だ

 

 

「あっすいません」

 

 

それを察したのか、北郷が声を掛け

 

 

「俺も大盛りで」

 

「ふざけんなぁ!!」

 

 

トドメを刺した。

 

ポニーテールの女の怒声が【牢屋】に響き渡る

 

 

「お前ら、特に男の方には五湖の疑いが掛けられているんだぞ!! そんな態度なら取り調べも容赦しないからな!! 馬孟起の名に掛けて絶対だ!!!」

 

 

ドスドスと怒りの度合いが分かる足音で牢屋から去っていく馬超。

 

それでも、お替わりを持ってくるあたり、実は良い奴ではないかと思い、本日はここで筆を置くものとする。

 

 

北郷、華雄逮捕される

 

罪状、城壁の上で五湖と同じ呪文を唱えていたから。

 

 

「解せぬ」

 

「そうですね」

 

 

もやっとした気持ちのまま、本日の筆は置くものとする

 

 

 

 

某月某日

 

 

体をゆすられ目を覚ますと、北郷が金剛爆斧を始めとした没収された全てのものを持っていた。

 

あまりのことに目が完全に覚めた

 

 

「北郷、お前、鍵はどうした」

 

「あの程度なら、まぁ・・・・・・そんなことよりとっとと逃げましょう」

 

「それもそうだな」

 

 

北郷の鍵開け技術に感心しながらも金剛爆斧を担いで城から逃げる。

 

と言っても、この城の構造など知りもしない。

 

しかし私の先を行く北郷が、迷いなく進むの、大したものだ。と思い彼の後に続く。

 

北郷が扉を開ける。

 

 

「なななななななななぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

扉の先から聞こえる悲鳴。

 

北郷も一瞬固まり、後ろぐるりとこちらに振り返り

 

 

「ここはお花畑ですね。どうやらお花を詰んでいるようなので、退散しましょう」

 

「? 北郷、お花畑ということなら、つまりは外、なのだろう。なぜ引き返さねばならん」

 

「えっいや、だから、」

 

「ええい、まどろっこしい。花を踏まないように歩けば良いだけだろう!どけっ!・・・・・・・・・・・・北郷」

 

「はい」

 

「ここは花畑ではなく。厠ではないか。それに馬孟起が用を足しているだけではないか」

 

「華雄さん、女性が用を足している。または厠に行く、と直接言うのは、その世間一般では下品とされています」

 

「なんと、そうなのか」

 

「ええ、そうです。それで隠語として、厠に行くことを、お花摘み、と言うのです」

 

「知らなかったな。北郷は物知りだな」

 

「いえいえ、華雄さんもこれで一つ賢くなりました。こうしたことの積み重ねが、大切なのではないでしょうか」

 

「たしかに」

 

「っと、華雄さんあまり長話も失礼ですよ」

 

「むっ・・・それもそうだな」

 

「それでは馬孟起さん、ごゆるりと」

 

「うむ、そうだな。引き続き、お花摘みをしてくれ」

 

 

二人共笑顔で、頭を下げて、パタンと扉を閉じる。

 

もう一回開く扉。

 

 

「ああ、そうだ。昨日の飯、美味かったぞ。朝が食えないのが残念でならん」

 

 

パタンと、もう一度閉まる扉

 

閉まった扉の奥から聞こえる、水が勢い良く滴る音。そして

 

 

「待てぇぇぇぇぇぇ!!! 絶対にぶっ殺す!!!!!!」

 

 

馬孟起、こと馬超の怒声が朝の城に響き渡った。

 

 

 




馬超と言えばおしっこですよね
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