霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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今月ももう少し……。夏休みが終わってしまう……。


第25話

メイドの咲夜さんと、くれないみすずこと紅美鈴(ホンメイリン)に連れて来られたのは、三六○度どこを見渡しても本で埋め尽くされた、まさに本ずくし、本の虫もここまでくれば褒めるべきだと思える蔵書数だ。

しかしそれにしても埃っぽい。この図書館には外に繋がる窓も、先程入った扉の他に扉はなさそうだ。多分本を保管・管理するために陽の光を入れないようにしてるのだろうが、こんなところに四六時中いたら肺炎とかの呼吸器疾患になりそうだ。

 

「パチュリー様!小悪魔!」

「生きてますか!?」

 

如何にも引き籠りしてるような、紫色のパジャマのようなものを着た女性と、赤い髪で白のシャツ、黒のベストと同色のロングスカートを着た女性が横たわっており、そこに咲夜さんを助けたときの焼き増しのように、咲夜さんと美鈴さんが駆けつけて行く。

 

「美鈴、なんてこと言うのよ!大丈夫ですか!?ちゃんと息してますか!?」

「いや咲夜さんも、さらりと生死を確認してるじゃないですか」

「お前ら二人ともさっさとなんとかしろよ」

 

口論になっている二人に飽きれながら眺めていると、引き籠りの方が目を覚ました。どうやら風邪か何か体調不良のようで、顔色は優れず、言葉に咳が混じり苦しそうだ。

 

「何をしているのかしら。図書館では騒がないように、普段から忠告しているはずだけど?」

「……申し訳ございません」

「……すいませんでした」

「とりあえずこの惨状を何とかしてちょうだい。このままじゃ、あの手癖の悪い魔法使い擬きに何を盗まれたか分からないわ」

 

手癖の悪い魔法使い擬きというのは、魔理沙の事で間違いなさそうだ。つまりまた魔理沙が何か、ここではおそらく価値のありそうな本を盗んだのだろう。俺が盗んだわけではないけど、爪の先程度の申し訳なさを感じなくもない。

 

「悪い、それ俺の妹の友人だわ。何が盗まれたんだ?」

「あら貴方、あの娘の関係者なのね。盗まれたものは魔道書よ。降霊術指南書というタイトルの、幼稚な魔導書よ」

「それくらいならいいんじゃないのか?お前の様子から見てもう読んで終わってるんだろ?」

「ええ、そうね。私は歴とした魔女だもの。こんな初歩の初歩は、当然完璧に憶えているけれど、価値があるものを盗まれるのは癇に障るもの。それに素人は見ただけで発狂してしまうような厄介な魔導書もあるの。盗られたものは把握しておきたいわ。私は厄介ごとに巻き込まれるのも、その火種になるのも勘弁願いたいの。私は魔法の研究ができれば満足なのよ」

「ちなみに厄介な魔導書って、例えばどんなものがあるんだ?」

「例えば、で言うなら『エイボンの書』の原典かしらね?」

「見つけ次第、捕まえて連行します!」

 

なんて物が幻想入りしてやがる!エイボンの書はヤバいだろ!確かクトゥルフ神話に出てくる架空の書物で、その神話に出てくる神話生物に関する内容が書かれている。クトゥルフ神話に出てくる魔導書は読むだけでSAN値という名の正気度が減少し、その値がなくなると正気を失い発狂するというもの。普通の人間に近い魔理沙はこの本を読むたびに正気度を減らしていくことになり、魔法の研究に熱心である魔理沙は何度も読み返すはず。つまり何度も正気度が減っていくのは明白。もし正気を保ったままでも、神話生物を招来しようものなら、幻想郷が大変なことになる。

 

「頼んだわよ」

「任せてください。確実に仕留めてみせます」

「一応貴方の知人でしょうに」

「幻想郷を危機に陥れる可能性は除去するに限る……。博麗の者として当然の役目だ」

「貴方の血の色は何色ですか…………」

「猩々緋色と同じ系統の色」

「つまり赤色ということですね、分かりづらい……」

 

俺は博麗の補佐役だし、妖怪食ったことあるし、幼少期には一応程度には妖怪に育てられたし、忘れてるけど転生者だけど、俺ただの人間だよ。なんの力もないただの一般人だぞ?血が赤くない訳ないだろう。

 

「それよりさっきから咳がひどいけど大丈夫か?」

「私喘息持ちなの。だからさっきは幼稚な魔法使い擬きに敗れてしまったの。普段はここで安静にしているのだけど、一向に良くなる気配はないわ」

 

ここの環境は、古臭い本がいっぱいあって、出入口は一つだけ。つまりここの空気は埃まみれの淀んだもので、それを吸い続けて生活してる、このパチュリーという引き籠りの体調は回復する見込みはないだろう。喘息持ちって肺に問題があるから駄目なんだろ?ならこんな明らかに空気が悪いところで生活してるのはいけないだろう。

 

「魔法で何とかならないのか?便利そうだし何とかなりそうだけど?」

「色々と魔導書を読んできたけど喘息を治す魔法なんて見たことがないわ。喘息を治す魔法の手がかりすら見かけたことないし。私の生涯の命題ね。私、魔女だから」

「魔女の生涯の命題、しょうもな!そんなことしなくても症状の緩和くらいならできそうなのに」

「そんな方法があるの!?」

「いや、結構あたりまえなことだぞ?」

「それでもいいの!!どんなことでもいいから教えてちょうだい!!」

 

必死の形相というのはまさにこのことだと思える、そんな表情で問い詰めて来るが、襟元を掴んだ手の握力は少女の握力としても脆弱すぎる。必死すぎて咳も悪化してるみたいだし、唾が顔面にまで散ってきて汚い。美人だし、胸も大きそうだけど、流石に唾つけられるのは勘弁してもらいたい。

 

「えっと……まず、規則正しい生活をしましょう」

「ん?」

「次に、バランスのとれた食事を摂りましょう」

「何かおかしくない?」

「健康的な生活を心がけるようにしか聞こえませんね」

「最後に、適度に日光に浴びながら運動しましょう」

「それだけ?」

「これだけ!」

 

健康的な生活を送るだけで、肉体的にも精神的にも健康になるのだ。しかしこれは簡単に言っているが難しいことである。規則正しい生活はある程度安定した生活基盤がないと保てないものだからだ。まあ、この魔女なら問題ないだろう。




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