ハイスクールD×D  神器なき戦い   作:坂下ジョゼフ

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 今回も、長いぜ。
 そして前半の説明臭さといったらない。

 あとホモじゃないから!みんなコメント欄であらぶり過ぎだから!
 自重するんだ紳士諸君。
 というわけで、その辺りを留意して、本編をお楽しみください。


第8話「被害者と加害者は見方によって裏返る」

 

 

 

 とある日の教室にて。

 

「やっぱり木場×遊佐よ。王子様の木場キュンが無愛想な遊佐キュンをねっとりと追い詰めていくの!」

 

「たわけっ、遊佐×木場こそ至高。木場君の凄まじい誘い受けに、『ツンデレ』な遊佐君がおずおずと手を出す!これだろうっ」

 

「引っ込んでろ素人がっ!!遊佐様は『ツンデレ』にあらず。あのお方はツンデレの皮をかぶった『素直クール』だ!そこを間違えるな!!」

 

「「「今年の夏は掛け算が熱いっ!!!」」」

 

 暑さで頭の沸いた馬鹿どもが騒いでいた。

 祐斗は俺の隣で苦笑いしている。

 俺はというと、どうやったら馬鹿な女子どもを合法的にブッ殺せるかを考えていた。

 いったい何が心の琴線に触れたのか、最近は女子たちが俺と祐斗の方を見てキャーキャーとうるさいのだ。

 どうやら俺と祐斗を使い、おぞましい想像を働かせているらしい。

 いまだこの拳を振り抜いていない俺の自制心、マジでノーベル平和賞。

 

「あぁ、それと薫。今日の放課後空いてるかい?」

 

「え、マジで?このタイミングでそういうこと言うのお前?」

 

 空気読めよっ!

 

 案の定、女子たちの騒ぎがいっそう大きくなる。

 

「……ごめん、軽率だった」

 

 俺は深いため息をもらすのだった。

 

 

 

 放課後。

 俺と祐斗はオカ研に向かって歩いていた。

 

「でも、本当に陸上部やめても良かったのかい?」

 

「あぁ、別に陸上部でなけりゃ走れないってわけでもないからな」

 

 祐斗の問いに俺は気軽に答えた。

 そう、俺は陸上を退部していた。

 グレモリー部長に言われたということもあるが、何よりも俺が望んだことだ。

 俺は、すでに悪魔だ。

 人間の規格から外れ、身体能力も普通じゃない。

 無論、陸上部で本気で走ることなどできやしない。在籍する意味など、もうどこにも残ってなかったのだ。

 それよりも、

 これから悪魔として生きていく為に、俺は必要なことをしなければならない。

 俺は退部届を出したその足で、オカルト研究部に入部届けを出した。

 ちなみに特待生の問題は先輩が解決してくれた。なんでも、駒王学園の上層部は悪魔の息が掛かったもので占められているらしい。

 なにそれ怖い。

 どうやら人間社会は、思ったよりも悪魔に乗っ取られているようだ。

 

「ま、やめてしまった分、別の分野で頑張らねぇとな」

 

 悪魔の社会は意外に文化的だったが、まだまだ「力」が大きくものをいう。

 

 俺は、進路をオカ研からいつもの訓練場に変える。

 祐斗は疑問を持たずに、以外に似合う好戦的な笑顔を見せる。

 

「そうだね、僕も負けていられないな」

 

 こうして俺たちは今日も歩みを進める。

 どんなに遅い速度だとしても、けして歩みを止めない。

 それが俺の生き方を示す、唯一の道しるべだった。

 

 

 

