新学期が始まったのは入学式の前日だから、今日は2年生になってから2日目ということなる。別に私が2年生になったからと、何かに希望を抱いたりだとかそういうことはなく、またあの行事的な迷惑極まりない日が近いてきた。なんて思っているのはまあ否定しないにして今、私の脳内を占めていることは別にある。それについては特に特筆するようなことはないが、敢えていうとして簡単に言うと…いやオブラートに包むとするなら、この学校生活に邪魔者が入るということだけ
言っておこう。まあ私が考えるに常に邪魔者が存在する確率はあるのだが…。
それにしても今日は快晴だ。ただそれだけのことでも私的には嬉しいことだと感じる。一応折り畳みの傘は持参しているが、暗い空を見上げるよりも明るい空を見上げることの方が何倍も心地よい。
時は過ぎて日が沈み始めた頃、校門近くでは、穏やかではない雰囲気が流れている。穏やかではない雰囲気、といってもそれを出しているのは新入生、それも一科生と二科生との間で、だ。他は気づいていないのか、あるいは気づいていて巻き込まれたくないのかごくごく普通に無難に通り過ぎている。もちろん深苑だって、通り過ぎたいとは思っていたが相手がCADを取り出し、人に向けていたのだ。それを視界に入れた途端、彼女は走り出した。そこに深雪や達也がいたということも、彼女が風紀委員であるということも彼女の行動の理由では関係ない。ただ人にCADを向けたこれが彼女にはとても信じがたい事実であり、それを見てしまったがために彼女は動き出した。走ったその勢いのまま片手でCADを持った人の手をはたき、片手でCADを持った人に攻撃しようとした警棒のようなものを掴む。そして、対抗心を抱いたのか魔法を行使しようとした一科生数名とそれを止めようとCADを操作した少女に対しても術式解体を用い止めた。そして、新入生たちが動揺している中、深苑は携帯を取り出して電話をかけ始めた。
「もしもし、第一高校付近に人に対して魔法を行使しようとした人が
いるのですが…はい、拘束しておきましょうか。」
そんなことが聞こえる
「ちょっ、巫山戯るな!」
先ほどCADを人に向けた人、森崎が何か焦ったように声を上げる。すると、携帯を切り
「巫山戯るな?」
と静かな怒りをこめて聞き返す深苑。前髪で目が隠れたまま、口元はまさに無表情とわかるような、表情筋が死んでいる見た目に反して怒り満載のその声に、森崎は怯むかのように一歩後ろへ下がった。
「巫山戯てませんよ。あ、もしかして法律ってものを知らないのですか。なら、入学して早々知れて良かったですね。魔法を人に向けること自体が既に法律違反ですよ。けれど、知らなかったとはいえ、法律違反は取り締まらなければなりませんよね。もちろん使おうとした魔法が例え殺傷性が無かったとしても、そんなことは関係ありませんよ? その向けた相手が一般人であった場合、向けられた人はどう思うとお考えで?何かわからないが自分に危害を与えようとした。もしかしたら自分は殺されるかもしれなかった。そういうように取られてもおかしくない。いえ、そう捉えられるのが当たり前です。」
その言葉を聞いた瞬間、先ほどまで深苑に対して怒りを持っていた一科生の顔が一気に青白くなっていった。
「わかりました?自分がしようとしたことの重大さを。わかったのなら、謝りなさい。まだあなた方は新入生。今回だけは見逃してあげます。先ほどのは、ハッタリです。」
相も変わらず表情筋は機能していないが、その口調はまるで語尾にウィンクしているかのように軽快だ。ここで謝らなったら、どんなことになるかわからない。そんなことは誰でもわかることなので、一科生は二科生に
「すみませんでした!」
と声を揃えた。本来は すみませんでした よりも 申し訳ありませんでした の方が最適であったのだが、深苑もそこまで鬼畜ではない。反省してくれているのなら良いと思ったのだ。
「深苑さん!」
騒動を見ていたのか、生徒会長と風紀委員長が駆けてきたしかし、彼女たちが何かを口にする前に
「心配してくださったようで、ありがとうございます。しかし、今回は森崎一門のクイックドロウが有名で後学のために見せてもらおうとしたのが発展してしまっただけの様です。今後はこのようなことにならないよう気をつけると本人たちも反省している様なので今回はそれで良いと判断しました。」
と深苑が先手を打った。それが意外だったのか風紀委員長は驚いた様子で、少し不満げでもあったが、
「本当です。お手数おかけして申し訳ありませんでした。」
と達也が謝り、それに続いてその場の新入生全員で
「申し訳ありませんでした。」
と謝ったのだから何も言えなかった。
「生徒同士で教え合うのは禁止されておりませんが、魔法の行使には細かな制限があります。魔法の発動を伴う自主活動は控えた方がいいでしょう。」
と生徒会長が言ったことでこの場は丸く収まり、その場で解散となった。因みに、前髪で目が隠れたままの先輩が、深苑だとは思いもしなかった深雪は、深苑の去っていく後ろ姿をそっと眺めていた
ピンポーンと司波家にチャイムが鳴った。穂波がやって来たのだ。
表情を明るくした深雪は紅茶の用意をテキパキと行う。用意ができたところで、穂波が持ってきたマドレーヌとともにお茶を始めた。
「おいしいです!何処のマドレーヌですか?」
深雪が頬を緩めながら問うと
「これは深苑の手作りですよ。深苑が入学祝いに行くのなら、今日のことも詫びたいので、持って行ってほしいとお願いされました。」
と笑顔で穂波が答えた。まさかこのおいしいマドレーヌを深苑が作ったとは思わなかったので、達也も深雪も目を見開いてしまった。
「今日のことと言われましても、今日は私たちが助けて頂いたので…。」
と深雪は申し訳なさそうに言うが
「時間を長引かせてしまったことと怖がらせてしまったのではないかということを、とても気にしていましたよ。帰ったら制服のままマドレーヌを作り始めた時はびっくりしましたよ。」
なんて微笑みながら穂波は気にしないでというのだった。
申し訳ありませんでした。
深苑が表情筋が壊れていることを
記述していませんでした。
深苑は笑うことはありますが
ごく稀で、よく見ない限り他の感情を
抱いていても変化がわかりません。
しかし、それは表情のみなので、
口調から感情を読み取ることは
簡単です。
また、質問にもあったのですが
この小説では穂波さんは生きています、
今後過去について書く予定ですので
待っていてください。
最近思ったのですが、会話文長いですね。
私が話してほしいことが
多いのが原因なのですが…
まだまだ話してほしいことがあるので
どうか、頑張って読んでください。
*改行の改定を行いました。
*禿筆を特筆に直しました。