とある青年ハンターと『 』少女のお話   作:Senritsu

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第14話 転:永久凍土の頂で

 

 ──まずは森に身を隠しながら北東に向かう。北の洞窟の入り口が目標地点だ。

 

 

 

 

 

 日が沈み、代わりに丸い月が顔を出す。夜空の光を吸い込んで灰白色と深い蒼を返す永久凍土の地面を、白い息を吐きながら僕とテハは駆けていた。

 先行してテハが走り、僕はその間後方で身を潜める。彼女がある程度進んで周囲を確認し、合図を送る。それからテハが進んだルートに沿って走る。それを何度も繰り返す。

 このまま北の洞窟まで辿り着ければ理想だったのだが、それを先方が許してくれるはずもなかった。

 

「──アトラ、来ます」

 

「来たかっ……。分かった!」

 

 テハの合図に応えて、僕は目的地へ向けて真っすぐ進めていた歩を唐突に止め、近場の起伏に向けて蛇行するように走る。テハもそれに倣う。

 数秒後、僕が通り過ぎるはずだった場所に圧縮された風の砲弾が着弾する。響き渡る破砕音。それは硬い氷の地面すら容赦なく穿ち、粉砕させる。

 初撃で僕たちを仕留められるとは思っていなかったのだろう。そのブレスは次々と繰り出された。その度に地は震え、空気が掻き乱される。まるでここだけが嵐に見舞われているかのようだ。

 

 

 

 

 

 ──雪原を通ってベースキャンプに行こうとすれば、ほぼ間違いなくやつがずっと追ってくる。それを撒くのはまず無理だ。かなりの遠回りになるが、北回りのルートで行こう。

 

 

 

 

 

 凶悪なブレスの弾幕を何とか搔い潜り、起伏に身を飛び込ませたところで弓を展開しながら身を翻した。

 

 同時に舞い上がる細かい氷の粒が月光に反射しきらきらと光り、その先にかの龍はいた。

 白銀の身体は夜空に浮かび、昼よりもむしろ存在感は増している。

 その瞳は明確に僕たちを捉え、今度こそ逃がしはしないという風にクシャルダオラは咆哮する。

 

 僕に引き続いて起伏に身を滑り込ませたテハが、その咆哮を聞いてびくりと身を強張らせた。しかし、今度はそのまま硬直するようなことはしなかった。両手に持った番の炎剣をぐっと強く握りしめる。

 ただ、そんな反応は今までに見たことがない。彼女は至近距離で竜の咆哮を受けても怯むことはまずなかった。それよりも音の振動そのものは小さいというのに、だ。

 

「大丈夫だ。怪我人ではあるが、僕もできる限りのことをする。まずいときには言ってくれ」

 

「……はい」

 

 この言葉が彼女には全く有効でないことは分かっているつもりだ。だからこれは、僕自身のための気休めなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 ──あの氷山の頂上付近なら仕掛けられる。身を隠せる場所も多いしな。そこから一気に下ってベースキャンプに戻ろう。

 

 

 

 

 

 流石にやつもこれから僕たちがどこへ向かい、何をしようとしているのかまでは分からないはず。ただ延々と僕たちを追い縋るのみだ。

 目測では1キロもないはずの北の洞窟の入り口が途方もなく遠く感じる。身を隠す氷柱や起伏が多数あるのが救いか。しかし、やつの攻撃にずっと晒され続けることに変わりはない。

 

 ふと足元で細く渦を巻くような風の音が聞こえた気がして、僕とテハは弾かれるようにその場から飛び退いた。

 直後に、そこに僅かに積もっていた雪や氷の破片が渦巻いて巻き上げられる。恐らくあの場に居続ければあの風に為す術なく拘束或いは切り刻まれていたのだろう。

 やはりかの龍は遠方にピンポイントに旋風を発生させる能力を持っている。そのことを深く意識に刻み込んだ。

 

 僕が起伏から飛び出したのを待ち受けていたかのようにクシャルダオラが滑空してきていることも、何とか視界に収めている。

 着地した片足をまた蹴り出し、大きく前転回避。クシャルダオラが空中から叩きつけたのだろう前足が僕のすぐ傍の地面を砕く。途端にかの龍自身が生み出す風の圧に押し出され、意図せず二転、三転とする。

 

 罅が入ったらしき肋骨と多少楽にはなったものの、傷だらけの肺が圧迫されてぎしぎしと痛みを発し、思わず顔を顰める。塞いだ傷も幾つか開いてしまったようだ。

 しかし、さっきとは違って動きが阻害されるほどのものではない。

 今度は逃げない。起き上がって矢を取り出し、そして身を翻しながら、鏃を岩肌の露出した地面に思い切り擦過した。ざざあっと火花が散ったことを確認しそれを弓に番える。

 