 模擬戦は、今日も祐斗の勝利で終わった。

 悔しくもあるが、戦いはすでに一方的な展開ではなくなっている。俺の拳や蹴りが何度か祐斗を捉えていた。

 しかし、決定打にはならない。

 祐斗の速さが追撃を許してくれないのだ。

 いやしかし本当に速い。

 やる気が失せるレベルだ。

 どれくらい速いかと言うと、俺が魔力で身体強化して出す瞬間的な最高速度が、祐斗にとってのスタンダードな速度である。

 マジ化け物かテメェ。

 スピードジャンキーにも程がある。切符を切られてしまえ。

 悔しいが、戦いの技術や経験も祐斗が勝っていた。

 だが、戦いの巧みさでは負けていない。

 祐斗が何度もやりにくそうに顔を歪めるのを見ている。あいつもあれで、意外と直線的だったりするのだ。

 誘導するのも対した苦労ではない。その為、攻撃は当てようと思えば割と当てられる。

 

 けれど、いくらやっても俺は模擬戦で勝てない。

 

 俺の拳に祐斗を一撃で倒せるような威力はまだない。しかし祐斗は、俺に一撃を入れれば勝負を決めてしまえるのだ。俺の防御が薄いというわけではない。けしてない。

 祐斗の所有する神器・魔剣創造が凶悪過ぎるのだ。

 まぁ、それは祐斗の強みだ。あいつは好きにその道をひた走ればいい。

 一番の問題は他にあった。

 

 おそらく祐斗は、俺の攻撃を脅威とみなしていない。

 現にあの野郎は、多少の被弾などは物ともせずに剣を振り切ってくる。

 

 これは、問題だ。

 これだけは、どうにかしなければならない。

 舐められっぱなしの状態を受け入れるほど、俺は賢い人間ではないのだ。そもそも、そんな賢さなどこっちから願い下げだった

 そうだ、これは矜持の問題なのだ。

 

 

 

 訓練の後は、いつも部室で姫島先輩のレクチャーを受ける。

 姫島先輩はいつものように紅茶片手に、対面のソファに座っている。

 

「ではでは、訓練の成果を見せてくださいね」

 

 俺は頷き、手に持ったペットボトルに意識を向ける。

 中には半分ほどの水が満ちている。

 そこに魔力を、込める。

 

 魔力を操るイメージは、何とも言えない。強いて言うなら「第三の腕」を生やす感覚だ。自分の身体に架空の運動器官を生み出し、それを動かすようなイメージ。

 

 すぐに、ペットボトルの中で水が渦巻き始めた。

 

「あら、やっぱりここまでスムーズですわね。では、次のステップです」

 

 俺は、その言葉に頷き、更に集中する。

 渦巻く水が、ペットボトル内で浮き上がり、一つの塊になる。

 ここまでは良い。うまく行っている。

 しかし、

 

「……ッグ、ア」

 

 声が漏れる。

 いくら魔力を通しても、望む変化は起きてくれない。

 

「あ!……くそっ」

 

 水はペットボトルの底へ落ちてしまった。渦巻きも消えている。

 

「上手くいきませんわね」

 

 姫島先輩の手が伸び、俺の手の内のペットボトルを持っていく。

 

 鈴が鳴るような高い音。

 間近で感じる魔力の脈動。

 水はペットボトル内で渦巻き、中に浮く。

 そして、

 

 内側から破裂するよう弾けた。

 

 液体だった水は瞬時に凍りつき、霜を散らす氷の棘となる。それが、ペットボトルを内側から突き破ったのだ。

 見事なものだ。

 見事過ぎてなんか、むかつく。

 

「チッ、なんかコツとかねぇのかよ?」

 

「そうですね、出来るものは出来るとしか言いようがありませんわ。魔力の源流はあくまで個々のイメージですから」

 

「つーか、水が一気に個体に変わるイメージってどんなだよ?」

 

「うふふ、まだ想像がつかないでしょうね。そもそも元人間の転生悪魔は、魔力の扱いを苦手とする者が多いのです。人間にとっては魔力の扱いなんて完全に埒外でしょう?だからどうしても想像が追いつかない。それが当たり前という認識が持てないのです」

 

「はぁん」

 

 確かに、俺は創造力の豊かなタイプではない。

 常に現実に追い回されてきたリアリストである。

 それでも、今の俺にとっての常識は、人間側ではなく悪魔側のものだ。考え方から改めなければならない。

 必要なのは、魔力が扱えて当たり前と言う認識。

 

 しかし、元人間の転生悪魔は魔力の扱いが不得手だという。ならば彼らはどうやって戦っているのだろうか?

