霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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お昼に投稿です。お待たせしました。
今回は前回よりかなり時間が飛んでいます。


第16話

博麗神社に引っ越して、寺子屋に通うようになって、剣の修練を続けて、十年以上の年月が経過し、様々なことが変化した。

まず第一に、霊夢が正式に博麗の巫女を引き継ぎ、それに伴って俺も本格的に博麗の巫女の補佐役として働きだした。既に先代となっている巫女のお姉さんは引退して、今はどことも知らない場所でご隠居生活をしているらしい。時たま手紙を八雲経由で受け取るので、元気にやっているのだろう。

第二に寺子屋関連について。寺子屋はつぶれた。嘘だ、まだ現役で慧音先生はしっかりと教師をしている。寺子屋はもう何年も前に卒業した身ではあるが、個人的に慧音先生とは付き合いがある。長い間、人里を見てきた者として、慧音先生にしか分からない些細な変化について聞き、こちらも博麗神社の状態や巫女の修練の状況を情報として提供したり、単にその日の晩御飯のメニューの相談や授業の相談など、会話内容は多岐にわたる。ときには子どもだけで生活していることを憂いて、博麗神社まで食材を持ち込んで、手料理を振る舞ってくれることも過去に何度かあった。

人里の事に関して言えば、稗田家とも仕事上では、という注釈はつくものの、良好な関係を築いており、有事の際には博麗神社と協力するように話を通してある。また、博麗の巫女に対する依頼の窓口としての役割も俺に割り振られている。他にも人里で比較的大きな商家や異能を持ったりしてる妖怪退治屋などとも連帯しており、友人から書類上でしか知らないような人物まで、関係の深さはそれこそ人それぞれである。

俺とは直接は関わりはないが、数年前からひとに危害を加えない妖怪やその他それに準ずる者の出入りが自由になっており、見た目が幼い妖怪や妖精などが寺子屋に顔を出したり、里内で人と交流してる者も見かけるようになってきている。

第四に冥界では、師匠である妖忌さんがどこかへ行ってしまい、妖夢はかなりの期間落ち込んでいた。俺も剣の修業ができなくなり多少は落ち込んだが、ある程度の事は知っていたのですぐに立ち直れた。結局は常人よりは強い程度の腕でしかない俺の剣筋は、妹弟子である妖夢に数年でぬかされてしまっていたが、幽々子様と妖忌さんに慰められて、さらには立派な刀まで頂いてしまったので、早々に立ち直るしかなかった。今では毎日その刀で素振りをして手入れすることが日課の一つとなっている。

最後に俺たち家族について。俺たち家族は俺と霊夢、紫と藍で別に暮らすようになり、俺たちが一緒に暮らしていたという事実は秘密にすることで、人々からの不信感を煽らないようにすることになった。そのためかなり寂しく感じるが割り切るしかない。こちらも先代巫女の手紙を持ってくるときに少しだけだが話すことができるので、まあ満足している。

 

それにしても今まで楽しい人生だった。父親はいなかったけれど二人の母親に育てられ、一人の可愛い可愛い妹ができて、前世ではしたことがない剣の修業をして、色々な人とか人外とかと仲良くなって、本当に楽しかった。

でもこんなんじゃまだまだ満足できない。もっと楽しみたい。何よりまだまだ原作のキャラクターと会ってない。

 

なんでそんな走馬灯を見てるみたいに過去を振り返ってるのかって?それは、

 

実際に走馬灯見てる勢いだからだよ!

 

「ちくしょーめぇぇぇぇぇ!!」

 

人生で何度目かになる、妖怪との命を賭けた鬼ごっこ。今日も俺の勝ちで終われるのか、デッドヒートが本日も始まってしまった。正直上半身は妖忌さんに育ててもらったが、足腰に関して言えば、妖忌さんよりもここで出くわす妖怪どものせいで鍛えられたと言っても過言ではないだろう。

でも、だからと言って、鍛えてくれたお礼に体を差し出しはしない。報酬が俺の命とか大きすぎる。せめて腕一本、いや、指一本で勘弁してもらいたいが、そんなお願いなんて聞いてくれる訳がない。

 

ふと後ろを確認すれば先程より妖怪どもの数が増えてやがる。ふっ………まぁ、いつもの事ですよ。慌てるようなものじゃない。焦ってはいるけど大丈夫だ。昔より足が速くなっているから、追いつかれることはないはず。今回は別段速い妖怪も飛行するような妖怪もいないし、そろそろ来てくれるはずだ。

 

「はぁ………まったく何やってんのよ」

 

無造作に振るわれた腕から放たれたお札は、綺麗に全ての妖怪を囲い込み、霊力によって焼き払われた。妖怪どもは一匹残さず、こんがり焼かれピクリとも動かなくなった。

 