 クシャルダオラは前足による叩きつけを行ってからふわりと着地し、僕のいる方へと向こうとする。

 せめて、それと同時に。

 花火のような音と、多量の火花を鏃後方から撒き散らしながら矢が引き絞られていく。狙いが狂わないように全力で、暴れる弓を押さえつける。そして、

 

「届け!!」

 

 そう叫ぶと共に矢を放った。反動で大きく数歩後ろに下がる。

 狙いはさっきの戦いでやつに刻んだ胸の傷。しかし、その軌道は風の圧によって捻じ曲げられる。

 しかし、それでもその矢はその場で落ちず、やつの前脚に届いた。そして間髪置かずに炸裂。やつが僅かに怯んだのを確認する。

 

 竜の一矢。鏃内部に火薬を仕込み、擦過の摩擦熱で着火し射撃するというかなり荒々しい技だ。威力は高く遠くまで飛ぶが、隙も音も大きく照準も非常につけにくい。

 ただ、あの風の鎧を乗り越えられるならばその価値はとても大きい。使うことはないだろうと思っていたが……。これ用の矢は数本しかない。ここぞというときに使わなければ。

 

 素早く周囲を見渡す。北の洞窟へ続く方でテハが合図を送っているのが見えた。寒さに凍え、痛みを発する体の節々をどうにかなだめながらテハの元へと向かって駆け出していく。

 

 

 

 

 

 ──だから、山頂まで如何に損傷を抑えて立ち回るかがカギだな。逃げ回ってばかりだとやつに気付かれかねないから応戦も相応にしなきゃいけない。

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……。辿り、着いた!」

 

 全力の走りそのままの勢いで飛び込んだのは、永久凍土に無理やり通したかのように存在する洞窟。狭い氷壁の狭間に身を滑り込ませるようにして入らないと入れないため、ひとまずやつは入れない。

 後方では何度か破砕音が響き、隙間から突風が吹きこんだ。しかし、流石にかの龍といえど氷壁を崩すのには少々時間がかかるだろう。……もしそれをやったとすれば数分と持たないだろうが。

 夜中なのも手伝って洞窟の中はかなり暗い。しかしかろうじて地面は見える。

 

「……コホ、ゴホッ……テハ、まだ、やれそうか?」

 

「……はい」

 

 膝に手をついて肩で息をしながら、隣にいるテハに声をかける。しかし、その返事は芳しくない。彼女自身も多少息が上がっているが、それでもいつもの彼女ならこの手の質問には間を挟まずに答える。

 

 テハの調子は明らかに悪くなっていた。そして、そのことに彼女自身も戸惑っているようだ。

 クシャルダオラが彼女と正面から向き合ったとき、どうしても彼女の動きが鈍る。厄介なことにかの龍もそれを察しているらしく、彼女が狙われる場面が多くなってきた。

 それ以外の時ではテハの動きに問題はないのだが……。森の中でやつの咆哮を受けたときのように完全に硬直するようなことはないにしても、いつかまたそうなるかもしれないという不安がぬぐえない。

 

「アトラ、本機に何か指示することはありますか」

 

 しかし、彼女はそれでも僕にそう言ってきた。

 

 彼女自身で折り合いがつかず、誤魔化しているところがあるのかもしれない。だがそれは同時に、この絶望的ともいえる状況下で、僕に付き従おうとしていることを示している。

 だから、本当はそうするべきではないと分かっていても、僕は彼女にただ指示することを選んだ。

 

「ああ……ある。今のお前にとっては……ゴホッ……きつい、ことかもしれないが、もしできそうなら──」

 

 肺が痛い。血の滲む額を拭うのすら億劫に感じる。血痰がまた喉から這い出てくる。

 こんなにも消耗が早いとは、と内心で舌打ちする。この場で生命の粉塵を思い切り吸い込んでしまいたい衝動に駆られる。

 

 ただそれでも、冷気に凍えているふりをして、言葉を区切りながら彼女に話し続ける。

 だから、僕の身体に言い聞かせる。……もう少しだけ持ってくれ。

 

 

 

 

 

 ──応戦しながらの撤退、移動ほど難しいものはない……。正直、その途中に死ぬ可能性の方が高い。でも、このままここにいてもどうせ死ぬしな。

 

 

 

 

 

 北の洞窟の入り口は二か所ある。ひとつは氷山の斜面の下の方にあり、僕たちが入っていった小さな隙間。もうひとつは氷山の斜面の上の方にある大きな横穴だ。恐らく凍戈竜辺りが開けた穴なのだろうが、そこであればクシャルダオラも洞窟内に入ることができる。

 洞窟の上にあたる斜面はかなり急なため、氷山の頂上に向かうにはその横穴を通るしかない。そこを通る前にクシャルダオラがやってくると、状況はいよいよ厳しくなる。

 だから僕たちはほとんどそこで休まずに行動を再開した。口にしたのは携帯食料と回復薬程度。それなりに傾斜と段差のある洞窟内を何とか登っていく。

 

