Fate/Secondary creation   作:KAITA

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鳴海(なるみ)たちの住む土地の名前は「夏夜名(かやな)」。名前の由来について、詳しくは知らないがまあ、名前的に夏の夜に関係するのは確かだろう。

 

人口八万人。若人も老人も五分五分の人数でバランスに偏りはない。

 

先ほど、鳴海(なるみ)が行ったスポーツセンターの他に映画館や科学館、モールなど人口の割にはかなり設備が整っている場所として知っている人は居るぐらいの知名度を持っている。

 

鳴海(なるみ)の家は中心から少し外れたところ。住宅街の隅に位置している。

家の外観は白い壁に瓦の屋根。瓦は本物ではなく、形を似せたものだ。二階建てだが、同じ大きさの建物が敷地内に四軒あり、その全てが渡り廊下で繋がっている。

 

家自体の大きさはそれなりのものであり、収容人数は三十人程。そんなにも大きい家を妹と一緒に二人で贅沢に暮らしているというわけだ。

 

祖父母とは離れて暮らしているため、家事は全て二人で分担して行っている。今日の夕飯は妹が担当だった。だから、洗い物は鳴海がやる。

 

そういった具合でその日その日の担当を決めているのだった。

 

鳴海(なるみ)は家の門を開き、庭を横断して玄関の扉を開く。その距離は大体三十メートル程。本当に無駄だと思う。昔、祖父母にそう言ったところ「お前はまだ子どもだなあ」と優しい目で見られたのだが、高校三年生になった今でもただただ不便に感じる。

 

「ただいま」

 

そういった不満という名の邪念を振り払い、帰ったという報告を告げる。そうすれば、あの子は急いで駆けて来るのだ。

 

「おかえりなさい!兄さん!」

 

妹の咲紀(さき)はこんな感じに鳴海が帰って来たら、玄関まで来て自分を迎え入れてくれる。

 

咲紀(さき)、いつも言ってるけど、ここまで来なくて良いぞ?そんなに息を切らせながら来るもんじゃ無いだろ?」

 

鳴海(なるみ)咲紀(さき)を気遣う発言をするが

 

「わかってませんね〜!兄さんは!」

 

突然咲紀(さき)が大声を出す。実は咲紀(さき)は偶にこのような感じで大声を出す時がある。今回の理由は何だろうか。

 

「兄さんと一緒に居る時が、一番私にとって幸せな時なんですよ!」

 

鳴海(なるみ)は驚いたように目を丸くすると、その目を優しさに包み、咲紀(さき)の頭を撫でる。

 

「に、兄さん?」

 

咲紀(さき)は戸惑うように兄の名を口に、その意図を聞こうとするが、決して嫌がっている声ではない。まあ、多少は恥ずかしいのだろうが。

 

「いや、兄貴冥利に尽きると思ってな。こんな可愛い妹に、自分と居る時が一番だなんて言われたらさ」

 

鳴海(なるみ)の言葉に咲紀(さき)は顔をポッと赤くすると、そのままほんの少しの間だけ、頭を撫でられ続けていた。

 

 

今日の夕飯はカレーライス。咲紀(さき)の得意料理の一つで、隠し味にチョコレートを入れている。

 

最初、鳴海(なるみ)にはそれがわからなかったため、チョコレートの話を聞いた時には大変に驚いたものだ。

 

なんでも、味付けに使われるスパイスにカカオが使われる時もあるため、そう意外なものでも無いらしい。と、鳴海(なるみ)が夢中になってカレーライスを食べていると

 

「?兄さん?」

 

「なに、どうした?」

 

食事の時は二人で向かいって食べるのだが、その時、咲紀(さき)が疑問の声を上げてくる。

 

食事の際には、居間に置いてあるテレビの電源を入れ、バラエティを見ながら食事を楽しむのが習慣となっていた。

 

「その、右手どうしましたか?」

 

「右手?……なんだ?これ」

 

そう言われて右手を見ると手の甲に、いつの間についたのか、蚯蚓脹れ(みみずばれ)のようなものが出来ていた。何処かに引っ掛けたのだろうか。

 

別に痛みは無いから、さして気にするものでも無いのだが。

 

「何だろなこれ。別にどうともなってないんだけど……」

 

