深夜になってしまいましたが、投稿です。
「それで、具体的に俺にどうしてほしいんですか?まさか俺に意味もなく死地に向かわせるとかじゃないんでしょ?」
八雲紫は真面目なときには意味のないことはしない、そういった性格だ。嫌がらせのためだけで俺を危険な目に遭わせる、なんてナンセンスなことはしない、確信できる。
「よく分かってるじゃない。具体的な話なんだけど──」
「あ、話す前にいったん家に帰してくれませんかね?買った物置いてきたいので」
「仕方ないわね。それ、ちょっと渡しなさい」
差し出された手に買い物袋を渡す。紫はその袋をおもむろに脇に置こうとし、地面と思われる所を透過しそのまま買い物袋は紫の手首辺りまで消えていった。どこかに買い物袋が落とされた音がした後、紫は不敵な笑みを浮かべて話を進めた。
「で、具体的な話なんだけど、今回の異変首謀者にこれからの幻想郷のパワーバランスを担ってもらうために交渉してもらいたいの。『貴方は負けたのだ。故にこちらの要件を受け入れろ』とね」
「負けたといってもそれは霊夢にでしょ?一応まだ予定の話なんだから。もし霊夢より強かったらどうするんですか?」
「あら、白鹿は霊夢が負けると思う?」
「思わないですけど……。もしものことはあるじゃないですか」
「大丈夫よ。あの子は私が今まで見てきた巫女の中でも一番の天才。負けることなんて万が一にもあり得ないわ。例え最近はまったくと言っていいほど修業していなくてもね」
ありゃりゃ、ばれてら。
紫の事だからどこかで俺たちのことをどこかで見ていたのだろう。まったくもって気づかせないその能力は、もはやストーカーとかそういう類のものに思える。
「あだっ、何すんですか急に……」
「私のこと、覗き魔だとかストーカーだとかそういう風に考えてるでしょ」
「なんで」
「顔に出てたわよ。分かりやすいのよ、あなたは」
表情には出していないつもりだったんだけどなあ。どうしてばれるのか。
「これくらい造作もないわ」
「また心読んでるし……。それでやることはそれだけですか?」
「そうね、あとは霊夢と、そのお友達が倒しちゃった相手を介抱に向かってほしいの。博麗の人物が助けに回ったとなれば交渉も有利に進められるでしょう?」
「わかりました。それで話は終わりですか?」
「そうね」
「なら、明日までにいくらかお金を用意してもらいたいんですけど。今回の異変が終わった後に宴会開くために、今のままじゃ今後の俺と霊夢の生活が困窮してしまいます。宴会開くように言ったのはそっちなんだから、多少は出してください」
そう、このままでは三食ご飯と沢庵だけの生活が続いてしまう。博麗神社で作っているお札もそこまで高価なものではなく、誰でも手が出せるように、リーズナブルな値段で提供しているため、こういった大量出費には対応できないのだ。お賽銭も雀の涙もない、一カ月空の状態だってザラにあるのだ。貧乏とは言えないが常に家計は火の車なのだ。
魔理沙の場合は、月に何度もキノコや山菜などの食材を持ち込んでくれるので、魔理沙によって食費がかかることは実際のところ少ない。今回の団子の件は許さないけどな!
「仕方ないわね。はいこれ」
渡されたのは両手サイズの小包。狐の刺繍があるところから察するに藍が事前に用意していたらしく、中にもきっちり今回の宴会で使っても困らない量のお金が入っていた。
「ありがとうございます。あ、あと魔理沙からさっき俺が支払った分のお金を魔理沙の家から拝借してください。この借りがちゃんと返してもらえた時には返すので」
「あの子の家ね……。はいこれ、あの子の財布」
また、紫が空間に手を突っ込みゴソゴソとしたかと思うと、紫の手には花柄の財布が握られていた。俺はそれを受け取り、今回の団子の代金を抜き取り、紫に返した。紫もそれをすぐに元あった場所にスキマを使って戻した。基本的に杜撰な性格の魔理沙の事だ。疑問を抱くことはあっても、それだけで終わってしまうだろう。
「ありがとうございます」
別に一時的に拝借しているだけで盗んだわけじゃない。ちゃんと貸を返してくれればまた財布の中に戻すさ。
「貴方の用事ももう終わりかしら?」
「ですね。思いつくのはこれくらいでしょうか?」
「じゃあ、早速行ってらっしゃい」
「え?」
バイバイと手を振って見送る紫の姿がぶれたかと思うと、浮遊感が俺を襲った。すぐに草が生い茂る地面に足がついたが、突然のことで若干の足の痛みと共に尻餅をついてしまった。どうやら俺の足元にスキマを開いて、落下させたようだ。高高度からの落下ではなかったのでマシではあるが、せめてもう少し前振りとか欲しかったものだ。
「痛てぇ……」
尻をさすりながら立ち上がり、周囲を観察してみる。草木があることからどこかの森であることはわかるが、正確にどこであるかはわからない。普段は人里と博麗神社の間の道だけしか歩かないため、その周囲の森しか知らない。少なくともその森ではないとは思うが、ここがどこだかの手掛かりには少ない。
「せめてここがどこかとか、霊夢の行方とかが分かればよかったんだけど」
「忘れてたわ。これも持っていきなさい」
「うわぁ!」
突然の声に吃驚した俺を無視して、神社に置いてきたはずの俺の刀を、スキマから腕だけを出した状態で投げ渡した紫は、すぐに腕を引っ込めた。数秒だけ体が固まったがすぐに地面に落ちてしまった刀を拾い上げ周囲を警戒した。今は昼でも妖怪は出てくる。それにこんな異常事態だ、活発に活動している妖怪もいるかもしれない。先程大声を出してしまったし、注意するに越したことはない。
手にした刀で木々に迷わないように、一応の目印として傷を付けておく。こんなどことも知らない場所で迷子なんて洒落にもならないからな。
「う……うぅ…………」
何分かあてもなく、ただ森からの脱出を目指して真っ直ぐに彷徨っていると、どこからか苦悶する声が聞こえた。声を頼りに急いで向かう。か細い声だったのでそこまで距離は離れていないはずだ。そう思ってひたすら走って探していると、すぐに見つかった。
「……あれ?…………人間?」
「マジかよ……」
そこに倒れていたのは、金髪に赤いリボンがトレードマークの幼女だった。
宵闇の妖怪、ルーミアである。
しかも人を食べるらしい。
誤字脱字がありましたら報告お願いします。
また、報告してくださった皆様、ありがとうございます。急いで書いている分、やっぱり間違いがありますね……。一応気を付けているのですが、また誤字脱字があったらお願いします。
あと、感想やお気に入り、評価して下さった皆様にも感謝を!ありがとうございます!