 僕が横穴から出て身を隠したとき、やや遠くにかの龍の姿が見えた。やはり別の入り口を空から探していたらしい。

 クシャルダオラは横穴のすぐ近くに降り立ち、その洞窟内を覗き込む。僕たちが外に出ているところは見られていなかったらしい。

 

 ようやっといつもの僕らしい狙撃を仕掛けることができそうだ。氷壁にできた溝から半身を出し、狙撃用の矢を矢筒から取り出して静かに番える。そしてそのままきりきりと引き絞った。

 常時展開されているやつの風の鎧は凄まじく厄介だが、それそのものが音を発しているため、周りの音に気付きにくくなるという意外な弱点があるな。その弱点を突かせてもらう。

 

 行け。弓弦が鳴り響き、それにクシャルダオラが気付く前に放たれた矢がかの龍のもとへ……届か、ないか。

 

 運悪く、風の圧が生み出された瞬間に矢がぶつかったらしい。勢いを失った矢が地面を転がる。それを踏み潰して砕き、クシャルダオラが振り返る前に僕はまた身を隠した。

 居場所がばれていなければ二撃目を。そう思っていたが、すぐ近くで猛烈な破砕音が連続して聞こえ、身を強張らせる。

 僕がいそうな場所に風の砲弾を撃ち込んで牽制か。慌てて身を出したなら即座にそれに標準を合わせて当てに行く算段なのだろう。しかし、その牽制のブレスでこの氷壁が先に崩れそうだ。

 

 落ち着け。状況そのものは望んだ方向へと進んでいる。あとはやつがさっき降り立った場所と、こことの大体の距離と破砕音から、やつがブレスを吐いてそれが着弾した直後のタイミングを計るのみ。

 

 十数秒後。僕は溝から身を躍らせた。

 即座にクシャルダオラが軸合わせをする。恐らく放つのは旋風タイプのブレス。この氷壁に囲まれた左右に逃げ道のない場所では、あれを避けるのはほぼ不可能に近い。

 だから、それをやられる前に。

 

「せえッ!」

 

 僕は身体を大きく振りかぶり、手に持った砂鉄の剣をやつに向けて投擲した。

 

 驚いたのはクシャルダオラの方だ。やつは僕たちへの攻撃よりもこの砂鉄の剣に対しての対処を優先する程度にはこれを警戒している。それがテハからでなく僕が投げたのだから。

 しかし、切り替えは早い。ブレスは中断され、クシャルダオラは僕が投げたその剣を注視する。たちどころに発生した風が、その剣を包み込んで──霧散、されない。

 

 本来は破損した防具や道具の応急処置に用いるセッチャクロアリの体液を塗布した砂鉄の剣。

 テハの力で無理やり押し固めているのではなく、物理的に接着したものならば、それが解きほぐされることはないという推測は、果たして当たった。

 

 そして、それと同時に。

 氷壁の上から少女がその身を空へと投げ出した。手に握られているのは砂鉄の剣、ではなく、緑と赤の二対の剣。落下していく先にあるのは、かの龍の背中だ。

 

 いつもならば、落下の加速度を得ていたとしても、彼女程度の体重ならば風の圧に押しのけられる。

 しかし、今、その風の鎧は薄れているはず──やつのブレスは身の回りから生み出された風を集めて放っているのではないかという推測──やはり。

 

 着弾。背中の硬い外殻を避けて、右の翼の根元に二本の剣が突き立てられ、一気に沈み込み、同時に炎を噴き上げさせた。

 ここに来てやつの悲鳴を初めて聞いた。完全に不意打ちの形となったらしい。テハはそのままクシャルダオラの背中にしがみつき、リュウノツガイをより深く沈みこませていく。

 

 当然、クシャルダオラは大暴れを始めた。空中に飛び上がり、無茶苦茶に飛び回る。また、風の鎧も全力で展開したようだ。

 激しい上下動と暴風に晒され、翼に打たれ、挙句に氷壁にその身体ごと打ち付けられる。明らかにしがみついている方がダメージを受けている。

 しかし、それでも彼女はしがみつき続けた。双剣の片割れだけを傷口から抜き、さらに翼膜を傷つけていく。

 

 その隙を無駄にはしない。僕は残りの竜の一矢を打ち込んだ。風の鎧を押しのけて腹の下辺りに着弾していくそれは、爆発と共に龍の鱗を弾き飛ばしていく。

 

 

 

 

 

 ──まあ、あれだ。ある本に書いてあったんだが、確率はどの視点どの条件で計算するのも、重要なファクターなんだと。つまり、生きるか死ぬか(オール・オア・ナッシング)──無事に生きていれば勝ち、それ以外は全部負け。確率は二分の一だ。

