「妬符『グリーンアイドモンスター』!」
たくさんの緑の弾幕が、ドールに向かってくる。
動かない緑の小さな弾幕がその軌道に設置されるため、まるで蛇のようだ。
ドールは、どうにかして躱す。
(さっきから防戦一方…)
数多くの木々が原因で、派手なものが多いドールのスペルは、なかなか出せない。
(…しかたない、水橋さんのスキをついて地底に駆け込むか…!)
ドールは、自ら弾幕の中に飛び込んだ。
「!?あなた、何考えてるの!?」
「倍符『クレームドゥーブル』!」
スペルを発動させる。…かつて出会った異世界で、自分よりも年下だったのに、魔導士として名をはせていた、一人の少年をイメージしたもの。
ドールの近くの弾幕全てが、ドールに引き寄せられていく。
「なっ…!?」
あと少しでドールに触れる…というところで、それらはさながらパチンコのように、全方向へ飛んでいった。…同じ量の、クリームの形の弾幕とともに。
そして、それらによって周囲の木が倒れ…パルスィに向かっていった。
「!!!」
パルスィは、とっさで躱す。
だが。
「…やるわね、でもまだ…っ!?」
砂煙が収まったころ、パルスィの目には…
倒れた木々と、倒れなかった木々程度しか、映っていなかった。
「へえ、ここが地底…」
「…ねえ、さっきの、ほんとにいいの?」
「一刻を争う事態です。これくらいは、まあ」
言葉を交わしながら、大通りをかけていく。
「どこかあてはあるのかい?」
「…魔力です」
「?」
「私とありすは、魔力のパスがつながっています。それをたどれば…あれ?」
突然、ドールが立ち止まった。
「どうしたんだい?」
「さっきまで、あそこにいたのに…いない」
「へ?」
「ちょっと待ってください、すぐたどり直します………………………あれ?」
「何かあったのかい?」
「……………地上にいます。あの2人…ううん、少なくとも、ありすはここに居ません」
「ええ!?なんてこった!!行き違い!?」
「はい。…でも、おかしいな。ありすに瞬間移動なんて能力は…」
「ねえ、そこの子」
背後から、いきなり声をかけられる。
「!?」
見ると、1人の少女が立っていた。
赤い髪を三つ編みにしている。瞳も、同じ赤だ。頭から、三角耳がつきだしている。
(…猫の妖怪?)
「あたいは『火焔猫燐』。ちょっと、一緒に来てくれない?」
「何か用事でも?」
「あたいの主人が、あんたに用があるんだって」
「主人?…サトリ?
「……へえ、物知りなんだねえ。誰から聞いた?」
「母から」
「ふうん…まあ、そんなことはどうでもいいさ。とにかく来て。あんたにとってかなり重要なものがあるから」
「…何ですか、それは」
「そいつは見てからのお楽しみ。…まあでも、ヒントくらいはあげるよ。ヒントは~…」
そう言いながら、燐は自分の三つ編みを指さした。
「これに似てるもの、かな」
「…?」
赤い、三つ編みに似ているもの。
ドールは思考を巡らせる。
「…そんなもの………………………あっ!!!」
叫んで、燐を凝視した。
「ど、どうした!?」
霖之助が訊ねる。
ドールはそれを無視して、無意識につぶやいた。
「あかい…くさり…」
「へ?鎖が、どうしたんだい?」
またも、霖之助が訊ねる。
「…………行く」
「えっ?」
「………………行きます、その屋敷」
待っててくれた方ははたしているのだろうか