Fate/Secondary creation   作:KAITA

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芦柄鳴海(あしつかなるみ)は私立双啼学園に通う高校生だ。

 

容姿レベルはクラスで上から四番目。東北出身のため、黒髪ではあるものの瞳は青みがかっている。

 

バスケ部に所属しており、県大会でも上位に入るチームとして地元でも有名だ。また、足も速いためリレーでは選抜に推薦されることもある。

 

クラスでは、人気者たちと話すこともあるし、他の人と話すことも普通に多い。

 

だが、それでも充分普通の高校生らしい男だ。

 

通っている学園、通っているクラスその両方で、目立たない訳でもないが、派手という訳でもないという微妙な立ち位置に居る。

 

しかし、鳴海(なるみ)自身はその立ち位置を非常に気に入っており、特別自身を変えようと行動したことも無かった。

 

鳴海(なるみ)今日飯行かないか?」

 

と、帰りの準備をしていた鳴海(なるみ)に、部活仲間の冬馬(とうま)が夕飯の誘いをして来る。

 

「お、イイね。何処行く?」

 

「学生は学生らしく、ハンバーガーでも食おうぜ」

 

「お前なあ、部活引退したからってジャンクフードばっか食ってたら太るぞ」

 

既に部活は県大会を優勝し、全国大会二回戦敗退で、引退している。

 

その時は柄にも無く、悔しさで泣いてしまった。

 

そのため、残りの学校生活は進路関係ばかりで、息抜きに遊びに行く生徒は多い。

 

「それはもう遅いぜ鳴海(なるみ)?」

 

鳴海(なるみ)の肩に手を掛けながら会話に参加して来たのは陸上部の叶都(かなと)だ。

 

「そりゃどういう意味だ?」

 

叶都(かなと)は笑いを抑えるように唇を噛みながら

 

冬馬(とうま)はもう五キロ増えたから」

 

「マジか!?どんだけ食ってんだよお前!」

 

鳴海(なるみ)の絶叫に冬馬(とうま)は腕を組み、ドヤ顔をしながら

 

「ふっ、部活という監獄から抜け出した俺に不可能は無い!」

 

「なら、ダイエットもイケるな」

 

叶都(かなと)は笑顔で、しかし有無を言わせない表情で冬馬(とうま)を捕まえる。

 

叶都(かなと)は普段はかなり優しいタイプだが、怒る時は怒る。そして滅茶苦茶に怖い。

 

「なっ!叶都(かなと)、お前ふざけんな!」

 

「ふざけてるのはお前だバカ。元バスケ部がそんなんでどうするんだ」

 

鳴海(なるみ)!助けてくれ!」

 

冬馬(とうま)は既に泣きそうな顔になっているが、ここは心を鬼にしなければ

 

冬馬(とうま)お前が十キロ痩せたらまた飯に誘ってくれ」

 

「お前、それ現役の時よりも痩せろってことじゃねえか!」

 

「ガンバ!」

 

叶都(かなと)に連れ去られる冬馬(とうま)の「この人でなし〜!」という声が廊下にこだまする。

 

「すまん、友よ。また何時か会おう」

 

鳴海(なるみ)は腕時計で時間を確認しながら、校門へと急ぐ。

別に冬馬(とうま)に急に誘われて応じられるくらいなのだから予定という予定は無い。

 

途中、廊下から見下ろすグラウンドで後輩たちが部活をしている。隅っこに居るのは、クラスメイトだ。あれは多分、告白されたところだな。

 

鳴海(なるみ)は目に映る光景を慈しむように優しい瞳で眺める。

 

「学校生活は、こうじゃないとな」

 

鳴海(なるみ)は音楽プレーヤーを聴きながら校門を出る。

 

「一気に暇になったな。冬馬(とうま)に誘われた時に、飯行く気分になってたから、何しようか思い浮かばん」

 

鳴海(なるみ)は少々頭を悩ませると、近所のスポーツセンターへと向かうことにした。今日は授業で体育があったため、ジャージは持っている。

 

「スポーツセンター何円かかるっけ。そんなに高くない筈……」

 

鳴海(なるみ)は財布の中身を確認し、充分に金が入っていることを確認するとその足で目的地へと向かった。

 

 

ここ『スポーツセンター キナタ』はジムや体育館の他に個人で使えるホールがある。大きさは大体、学校の教室と同じくらいだが、机が無い分かなり広く感じる。

 

鳴海(なるみ)は受付でホール代を払うと運動靴を借りてホールに入室する。

 