 

「……あぁ、なるほど。神器か」

 

「はい?」

 

「いや、悪魔は神器を持っている人間を優先して眷族にしているのかな、と思って」

 

「あらあら、やはり鋭いですわね。その通りですわ。神器が扱えるのならば、苦手な魔力を無理に使う必要もありませんもの。それだけ神器とは強力ということです。純粋な悪魔とて神器を重宝しますのよ?レーティング・ゲームでも上位のプレイヤーの多くは何らかの神器持ちです」

 

「……なるほど、ね。祐斗とかがそういうタイプだな?あいつは戦闘中にほとんど魔力を使わない」

 

 ときおり、瞬間的な防御のために魔力を回したりするくらいで、基本は神器の扱いに重きを置いている。

 

「その通りです。もともと祐斗くんはそれほど魔力を持っていませんから」

 

「へぇ。ちなみに、俺の魔力量ってどんくらい?」

 

「そうですね、平均よりも少し下回っているくらいかしら」

 

 マジ中途半端な。

 

「……ちなみに、部長や姫島先輩は?」

 

「ざっと薫くんの4倍ほどでしょうか。もっとも私はリアスよりも下ですけどね」

 

 ……4倍ってテメェ。この魔力富裕層どもが。

 しかし、それで納得が行く。それだけの魔力量を誇っていれば神器を必要とせずに戦えるだろう。

 部長に至っては、何やら血筋で受け継ぐ特殊な能力まで持っているらしい。

 

「……それでも、薫くんの魔力の操作能力は目を見張るものがあります。伸ばすとしたらそこでしょうね。精密な魔力の操作なら、すでにかなりのものですわ。魔力による身体強化って以外に難しいですのよ?」

 

 黙り込んだ俺が落ち込んだとでも思ったのか、姫島先輩は何やらフォローじみたことをする。内容と言うよりも、その気遣いが何よりこそばゆかった。

 憐れむなよ、俺を憐れむなオラー。

 

「まぁどっかの馬鹿ポニーテイルみたいに、ぶっ放すだけしか能がないわけじゃないし、気にしてねぇよ」

 

 実はいうと、俺は姫島先輩とも模擬戦をしたことがある。結果はまぁ惨敗だった。距離を取られて、後はひたすら魔力による絨毯爆撃である。

 あれは戦いとは言わない。

 一方的な蹂躙である。

 俺じゃなかったら確実にトラウマになっていた。

 

 そんな雑談をダラダラしながら、色々と魔力運用の実演をしてもらっていると、どこかへ出かけていた部長が帰ってきた。

 

「あら、リアスお帰りなさい」

 

 姫島先輩は、お手本として見せてくれていた魔力球を分解すると、紅茶を淹れに席を立った。

 俺は見よう見まねで作った魔力球を手でがっしり掴む。

 実体はないが、手の内には秘められた熱量が存在感を主張している。

 こうなると何かにぶつけてみたくなるな……。

 

 ……ふむ。

 

「なぁ、部長」

 

「何かしら薫?」

 

 部長が俺の言葉に振り返る。

 

「オォラァア!」

 

 俺は魔力球を大きく振りかぶり、

 粘着女よ砕け散れ、という呪詛と共に投げ飛ばした。

 自らの身体は、投擲の為にある一つの機構だという自己暗示。

 狙いは寸分違わず、部長の顔面に向かう。

 我ながら惚れ惚れするオーバースロー。

 

 しかし渾身の魔力球も部長の手により、いとも簡単に弾かれてしまう。

 

「あら、いきなりご挨拶ね」

 

 まるで動じていない。

 やはり、この程度じゃ部長には通じないようだ。

 弾かれた魔力球は、壁に罅と焦げ目を残して消えていった。

 それでも大した威力だと思ってしまうのは人間だった頃の感性だろうか。

 

「あらあら、う、ふ、ふ」

 

「うわっ」

 

 声がして、慌てて振り返る。

 俺のすぐ後ろに、姫島先輩が額に青筋を浮かべて微笑んでいる。

 なんだよ、どうした?

