霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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ぎりぎりセーフ、ぎりぎりセーフ。



第13話

「知らない天井だ…………」

 

目を覚ますとそこは知らない場所だった。我が家と同じく木目の天井だが、何年も見続けていれば違うことくらいは分かるからな。

 

寝かされていた布団をめくり、周囲に誰かいないか見てみるが、近くには誰もいないようだ。そよ風に揺れる木々のさざめきが薄荷のように爽やかな気持ちにさせるだけ。愉快な騒音を傾聴することに比べれば比較するのも烏滸がましいほどマシではあるが、だからといって役に立つかどうかはまた別問題だ。

 

部屋から廊下に出て探索する。どうやら一般的な日本家屋のようだ。どこかで見たことがあるが思い出せない。そもそもなんで寝ていたのか、寝る前は何をしていたのかすら思い出せない始末。妖怪……百鬼夜行……うっ頭が………なんてことはなく、実際は忘れてはいない。大体の事は憶えている。人間サイズの妖怪と出会ったことも、その後追いかけられたことも、乳酸で足がパンパンになって走ったことも。

ただ気を失う直前の事は本当に憶えてない。何か不思議なことが起こった様な、でも当たり前のことが起こった様なそんな感じの事があった様な気がするが…………気のせいか?

どこからか苦悶する声が聞こえる。ここからはそこまで遠くはなさそうだ。他人の家で無礼だとは思うが、何度か襖を開けて、声がする方向へ最短距離で目指す。縁側まで到着し、この敷地の中庭で相当する場所で行われているモノを見た瞬間、俺は裸足であることも忘れ走り出した。

 

そこで見た光景とは、藍お母さんが石抱きと鉄板焼きのアンハッピーなセットの拷問を涙ながらに受けている光景だった。

 

「ちょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

あまりの衝撃に「ちょと待った」の一言すらまともに発することができないまま、地面に刺さっている柱を飛び蹴りで倒した。着地は上手くできずに転んで擦り傷ができたり、藍お母さんも熱い鉄板の上で倒れ、横倒しになったせいで、鉄板で焼ける面積は広がったが、一時的なものだ、我慢してもらおう。いわゆるコラテラルダメージ、という奴だ、諦めてくれ。

 

「熱ッ………」

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

倒れた柱から結ばれていた縄を解く。多少手間取ったが何とか解けたが、どうやら縄は体を縛るだけの物と柱に括り付ける物の二つのようで、藍お母さんはいまだ縛られたままの状態だった。

 

「ちょっと何やってるの、白鹿!?危ないじゃない!」

「そうよ?折角怪我せず、逃げ切ったのに…………こんなところで怪我しちゃうなんて」

「何やってるの?はこっちのセリフだよ!?なんで藍お母さんに拷問してるの!?しかも一つだけならともかく二つもいっぺんに!!」

「これ、貴方に危険なことをさせた罰なのだけど?」

「…………」

「…………」

「…………」

「白鹿、助けてくれ……」

 

沈黙の中に藍お母さんの救援を求める声が浸透する。とてもか細い声で今にも泣きそうな藍お母さんは生まれて初めて見た。

 

「藍お母さん……………」

「白鹿ぅ…………」

 

手と手をとりあい、見つめる俺と藍お母さん。ああ!なんと素晴らしきかな、親子愛!!そこには理不尽な命令を下す王様であっても、決して断ち切ることのできない親子の絆が確かにあったのだ!!

 

なんてね。

 

俺は藍お母さんの手を力の限り握りしめ微笑みかけ、後ろにいる二人に言う。

 

「二人ともごめんなさい。いらない手間をかけちゃって。思う存分、拷問にかけてください」

「「任せなさい!」」

 

言うが早いか、二人はなんらかの術で藍お母さんの動きを封じ込め、柱を立て直し先程と同じ状態になった。

 

「白鹿ぅ!助けてくれるのではないのか!!?」

「誰もそんなことは言ってないよ。ああ、それと母さん」

「何かしら?」

「できれば藍お母さんの服は脱がせといて。傷んじゃうから」

「あら、小さいのに羞恥攻めがお好みなんて、業が深いわね貴方。閻魔様に説教されちゃうわよ?」

 

いやらしい言い方しないでください、貴方それでも聖職者ですか。あと、親にそんな気は起きないし、そもそも性欲なんて6歳児の俺にはまだ持ち合わせてないよ。

 

「そういえば霊夢は?」

「今は修練中、家の中にいると思うわよ」

「了解、夕方になったら解放してあげてね」

「分かってるわ。このあと夕飯作らせるつもりだし」

「じゃあ俺、霊夢のところ行ってくる」

「「いってらっしゃーい」」

 

足についた土を払い、家の中に入り、今度は霊夢を探す。後ろで助けを求める声が聞こえるが、完全に無視して襖を閉めようとして、やめる。二人に言うことがあったのを思い出した。

 

「母さん、霊夢の教育に悪いから、叫び声が聞こえないように藍お母さんに猿轡しといて」

「任しときなさい!!」

 

その場にいる藍お母さん以外でグッドラックして立ち去る。母さん、博麗の巫女さん、いい……笑顔です。今度は後ろでモゴモゴシテ聞こえているが先程よりかは不快指数は低いのでいいだろう。あとは霊夢に見せなければ問題ない。

 

さてと、霊夢の捜索に戻りますか。一刻も早く見つけて、外の惨劇を見せないようにしないと。別に霊夢が見ても「狐の肉っておいしいのかしらね」とか、何の感慨も見せず、無気力に言ってそうなイメージは現段階であるけど。「ほら、お母さんが拷問にかけられてるよ~。楽しいね~」とか言って嬉々として見せるのも人道に反してる気がするし、情緒教育に悪いだろう。むしろ嬉々として拷問風景を子どもに見せるとか、何それサイコパス?子どものうちから心理的におかしくさせるつもりは更々ないので、早いところ見つけたい。

 

一応襖を開くときは霊夢が修練中とのことなのでゆっくりと開く。この家は襖を開いておけば比較的広く視界が確保できるので、襖は開いたままにしておく。そのまま探していると、ある襖の間から霊夢の声が漏れているのに気づく。どうやらまだ修練中らしい。何をしているかはよくわからないが、邪魔をしないように、今まで以上に慎重に扉を開ける。

 

ヒュン

 

何かが風を切り、障子を破り、さらには俺の後ろの壁に突き刺さる。振り返ってみれば、そこには20センチくらいの鈍い光を放つ太い針。人体に刺さればひとたまりもないこれが通り抜けて行ったのだろう。

 

危ないと思いつつ壁に刺さったままだとそっちも危ないので抜き取る。どこからやって来たかは簡単に分かるので霊夢に注意しようと襖を開けると霊夢はあろうことか、先程の針を3本片手の指の間にはさみ、もう片方にお祓い棒を持って飛び掛かってきた。突然のことで対処に間に合わず、転んで霊夢が馬乗りの状態になって、さらに霊夢が針を刺そうとするので急いで止める。やめろ!俺を殺す気か!?

 

「ストップ!ストップ!俺だよ!お兄ちゃんだよ!」

「あれ?おにーちゃん?なにしてるの」

 

妹に殺されそうになってます!とは言えないのは甘いお兄ちゃんの悲しい性なのかな?

 

 

とりあえず生きているだけで儲けもの、そう考えよう。

 




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