「そういや、ここ監視カメラ無いんだよなあ。今のご時世ヤバいと思うんだけど……」

 

だが、それはそれで有難い部分もある。

 

流石にこれは見せられない物だから。

 

鳴海(なるみ)は脚に力を込める。

 

制限解除(リミットリリース)

 

途端、鳴海(なるみ)の脚に魔術回路が出現する。

 

魔術回路とは、魔術師が身体に持つ魔術を扱うための擬似神経である。

 

この魔術回路が無いと、魔術師にはなれない。

 

逆に、魔術回路を持っている鳴海(なるみ)は魔術師と言うことになる。欠陥品だが。

 

そう、鳴海(なるみ)は魔術回路を持ちながら肉体を強化させることしか出来ないという欠陥品の魔術師だった。

 

一般的な魔術師のように、手から魔術を飛ばしたり、Aという物体とBの位置を置き換える『置換魔法』を使うことも出来ない。

 

「こんな魔術師、他には居ないよなあ」

 

鳴海(なるみ)は苦笑しながら両脚と両腕に魔術回路を通し、ホールに置いてあったサンドバッグに拳、蹴りを繰り出す。

 

「いや、そもそも他の魔術師と会うなんてこと自体無いのか」

 

魔術師は中々お目にかかれないぐらいのレア度はある。それも日本に居れば尚更だ。鳴海(なるみ)自身、自分以外の魔術師には会ったことがない。身内以外で、という注釈が付くが。

 

鳴海(なるみ)はその後もサンドバッグを殴り、空中に飛び蹴りをしたりなど、身体を動かし、魔術回路を活発に動かす。

 

魔術回路は数が多ければ多い程、優秀な魔術師となる。

 

鳴海(なるみ)の魔術回路は三十二。そこまで長く続いていない家系としては多い方。しかし、前途した通り魔術に関する才能はからっきしなため、宝の持ち腐れとなっている。

 

どれ程の時が立っただろうか。空はもう真っ暗だが、この辺りは店が多く照明も沢山使われているため明るく感じる。

 

そう言えば昔国語の授業でそんな話を読んだ記憶がある。

 

人間は光のある夜に慣れているため、外国など馴染みの無い場所で光が無い夜を味わうと恐怖でパニックになってしまうというような話だった。

 

「今何時だ?……七時八分か。今からシャワー浴びて帰ったら、良い時間かな?」

 

鳴海(なるみ)はスマホのメッセージアプリで妹に連絡する。

 

『家に着くのは多分、七時四十分ぐらいになると思う。風呂入って浴室拭いとけな。飯作っといてくれ』

 

すぐに妹から返信が来る。

 

「早っ」

 

『OK!ご飯はもう出来てます!今日のご飯はカレーにしたから、早く帰って来てね。家の戸締まりは完璧です!』

 

『よろしい!女の子なんだから家の戸締まりをしっかりするのは大事なことだぞ。俺も出来るだけ早く帰るよ』

 

鳴海(なるみ)には両親が居ない。妹の咲紀(さき)が、まだ三歳の時に亡くなった。鳴海(なるみ)も、まだ六歳の頃だった。

 

魔術回路の暴走による死亡だった。無理矢理に魔術回路の数を増やそうとしたらしい。祖父母が言っていた。

 

本当にバカだと思う。何をそんなに焦り、人体実験の真似事をしたのか。理解に苦しむ。

 

両親は、自分たちが死んだ後残される自分たちの子どものことは何も考えなかったのだろうか。その部分に考えが至ると、腹が立ってしょうがなくなる。

 

咲紀(さき)には交通事故で亡くなったと話している。咲紀(さき)は一般人だ。魔術師に関わる必要は無い。

 

少々物思いに耽ってしまった。柄にも無い。

 

鳴海(なるみ)は汗を流そうとシャワールームへと向かう際に見知った顔が居るのを見つけた。

 

「あれ、(じゅん)?なんでこんなところにいるんだ?」

 

その人物は漆坂純(うるしさかじゅん)だった。

 

漆坂純(うるしさかじゅん)は学園内でも一二を争う程の美人として知られており、知らない人は居ない程の知名度がある。

 

髪色は赤毛だが別に染めたものじゃない。確か、英国の血が入っていると本人が語っていた。瞳の色はグレー。これも欧州に多い瞳の色だ。

 

鳴海(なるみ)漆坂家(うるしさかけ)についてそこまで詳しくは知らないが、世界的な富豪だということは知っている。

 

「あら、鳴海(なるみ)君じゃない。奇遇ね」

 