「あんたも飽きないわね」

「飽きる飽きないの問題じゃねえよ。生きるか死ぬかの問題だ」

「そもそもなんで毎回大声で叫んでるのよ?余計に増えてるじゃない」

「だって助けてくれるだろ?」

 

霊夢は俺が妖怪に襲われるたびに助けに来てくれる。口では「面倒臭い」とか「今回だけ」とか言うが、それでも大体いの一番に助けに来てくれるのは霊夢だ。例えどんなに遠くにいたって駆けつけてくれるのは疑問だが、勘だとしか答えてくれない。

 

「今回だけよ。もう助けないからね」

「そう言ってまた助けてくれるんだろ?分かってるって!このツンデレさんめ☆」

「鬱陶しい。………私はご飯作っとくから、休み終わったらお風呂沸かして、先に入ってていいわよ。疲れてるんでしょ?」

「ああ、ありがと」

 

霊夢が家の方角に去っていくのを見送り、俺はその場に尻餅をついた。毎回のことであっても、この死と隣り合わせの感覚は慣れるものではない。妹の手前、無様な姿はあまり見せたくない。いつも助けてもらってばかりで何を言っているのか、と思うかもしれないが、今以上に酷いものを見せたくない。もしかしたら、気づいているのかもしれないけど、見られていないだけマシだ。

 

戻ってきた緊張感を息を整えながら吐き出していく。汗もぶり返してくるがまだ拭き取るほどの余裕はない。

 

「はぁはぁ………はぁ………、ふぅ」

 

空を見上げればまだ日は高い。夕方にはまだ早いから、もう少しゆっくりできるだろう。夜になれば活発に動き出す妖怪も増えてくる。

ふと、視線を妖怪の死体に戻す。焼死体と言っても過言ではないそれは、血と肉の焦げた匂いが漂いかなり不快だ。だが、幽々子様なら「美味しそうだわ〜」とか言って食べてしまいそうだと思い、笑みが零れた。

 

そう言えば幽々子様は嫌なことがあれば食べて飲んで忘れてしまえばいいとか言っていた。妖忌さんは人間は力が弱いから、他から力を持ってくることは当たり前だと言っていた。

 

つまり、妖怪の血肉を食べて妖怪の力を身につければいいということですね、妖忌さん!

 

どこからか違うという思念が飛んできたような気がするがそんなのは些細なこと。妖怪の肉を手掴みして、口に運んでいく。

 

肉は食えたものではなかった。焼けた肉なのに雑草のような青臭さあり、食感も焦げているため、ザリザリとしていて、元々の肉質のせいか硬くて噛み切れない。味はどう表現すればいいのか、同じようなものが思い浮かばない程にはクソ不味い。これなら売れ残りの消費期限すら切れた売れものにならないような肉も、喜んで食べれるだろう。

 

「…………何やってるの?」

 

上空から声が聞こえたので見上げてみれば、そこには先程助けてくれたように、俺を見下ろしている、新たに割烹着を身に着けた霊夢だった。若干頬を引攣らせ、さらには俺の行動にひいている節があるが、それでも博麗の巫女だろうか。しっかりとお祓い棒は俺の方に向いている。

 

「見てわかるだろ?さっきの妖怪を食ってる」

「何で食べてるの?」

「妖怪食って妖力手ニ入レル」

 

どうやら、何かしらの効果が出始めたようで、少し発声がおかしくなっている。

 

「なるほどね。良かったわ、急いで戻って来て正解だったわ。ちょっと痛いだろうけど我慢してよね!お兄ちゃん!」

 

一瞬で距離を詰められ、顎を殴られるが意識が飛ぶことはなかった。霊夢もそれに気付いたようで、距離をとりお札を飛ばしてくる。地を蹴り体を捻り、お札を躱すが、追尾性能があるのかどこまでも追ってくる。仲良くお札と追いかけっこをしているうちに霊夢が俺の腹部に強烈な蹴りをお見舞いし、そのままお札による追加ダメージを受ける。

 

「これに懲りたら、もう妖怪の肉を食べないでね?」

 

霊符「夢想封印」

 

色とりどりの光が俺を包み込み、俺は浄化されていった。

 

 

 

それから時間が経ち、俺は夜中に目が覚めた。どうやら霊夢が家まで運んでくれたようだ。

枕元に置手紙が置いてあるので手に取って読んでみる。

 

「馬鹿へ

今夜のご飯は抜きです。しっかり反省してください。あと明日は家のこと全部やってよね!

霊夢より」

 

任せとけ、天才の妹よ。明日は腕によりをかけて全ての家事をこなしてみせよう!俺の主夫力を見せてやる!

 




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