 

 

 

 

 

 クシャルダオラの背中の上に、テハはなんと数十秒も居座った。最終的には振りほどかれ、やつを地面に落とすには至らなかったものの、相応以上の傷をやつに負わせていた。

 しかし、その代償もまた大きかった。

 

「テハ、テハ! くっそ、脳震盪か……!」

 

 クシャルダオラの背中から吹き飛ばされて地面を転がったテハは、その場でぐったりとしていた。

 無理もない。僕であれば十秒も耐えることなどできなかったであろう、やつの抵抗に彼女は耐え続けたのだ。いくら彼女が頑丈だからとはいえ、基本的な身体構造は人と変わらない。

 

「よくやった。よく頑張った……! 離脱は任せろ! ……ガハッ、コホッ……お前の頑張りを、無駄にはしない……!」

 

 彼女にそう声をかけ、僕は彼女を抱きかかえる。しばらく背中の傷を気にしていたクシャルダオラはその姿を見て、いよいよ怒気と歓喜の入り混じった咆哮を上げた。

 

 なめるな。この地、凍土奥地の地理については僕たちの方に軍配が上がる。どこが奇襲に役立ち、どこが戦闘に適さず、どこが逃げるのに向いているかくらいは頭に叩き込んでいる。伊達に数年間狩人をしているわけではない。

 

 何としてもこの場を切り抜ける。そして氷山の頂上でお前を欺く。

 そう覚悟を決めて、僕は氷壁の隙間にできた先ほどとは比べ物にならないほど深くて狭い溝、クレバスと呼ばれるそこへと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 ──気休めなんて言ってる場合じゃなかったか。ごめんな。……行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 北の洞窟から氷山の頂までは、直線距離で見れば恐らく二キロ程度しかない。

 竜車ならば数分、人の足でも歩いて数十分程度しかかからないだろうその距離を移動するのに、果たしてどれだけの時間がかかっただろうか。

 

「はっ、はっ、はぁ……ゴホッ……」

 

 逃げ回っては迂回し、別の道を探しては巨大なクレバスに行き先を阻まれ、やっと近づいたかと思えば追いかけてきた龍に応戦を強いられる。

 一進一退を何度も何度も。背中に背負ったテハが目覚めてからも、幾度も繰り返した。

 

 加えてこの寒さだ。月明りにぬくもりは欠片ほどもなく、晴れ渡った空はむしろその天から熱という熱を奪い取るがの如く、空気を凍てつかせていく。

 手足や耳が凍って砕けてしまうのではないかと錯覚するほどの極低温、間違いなく極寒地域だ。ホットドリンクの手持ちはいよいよ尽きようとしていた。

 

「ぜぇ、はぁ……はぁ……」

 

 しかし、それでも。それでも僕たちは、辿り着いていた。それも、奇跡的に五体満足のままで。

 目の前には空へ向けて一際高く聳える氷壁。そしてそれを取り囲むようにして広がる氷の地面。凍土という狩場のエリア6という区域が、こことやや似ているかもしれない。

 

 周りに空を遮蔽するものはなく、故にそこは、まさしく僕たちが登ってきた氷山の頂だった。

 

 そしてその中心地には既に、かの龍が降り立っている。

 ここまで登ってきた僕たちに対し、もう逃げ場はないと宣言するかのように。

 

「はっ、それはこっちの台詞だ。……コホ……ここまでにお前は僕たちを殺すか、四肢を奪っていないといけなかった」

 

 そしてそれができなかった時点で、お前の負けだということを。これから示そう。

 

 咳には常に血が混じり、新しくできた傷は生々しく血を垂れ流し、手足は凍てついて変色している。

 テハも肩で息をし、時折目を瞑って頭を振っている。脳震盪のダメージが抜けきれず、そのために氷に足を滑らせて滑落、わき腹と腕に思い打撲を受けている。

 

「テハ、ここまでくれば、もうひと踏ん張りだ。ここで戦って機を伺う。……やってやろう」

 

「はい」

 

 威嚇の咆哮を上げることなく、クシャルダオラは氷の地面を蹴って突進を仕掛けてきた。その間際に言葉を交わす。

 そしておそらく最後になるであろう撤退戦へ向けて、氷の地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 ──生きて、帰ろう。

 

 

 

 

 

 クシャルダオラの生み出す風は一向に衰える気配がない。むしろその圧は研ぎ澄まされている。

 もし相手が竜ならばとっくに疲労し、捕食のために撤退している頃合いだ。しかし、この相手にはそれが期待できそうもない。傷は負わせているものの、それが堪えている素振りも一切見せない。

 そもそも竜とは体の出来、体力に天と地ほどの数があるのだろう。僕たちとは最早比べることすらおこがましい。

 

