ちなみにこの作品が終わったら、続編として戦記ものを書く予定です。
照和十七年、四月中旬。
米国のB30が日本本土初空襲を敢行した。前世でも空襲があったので大本営は勿論それに備えていた。
前世では設計がなされていたが、完成にまで至らなかった震電を生まれ変わらせた蒼莱を配備ていたので、迎撃に成功。見事帝都を守りきった。しかし、ここに来る途中、工業地帯も空襲を受けたので被害なしとはいえなかった。
この後、開かれた閣議で蒼莱を量産して、輸送路及び街等を守備することが決定した。
その閣議の結果を祖父から聞いた俺は蒼莱の増産計画を言い渡されて、この機体の増産を命じられた。
ただでさえ、大和武尊計画に必要な艦艇と航空機製造で忙しい最中言い渡されたので苦い顔しながら了承した。
「大高め。大和武尊計画だけでも忙しいのに蒼莱も増産も要求してくるとは……。無茶を言いやがって……。国内開発計画の予算も予備費に回っているのにどこから金を捻出する気だ」
我が神凪財閥ビルの社長室で増産計画の書類を見ていたキョウは溜息をついた。
大和武尊計画。旗艦は大和級戦艦になる予定で、今建造する為に実験と研究が行われており、工場や研究所は大忙しだった。
本来大和級戦艦は建造される予定だったが、高野が紺碧艦隊を編制予算を捻り出す為に御破算となった艦艇だ。
戦艦は男のロマンだから作りたい気持ちはわかるが、維持費をどうやって捻出するのか不明なままだが、言われた以上はやるしかない。
「落ち着いてくださいキョウ様。そのことで予算は何とかすると高野総長も仰られていましたので、問題ありません。資材等も充分ありますから、わが神凪社は増産計画を引き受けても大丈夫です」
秘書が何とか俺を宥めにかかる。
神凪社は俺が経営する会社の名称で、創業者の名字や名前をそのまま社名にしたものだ。
「未払いには勿論させん。それよりも、ジェット機の試作品は完成したか?」
「はい。試運転はすでに行われていますから、完成は時間の問題だと」
「そうか。何とか2年以内には完成させたいところだ」
米本土直接攻撃には爆撃機護衛の為にジェット機が必須だ。この世界では技術進歩が前世よりも早いので、急がなければいけない。早めに奴らの工場等を破壊して、物量作戦を封じる必要があるからな。
工場等が攻撃されれば、さすがの米国も怯むだろうし国民も自分達の被害を恐れて終戦に向けて、デモ活動に動き出すだろうと考えたからだ。最も失敗すれば逆効果になる恐れもあるが。
「それよりも、また喧嘩をなされたのですか? 大高総理と喧嘩していたとの噂が流れていましたが」
「ああ。大高は相変わらずだったからな。日本の為の政策を理を持って諭しても聞く耳を持とうとしない」
蒼莱増産計画を言い渡されたあと、今後について話し合いをしたのだがまた、お互いの持論を言うだけの平行線になってしまい、何も進展しなかった。
「もう少し、仲良くなさるようにした方がいいのでは? その方が奴らが持っている技術を頂けますし」
「それは心配ない。すでに技術者を抱き込んであるから、奴らのことは筒抜けだ」
「! ……すでに手を打っておいででしたか」
紺碧会や青風会に所属している連中の動向は常に把握している。そいつらがこちらの情報を流す可能性もあるからだ。
キョウは青風会や紺碧会の人間が尋ねてきたときは大抵、会社のビルで話をして研究所や工場には立ち入らせないようにしているのだ。
「すでに3度程説得してみたがだめだった。戦争は慈善活動をするために行うわけではない。国益や国を守る為なのに、それを理解しているのか怪しいな」
有能なのか無能なのかわからないから、余計に手が負えない。
大高と高野のあの思考をどうにかできないか考えて要るがいい案が見つからず、説得するしかないと判断したのだが、成果は皆無だった。
「あの国を大人しくさせるまでは、説得工作で行くしかない。それでだめだったら最終手段しかないな……」
時系列は一気に進むが後世日本は現在照和19年になった。
昨年はギガフロートとシャトルが完成したので、宇宙に行き月面基地を建設した。月の領土化計画を開始した。そこから街を作り、コロニーを建設する計画も始まった。
大高と高野に説得する日々が続いたが、結果は芳しくない。できたことと云えば、東方エルサレム共和国を建国を阻止したことだ。南樺太の割譲など正気の沙汰ではない。日露戦争の犠牲を無駄にするような政策が廃止になったことはうれしい限りだ。
戦況に関しては原作通りに優勢に進んでいる。
もうすぐ米本土直接攻撃及びロスアラモス原爆研究所破壊作戦が開始されるから、いざとなれば上陸作戦を成功させやすいからな。士気を高く維持できる。
それと、個人的に嬉しい出来事があった。
「遂に完成したか!」
自分の声が歓喜に震えているのがわかる。
「はい。指示通りにコロニーが完成しました。コロニーではすでに食糧生産を開始しています」
「ギガフロートとわが社専用のシャトルの打ち上げに成功したら、一気にうまくいったな……」
早くて二年掛ると思われていた計画が一年で完成した。紺碧艦隊シリーズ特有の技術チート万歳だ。
やっぱりこの世界の日本の科学者や技術者はすごいな。
昨年宇宙に行ったときの感動は今でも思い出す。宇宙船で大はしゃぎしてしまった。
月面を歩いたときはさらに感動も一押しだったな。そこに基地を錬金術を使い完成させたときはしばらく基地を見ていたぐらいだ。
「宇宙で作業するための工作機械や工業機械もすでに作ってきたから、コロニー建設作業は大半を月面基地に拠点を移せ」
「わかりました。すぐに取り掛かります。それと、作業用ロボットを元に作った試作兵器が出来たとの報告があったので、是非来てほしいと研究チームから報告がありましたが如何いたしますか?」
「そうか。予定が開き次第向かうと言っておいてくれ」
これで計画の第一段階はほぼ達成したので、あとは政治を乗っ取るだけだ。
最近説得も手詰まりになってきたのも事実だから、そろそろ、実行に移さないといけない。
「それと幹部クラスを夜中に召集してくれ。計画を一歩前進させると」
「! 了解しました。全員に通達しておきます」
「誰かに感づかれないように注意を払うようにしておけ」
「はっ!」
秘書が返事をして退室したあと、キョウは計画書を見て微笑んだ。