「えっと…それから、こっち」
手紙に同封されていた地図を片手に、ドールは魔法の森の中を歩き回っていた。
目的地はもちろん、香霖堂。赤丸で囲んであるため、迷わない。もりのようかんが幻想入りした地点については、おそらくありすが魔力をたどったのだろう。
「それで…ここからまっすぐ…」
~数分後~
「…ここ、かな?」
ドールの目の前には、和風建築の一軒家が建っていた。よく見てみると、和風だというのに扉は洋風なドア、窓は障子という何やら奇妙なつくりの店だった。
(…今更だけど、幻想郷って中途半端に外の知識が入ってきてるな…)
魔理沙、妹紅、みとり、慧音、小鈴の服、そして霊夢及び夢幻が着ている博麗の巫女の制服。突っ込みだしたらきりがない。早苗たち守矢組は元外の住人なので論外だ。
(…なんか暗いけど、誰かいるの、かな?まさか、開店前?)
そう思いつつ、ドールはドアを3回ノックした。
「すいませーん、誰かいらっしゃいますでしょうかー?」
…返事はない。
(入って大丈夫かな…)
『返事がないんでしょ?なら、ここでやきもきしてるより入って様子見した方がいいんじゃない?』
(…それもそうか)
ドールはドアノブを回し、引いてみた。…あっさりと、開いた。
そうっと中に体を滑り込ませ、店内を見渡す。
店内には、所狭しと品物が並んでいた。
昔懐かし、二層式の洗濯機。
今やスマホに「現代版三種の神器」という地位を分捕られた、ガラケー。
外の世界にあったら国宝、そうでなくともどこかの神社の御神体くらいにはなりそうなほど古そうな日本刀。
などなど、さまざまな品々が並んでいる。
いくつか、否、品物の半分くらいに「非売品」と書かれた紙が張り付けてあるため、おそらく趣味でやっている店なのだろう。
「あの…どなたかいらっしゃいますかー…?」
まさか、本当に準備中か?とドールが思ったその時、奥から声がした。
「ごめんごめん、ちょっと昼寝してて。すぐそっち行くからもう少し待ってて」
眠そうな、男性の声だ。眠っていたというのは本当らしい。
(こんな朝っぱらから昼寝…?)
『昼寝というより、二度寝かお寝坊さんと言った方がいいかもしれないわね。朝早くから来たドールもドールだけど』
(ケイオス、黙って)
などとドールが脳内会話をしているうちに、1人の男性が現れた。
銀の髪をショートボブに近い髪形にカットしていて、黒縁のアンダーリムの眼鏡をかけていた。黒・青・白の左右非対称な服は、おそらく和服の洋風アレンジか洋服の和風アレンジか和洋折衷なジャンル不明な服のどれかなのだろうが、デザインのせいかアイヌの民族衣装っぽい。
「僕はここの店主、森近霖之助。君は…ドールで、あってるかな?」
「はい。…それであの、Nとありすは?」
「あー、うん…それがね。今…居ないんだ」
「………はい?」
「昨日地底に行ったっきり、戻ってこないんだよ。今日になったら戻ってくるかとも思ったんだけど…」
「………………………………………………」
地底。
それは、旧地獄の通称だ。
幻想郷の地下に広がる、かつて地獄であったところ。妖怪、怨霊、地霊、そして鬼までもが住むところ。
元々住人だったものを除いて好んでいきたがる者は、ほとんどが強がり、実力者、死にたがり。そうでなければよっぽど自分に自信のあるものか、博麗の巫女か、大馬鹿者。ドールの母、カメリアは、地底について説明するとき、いつもこう言っていた。
そんなところに、2人は行った。
昨日行ったきり、帰ってこない。
そこから導き出されることは、3つ。
1つ目は、かなり確率は低いが…道に迷った。
あの2人なら、道に迷ってもポケモンの技で乗り切るなりありすの使い魔に道を探させるなりできるため、おそらく違う。
2つ目は、鬼の宴会に誘われ、戻るに戻れない。
これはありうる。ありうるが、ありすは酒を飲もうとは思わないだろうし、何か用事があっていったのなら、あの2人なら断るだろう。そのため、可能性は低い。
そして、3つ目は……
「まさ、か。まさか。まさか…………!!!」
旧地獄に住む妖怪は、地上に住む妖怪より血気盛んだと聞く。
そして、旧地獄には怨念を抱いて死んだ者の霊である怨霊、嫌われて封じ込められた地霊などがいるのだ。
2人が殺されていないと、どうして言えようか。
確かにありすはサーヴァント。だが、戦闘は不得意だという。
殺されるまでいかずとも、怪我をするくらいはあるのではないだろうか。
「……森近さん。森近さんは、地底までの道を知っていますか?」
「…知っているよ。行くつもりかい?」
「…はい。会ったばかりで厚かましいとは思いますが…道を、教えてください。お願いします」
「………………………いいよ。僕も、心配だったしね。連れて行ってあげる」
「本当ですか!?」
「本当だよ」
「ありがとうございます!!地図にも載っていなかったから、助かります!!」
「危険だから載せなかったんだろうね。…少し待っていて。準備をするから。準備ができたら、行こうか」
香霖のキャラがわからない。