Fate/Object   作:あんぼいな

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気づいたら前の投稿から3ヶ月以上…


踊る阿呆と撃つ阿呆 ミレニア城塞強襲戦VIII

「キャスター、ここは?」

「ああ、そこはだね…」

「(こいつらほっといたらいつまで喋りつづけるんだ…?)」

 

 クウェンサーと黒のキャスターが情報を聞き出すという名目で話し始めてからいくらか経つが、技術者同士話の種は中々尽きず、すでに隣で聞いているだけのヘイヴィアは飽き始めていた。

 

「(にしてもこいつらよくそこまで話が続くな…。)」

 

 そう思い、熱く語り合う2人を尻目に携帯端末を弄り出すヘイヴィア。

 

「(しかしまぁ…)」

 

 ヘイヴィアとて隙を突いてキャスターを殺すつもりで、銃のセーフティーは解除してある。直ぐに拳銃を抜いて、キャスターの額に穴を開けられるだろう。だが…

「(思ったよりも隙が無ぇ…。)」

 

 キャスターは先程から此方に目を向けていない、だが非常に警戒している。現にこうしてクウェンサーと話している間も必ずヘイヴィアとの間にクウェンサーを挟む位置に移動している。

 そしてそれはクウェンサーも同様で、キャスターからは見えない位置に信管を刺したハンドアックスを隠し持っている。だがキャスターも直ぐにゴーレムを呼び出し反撃できる様に準備している事だろう。

 やろうと思えば殺せる、だが此方も反撃され痛手を負うだろう。下手をすればこちらも倒される。そしてそれは向こう(キャスター)も同じ、三人は膠着状態に陥っていた。

 その均衡を破ったのは小さな電子音だった。

 その音はクウェンサーの持つ無線機から聞こえていた。

 ちらり、とキャスターの様子を伺う。

 

「おや、返答しないのかい?」

「じゃあ、失礼して。」

 

 そう言って会話がキャスターに聞こえないようイヤホンを着け、鳴り続ける無線に応答する。

 

「はい、こちらクウェンサー。」

『アサシンですか。ひとまず貴方達の分の令呪の移植は完了しました。』

「コトミネか、何で俺達の分だけ先に?」

『だって貴方達弱いじゃないですか。相性の悪い相手と当たったらすぐ死ぬでしょう。』

「事実なだけに反論できない……ッ」

『では、令呪が必要になったら連絡してください。』

そう言って通信が切断される。

 

「(どうだったクウェンサー?)」

「(取り敢えず令呪は使えるようにしてくれたらしい)」

「(そうか、じゃあいい加減脱出しねぇか?これ以上ここでヤツと話していても有用な情報が入るとは思えねぇ)」

「(同感だ。あいつ全くボロを出さないからな…)」

 「終わったかい?」

 「ああ。それで、これからどうする?」

 「それなんだが…」

 キャスターが手を掲げる。その瞬間、 

 「クウェンサー!!」

 咄嗟に転がる。頭上から落下してきた何かの直撃は避けたが、衝撃で吹き飛ばされ、さらに砕けた地面が腹にめり込む。

 

 「カハッ…」

 「何だ!何が降ってきやがった!?」

 土煙がおさまり、落下物の全容が明らかになる。それは…

 「「ゴーレム!?」」

 

 「すまないね、()()()()()()。」

 「何すんだテメェ、死ぬとこだったじゃねぇか!」

 「殺すつもりは無かった。だが…」

 黒のキャスターが歩み寄ってくる。その足跡を辿るように地面が盛り上がり、何機ものゴーレムが造られていく。

 

 「マスターに呼ばれてしまってね、すまないが帰ってくるまでおとなしく捕まっていてくれないか?」

 

 そして、手が振り下ろされた。

.

.

.

.

キャスターによってゴーレムが解き放たれた時、クウェンサー達に取れた手は一つ、すなわち

  

 「逃げるぞヘイヴィア!!」

 「おうよ!」

 逃走である。

 とはいえただでさえ広いミレニア城塞、さらに内部は魔術によって空間を広くする工夫もされているのだろう。

 そんなこんなで廊下を爆走するクウェンサーとヘイヴィア、後ろを振り向けばゴーレムだけでなくホムンクルスまでもが追いかけてきている。

 クウェンサー達もただ逃げていた訳ではない。廊下の角などにハンドアックスでトラップを仕掛け、ゴーレムと違い銃弾の通るホムンクルスを撃って数を減らしていた。だが…

 

「くそッ!また()()だ!」

 

 廊下の分岐地点から、部屋の扉からわらわらとホムンクルスが出現する。

 実際、ホムンクルス自体にそれほど脅威があるわけではない。だが、その数でゴーレムを破壊するために仕掛けたトラップを強引に破壊していく。自分の身を犠牲にして。

 そしてその間にも、ゴーレムは少しづつ迫ってくる。

「おい!このままじゃゴーレムに追いつかれるぞ!」

「仕方ない、宝具を使うか……。」

「いいじゃねぇか!何ならこの城倒壊させちまおうぜ!」

「それで行こう!」

 

 そう言って急停止するクウェンサーとヘイヴィア、後ろから迫ってくるゴーレムやホムンクルス達に銃と起爆装置を突きつけ、

 

「ちょっと待ってヘイヴィア。」

「あん?何か問題でも起きたか?」

「いや、俺達の宝具ってめちゃくちや魔力の消費が多いから使うなって言われてなかったっけ?」

「そういやそんな事女帝サマに言われた様な記憶が…」

 後ろを振り向く、ゴーレムとホムンクルスが廊下いっぱいに押し寄せてきていた。

踵を返して再び走り出す。

「どうする…?」

「どうしよう…?」

「このヘイヴィアの考えなし!」

「うるせー!頭使うのはテメェの仕事だろ!」

「天才イケメン貴族を自称してやがったのは何処のどいつだ!」

「自称じゃないですー、本物の貴族様ですー。」

「ってそんな事言ってる場合じゃねえ!」

「とりあえずコトミネに頼んで令呪をつかってもらおう!」

 

 そう言って懐から無線機を取り出してコトミネに繋ぐ。

「頼む、出てくれッ…」

  何秒かの呼び出しの後、スピーカー部からコトミネの声が聞こえてきた。

 

「はい、こちらコトミネ。」

「コトミネ、宝具を使いたい、令呪を使用してくれ!」

「何ですか⁈聞き取れなかったのでもう一回お願いします⁉」

よく聞けばスピーカー部からは金属同士がぶつかり合う音やスパーク音、低い唸り声などが聞こえていた。

「「コトミネー!ギブミー令呪ウゥゥ‼」

「今!戦闘中ですので!後にしてください!」

ブツッ…

「……」

「……」

 

 

「 「コトミネェーッ!」」




ありがとうございました。

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