「一応、絆創膏でもしておいてくださいね」

 

「そうだな」

 

鳴海(なるみ)は適当に相槌を打って話を切り上げる。

 

咲紀(さき)鳴海(なるみ)を心配し始めると、中々止まらないという悪癖があった。

 

心配して貰えるというのは嬉しいものなのだが、それも過ぎると返事も雑になる。鳴海(なるみ)には、そのギリギリを見極めて話を止めるという役割もあった。

 

 

そうして中々に味のある夕飯を楽しんだ後、鳴海(なるみ)は食器の片付けを始める。と言っても家には、食器洗浄機があるので、さして時間は掛からないのだが。

 

明日の分の米をといでいると、テレビからは最近、世間を賑わせている猟奇殺人についての報道をやっていた。

 

その犯行は中々に特異なもので、被害者に共通点と言えるものが殆ど無い中で、その死体は全てが先の尖った物。例えば、教会の避雷針。ビルの避雷針。大木の枝。そういったものに、腹を貫かれているというものだ。まるで、百舌鳥の速贄(もずのはやにえ)のような。

 

何か意味でもあるのだろうか、この行為には。例えば、魔術的な物とか。しかし、いかんせん鳴海(なるみ)にはその手の知識が無さすぎる。本も無ければ聞く相手も居ない。

 

そもそも自分は、魔術師であるということを誰かに言ったこともない。流石に、祖父と祖母は両親の死に方について、鳴海と話し合ったこともたあるが、それだけだ。妹の咲紀(さき)は魔術に関しての知識を何も持たない。持たないように、鳴海(なるみ)が気を使ったのだから。

 

その様な鳴海(なるみ)の考えを知る由も無い咲紀(さき)

 

「怖いですね……、兄さんも夜間の外出はしない方が良いかも知れませんよ」

 

「そうだなあ。これから日の落ちる時間もどんどん早まってくるし。六時には家に居た方が良いかもな。咲紀(さき)も、一人で居ないようにしろよ?学校の友だちと固まって帰った方がいい。爺さんと婆さんを頼っても良いからな」

 

「わかりました。明日にでもお爺さんに連絡してみます」

 

「おう。久しぶりに咲紀(さき)の声聞けるからって、喜ぶんじゃないか?喜び過ぎて死ななければ良いけど」

 

「流石にそこまでは……」

 

「無いとも限らん。あの人はああいう人だ」

 

二人して祖父の人間性についてひとしきり笑い合うと、咲紀(さき)は寝る準備をしてそのまま寝床につく。「おやすみなさい」の挨拶も忘れずに。

 

「ああ。おやすみ」

 

鳴海(なるみ)も明日の準備をすべて終えると、寝巻きに着替える。

 

しかし、先程見たニュースが気になり、中々眠れない。わざわざ人目に付くようなあんな派手な殺し方。

 

いや、死んでから刺さったのかもしれないが、それにしても。何故あのような死体を作り上げるのだろうか。

 

まさか、芸術とでも言うのだろうか。そんな、三文小説のような。散々使い古されたキャラのような者が、本当に居るとでも?

 

いや、自分には芸術のことなんてわからない。ましてやそんな殺人鬼のことなど。自分に出来ることは、この事件を魔術儀式として見ることだ。

 

もし仮に、儀式だとすれば恐らくは黒魔術。血を使うのだろうか。それとも、形なのか?人体が尖った物に突き刺さっている様は、不謹慎ながら十字架にも見える。神に抗いながら行なわれる魔術。果たして、そんなものがあるのだろうか。

 

「……わからん!魔術知識とかそんなもん、何処から手に入れればいいんだよ」

 

一般的な魔術師であれば、魔術協会に聞けば大抵の事はわかるのだが、鳴海(なるみ)にはその程度の考えすらも浮かばない程の魔術知識しか与えられていない。

 

鳴海(なるみ)にすれば、一般人である咲紀(さき)を魔術の世界には関わらせない。関わらせてはいけない。そう考えているが、それは鳴海(なるみ)も同じで、鳴海(なるみ)自身も魔術の世界とは交流を持たないよう育てられてきた。

 

彼に授けられた知識に、魔術師としての価値はない。

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