 

 そのまま俺は部室の隅にまで連れて行かれ説教を受けた。

 何故だ。わざわざ気を使って、声をかけてから投げたというのに。

 

 その日、何故か俺にはバカみたいな量の課題が出された。

 ふぁっきんクソポニー。

 

 

 

 毎日はそうして続いていた。

 俺の悪魔としての日常。

 

 そしていつものように、

 今日もまた夜がやってくる。

 

 俺たち悪魔の時間。

 

 

 

 新聞配達のバイトに備えて、もう寝ようかと考えていた時に、その電話が掛かってきた。

 液晶には粘着女の文字。

 勘弁しろよと思って電話に出る。

 

「テメェ、今何時だと思っていやがる」

 

「薫」

 

 電話から聞こえる部長の声は硬質だった。

 気持ちがカチリと切り替わる。

 

「何があった?」

 

「この町にまた、はぐれ悪魔が侵入したわ」

 

「……はぁん。で、殺すのか?」

 

「ええ、打って出るわ。今度こそ好きにはさせない」

 

 部長は宣言すると、集合場所を告げて電話を切った。

 俺は、習慣として身体に巡回させていた魔力を落ち着かせる。

 そして、いつでも使えるように研ぎ澄ます。

 

 はぐれ悪魔が、やってきた。

 人間であった俺を殺した、暴力の塊。

 一度奪われた心臓が、馬鹿みたいに速く脈打っていた。

 身体の震えは止まってくれない。

 つまりは、

 

「絶好調ってわけだ。さぁ、行くか」

 

 俺はニヤリと笑い、家を出た。

 

 

 

 集合地に着くと、すでに俺以外のオカ研は全員そろっていた。

 みんな思ったよりも気負っていない。

 

「緊張しているのかい?」

 

 黙れ祐斗。あと顔が近い。

 

 向かった先は小さな町工場だった。

 はぐれ悪魔はすぐに見つかった。

 なにやら、重機にこびりついた機械油をベロベロと舐め回している。

 単純にきめぇ。

 何がしたいんだ?

 

「アァアア、良いっ!」

 

 とか、叫んでいるし。

 ともあれ、やることは変らない。

 ブッ殺す。

 

「なぁ部長。こんだけ集まってもらって悪いけど。あれ、俺にやらしてもらえない?」

 

 それは電話を受けた時から考えていたことだ。

 部長は不敵に笑った。

 あくどい顔だ。だが、悪くなかった。

 

「最初からそのつもりよ。現時点での、あなたの力を見せて頂戴」

 

「はいよ」

 

 俺は気軽に、はぐれ悪魔に近づいていく。

 そのはぐれ悪魔は男だった。

 基本的にどこにでもいる人間に見えるが、明らかに違う点があった。

 そいつは腕の変わりに、肩口から何かムカデのような節足の触手を生やしていた。

 はぐれ悪魔の気持ち悪さ、プライスレス。

 

「お~い、なんかお取り込み中悪いんだけどさ」

 

「アァアアウ、良い、凄く良い」

 

「まぁこっちの事情でお前を殺さないといけないんだわ」

 

「良いよォ、凄く良い。まだまだイケルさ」

 

「いや、ハハハ、うん」

 

「アヒァウァァアアァアウウアウ」

 

「聞けよテメェ」

 

 俺は面倒臭くなって、右手に集中させていた魔力をムカデ野郎に奔らせる。

 部室で部長に何度か喰らわされた技だ。

 身体で覚えていた分、比較的早く再現できるようになっていた。

 

「グシャアァア!?」

 

 ムカデ野郎は吹っ飛んでいった。しかしそれほどのダメージは負っているように見えない。

 やはり、威力不足だ。

 

