王虎 作:センチュリオン アクションX
それでは、第1話始まります。
第1話
戦車道。それは人の一つの嗜みである。
戦車に乗り、走り、撃ち、敵を撃破する姿は子供の心を刺激するには充分だろう。
だが男は言った。
戦車は殺戮兵器だ。この現実が変わることはない。
特殊カーボンに守られているとはいえ、間違えれば大怪我だ。
女は言った。
自分自身の指揮が、味方の戦車を潰すことになるかもしれない。
ならばその時味方の戦車の乗組員の命を、君は背負えるか?と。
これは、自分の在り方を求める一人の男の物語……
今もはっきりと覚えている。
豪快なエンジン音、巨大な主砲、圧倒的な大きさ。
なすすべもなく回りの戦車が破壊されていく。
このままじゃ不味い。早く何とかするしかない。
その時、敵戦車の砲身が味方フラッグ車に向いていた。
とっさに操縦士に指示を出し射線に割って入った時、世界が回った。
「………ん?」
ゆっくりと瞼をあける。嫌な夢を見た。
ちらりと時計を見ると針は午前7時30分を指していた。
「……そういや俺、戦車道止めたんだった」
そんな呟きは誰にも聞こえない。
茨城県県立大洗学園。
その学園は全長約7600mの翔鶴型航空母艦(艦橋は赤城型航空母艦)によく似た飛行甲板の上に出来た街の中にある。実際は茨城県大洗市の飛び地となっているらしい。
高校二年生の時にこの学園に転入し、早一年立っていた。
そういえば名前を言ってなかった。
俺は出雲 悠希。高校三年生である。
ついでに低血圧。頬に大きな傷痕がある。
そんな俺は眠気眼のまま現在登校中である。
なぜ転入してきたのかは、後々語るとしよう。
それよりもここは平和だ。空気もいいし、街の人も優しい。
それでも何か、何かが違う。そういう毎日をここで過ごしていた。
「よう悠希。元気ねーな」
そう言いながら肩を組んでくるこいつは早瀬 総士。後輩からはいい兄貴肌の先輩として結構人気者。だが中身はかなりの戦車マニアである。
そんな総士をジロッと睨みながら返す。
「うるさい、低血圧なんだよ。毎回言わせるな」
「そうカッカするなって。俺とお前の仲じゃないか」
「蜘蛛の糸のような細さの仲なのにか?」
「酷ぇ!今までお前に言われた中で一番酷ぇ!」
うるさい。よくこんな朝からそんな大声が出せるな。不思議で仕方がない。
「まあまあ、それよりもしってるか?」
「知らん」
「俺何も言ってないんですけど!?」
「なら早く言え。眠いから教室で寝たいんだ」
「お前本当朝は機嫌悪いよな。まあいいか、実は……一つ下の学年に転校生が来るらしいぜ?しかも女子!」
ヒソヒソと話す総士。が
「……で?」
「おま、何とも思わないのか!?女子だぞ女子!」
「どうでもいい。一つ下なら尚更だ」
「はー、好きな人でもいるのか?」
「いる」
「………まじで??」
俺の発言に驚愕の表情を浮かべる総士。失礼な。
「だ、誰だ!?誰にも言わねえから教えてくれよ!」
「少なくとも、この学園艦には居ない」
「なーんだつまんね」
こいつ、さてはからかおうとしていたな?