 そんなかの龍は、この氷山の頂上においても僕たちを翻弄し続けた。

 

 風の砲弾や旋風を放つにしては、やけに()()が長い。

 狙われていたテハは恐らく僕とほぼ同時にそのことに気付いた。クシャルダオラに向けて手を突き出し、同時に後方に地を蹴って大きくその場から離れる。

 

 直後に放たれた──いや、その場に出現したと言うべきだろう──のは、まるで嵐そのものを無理やり圧縮したかのような風の塊、正真正銘の竜巻だった。

 

 その竜巻に向けて、周りの空気が轟々と引き込まれていくのが分かる。その竜巻はその場から動かず、しかし衰える気配を全く見せない。その中心は氷の地面だというのに、砕かれ、罅割れ、今まさに掘削されているかの如く削り取られている。

 もしあそこに引き込まれることがあれば、運が良くても空高く打ち上げられ、悪ければそのまま閉じ込められてななす術もなく死ぬだろう。

 

「テハ……!」

 

 その竜巻が引き起こす風に、テハは囚われまいと必死になっていた。ユクモノ装備の布と髪をばたばたとはためかせて、地面に番の炎剣を突き刺して耐えている。彼女の直感でいつもよりも大きく距離を取っていたのが幸いした。いつもの避け方ではまず引きずり込まれていた。

 

 しかし、恐ろしいことにかの龍は、その竜巻を維持したまま次の行動に移る。

 少し間をおいて動けないテハめがけて放たれた風の砲弾は、竜巻にその軌道を竜巻に僅かにずらされ、テハのすぐ近くで炸裂した。

 運よく直撃は避けられたものの、テハは水平に大きく吹っ飛ばされ、赤い血を散らしながら地面をごろごろと転がる。

 

 かの所に追撃を仕掛けようとしたかの龍の、その首元に竜の一矢が打ち込まれる。ブレスを放った直後だったからか、風の鎧は薄れ、その一撃は確かに傷を負わせる。

 

「こっちを向け、風翔けの……!」

 

 深い蒼の瞳がぎらりと僕を睨んだ。ぞっとするような寒気に襲われながらも、震える脚を叱咤して立ち向かう。

 その場で足に力を貯める動作、飛び掛かりが来る。左手方向は竜巻に近づいていってしまうので必然的に右手側に避けるしかない。そこまで瞬時に考えて、僕はその身を投げ出した。

 が、やつはそれすら読んでいたようだ。かの龍が飛び掛かろうとする瞬間は見ていた。しかし次に間近で響くだろう地響きが来ない。はっとして空を見上げれば、飛び掛かりをその翼で強制的に中断し、空に舞い上がったクシャルダオラが今まさに首をもたげている。

 

 放たれたのは、これまた風の砲弾でも旋風でもない。地面に吹き付けるようにして広範囲に放たれたブレス。

 やつが初めて繰り出した僕めがけて移動しながら放たれ続けるそのブレスへの対処が、ほんの少し遅れる。

 

 左足がその吐息にかすり、そして防具ごと瞬時に凍り付いた。

 

「……っぐああぁぁあ!?」

 

 何の比喩もなく氷漬けになった左足から伝わる、命を脅かす冷気に悲鳴を上げる。なりふり構わず右足で大きく地を蹴り、そのブレスから逃げ惑う。

 左足がまるで一本の棒になったしまったかの如く動かない。ただただ痛みのみを頭に伝えてくる。そのことに気が動転しそうになるも、口で頬の内側を嚙み切って無理やり正気を維持する。

 

 ポーチから消散剤を取り出して、取りこぼしそうになりながらも左足の防具の隙間からそれを流し込んだ。この手のブレスは受けたことがある。凶悪さは桁違いだが、性質はベリオロスのそれに似ている。ならば対処はこれで間違ってはいないはずだ。

 ただ、少なくともしばらく足の機動力は絶望的に落ちたとみるべきだ。死ぬ確率が格段に上がったが、もとよりそんなものは零の側にかなり近い。そう考えればあまり変わり映えはしない。

 いや、むしろこれで立ち回りに手間取るふりをして誘導がしやすくなった。だからこれは勝利への対価だ。回復の見込みがあるなら安いものだ。

 

 遠くでテハも立ち上がった。彼女もかの龍の気迫に当てられながらも、僕の意志に沿って立ってくれている。それならば、その限りは。血を吐いても立ち上がらないわけにはいかないのだ。

 

 そして、僕とテハは空を飛ぶ風翔けの龍にまた向き直る。そして、その機を伺い続ける。

 

 

 

 

 

 ────生きて、帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、その機は訪れた。

 回復薬とホットドリンクの手持ちは尽きた。喀血は絶え間なく、傷口は癒える間もなく凍り付いた。手足の先は凍傷でまともに動かず、意識は時折朦朧とする。矢ももうほとんど尽きてしまった。