 ムカデ野郎はようやくこちらを意識したのか、体勢を整えると襲いかかってきた。

 

「まぁ、せっかくの実践だし、色々試させてもらうぜ?」

 

 俺は、拳を握り迎撃の姿勢をとった。

 戦いが始まる。

 

 

 

「ッシ!」

 

 俺はムカデ野郎の面に蹴りを喰らわせ、吹き飛ばす。

 戦闘を初めて10分は経ったろうか、俺の身体にはいくつかの傷が刻まれている。

 あの両腕は思ったよりも厄介だ。

 

「エァアアエアアヒヒア!」

 

 ムカデ野郎は立ち上がる。身体中いい具合にボロボロだが、まだまだ五体満足で元気凛々だ。

 ハァ、俺けっこう攻撃当ててんだけどね?

 

「んじゃ、そろそろ行くか?」

 

 向かってくるムカデ野郎をかわす。

 何度も何度も、受けた攻撃を受け流す。

 こちらからは手を出さない。

 結果、1分間で二回の被弾。血が溢れる。

 

 俺は、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の特性を発動させる。俺に与えられた駒は「兵士」だ。

 その力は敵陣地において「騎士」「戦車」「僧侶」の能力が使えるというもの。

 最初に使うのは祐斗で見慣れている「騎士」の力。

 

 ぶわり、と世界は加速する。

 俺は思わず舌打ちを漏らし、暴走しそうな身体を押さえつける。

 祐斗の野郎、この加速力の中でよく、あんな自由に動き回れるな。

 

 俺は、「騎士」の力を使ったまま、ムカデ野郎の攻撃をかわし続ける。

 先ほどと同じように、こちらからは手を出さない。

 1分経過。

 被弾はゼロ。なんとも頼もしい力だ。

 

 俺は、「騎士」の力を解き、ムカデ野郎を壁際まで追い詰める。

 身体を魔力によって強化して、全力の拳を奴の腹に突き立てる。

 壁に押し付けられたムカデ野郎の身体は、くの字に折れ曲がった。

 しかし、それだけ。

 奴の目からは戦意が消えない。

 

 俺は、「戦車」の力を発動させる。

 その能力は、とてもシンプル。

 

 触手の腕がうねり、俺の身体に突き立てられる。

 しかし、

 

「ギィイイアアァ!?」

 

 壊れたのは奴の腕の方だった。

 

「馬鹿げた力と、防御力だっけか?」

 

 俺は、再びムカデ男の腹に拳を叩きこむ。

 奴は血反吐を吐き散らし、背にしていた壁には蜘蛛の巣状の罅が入った。

 「戦車」すげぇ。

 

 俺はバックステップでムカデ野郎から距離をとる。

 

 そして「僧侶」の力を発動させた。

 その力は、魔力の補助。

 

 俺は、右手に集めた魔力を壁にめり込んでいるムカデ野郎に向けて放つ。

 醜い悲鳴が上がった。

 

「あ、なるほど」

 

 どうやら「僧侶」の力は、魔力を増やすというよりも強化する補正を持つらしい。

 俺は納得して、「僧侶」の力を解く。

 

 様子を窺っていると、ムカデ男はフラフラとこちらに向かってきていた。

 これだけやって、まだ致命打は受けていないようだ。

 

「まったく、傷つくぜ?」

 

 ある程度のことは試したし、わかったことも多い。

 だから、もう終わらせよう。

 

 俺は飛びあがり、ムカデ男の頭を掴んで、そのまま逆立ちの状態になる。

 背中から翼を生やし、勢いをつけて、

 

「よっ、と」

 

 擬音で表すと、ゴキゴキ……ブチッ!ってな具合。

 

 俺はムカデ男の首をねじ切った。

 やれやれと息を吐き、随分待たせてしまった部長たちに目を向ける。

 何故かみんな、視線を合わせてくれない。

 

