4話:水上都市
イチカSIDE
18世紀、ヴェネチア。
戦禍を免れ、海上貿易によりありとあらゆる物が集まるこの世で一番楽しい街。との事らしい(マニゴルド様談)。俺とマニゴルド様、そしてもう1人の同行者と共にこの街を訪れてから半日が過ぎていた。
「それで此処に来た目的は分かってるな?」
「はい、この都市でしか手に入れられない食材や調味料などの購入……」
「その通りだ」
「全然違う!!お前らは何を言っているんだ!!」
いやあ、ロドニオ村と違って食材や調味料等の品物の種類が豊富で驚く俺は帰りに買い揃える品物を考えながらマニゴルド様の言葉に返事をするともう1人の同行者―――
「アルバフィカ、いきなり殴る事は無いだろう。場を和ませるジョークだ。……でどうだった?」
一撃を受けた個所を抑えながら俺とマニゴルド様は本題について話し始める事になった。
「俺の方は手掛かり無しですね、アルバフィカ様はどうでしたか?」
「こちらも収穫は無しだ、と言いたいところだが1つ気になる噂がある」
「噂ですか?」
アルバフィカ様はが気になる噂か・・・なんかの手掛かりにはなるかな?
「なんでもこの街で財布を掏られる者が多いそうだ」
「そんだけか?こんなデカイ街ならよくある事だろう?」
「いや、そうとも言い切れないかもしれません」
「どう言う事だ、イチカ?」
「掏られた金を納める元締めが奴らの関係者に繋がっているかも……」
『塵も積もれば山となる』
東洋の国の
「マニゴルド、イチカの方が考えているぞ」
「うるせえ」
「ところでイチカ、まさかお前が財布を掏られてる……と言う事はないだろうな?」
アルバフィカ様の言葉に俺は苦笑いを浮かべるしかない。実際、金は大目(巨蟹宮の予算をやりくりして俺の懐に収めたモノから半分ほど)持って来たのだが……
「……俺の財布はマニゴルド様が持ってます、俺だと掏られる可能性が高いだそうで……」
「安心しろよ、お前の財布なら…………」
街に入る直前になってマニゴルド様に大半を預ける事になってしまい手元にないんだよ、不満そうな顔をしているのが分かったのかマニゴルド様は安心させるかのように懐から財布を取り出そうとして・・・その動きを止めた。
「どうしたんですか?」
「マニゴルド、まさかお前……」
なんか顔色が悪くなってないかと思っているとアルバフィカ様が気付いたのか何かを尋ねようとするがマニゴルド様が乾いた笑い声を出し、信じられない事を言いやがった。
「あはは、イチカ悪いな。俺の財布ごと掏られちまった」
「「―――――おい!?」」
同時にツッコミを入れたのは悪くない・・・筈だ。
マニゴルドSIDE
財布を掏られた事が分かった俺はイチカとアルバフィカの冷たい視線を背中に感じながら掏りの集団(イチカ予想)を探すと意外な事に早く見つかった。やっぱ、人目のなさそうな場所に居やがったかと思ってると・・・
「おらあああああああああああっ!!」
そう雄叫びを上げイチカは斧を持った馬鹿そうな男にとび蹴りをかましやがった!?