 テハは砂鉄の剣の生成が難しくなりつつあるようだった。磁力を用いた強引な離脱や接近もできなくなってしまっている。また、彼女はその特殊な戦闘スタイル故にエネルギーの消費が激しい。体力的な限界が近いようだった。

 

 対して、クシャルダオラは健在。傷を負っていてもそれを意に介さず、堂々と空に居座り続けている。

 

 圧倒的な体力の差、絶望的な地の利、無尽蔵に思える超常の力。

 

 まるで、どうして僕たちがまだ生きてここに立てているかが不思議に思えるほどで。

 

 それこそが、僕たちの目指したもの。

 

「テハ! 向こうへ! ……ッ投擲は、頼んだッ!」

 

 あちこちが抉り取られ、崩れ、裂け、罅割れて、もはや見る影もない氷山の頂上。

 そしてクシャルダオラは、そこに留まる僕たちに終止符を打とうとしているかのように。()()()()()()()()()()()()僕たちに向き合っている。

 

 僕の指示に従い、テハはその場から離れて起伏まで駆ける。

 そして僕は、もう痛みを訴える以外の機能を失った手でどうにか弓に矢を番え、かの龍に向けて矢を放った。

 

 当然、それは届かない。風の鎧に容易に弾かれ、力なく落下していく。

 しかしクシャルダオラは、その矢を僕がまだ抵抗を続けようとしていると受け取ったようで、僕に向けて次々と風の砲弾を放ち始めた。

 

 遠くから放たれるそれは、その威力をほとんど減衰させずに僕のすぐ傍で炸裂する。そのたびに永久凍土の地面が暗く重い地響きを鳴らす。僕はそれに煽られて転倒しそうになりつつも、なんとかそれを避け続けていく。

 少しでも着弾のタイミングが広がれば即座にかの龍に向けてほとんど狙いもつけずに矢を放つ。それを繰り返した。

 

 

 

 しかし、そんな応酬もそう長くは続かなかった。

 もとよりここは氷山の頂。端から端まで百メートル程度しかない。つまるところ、僕は氷壁に阻まれて後がなくなった。

 

「ぜぇっ、はぁっ、ぜぇっ、はぁっ」

 

 ここから前方か左右に逃げようとしても、いずれは捉えられる。体力的にもそれはすぐに訪れる。後がなくなったというのは、物理的にも、そして今の状況的にも言えることだった。

 かの龍もそれを察しているのだろう。いつもよりも大きく、長く首をもたげる。やつの口元に集う風の塊が巨大化していくのが目に見えるかのようだ。

 

 

 

 止めの一撃。

 

 

 

 口から吐き出されるかのように暴れる心臓と、空気を求めて軋む脳、血を失い過ぎて重く痺れる腕と足。それらを受け入れて、力を振り絞って、弓に矢を番えて、構える。

 そして、枯れた声で叫ぶ。

 

 

 

「てはッ!!」

 

 

 

 そして、テハにその言葉は届く。

 起伏の陰から、やつに悟られないように。拳大の物体の信管を抜いた彼女は、それを天高くに投擲した。

 

 

 

 クシャルダオラが特大の風の砲弾を僕に向けて放つと同時に、東の空の白み始めた氷山の頂を、眩い閃光が包み込んだ。

 

 

 

 そう。かの龍との戦いを始めてからそれは一度も使っていない。

 狩人の生命線ともいえる狩猟道具、閃光玉。

 それは全て、このときのために。

 

 

 

 遠くから確実にそのブレスを当てるために僕に標準を合わせていたかの龍は、本来は備えているはずの広い視野と注意力を欠いていて。彼女が投げたそれに気付くことなく。

 その閃光を正面から、山頂から離れた空中で、もろに受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 何となく覚えのある酷い眩暈と寒気に襲われながらも、少女は自らが天に向かって投げた閃光玉が確りとその役目を果たしたのを確認し、小さく息を吐いた。

 

 ──あとは、空中でバランスを崩して山腹に落ちていくクシャルダオラを見届けて、ブレスを回避した彼と共に一気にベースキャンプまで撤退する。

 

 ──その後のことは、ベースキャンプで。

 

 彼女はこちらに向けて駆け出しているだろう彼の方を見て。

 

 

 

 

 

 その場から動かず、弓を構えている、彼に。

 

 

 

「──アトラッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 彼女が初めて口にしただろう『叫び』が、合図となった。

 構える先は遥かな天高く。狙いはもちろん風翔けの龍。迫り来る死を感じながら、僕はこれまでで最長の遠的に挑む。

 射貫くようにかの龍を睨みつけて。血が滲むほどに歯を食いしばって。限界まで結弦を引き絞って。

 

「────!!」

 

