とりあえず霊夢を落ち着かせ話を聞いたところ、
「何をやってたの?」
「おふだとはりに、れいりょくこめてたの!これでよーかいぶったおすんだって!」
笑顔で殺戮宣言してくれたんですけど、この子。この一日をどうやって過ごせばこんなになるの?もしかしてこれが教育という名の洗脳なのだろうか。人間として、妖怪を殲滅せんとするターミネーターにでもなったのだろうか。
「でもこのはりなら、ひとでも殺せるよね!」
何故「殺せる」のところだけ流暢に喋るようになったのだ、まるで意味が分からんぞ!
もう俺には打つ手はないのかもしれないとこの問題は放置して、霊夢にやることが終わったら賽銭箱の前か中庭まで来るように言っておく。何時まで霊夢の作業がかかるか分からないし、俺たちもそれまでどこにいるか分からないし。
日が暮れ始めたことで藍お母さんへの拷問は終了した。罰は与えたし、反省もしたようだしで、禍根はない。あとはきれいさっぱりと水に流す。幻想郷に生きるものとして、かどうかは置いといて、これは俺たち家族のある種決まり事めいた習慣。だからからかい混じりに言うことはあっても、本気でなじることはしない。
それはいいとして今日の夕食はせっかくとの事で、博麗神社でいただくことになったのだが、一つ問題が発生した。博麗の巫女さんが「じゃあ夕食捕ってくるわ」と言って、台所ではなく森林の方へ歩いて行ったのだ。突然の奇行に唖然として見送る俺たちは止めることができず、正気に戻ったころにはもう巫女の姿は見えず、どうしようもなかった。
とりあえずできることをやろうと俺と藍お母さん(ミディアム)は神社の台所へ、紫母さんはスキマで一度自宅に帰り、各種食材を取りに帰った。台所には米粒一つどころか調味料すら置いていない状態で逆に笑えてきた。なんで台所が埃まみれなのか、理解しがたい。
「ハハッ、あの人いっつも何食べてるの?」
「あいつが戻ってくれば答えは分かるさ。それよりも、これからどうするか考えなければ。下手すれば調理器具すらないやもしれん」
いやいやそんなことはないだろ、いくらなんでもそれはあり得ないって。もしそうだったら普段どんな食生活を送ってるのか不安だ。自宅に居ながらサバイバル生活でもしてるのだろうか?はあ……飽きれて言葉も出ない。
「……藍お母さん、紫母さんと一緒に調味料も家からとって来て。種類はお母さんの思うように持ってきてくれていいから」
藍お母さんは俺と同じくらい台所に立つ機会が多い。俺だけが台所に立つ場合にも、後ろに控えて見守ることが多く、困ったときには手を貸してくれる本当はそんな心優しいお母さんなのだ。疑似百鬼夜行事件は……あれだ、愛の鞭が暴走した結果だろう。今回はもう刑は執行済みなのでもう追求しないが今後また同じ過ちを起こすようなら、一週間三食空鍋を作って提供するだけだ。
「ふむ、久々だな。こうやって白鹿と料理をしようとするのは」
「そうだね。最近は当番制みたいになってたし。じゃあ道具よろしくね。こっちはこっちでやれそうな事探してみるから」
互いにやることを確認して、各々の役割をこなす。こういう時携帯電話があれば紫母さんに連絡して、藍お母さんに巫女捜索をしてもらえたんだけど。ないもの強請りはできないな。便利なものに頼っていたら、どこに死亡フラグがあるかわからないこの世界でこの先生き残れないかもしれないし。
藍お母さんはスキマで帰って、俺は台所にある道具を探すが何もなかった。塩コショウは言ったようにないし、お玉や菜箸、果ては包丁やまな板すらないこの台所。もはや台所として機能を停止して何年か想像もできない。男の一人暮らしでもこのようなことにはなるまい。辛うじて使えそうなものは、お鍋だけだった。
その後も諦めずに何か使えないものを探したが特に何もなかったぜ。ホラーゲームならここで懐中電灯やらナイフやらの初期装備が手に入りそうなものだが、何もなかったことから察するにどうやら俺のゲームは始まっていないらしい。
「お待たせ。何か使えそうなものあったかしら?家からお肉とお野菜を適当に持って来たけど良かったかしら」
「うん、いいんじゃないかな。でもまな板すらないからこのままだと全部丸焼きにするしかないけどね」
「大丈夫だ。まな板も包丁も持ってきている。問題ない」
渡された物を受け取る。生前観た男性アイドルユニットが無人島で生活物品を作ったり農業する番組が脳内をDASHしていったが、余計な思考として振り払う。
「いやーいいもの捕れたわー!」
行方不明となり捜索をあきらめた巫女が生き物を殺生して服を赤く染めて帰ってきた。聖職者としてあるまじき行為二つ目だ。本当にこんな人が巫女やってていいのか?あと、巫女が背負ってたのはイノシシだ、しかもかなり立派だ。
「 !」
「やだ、この子言葉を発さずに叫んだわ。器用になったわね」
「紫様、感動してないで、白鹿の意識を戻しましょう」
「…………なにやってるの?」
「!霊夢は見ちゃいけません!」
霊夢が修練を終わらせて中庭まで出てきたので、もう遅いと思いつつ急いで霊夢の両目を塞ぐ。
「この子、霊夢に対して過保護になってきてないかしら?」
「予測ですが、私達が白鹿に対して過酷な環境で育てたことが原因なのでは?」
「納得した自分に腹が立つわ」
「…………貴女達は、あの子をどういう風に育てたのかしら?自覚してる段階である程度察することはできるけど」
「聞かないでくれ。反省はしてるんだ」
「してるだけで改善はしてないんでしょ?」
「してるわよ!?それよりも貴女が背負ってるそれを早く隠しなさい!子供たちが動けないから!というか貸して!スキマにしまうから!」
一瞬でスキマにしまった紫お母さんは、博麗の巫女を連れてどこかに移動した。多分イノシシを食肉加工でもしてるのだろう。グロ耐性がないとああいうのは吐くほどキツイらしいからな。その間に俺たちは野菜を切っておこう。
今晩は牡丹肉がメインのバーベキューだ。
オチが弱いなあ……。でも飯の描写で主人公の服でも脱がすか?誰も得しねえな!
しかもこの時間に飯テロとか、自爆でしかないし……。