「なんだ、貴様!!」
「ただの旅行者だ、それでマニゴルド様。この中に居ますか?」
「ああ、あのガキで間違いない」
そう言って俺を見ながら尋ねるイチカの視線は限りなく冷めていた・・・これ以上この状態続いたら俺立ち直れねえ・・・
「さあー見つけたぞクソガキ!早く俺とイチカの財布を返しやがれ!!」
「後、迷惑料も追加して貰うぞ」
俺は自身の地位(と言うか威厳?)を取り戻すために、そしてイチカはどさくさに紛れて懐に金を入れようと口に出したが此処でとび蹴り喰らって吹っ飛んだ馬鹿が戻って来やがった。
「テメエらは何者だ!!」
「「お前に用は無いんだよ、有り金置いてさっさと消えろ」」
見事に同じセリフが出たな。ところで後ろにいる筈のアルバフィカが右手で額を抑えている気がするのはなんでだ?そんな事を考えている間にイチカと馬鹿との怒鳴りあいが続けていたらしい、馬鹿の口が開き意外な事を言いやがった。
「テメェ!誰に向かって口を聞いてやがる!!」
「知る訳ねえだろ!!」
「俺は
「こいつ等に相手して貰おうか」
即座に周囲に漂っていた魂魄を呼び出し、拘束する。この光景に今まで呆然と見てたガキ共は堪え切れなくなったのか次々とこの場から逃げ出して行く。
「なんだ、こいつ等は!?」
「聞くところによるとお前が殺った奴等らしいぞ?テメエも悪党の端くれなら、汚く死んでいく覚悟付けろや!!!」
「テメエらは何者なんだよ!!?」
俺達か?
俺達はな……
「
「そして俺はマニゴルド様の従者を務めるイチカと言うんだけど・・・まあ、覚えなくて良いぞ」
イチカSIDE
「随分集めたもんだな。お、見つけた」
「イチカ、見つかったか?」
「2つともありましたよ、そっちはどうです?」
俺の持ち金が収まっている財布を懐にしまい直した俺は幹部(笑)のルマ―カを問い質しているマニゴルド様に答えていた
「駄目だ、何も・・・「…だけど、俺…1つだけ知ってる。」…おっ、何か聞けそうみたいだ」
「…それ……は…」
何かを言おうとした瞬間、絶叫と共に蒼い炎が灯り……魂魄を燃やし尽くした!?
「燃えてる!?マニゴルド様!?」
「違う、俺じゃねえ!!?」
「今の……」
「鬼蒼炎……魂を燃やす鬼火だァ?」
魂魄を燃やす炎に心当たりが有った俺は即座に聞き返すが、マニゴルド様自身も驚愕の表情をしていたのを見て、確認のための言葉を呟く。
「まさか
「財布が戻った分マシでしょ、なんなら迷惑料を追加しておきましょうか?」
「そうだな」
「2人とも持ちすぎだと思うぞ」
財布を幾つか懐に収めているとアルバフィカ様が溜息を吐いて此方に足を運んで来ていた。
「アルバフィカ様…これは迷惑料を始めとしたモノも含んでいます」
「元の持ち主が分からねェ金だろ?処世術ってヤツさ」
こう言う俺等に再び溜息をついて背を向けた。
「じゃあ、一からやり直すとするか」
「了解」
そして俺達3人は墓場から離れ、手掛かりを探しにヴェネチアの街へと戻った。
アルバフィカSIDE
「
イチカのこの言葉がきっかけとなり自分達3人の会話が始まる。
「少なくともお前より上の実力者だな」
「そもそも、
自分達の言葉にイチカは溜息を吐きながら思っていた事を呟いていた。
「俺、場違いにも程がありませんか?」
「なら、死ぬだけだな」
マニゴルドは冷たくそう言う、がそんな事はさせはしないと言った表情で言ってもあまり意味が無いと思うぞ?
「そうさせる気は無いくせに」
「うるせえ。それよりアルバフィカ!…この距離、どうにかならねえか?」
「そうですよ、食事は大勢の方が楽しいし美味しく感じると思いますけど」
「作ってくれたイチカには申し訳ないが万が一という事があってはな。」
「……そうですか」
残念そうに呟くイチカに悪いと思いつつ、左手にピラニアンローズを握る。この事を不思議に思った2人が何かを言う前に左の壁を壊した。
「それにだ……私はこの位置で正解らしい、侵入者にいち早く気付けるからな」
「…こ…こんちは!」
墓場にいた少年が少し表情を引き攣らせながらそう言う。
「―――イチカ、お前
「注意したつもりなんですけど……」
今回は……イチカがマニゴルドに染められている気がします。