 それを、放つ。

 

 

 

 矢の射出音と弓弦の音が辺りに鳴り響き、僕はその反動で氷壁に身体を打ち付け、そして、その直後に。

 

 目の前に特大の風の砲弾が着弾した。

 

 直撃でないのにこの威力か。と僕は吹き飛ばされながら思う。もし僕が射撃の反動で数歩後ろに下がっていなかったら、その閃光によりかの龍の狙いが僅かに前方側にずれていなければ、問答無用に即死していただろう。

 風に身体が切り裂かれているというのに、鈍い痛みしか襲ってこない。本格的に身体が凍り付こうとしているようだ。受け身も取れずに地に打ち付けられても、その衝撃は意識を何度か落とす程度だった。

 

 そして、そんなことはどうでもいいのだ。いや、よくないのかもしれないが、今は、それよりも。

 

 

 

 僕が放った、曲射が。

 

 

 

「届けえええぇぇっ!!!!」

 

 

 

 

 

 何となく予感はしていた。

 そんなことはあり得るはずがないと理性が言っても、その不安は拭えなかった。

 

 相手は常識が通用しないとされる古の龍。その特異個体。嵐を引きつれず、その力を全て自らの内に閉じ込めた極めて特異な風翔けの龍。

 

 そんな『規格外』の具現化のような存在が、果たして目をくらませた程度で空中から落下するだろうかと。

 そして結局、その予感は当たった。

 

 

 

 かの白銀の龍は確かに視覚を奪われていた。眩い閃光をもろに受けて目を焼かれていた。

 

 しかし、落ちない。高度すら下げない。

 空中でその翼をはためかせながら、そして自らの足元に集中して風を展開することで、その場に留まり続けている。

 

 

 

 それは僕とテハのこれまでの努力を全てひっくり返す、かの龍の特異性。

 もしこのままかの龍が空中で視覚を取り戻したならば、僕たちが逃げても追いつかれるまでの時間は極めて短い。撤退は失敗し、僕たちは一方的に殺される。

 

 

 

 それは少なくとも僕が考える中で最悪の結末(負け)だった。

 

 

 

 

 

 その結末を、覆すためには──

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言えば、その天高く放った矢は、その場所に届かなかった。

 

 間違いなく、僕が放った中では最も遠くまで放たれた曲射だった。しかし、あと一手、届かなかった。

 

 

 

 しかし、僕の叫びは、かの龍にまで届いていたようで。

 

 恐らくやつにとっては、僕の叫びが聞こえた方に進むことでまた氷山の頂上へと戻れるからと。

 

 翼をはためかせ、大きく前へと進み。

 

 

 

 

 

 その背中に、僕の放った矢が突き刺さった。

 

 

 

 

 

 それとほぼ同時に、()()()()()()()()()。爆発音が響き渡る。

 

 

 

 ひとつは、クシャルダオラの背中。

 曲射によって放たれた矢に積まれていたのは、矢筒の底に仕込んでいた大量の爆薬と龍殺しの実の粉末だ。

 龍殺しの実はその名の通り、古龍種に対して効果が高いことが伝えられている。それをその効果が失われない程度に爆薬と混合し、曲射用に仕立て上げたのだ。

 

 あとは、その言い伝えが真実であることを信じるのみだったのだが……その願いは通じたらしい。

 爆発と同時に、普段は見ることのできない黒い稲妻のような光が炎に混じっているのが見えた。まるで、クシャルダオラに対して拒絶反応を起こしているかのようだ。

 

 それを受けてクシャルダオラが今までに見たことのない反応を示した。一瞬だけその身体を硬直させ、そしてまるでもだえ苦しむかのように身体を痙攣させながら地に落ちていく。僅かに垣間見えた背中は黒く焦げ付き、煙を立ち昇らせていた。

 間違いなく大きなダメージを負ったとみていいだろう。そして、閃光玉と併用してかの龍を地に落とすという最大の目的も達成された。

 

 

 

 

 

 もう一つの爆発音は、この氷山の頂上から。

 その音は、地に倒れ伏す僕へ向かって駆けていたテハをその場で押し留める。

 

 

 

 戸惑うように辺りを見回し、そして続けてはっとした表情をする。

 僕はそれを見て、小さく笑った。

 

 ──よかった。ここまで気付かれずにすんだのは奇跡だな。

 

 

 

 今の爆発は、僕が引き起こしたものだ。

 今まで結局使わなかった全ての強撃瓶の中身を、かの龍のブレスによってつくられた罅のひとつに仕込み、それを時限式の小さな爆弾で起爆させた。それだけだ。

 

 ただ、それの及ぼす影響は計り知れない。

 

 その爆発に続けて、永久凍土の地面の底から、そして天を突いて聳える氷壁から、重く鈍い音が響いた。そして、辺り一帯に地響きが鳴り始める。

 

