「…ぉん!深苑!」
美音の声がだんだん鮮明に聞こえて目を開くと、赤く染まり始めていた空をバックに美音の顔がドアップで映し出された。
「っ!…」
あまりの光景に声が出なかった。
顔が近すぎるのではないですか?もし、私が起き上がろうとしていたらどうなっていたものか。と、不安そうな彼女をそっちのけにして考えていると、不満そうな顔になった彼女。
そういえば、テレパシー的な何かで伝わってしまっているのだった。悪いことをしたなと思った深苑は起き上がり
「ごめんなさいね、大丈夫よ。」
とタメ口で話した。もと、双子の姉とわかった今敬語にする必要がないとわかったのだ。おそらく深苑が自ら意識的に敬語を外したのはこれが初めてだ。本当はこれよりももっと砕けた話し方をしたかったのだろうけれど、今までの今世の生活がそれを良しとしなかった。
「良かった。私より長く眠ってたから、何か異変があったと思ったよ。…どこに生まれたかは知らないけど、敬語が染みついたんだね。ねぇ、深苑はここで何を目標としてるの?」
流石は前世で双子だっただけある。本当なら二人ともこの世に生を受けたことを喜び興奮して、長々と今までのことを話したいところなのだろう。しかし、寝てしまったので時間的に長々と時間を棒に振るわけにはいかないのだ。だから、必要なことを伝え合うことが優先するべきことだ。
「勿論、達也と深雪の幸せを。」
「やっぱりなのね。私は原作上の魔法関係の事件を中心に一般人の被害を最小限にすること。」
お互い、全く変わらない様子に安堵しつつも、目標の大きさを受けとめていた。
「ふふっ、では改めて、私は出来損ないと呼ばれています。司波深苑よ。詳しいことは今後話すけれど、弟たちと比べてどこもかしこも劣っているわ。ここに生を受けたのはラッキーだけどそれなりに…ね?」
原作を知っている美音にはそれだけでわかった。四葉なら、訓練等、何をしてもおかしくない。
「ポジションは少し羨ましいけれど、よくここまで頑張ってきたね。もしかしてだけど、運動神経良くなってたの?」
二人の間ではこのくらいの賞賛がちょうどいい。十分なのだ。そして、運動神経のことだが、実は深苑は前世逆上がりもできない、体育のチームでバスケ等を行わときに大して役にたたなくて、仲間に励まされて頑張ってみるもボールに触れられない、みたいなそんな感じだったのだ。因みにこれは美音も大して変わらないが…。
「ええ、前の自分とは大違いよ。」
「私も習い事沢山やらされてそれなりにはなったよ。それじゃあ、私も自己紹介させてもらうね。一般人と一般人の間に生まれたのに何故か魔法師の才能が備わっているけれど、深苑以外には誰にも知られていない渡狸美音です。」
何かと修飾語が長々と連ねられていたようだが、実にわかりやすい説明だ。お互い、名前だけは変わらなかったのは嬉しいことだ。
しかし、彼女たちの注目ポイントは長々さではなく
「しがつついたちと書いてわたぬきなのかしら?」
「ううん、渡る狸でわたぬき!」
と、変なところで声のトーンを上げた。しかし、それも長くは話さない。
「もう帰らないといけないわね。テレパシーのことだけれど、もう大丈夫よね?」
「あ、もう流れてこないね。」
そう、話していて気づかなかったが、相手の心の声は聞こえなくなっていた。
「必要ないときは、コツを掴めば伝わらないようにできるみたいね。」
彼女は美音と話ている間に、方法を模索していたのだ。器用なことだ。
「私たちの間でしか、繋がらないみたいだとはいえ秘密事項もあるし、私も頑張って練習する。これ、私のよく行く図書館。テレパシーで話し合おう。」
「少し遠いい気もするけれど、この時代に珍しい図書館だもの、読みに行くわ。他人として離れて座って話しましょうね。」
別れた二人は、帰った後に怒られた。
美音は両親に涙目になりながら、心底心配したと怒れ、深苑は穂波にどこで何をしていたのかと怒られながら問い詰められていた。その質問には、ブラブラしていたら良い日陰があって寝てしまったと答えた。女の子が一人でそんなことをしていてどうします!?という穂波には、以後善処します。とあまり反省していないように答えていた。訓練以外でこんなにも怒鳴られるとは思ってもいなかったようだが、親しくない人に心配されることが今世でなく、麻痺していたからだ。
早く原作に戻りたいです。
オリジナルは苦手です。アレンジが好きです。
ところで、わたぬきについてですが、わかった人はおりますか?私の趣味に走りすぎていて、入れるか入れないか迷っていたのですが、入れてしまいました。
しがつついたちと書いてわたぬき(四月一日)
渡る狸でわたぬき(渡狸)
どちらもあやかし系です。
最近は本当に時間がなくて、更新が遅れ、追憶編が終わらなくて申し訳ありません。