「穏やかな陽射しが注ぎ、鮮やかな桜が舞う、この麗らかな春のー」
深雪の少々ハラハラする演説も、その美貌により無事終わった頃。深苑は妹の晴れ姿に、これからの学校生活への活力を貰ったとほくほくしていた。
しかし、他人のような関係の深雪に対してお祝いの言葉を述べることは憚られたため、達也がしっかりと伝えてくれることを願って、生徒会長のもとへ向かう少しだけ、言いたいことがあったのだ。
「ところでお兄様、さっそくデートですか。」
と突拍子もない発言が深雪の口から出ていたころ、既に深苑は帰り仕度を終えていた。因みに深雪たちの会話は普通になされ
「詳しいお話はまた日を改めて。達也君も。」
ということになった。
「会長っ」
そして去り際に、会長の御足労を考えてか、ただの苛立ちかはわからないが、副会長である服部刑部は振り返り、司波達也を睨みつけようとした。
しかし、何かを思い出したのかそのまま前に向き直り会長の後ろについて行った。
これに達也は疑問を抱いたのだが、七草は
「ふふっ深苑は未来でも見えているのかしら。」
と微笑み服部は
「あの人たちが弟妹なのか…」
と呟いていた。
実は深苑は会長たちが深雪のあとを追いかける前に、深雪さんは達也君ととても仲が良く、きっと今日中には生徒会の話はできないだろう。
だから、あまり苛立たないで半分私との賭けみたいな感覚で話をしに行ってほしいと声をかけていたのだ。
賭けみたいな感覚と言われたとき、服部は不服な様子であったが、会長の楽しそうな雰囲気に抗議する気など起きなかったのだ。
まあ賭けといっても、特に何をというわけではなく、当たるか当たらないかただそれだけのことであった。
「結局お兄様のところには、メールの1本もないのですか。」
と司波家では深雪が静かに怒りを表していた。
その場の温度が深雪の魔法によって下がっていた。
それを宥めるように達也は、深雪の手に自身の手をのせて静かに
「落ち着け。」
と、父親の会社の手伝いをせずに学校生活を送っているのだから、
あてにされていたのだと思うと腹も立たないとそう言った。
そうすると深雪の怒りは収まったのか、再び部屋の温度が戻り
「お兄様がそう仰るのなら。」
そう深雪は達也に寄り添った。
ちょうどいいと思ったのか達也は深苑の話を始めた。
「そういえば、深苑さんから深雪に入学おめでとうございますと伝えてほしいと言われた。もちろん俺にも少し口元を緩ませて伝えてくれたよ。」
あまりにも意外なことであったのか深雪は固まって
「あの人が、そんなことを…」
と漏らした。
「ああ、それと俺たちとの仲が良くも悪くもないことで他人からとやかく言われ、迷惑をかけるわけにもいかないからと自分のことは深苑と呼んでほしいとのことだ。確かに仲が悪いわけではないが微妙な関係だから仕方ないな。しかし、気に掛けてくれていることに少し驚いたな。」
達也がそう言うと、
深雪はやっと動くようなった体を動かしコーヒーを入れながら答えた
「そうですか。では深苑さんとお呼びします。確かに意外ですね、私たちは話したことも、それほど多くないですし…。私、深苑さんのこと良く知らないのですが姉妹ですし仲良くなれたらと思うのですが…。」
そう、別に達也も深雪も深苑のことは嫌いではない。
しかし知らないのだ。
仲良くなろうとしてもまず何処に住んでいるのかさえ知らない。
弟妹でありながら幼い頃も殆ど会わず、会話だってろくにしたことがない。
その上、今は深苑は母のガーディアンであった穂波さんと一緒に住んでいる。最後に会ったのは沖縄のあの日で、もう3年ほど会っていない。仲良くなる機会なんて皆無に等しかった。
だからお互いまるで他人のような接し方しかできずにいる。
というか、実は達也も深雪も深苑が同じ第一高校に在学していることでさえ、入学前日に叔母に聞いて知ったばかりであった。
ただ、二人が知っているのは深苑が四葉では出来損ないと呼ばれていることと、深苑がそれを自ら肯定はしていることだけ。そんなことだからだろうか、今のいままで、達也も深雪も深苑のことについて話したことがない。
やはり二人と深苑との関係は他人同然だ。
なかなか話が進みませんね。
気長に読んで頂けると幸いです。
それと、誤字脱字、
日本語がおかしい所がありましたら
ぜひ教えてください。訂正いたします。
よろしくお願いします。
因みに、会っていなかった3年ほどの間に
パーティー等で会う機会がなかったかと言いますと
深雪たちの都合と深苑の都合が
偶然か必然か噛み合わず会うことはなかったと
いうことです。
少し深雪は歩み寄りたい感じでしたが
さてはて、深苑はどう思っているのでしょうね。
*
誤字で穂波さんのことを水波さんにしていました。
申し訳ありませんでした。
教えて頂き、ありがとうございました。
改行の改定を行いました。