パチチッパチッと音を鳴らすたき火を囲んで一人の男と二人の女が暖をとる。
二人の女は体を寄せ合いながらお互いの身体を温めるようにして寝ていた。
対して男は目を閉じながらも剣を離さずただジッとたき火の方を向いている。
彼らが囲ってるたき火を中心に半径3m範囲で魔法陣が青く優しい光を照らし展開されていた。
その魔法陣からブゥウンという音を響かせてもう一人男が入ってくる。
「結構大漁だったぜ」
と入った男はニカッと笑い片手に持った魚五匹を男に見せつける。
「助かるよ、ダレン」
「採ってきた来たのはこれだけじゃねー、ホレ」
ポンと腰の袋から取り出されたアイテムを男は受け取る。
「途中で魔物が出てきたもんでな、適当に遊んでやったらこんなもん落として逃げやがった」
「これは…」
「魔法の聖水だな、ここ何日かは魔力の補給ができねぇ。寝れば回復するが限度ってもんがある。持ってて悪いもんじゃない」
「あぁ、助かるよ」
「また寝てないだろ見回り交代すっからもう寝ろよ、グレイ」
「ああ、本当に助かる、簡易魔法陣の使い方は覚えたか?」
「馬鹿にすんなよ、さすがに四カ月も経てば扱い方ぐらいわかるわ」
そういわれたグレイは冗談だよと言って羽織っていたタオルを草の上に広げ寝ころんだ。
そうしてソッと目を閉じる。
彼ら勇者パーティーは基本魔物であっても殺さないというスタイルでいる。
しかし魔物は魔王に仕える者。
彼らは勇者とあらば殺さねばならないと、人間は絶対悪だと思い込んでいる。
だからこそ勇者もただ倒すだけではなく息の根を止めるという行為を及んでしまうときがある。
今日は三体か、と殺してしまった魔物たちに祈りをささげて勇者グレイは静かに眠りについた。
「ほら起きて!」
まだ日は出ていないが空に青がほんのりと彩る朝に甲高い声が響く。
「あぁ、今起きたよ」
とムクリと体を起こし座位姿で少し一息つく。
「ほらほら早く!魔王城までまだまだあるんだよ!」
「わかってる、少しボーっとしちゃっただけだよ。ジニ」
「アビルとダレンは今薬草類採りに行ってるから今のうちに私たちは片付けをしちゃうよ!」
そういうとジニは杖を持ち地面を二回トン、トンと叩き全員が寝巻で使っていたタオルや食器類をまとめて、さらにそれを小さく凝縮した。
それを腰につけているポーチに入れてグレイを見る。
「んじゃ簡易魔法陣を解除するよ」
たき火を中心に展開されていた魔法陣がたき火に向かって収縮され最後にはたき火自体もまた収縮された。
そしてそれはポンッという音を立てて火となりその小さな火はボォオオという音を立てながらジニの杖の上部先端で停止する。
「高い金払っただけあるな、その杖」
「確かに長旅する分にはかなり便利よね、でもこの杖展開や解除をするときは魔力そこそこ持っていかれちゃうのが難点なのよね。ま、新人魔法使いでも使えるってところがかなりポイント高いけどね」
「新人ね…」
魔法使いであるジニは新人魔法使いの中でも天才の部類に入る。
基礎黒魔法はほとんどを使いこなす、が彼女の美徳は黒魔法より補助魔法にある。
彼女はまだレベルも低いのにかかわらずパーティー全体にかけられる補助魔法をほぼ全て獲得済みなのだ。
ただ唯一難点があるとすればまだレベルが足りておらず魔力の消費が激しい。
「なによ、ジロジロ人のこと見ちゃって」
「いや、うちには優秀なメンツで何よりだなと思って」
「…馬鹿にしてんの?」
「褒め言葉をそのまま素直に受け取れんのか」
「朝から元気がいいなお二人さん」
とダレンが薬草、薬茸を持って、アビルは全員用の水筒を持って帰ってきた。
「んじゃ、そろそろ出発しますか、アビル頼んでいいかな?」
はい、はいと一人一人に水筒を渡しているアビルに魔法を頼む。