「んだよ?命を確実に奪うには、効率的なヤリ方だぜ?」

 

 部長は深いため息を吐いた。

 

「まぁトドメの刺し方はともかく、お疲れ様。あなたの実力はだいたい分かったわ」

 

「はぁん、そうかよ」

 

 おそらく評価は可もなく不可もなく、って感じだろう。

 やはり俺の弱みは実戦によって、より顕著に浮彫りになってしまった。

 分かっていたことだが、ここまでとはな。

 

 俺の力には、致命的に決定力が欠けている。

 

 俺には、部長や姫島先輩のような馬鹿魔力も無けりゃ、魔力を扱う才能すら無い。ましてや祐斗のように、特殊な神器を持っているわけでもない。

 ないない尽くしが、俺の現状だ。

 

 なら諦めるか?

 ハッ、馬鹿こくな。弱気の虫なんざに居場所はねぇ。

 俺は、強くなる。

 

 

 

 それが、悪魔になって初めての実戦。

 決意を新たにして足を踏み出していく、なんて言うとひたらすらクセェけど、実際そんな感じだった。

 そして、また何日か経つと、我らが駒王学園の一学期が終業した。

 高校一年目の一学期。

 まさしく激動の日々であった。

 入学した頃とは、いろんなものが変わってしまっていた。つーか人間すらやめることになるとは、流石に予想がつかなかった。

 何だか、笑えてきてしまう。

 

「どうしたんだい薫?」

 

 含み笑いを漏らす俺に、祐斗が話しかけてくる。

 

「いや、なんでもない」

 

 雑談もそこそこに、俺たちは部室へと向かった。

 手には、帰りに配られた通信簿を掴んでいる。

 部長が、成績を確認するから提出しろ、とかほざきやがったのだ。テメェは俺のお袋かっ!

 

 

 そして、

 部室に近づいた時、

俺と祐斗はあることに気がつく。

 

「……これは、結界!」

 

「んで、気配は?……ご同族だなぁ」

 

 同時に駆けだし、部室に飛び込む。

 扉が弾ける。

 ソファには、来客が。

 こいつが気配の正体?

 

 

 

 そうして。

 再び、地獄の釜が開く。

 あぁ、本当によ。

 認めるよ、素直に思ったね。

 

 やられたぜ。

 

 あの時に、身体に奔っていた痛みと混乱、激情が想起する。

 そうさ俺は知っていた筈なんだ。

 過去というものは、

 何度だって蘇る。

 

「やぁ、君が私の可愛い心臓喰い(ハート・イーター)を殺した下手人かね?」

 

 そいつの口から出た名前に息を呑む。

 

 そいつは、その名は……!

 

 硬直する俺を見かねた姫島先輩が、口を開いた。

 

「紹介するわ、薫くん。こちらは旧72柱が一角。プールソン家次期当主、ヴェイトリックス・プールソン様です」

 

 そして部長が言葉を継ぎ、口を開く。

 

「人間だったあなたを殺した、あのはぐれ悪魔の“主”よ」

 

 ハッ、説明どうも。

 

 最高に笑えるぜ。

 




 死闘フラグキター!
 ようやく新展開。
 みなさんは覚えてますか?プールソン家の存在を。
 心臓喰いの殺傷を禁止していたことを。
 



 毎度おなじみの没設定さらし。
 読まなくても良いです。

 実は最初期、薫の性別の設定は女だった(!?)
 言葉使いも性格も今の薫ままの状態で、大暴れさせる予定でした。
 しかし、熱さを追求させていく過程で男に進化したのです。
 思えばあの頃は、本編も少しギャグよりだったなぁ。
 それが今や……。
 しかし、初期設定の薫と祐斗の関係は絶妙だったんですよ。そこに一誠と匙が入って逆ハーレムになるけど、薫は全員眼中にない、みたいな。
 カオスだわぁ。

 …………いや、今の「神器なき戦い」の形に良かったですね
 みなさん、これからも熱くて泥臭い本編をお楽しみください。
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