「……お前の攻撃は天災そのもの。人間はおろか、この氷の大地も、そう耐えられるものじゃない。……ガハッゴホッ……まあ、いつものお前なら、空を飛んで、逃げられたんだろうけどな」

 

 氷の地面にできていた罅が繋がり、広がり、上下にずれていく。氷壁がだんだんと傾いていく。地響きは際限なく大きくなっていく。

 

 

 

 氷山が、崩れる。

 

 

 

 そして、人の足では渡り切れないだろう大きな裂け目が、僕とテハを分けたとき。

 崩れ落ちる側にいたのは──

 

 

 

 

 

 クシャルダオラと、僕だった。

 

 

 

「よし……ここまで、作戦通りと。……コホ……なんかうまくいきすぎて、不安になってくるな?」

 

 

 

 この永久凍土の山の頂上は、僕とクシャルダオラを道連れに、遥か下方の冷水河まで崩れ落ちる。

 流石のやつも、あの状態ではこれを避けようもあるまい。

 

 雪崩ではない、氷山の崩壊だ。山の中腹に落ちているクシャルダオラはその膨大な質量の氷の塊をその身で受けることになる。

 そして、そのまま極寒の河に落下するのだ。流れこそ早くないが、あの川の冷たさはあらゆる生物の命の熱を一瞬にして奪い去るだろう。かの古龍とて、それは例外ではない。

 

 あの風翔けの龍は、氷に潰され、極低温の水に飲み込まれ、絶命する。

 

 

 

 その作戦を完遂するには、僕を囮として、最後の最後までかの龍を誘導するしかなかった。

 テハがこのときまで戦える状態であることが必要不可欠だった。

 

 だから彼女があのとき風の砲弾を前に立ち尽くしたとき、僕は彼女を突き飛ばしてそこに立ったのだ。

 

 

 

「──ってのは、半分くらい違うかもな。ははっ」

 

 

 

 そして、氷の地面の奥底から、何かが決壊するかのような、ひときわ大きな破砕音が響き渡る。

 

 崩壊が始まった。

 

 

 

「ゴホッ……ごほぉっ……あー、しんど……ん、それじゃあ足掻きますか」

 

 

 

 傾いていく地面に這い蹲って血を吐いていた僕は、ポーチから唯一残していた回復のため、というよりもドーピングの薬──秘薬を取り出し、それを咀嚼して膝立ちした。

 そして、空になったポーチに突っ込んでいた木片を手ぬぐいで包み、口に挟んで固定する。

 

 ここで死ぬつもりはない。死ぬことが敗北だと言った本人が死んでどうすると言った話だ。

 僕の予想では、頂上付近にいる僕は落ちながらひたすらに傾斜の緩やかな方へ移動していくことで冷水河に落ちずに済む可能性がある。それを目指す。

 

 死ぬ確率の方が圧倒的に高いのは百も承知だ。だから足掻きと言っている。

 ただ、せっかくここまで生き残ってみせたのだ。圧倒的だったクシャルダオラに致命の反撃を加えることができたのだ。ならば、その調子で生き残れるような気がしてくるじゃないか。

 

「アトラぁぁーーッ!!」

 

 傾いていく地面から落ちないように身構えていると、上の方からかすかにそんな声が聞こえた。

 その声を聞いてはっとする。そうだ。この作戦には最後まで彼女の助けが必要だった。それを伝えなくては。

 

 急いでベルトからある物を取り出し、彼女に向けて掲げる。

 

 それは、あの北の洞窟で彼女につくってもらった、セッチャクロアリの体液で押し固めた砂鉄の剣の片割れ。

 二本作って、投げたのは一本だけだ。砂鉄の在処の探知と収集においては誰よりも長ける彼女ならば、この剣を手放さない限りきっと僕を見つけ出せる。

 

 僕が掲げた剣を見た彼女は、たぶん全てを察してくれた、と思う。表情まで伺い知ることはできなかった。

 

 

 

 足元の氷が崩れ始めた、そして頭上からはゆっくりと、しかし確実に、砕かれつつある氷壁が迫ってきている。

 

 まずはあれに乗り移るところからか。失敗したら死ぬな。怪我人に対してハードな仕打ちだ。

 

 

 

 

 

 ああ、でも、テハもあんな声を出すことができたんだな。短い間に、二度もそれを聞いてしまった。

 

 少し意外だった。動揺はするだろうと思っていたが、冷静さは失われないだろうと思っていた。

 

 彼女に嘘をついたことは何度かあった。ほとんどが冗談の類だが。今回のは、流石にやりすぎだっただろうか。

 

 

 

 ああ。もし生きて彼女に助け出されたならば、しっかり謝っておこう──────

 

 

 

 

 

 

 

 暗転。

 

 

 

 


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