お互いに相手を下の名前で読んでいるが、別にこれに他意は無い。

単純に相手のことは下の名前で呼ぶ者同士だというだけだ。

 

(じゅん)も身体動かしに来たのか?部活には入ってなかったよな?」

 

別に、自分たちの通っている学園は部活動全員加入では無いため、帰宅部の生徒も多い。

 

「ええ。でも、そろそろ身体動かさないとダメかなって思ったのよ」

 

「なんでダメなんだ?別にスタイルも変わってないだろ?」

 

(じゅん)は眉間にシワを寄せ、腕を組むと

 

「あのね、女性にそういうこと言っちゃうの時としてセクハラになるわよ?」

 

その言葉に鳴海(なるみ)は目を丸くして

 

「え、マジ?俺妹に言っちゃってるんだけど……」

 

「それで怒られてないなら相当優しいのね、妹さんは」

 

(じゅん)は呆れたように両の手のひらを上に向けて「やれやれ」と言いたそうな態度を取る。

 

「ま、確かに私のスタイルは常に完璧よ。胸は少々物足りないけれど、それでも充分他の人と比べてバランスは劣っていないわ。私よりも胸の大きさに悩んでる人は五万といるのだから」

 

「多いなあ人の数。にしても、相変わらずの性格で」

 

(じゅん)はかなりの自信家で今のように完璧や、素晴らしいという類の言葉を良く使う。

 

この言葉だけ聞くと、もしかしたら他人を見下しているように感じるかもしれない。

 

しかし、それは漆坂純(うるしさかじゅん)という人間を語るには微妙にズレている。

 

「唯我独尊」の性格なのではなく、「天上天下唯我独尊」なのだ。

 

「唯我独尊」だと「自分だけが優れていると自負すること」だが、「天上天下唯我独尊」では「自分という人間はこの世界に一人しか居らず、それはまた他の人も同様である。そのため、一人一人が尊いのである」という意味になる。

 

正確な意味は不明だが、これが定説として世に出回っているためこの意味で使わせてもらった。

 

まあ、つまりは「自信家ではあるが、人を敬う心も持っている」そんな人物だ。

 

「ところで、鳴海(なるみ)君こそ何してるのよ?部活はもう引退してるわよね?」

 

今度は(じゅん)から疑問の声が上がる。

 

「身体鈍らせたくないからな。これまでずっと運動して来たんだし、身体のバランス崩れると怖いから」

 

「身体のバランスが崩れると怖い?どういうこと?」

 

「なんて言うのかな。最小限で出来ていた動きが、身体を大きく動かさないと出来なくなるとかさ。まあ、つまりは身体が鈍るってことなんだけど。そうなると怖いんだよね。自分の身体じゃなくなるみたいで」

 

「大袈裟ねえ」

 

(じゅん)の呆れ声に鳴海(なるみ)も苦笑しながら

 

「まあ、確かに大袈裟だわな。それでもさ、自分の身体の調整はミスりたくないからな」

 

それよりも、と鳴海(なるみ)がこぼす。

 

(じゅん)、お前右手どうした?」

 

鳴海(なるみ)が指を指す(じゅん)の右手には、包帯がしてあった。怪我でもしたのだろうか。

 

「あ、いやこれは……」

 

(じゅん)が焦ったように右手を隠す。

 

「いつ怪我したんだ?昨日……なら、ここには来ないよな。なら運動中か?」

 

「え、ええそうよ。さっきバランスを崩して手をついた時にね」

 

「あんまり運動してないからじゃないか?気を付けろよ?」

 

「お節介ね〜」

 

「妹が居るからかもな」

 

得心が行ったかのように頷くが、すぐに不機嫌そうに顔を歪める。

 

「どうした?」

 

「いえ、今私は貴方に妹扱いされたのかしら?と思ったのよ」

 

何故そのような捉え方になったのか。首を傾げる鳴海(なるみ)に、今日何度目かわからない呆れたような表情になる(じゅん)

 

「まあ、良いわ。鳴海(なるみ)君シャワールーム行くんでしょ?さっさと行ってきなさい。そして妹さんのためにはやく帰ってあげなさい?」

 

「あ、やべ!」

 

(じゅん)と話し込んでいて時間が経つのを忘れてしまっていた。咲紀(さき)は怒りっぽい訳ではないが、それでも女の子を一人、家に待たせるのも酷なものだろう。急いで帰らねば。

 

「悪いな(じゅん)また明日!」

 

鳴海(なるみ)がシャワールームへと向かう際、曲がり角で(じゅん)の居た方向を見ると、既にその姿はなくなっていた。

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