無表情くんと朴念仁くん 作:コブラは死んだ
俺があの不思議な少年に初めて出会ったのは中1の春、学校の廊下でだったと覚えている。
あの時俺は友人である五反田と共に、移動教室の為に廊下を歩いていた。
入学して間も無く、四校から生徒が集まる中学だったのでまだクラスメイトの名前も覚えきれていなかった。 ましてや他のクラスの人間など、同じ小学校だった奴以外全くわからかった。
俺とその少年も別の小学校で別のクラス、多分一年生中には接点のなかった奴だ。
確かそいつのクラスは三組で、俺達はその教室の前を横切るところだった。
その時、三組の教室の中から扉を壊しながら一人の生徒が飛んできた。
急いでいる、と言うことを表しているのではなく、本当に宙を飛んだ状態で扉を破って廊下に吹き飛んできた。
俺の言う少年っていうのはそいつのことではなく、そいつを投げ飛ばした奴のことだ。
俺が気になってその教室の中を覗き込むと、どうやら喧嘩をしているようだった。 それも多分、多対一。
仲裁、もしくは一人の方に助太刀に行こうと思った時に決着がついた。
勝ったのは一人の方。 鮮やかな緑色の髪をした女顔の少年だった。 こいつが俺の言った不思議な少年だ。
そいつは眉一つ動かさず、相手を殴った時に痛めたであろう拳をさすりながら教室の戸を直して、ついでにさっき吹き飛んできた奴を回収して自分の席に戻って、本を読み始めた。
何故か俺はそいつに惹かれて、話しかけようと思ったがそろそろ授業が始まってしまうので、急いで移動先の教室に向かった。
♢
僕がその馬鹿な少年に初めて出会ったのは中1の春の頃だった。
中学に上がって二週間が経ち、人と話すのが嫌いな僕は順調に孤立していた。
教室の後ろで騒がしく騒ぎまわるよりかは本を読んでいた方が楽しいし、為になる。 その上中学の頃の友人などそこまで重要じゃないことをわかっていた。
まあ多分、高校に上がっても友人を作る気などなかったんだろうが、それは今重要なことじゃない。
その時、休み時間にはいつもと同じような会話が飛び交っていた。
教室の後ろで、一人を取り囲んで数人が馬鹿にしたり、ふざけたように叩いたり。 多分、小学校の頃から続いている行為だ。
僕はそいつらにはさして興味もなかったが、正直言ってそいつをいじめる奴にも、周りで見ている奴にも、無視している自分にも嫌気がさしていた。
そして僕はその輪に近づいていき、こう言った。 "それ、楽しいの?'と。
別に正義感からやったことじゃない。
一人をいじめているのを聞いても、愉快ではないしむしろ気分が悪いからだ。
そしてそいつらのうちの一人が、楽しいと答えた。
なので僕は、そいつらがやっていたようにそいつの頰に張り手を喰らわせた。
「僕も楽しい。」
沸点が非常に低いようで、キレたそいつが大振りに殴りかかってくるのを避け、体に組みついて持ち上げ、思い切り放り投げた。
音を立てて教室の扉を破り廊下に飛んでいくそいつを見て"やべ、後で直しとかんと"と考えながら取り巻きの奴らと乱闘を開始した。
ほんの少しで乱闘は終わり、外れた扉を直しに廊下に出た。
そこにその少年はいた。
少し長めの黒髪に、若干赤味がかった茶色の目の、整った顔をした少年だ。
僕はどうにも、そいつに惹かれたのだが、こんな状態でこんな奴に話しかけられても困ると思い吹き飛ばした奴を持ち上げて教室に戻り、席について本を開いた。
♢
「
「それはね、一夏。 君があんなものを動かしたからだよ。」
とある高校のとある教室、最前列に並ぶ二人の男子が言葉を交わした。