他の人とは違い、真っ白な肌は嫌でも目立つ。
これは深苑と深雪に共通しているのだから、きっと遺伝なのだろうと思う。この夏の沖縄にはとても不釣り合いの深苑のその肌は、今は穂波の塗った日焼け止めクリームによって、他人とそう変わらないほどの色となっていた。普段からジロジロと見られるのは好きではない深苑にとってそれはとても助かっていた。
何も気にせず、気の向くままにぶらぶらと歩いていく深苑。
すると、魔法の使用を感知した。魔法は然るべき場所で必要なとき以外の使用は禁止だ。というか、屋外の公共の場所では魔法使用は細かく規制されているはずである。だから深苑はすぐさま使用された場所へ向かった。
魔法が使用された場所には、一人の少女が立っていた。天然パーマなのか、それともパーマしたのかは不明だが巻かれた柔らかそうな茶色い髪を一括りにして、それが動く度に揺れている。
見たところ、どうやらCADは持っていないようだ。それを見た深苑は
"何故違反をしてまで魔法を使用する人がCADを使っていないのだろう?"
と思った。すると
"誰だか知らないけれど、持ってないのだから仕方ないじゃない。というか、放っておいてほしいわ"
と返ってきた。これには深苑は思わず
「えっ?」
と言ってしまうほど驚いた。何故なら彼女は話していないからだ。
しかし、それは相手も同じであった。相手も一言も口にしてはいない。それなのに、深苑が反応したのだから驚く他ない。
"私、話してないのだけれど、ないのだけれど!"
と今までで1番動揺している様子の深苑。
"私だって口にした覚えはないわよ?!"
とこちらも動揺している相手。
一旦落ち着くことにした二人は一度深く息を吐いて、今度こそ状況を整理するために、"声"で話し始めた。
「自己紹介から始めましょうか。私は深苑です。ここには旅行で来ています。一応、魔法師かな。」
心を無に決め込めた深苑からはもう謎の心の声は聞こえない。しかし、そんな偉業ともいえる神業を相手ができる訳もなく
"わざわざ旅行でここに来たのか。夏なのに物好きだな。私のお父さんくらいには"
としゃべっていた。
もう先に進めることを最優先事項にした深苑はそれにはスルーすることを選んだ。
「私は美音。私も旅行で来ています。魔法師と言えるかはわからないけれど、下手でも魔法を使用することはできます。親は魔法師ではないから、内緒にしているけれどね。」
どこか少し寂しそうに笑いながら、美音は言った。だからか、と一人納得した深苑は
「公共施設での魔法の使用は認められていないのです。他の人に見られたら、捕まってしまうわ。場所を考えた方がいいですよ。」
とアドバイスした。
これはそこそこ常識であったのだが、美音は知らなかったようで目を丸くして謝り、今度から気をつけると言った。
それからは本題に移る。
「何故、心の声が美音さんに伝わるかだけど…。」
「美音でいいわ。ねぇ、これってテレパシーとかいうのじゃないかしら!」
きらきらとした眼で問いかける美音は、期待満々、興味津々と頭の上に書かれているかのようであった。
テレパシーとは、人の心が言語等を使わずに他人へ伝えること。それはまた突飛なものだが、これはそれと名づけるのが1番近いだろう。
本人の意思に関係ないことだけは当てはまらない気もするけれど…。
色々と心と声で話合っている最中、向かい合って話していたのが、あつい口論の末美音が深苑の隣へやってきていて、
「ねぇ、そう思わない?」
と言ったところで二人の肩がトンッと当たった。
その瞬間、目を閉じてしまうほどの眩しい光が二人を包んだ。二人は咄嗟に目をつむり…倒れた。
理屈はよくわからないけれど、二人は足の力が抜け、ゆっくりと草むらの上へ倒れたのだ。怪我こそないものの、それはとても奇妙な出来事であった。
なんだろう、声が聞こえる…
「「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥー、ハッピバースデーディア 美音ちゃん〜深苑ちゃん〜。ハッピバースデートゥーユー…おめでとう!」」
最初は靄がかかっていたが、段々と音が鮮明になっていく。それにつれて、視界もクリアになっていった。
目の前に見えたのは、知らない男性と女性。二人とも、暖かくて、優しい笑みをしている。男性は少しぽっちゃりしているが、顔は温厚という二文字を代表にしたかのような感じだし、女性は男性とともにバリバリ働きますという雰囲気なのに、心の底から嬉しそうに笑っている。
ああ、温かくて…優しい。頭の中に浮かんだ言葉は"幸せ"の二文字。
そしてつい最近、それもほんの少し前に聴いた名前が聞こえて横をチラッと伺ってみると、幼い5歳くらいの小さな女の子が目の前のバースデーケーキのろうそくを消すために、口に目いっぱい空気を吸い込み、こちらに目配せしていた。
ああ、火を消すのか、と思い自分もまたその小さな口に目いっぱい空気を吸い込み、美音とともにはいた。
二人の息は決して強くはなかったが、合わさったことにより小さな五本のろうそくは、光を失った。
無邪気に笑う美音。つられて自分も笑っていることに気がつく。
そこで気がついた。これは前世の記憶であるということを。目の前にいる男女は自分の親で、隣の美音は自分の双子の姉であったのである。
とても、それはとても温かくて幸せな前世の記憶。
今まで、自分が異端者のようだ、だとか、何故か涙が出るとか考えていたが、嘘ではなかったようだ。いや、原作を知っていて前世持ちだとわかってはいたのだが、前世の感情が蘇り、改めて正真正銘の異端者と叩きつけられ感じは、少し辛かった。
幸せを懐かしみ、頬が緩むけれど、そのことを考えてて手を強く握り目を伏せた。
いきなりのオリジナルキャラクターですみません。
けれども彼女は、これからの深苑のためにも、今の深苑のためにも、とても重要な役割を担っているんです。
おそらくですが、今以上にオリキャラが多発することはありません。私がどうしても居て欲しいと思うのは美音だけですので。
どうか、寛大な心で受け止めて頂けるととても嬉しく思います。
しばらく2日おき、3日おきの更新が続くと思いますが、これからもよろしくお願いいたします。