「順路魔法展開…。完了…。定距離範囲魔法展開…。完了…。」
フワっと全員に光の矢印が見えるようになり次の目的地までの道がわかるようになる。
それと同時に全員がどの位置にいるのかまでわかるように人物ごとの頭上に名前と距離が表示されるようになる。
「よし、んじゃ次の目的地まで行こう!」
気合を入れた声を草原に響かせた。
一方魔王城ではキンキンと響き渡る口論が行われていた。
「魔王様!いったい何時になったら人間を滅ぼすんですか!?」
「だ・か・ら!いつも申しておるだろう!人間を滅ぼすつもりなど毛頭ないと!」
「しかし…同胞たちは多くを殺され、木々や水、他の生物にまで手を挙げる野蛮な化け物たちですぞ!今はまだなくともいずれ人間がこの星を破壊するのは目に見えております」
「お互いの言葉を通してからでも遅くはないのだ、確かに人間という生物は野蛮だ、愚かだ。しかしそれは負のところにしか目を向けていない言葉だ。彼らには思いやりといった隣人愛もしっかり持っている。言葉が通じない相手ではないことを私は信じておる」
「魔王様…確かに勇者グレイと幼馴染である貴方はそのように許すことができるやるもしれません…しかし」
「他のものは…納得しないと…?」
「現に不満がたまっている魔族はたくさんおります」
「しれたことよ…言いたいことがあるなら直接言いに来いと言っておけ」
「魔王様…」
「…すまぬ、グレンべつに其方を困らせたくて言っているのではない。ただ…解決策が…これ以上魔族の血も見たくないのだ…しばらく待ってほしい、何かいい策を考えたい」
「カル。あなたは理想的すぎる…」
最期のグレンの言葉は聞かないふりをして魔王ことカルは自室に戻った。
「なにか…いい策があるはずだ…なにか…」
そして彼らは
「おい!!みんなこりぁいったいなんだ?」
と大声上げて全員を呼ぶ
「どうした?ダレン宝でもあったか…?」
「わからねぇが、あれをみてみろ」
と森林の中でまっすぐ指をさす。
「あれは…」
アビルは目をやや細めながら
「いざないの穴?」
と指をさした方向に見える青く、黒く渦巻いたそれを見る。
「いざないの穴って?」
「他の大地にいざなうといわれる穴です。かつて私の祖父はいざないの穴を作り出せる転移魔法を作れたのでよく覚えています。」
「へぇ~じゃあ行ってみる?」
と乗り気なジニにグレイは静止をかける。
「この穴はそもそも出口があるのかすら怪しい、それに出た先が僕たちで太刀打ちできない魔物がいたらまずい。ここは慎重になっておくべきだ」
すると
((ええい!!貴様!!それでも勇者か!!いいからとっと行ってこい!!))
空中にこだまする声が聞こえた。
「「「「……」」」」
「なんだ、いまの…」
先に口を開けたのはグレイだった。
「…今の声は……カル…?」
とグレイが言った瞬間に
轟!!
と先ほど確認したいざないの穴が突然すさまじい引力を持ちパーティー全員を引っ張る。
「ッ!!クソッ!!!なんだこれ!!?」
「ッ!封印魔術展開!!」
とアビルが引力方面に魔法を放つが引力は難なくそれすら飲み込む。
「そんな!?」
「ッ!!このままだと…!!」
全員抵抗するもののズリズリと少しずつ引っ張られる。
((フハハハハハ!!無駄だ!無駄だ!))
とこだまは勇者たちの抵抗を嘲笑う。
そしていざないの穴もそれに呼応するように勇者たちに近づき始めた。
「いや!待て!それはズルいだろう!!」
とダレン、しかし抵抗は空しく最初はダレンが次にジニが、アビルが最後にグレイが吸い込まれていった。
グレイは吸い込まれる直前二言
「相変わらずめちゃくちゃだ!!お前は!!」
と笑顔でこだまに向かって言い、吸い込まれていった。