まあいい
「それで、何で転校生が女子ってわかったんだ?」
「いやそれがよ、結構目撃されててな、もしかして転校生じゃないか?って疑問が結構あったんだけどその子の顔見てこの学園の生徒じゃないって解った」
「顔?知り合いか?」
「いや知り合いじゃねぇ。けど相手の名前は知ってる」
「何言ってるんだお前?まさかストー…」
「違ぇよ!その子が結構有名ってだけだよ!」
ふむ、友人が犯罪を犯しているのかと思ったが違ったようだ。
「で?誰なんだ一体」
「俺の記憶が正しければ……」
次の友人の言葉に今度は俺が驚愕した。
「西住みほだったな」
「………」
「ん?どうかしたか?」
「……いや、何でもない」
「そか。ならいいけど」
そんな会話をしていたら高校に着いた。
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睡魔との格闘戦で見事K・Oアッパーカットが決まり無事午前の授業を終え昼休み。
「ヤッホー!悠希くん生きてる?」
「人を死人扱いするな真姫」
「すみません失礼します悠希さん」
「いいよ美紅」
前者は篠原 真姫。後者は如月 美紅。二人ともクラスメイトである。
「んじゃ食おうぜ」
ここに来てからよくこの三人と昼飯を共にする。
なぜ男子二人と?と思い聞いてみたところ真姫によれば美紅は総士が気になっていることのこと。
なるほどねと納得した。
だが気になることがある。
『西住 みほ』
恐らく俺の知っているみほに間違いないだろう。
西住流師範西住しほの次女。
なぜ彼女がこの高校に転校してきたのかが解らない。
「ん??どーしたの悠希くん」
「ん?少し考え事をな…」
そう言って食事を続ける。
彼女は今年黒森峰に入学したと聞いた。
十中八九戦車道の為だろうが、そんな彼女が戦車道の無いこの大洗に来る理由がない。
……いや、あるにはあるのだが。
はっきり言って彼女は西住流に向いてない。
これはある日俺に対してしほさんがいった言葉である。
…何かあったな?
推測でしかないが恐らく戦車道で何かあったのだろう。
あまり自分の意見や考えを出さず周りに合わせる、もしくは周りに迷惑をかけないため自分を犠牲にするような子だ。
「おうそういや悠希」
「ん?なんだ総士」
「今日はやるのか?アレ」
「………そうだな。久しぶりにやるか」
「え!?やるの!?久しぶりに腕がなるー!!」
「真姫さん食堂では静かにしてください」
どうやら久しぶりのアレに周りもやる気満々のようだ。
……まあ、楽しいならいいか。
そう思う自分がいる。
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「んじゃ、私と美紅はあとで行くから先行っててねー!」
「おう!」
真姫の声に総士が答える。
真姫の横では美紅がペコリとお辞儀していた。
相変わらず律儀な子だなと思いつつ俺と総士は目的地に向かって歩き出す。
「そういやあれ、動くのか?」
「問題ない。毎日整備してるしエンジンも掛けて様子も見てる」
「学校終わった後によくやるなお前……」
「部活と同じだ」
そう会話を続けながら学園にある森に入って行く。
実はこの森、戦車道用の練習施設だったりする。
数十年前にこの大洗学園にも戦車道がありその施設が今でも残っている。
そしてその森の深くにそいつは鎮座している。
Ⅵ号戦車 『ティーガーll(zwei)』
正式名称 「Panzerkampfwagen VI Tiger Ausführung B "Tiger II"」
ナチスドイツの重戦車『ティーガーl』の発展型。
通称「キングティーガー」。
ティーガーとはドイツ語の虎を意味しティーガーllは非公式に「ケーニッヒス・ティーガー(Königstiger)」
と呼ばれた。
ちなみにケーニッヒス・ティーガーはドイツ語のベンガル虎の意味。
これはアメリカ軍が「キング・タイガー」と呼んでいたのをドイツに逆輸入され翻訳された事が由来だという。
これはそのティーガーを少しいじった物なのだが、細かいことはまた後に語るとしよう。
「というか、よくこんなところ貸してくれたよな」
「まあ部活のトレーニングするには広すぎるし、かといって何にも使わない訳にはいかないから許可がおりたんだろう」
実際に戦車道の練習に使われていた場所だし、相当広い。
……まぁ、あそこと比べれば狭いか?
「そう言えば」
「む?」
「お前この戦車、どこに在ったんだ?」
顎に手を当てながら言う総士。
「………まあ、色々あったんだ。色々な」
「ふーん」
少し視線を落としながら答えたら総士はそれ以上聞いてこなかった。
助かる。
「で?今日はどうするよ」
「そうだな…少し走らせてみるか」
「射撃は?」
「それは止めておこう。今日は部活しているところが多いからな」
「了解」
そしてこのティーガーllは、
戦地に出向く事となる。